愛犬が主食のドッグフードはほとんど口にしないのに、おやつだけは喜んで食べる――この状況は、多くの飼い主さまが一度は経験するお悩みです。Yahoo!知恵袋のようなQ&Aサイトでも、同じような相談が数多く見られます。
「元気はあるし、おやつは食べるから大丈夫なのか」
「それとも病気のサインで、今すぐ病院に行くべきなのか」
本記事では、そのような不安を整理しながら、信頼性の高い情報をもとに原因の切り分けと対処法を解説いたします。
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犬の食欲は、年齢・季節・環境の変化により、少なからず上下します。インターネット上の知恵袋や体験談は参考になりますが、最終的な判断は、実際に愛犬の体を診てくれる獣医師と一緒に行うことが最も安全です。
おやつの量を見直し、家族全員でルールを統一する
ご飯の時間と、食器を片付ける時間(10〜20分)を決めて守る
不安な点をメモにまとめ、必要に応じてかかりつけ獣医師へ相談する
犬が「ご飯は食べないのにおやつは食べる」ときにまず知っておきたいこと
総合栄養食とおやつ(間食)の違い
まず押さえておきたいのは、「ご飯」と「おやつ」の役割の違いです。
総合栄養食(ドッグフード)
適切な量と水を与えることで、犬が必要とする栄養素をほぼバランスよく摂取できるよう設計された「主食」です。おやつ(間食)
ご褒美やコミュニケーションのために与える「補助的な食品」です。栄養バランスよりも嗜好性が重視されており、主食の代わりとして長期間与え続けることは想定されていません。
そのため、
おやつだけを食べる生活は、栄養不足・栄養の偏り・肥満のリスクを高める
長期的には、内臓疾患や関節への負担など、さまざまな健康トラブルにつながる可能性がある
とされています。
一般的な目安として、おやつの量は1日の総摂取カロリーの10%以内に抑えることが推奨されます。「ご飯を食べないから、とりあえずおやつだけでも食べていればいい」と考えるのは危険であり、総合栄養食を食べてもらうことが基本であると理解しておく必要があります。
「知恵袋」に多い悩みパターンと共通点
知恵袋的なQ&Aに寄せられている内容を要約すると、次のようなパターンが多く見られます。
ご飯には見向きもしないのに、おやつや人間の食べ物には飛びつく
ご飯の器を置いても食べず、片付けようとすると「おやつちょうだい」と言わんばかりにねだる
一度お腹を壊してから、ドライフードだけ食べなくなった
シニア期に入り、ご飯の食べ残しが増えたが、おやつは欲しがる
そして、多くの飼い主さまが抱く感情は、
「病気だったらどうしよう」という不安
「かわいそうで、ついおやつをあげてしまう」という罪悪感
「自分の育て方が悪かったのでは」という自己嫌悪
といったものです。
本記事では、このような気持ちも前提にしながら、冷静に状況を整理し、取るべき行動を明確にしていきます。
まずは落ち着いてチェックしたい3つのポイント
「ご飯を食べない」という事実だけに注目すると不安が大きくなりがちですが、まずは次の3点を確認することが大切です。
元気・行動の変化はあるか
いつも通り歩き回るか、遊びや声掛けに反応するか
ぐったりしている、隅でじっとしている、呼吸が荒いなどの異常はないか
うんち・おしっこ・嘔吐に異常がないか
下痢、血便、血尿がないか
繰り返す嘔吐や、苦しそうな様子がないか
食べない状態が続いている時間・日数
「今回の食事だけを残した」のか
「丸1日以上ほとんど何も食べていない」のか
子犬・シニア犬・持病持ちかどうか
これらの情報は、「今すぐ動物病院に行くべきか」「一時的に様子見して良いか」を判断するうえでの重要な材料になります。
病気?わがまま?見分け方の基本
病気が疑われるサインと、すぐ動物病院へ行くべきケース
ご飯を食べないことは、多くの病気に共通するサインのひとつです。特に、次のような症状を伴う場合は、早急な受診が推奨されます。
明らかに元気がない、ぐったりしている
何度も嘔吐する、ひどい下痢が続いている
呼吸が苦しそう、ゼーゼーしている
体が熱い・震えているなど、明らかな違和感がある
急に体重が減ってきた
口の中が赤く腫れている、強い口臭がある、よだれが急に増えた
特に注意が必要なのは、
生後6か月未満の子犬
体の小さな超小型犬
心臓病・腎臓病・糖尿病などの持病がある犬
です。これらの犬はエネルギーや体力の余裕が少なく、短時間の絶食でも低血糖や脱水に陥りやすいため、半日〜1日ほとんど食べない場合でも早めの受診を検討したほうが安全です。
判断の目安イメージ
「ご飯もおやつもほとんど食べない」
「元気がない・嘔吐や下痢がある・明らかにいつもと様子が違う」
このどちらかに当てはまる場合、自己判断は危険であり、できるだけ早く動物病院へ相談することが推奨されます。
わがまま・偏食が疑われるときの特徴
一方で、次のようなケースは「わがまま・偏食」の可能性が高いと考えられます。
ご飯は食べないが、好物のおやつやトッピングを混ぜると食べる
ご飯の器を前にしてもすぐ食べず、飼い主の反応をうかがっている
ご飯を食べないと、飼い主がすぐにおやつや別のフードを出してしまう習慣がある
このような状況が続くと、犬は次のように学習してしまいます。
「今のご飯を食べなければ、もっとおいしいものがもらえる」
つまり、飼い主さまの「心配して何かあげてしまう」という行動が、結果的に偏食やわがままを強化している可能性があります。
ストレスや環境変化、歯や口内トラブルが原因の場合
重い病気ではないものの、次のような要因で一時的に食欲が落ちることもあります。
引っ越し、模様替え、家族構成の変化(出産・進学・単身赴任など)
ペットホテル・動物病院への預け入れなどのイベント後
雷や工事音などの騒音、急激な気温変化
多頭飼いで、他の犬が近くにいて落ち着いて食べられない
歯周病、歯のぐらつき、口内炎などの口腔トラブル
シニア犬で、噛む力や飲み込む力が低下している
このような場合には、
静かで落ち着いて食べられる場所を用意する
歯や口の中を軽くチェックし、明らかな異常があれば受診する
シニア犬には柔らかめのフードや小粒タイプに切り替える
といった環境面・身体面の見直しがポイントになります。
ご飯を食べない犬への基本的な対処ステップ
ここからは、**「元気はある、おやつは食べるが、ご飯はあまり食べない」**という比較的軽症なケースを前提に、自宅で試せる対処法をステップ形式で整理します。
途中で少しでも「様子がおかしい」と感じた場合は、無理に続けず受診を優先してください。
STEP1:おやつの量と頻度を見直す
最初に取り組みたいのは、おやつの見直しです。
おやつは、1日の総カロリーの約10%以内が目安
家族それぞれが少しずつ与えてしまい、トータルではかなりの量になっていることが多い
「ご飯を食べないからかわいそう」と、おやつを増やしてしまうと、ますます主食を食べなくなります。
対策の例としては、
一定期間(数日〜1~2週間)おやつを大幅に減らす、もしくは一時的に中止する
おやつの代わりに、ご飯(ドッグフード)を数粒ずつ手からあげる
トレーニングのご褒美には、市販のおやつではなく、主食の一部を取り分けて使う
などが挙げられます。**「お腹が空いたときにまずご飯を食べる」**流れを取り戻すことが目的です。
STEP2:食事の出し方・時間・環境を整える
次に、ご飯の出し方と環境を整えます。
おすすめされる基本ルールは以下の通りです。
毎日ほぼ同じ時間にご飯を出す
10〜20分たっても食べない、明らかに残している場合は一旦片付ける
次の食事時間までは、ご飯もおやつも与えない
このルールを徹底することで、
「今食べておかないと、しばらく何も出てこない」
ということを犬が理解しやすくなります。
環境面の工夫としては、
テレビの前や人の行き来が多い場所は避ける
多頭飼いの場合は、ケージや別室などで個別に食べさせる
食器の高さを調整し、首や背中に負担がかからない姿勢で食べられるようにする
といった点が挙げられます。
STEP3:フードの種類・硬さ・トッピングの工夫
おやつの見直しと環境調整を行っても食べが悪い場合は、フードそのものの工夫も検討します。
具体的には、
ドライフードにぬるま湯をかけてふやかし、香りを立たせる
少量のウェットフードや、獣医師が推奨するトッピングを混ぜてみる
シニア犬や歯の悪い犬には、小粒・ソフトタイプのフードに変える
などです。
ただし注意点として、
食べないからといって、頻繁にフードを変えすぎると「食べなければもっとおいしいものが出る」と学習させてしまう
急なフード変更は、お腹が敏感な犬では下痢や軟便の原因になる
といったリスクがあります。新しいフードに切り替える際は、7〜10日ほどかけて徐々に混ぜていくなど、段階的な変更が望ましいです。
STEP4:それでも食べない場合の動物病院への相談方法
上記のステップを数日〜1週間程度試しても改善が見られない、あるいは途中で体調面の異変が見られた場合は、迷わず動物病院へ相談してください。
受診時には、次のような情報をメモして持参すると診察がスムーズです。
食べなくなった時期・期間
1日あたりの食事量の目安(大まかなグラム数)
与えているおやつの種類と量
うんち・おしっこ・嘔吐の回数や状態
直近の体重(分かれば)
直前の環境変化(引っ越し、家族の変化、ペットホテル利用など)
これらは、獣医師が「病気の可能性」「行動・環境要因」のどちらが強いかを判断するうえで、大きな助けになります。
年齢別「ご飯を食べない+おやつは食べる」ときの注意点
子犬の場合:低血糖リスクと早めの受診目安
子犬は体が小さく、エネルギーの蓄えも少ないため、短時間の絶食でも負担が大きくなります。一般的には、
半日程度ほとんど食べないだけでも慎重な観察が必要
丸1日に近い時間ほとんど食べず、元気がないようであれば早めに受診を検討すべき
と考えられます。
また、子犬はワクチン接種や寄生虫駆除など体に負担のかかるイベントが多い時期です。ワクチン接種後や大きな環境変化のあとに食欲が落ちた場合は、必ずかかりつけの獣医師に相談することをおすすめいたします。
成犬の場合:生活習慣としつけの見直し
健康な成犬で、「ご飯は食べないが、おやつは喜んで食べる」「元気はある」というケースでは、生活習慣やしつけの影響が大きい場合が多いと考えられます。
典型的なパターンは以下の通りです。
散歩や遊びが少なく、お腹が十分に空いていない
家族がそれぞれおやつをあげてしまい、トータルの量が多くなっている
ご飯を食べないと、すぐに別のフードやおやつが出てくる経験を何度もしている
このような場合は、
散歩や遊びの時間・質を見直す
家族全員で「おやつルール」を共有し、誰がどれだけあげるかを明確にする
ご飯の時間・片付け時間のルールを決め、守り続ける
といった「生活全体のリズム作り」が大きなポイントとなります。
シニア犬の場合:老化・持病・噛む力の低下に注意
シニア犬では、加齢に伴うさまざまな変化が「ご飯を食べにくい」原因になっていることがあります。
たとえば、
歯周病や歯のぐらつき、口内炎などで噛むと痛い
顎や首、腰などの関節痛により、食事姿勢がつらい
消化機能の低下により、一度にたくさん食べると気持ち悪くなる
などです。
対策としては、
定期的な歯科チェック・歯石除去など、口腔ケアを受ける
フードを柔らかくする、小粒やシニア専用フードに変える
食器の高さを調整し、無理のない姿勢で食べられるようにする
1回量を少なくし、回数を増やす(1日3〜4回に分ける など)
といった工夫が有効です。
また、持病を抱えるシニア犬では、「食欲低下=病状悪化」のサインである場合も多く、早めの受診・定期検診が安心につながります。
やってはいけないNG対応リスト
ご飯を食べないたびにフードをコロコロ変える
「このフードは食べないから別のものにしよう」と、短期間に何度もフードを変えてしまうと、
「食べなければ別のもっとおいしいご飯が出る」と学習させてしまう
お腹が敏感な犬では、下痢や軟便の原因になる
などのリスクがあります。
どうしてもフードを変更する必要がある場合でも、少なくとも1週間以上かけて徐々に切り替えるのが望ましいです。
「かわいそう」でおやつを増やしてしまう
「ご飯を食べないのはかわいそうだから、せめておやつだけでも」という気持ちは自然ですが、
偏食やわがまま食いをさらに強めてしまう
肥満や栄養バランスの悪化につながる
といった結果を招く可能性があります。
健康のために、あえておやつを控えることも、大切な愛情の一つと考えていただくことが重要です。
手からしか与えない・人の食べ物を与える など
手からご飯をあげる行為自体は、関係性づくりとして悪いことではありません。しかし、
常に手からでないと食べない
味付けされた人間の食べ物を与えている
といった状態は、健康・しつけの両面で問題が生じやすくなります。
人の食べ物は塩分や脂質が多く、内臓への負担が大きい
「人間の食べ物のほうが美味しい」と学習し、ドッグフードをさらに食べなくなる
といった悪循環につながります。どうしても人間の食材を使いたい場合でも、味付けのないごく少量の食材を、獣医師と相談したうえで与えることが望ましいです。
実際の知恵袋的Q&A集
Q1:1日ご飯を食べずにおやつだけでした。大丈夫ですか?
A:
健康な成犬で、元気・水分摂取・排泄に問題がなく、翌日以降は徐々にご飯を食べ始めているようであれば、緊急性は低い場合もあります。
ただし、
子犬
シニア犬
持病のある犬
の場合は、1日ほとんど食べないだけでも早めの受診を検討すべきです。
いずれにしても、「おやつだけでしのぐ状態」を何日も続けることは避ける必要があります。2日以上同じ状況が続く、あるいは少しでも元気がなくなったと感じた場合は、早めに動物病院へ相談してください。
Q2:おやつをやめるとかわいそうで続きません。他に方法はありますか?
A:
完全にゼロにするのが難しい場合は、次のような「段階的な見直し」がおすすめです。
現在のおやつ量をまず半分以下に減らす
おやつの代わりに、ご飯(ドッグフード)を1粒ずつ手からあげる
「おやつタイム」を、主食のご飯を使ったトレーニングタイムに置き換える
重要なのは、「お腹をおやつで満たさないこと」と、「お腹が空いたときの選択肢を主食に戻すこと」です。
Q3:ドライフードを全く食べず、ウェットや手作り食なら食べます。切り替えても良いですか?
A:
ウェットフードや手作り食への切り替え自体は可能ですが、それぞれにメリット・デメリットがあります。
ウェットフード
嗜好性が高く食べやすい
一方で歯石が付きやすい、コストがかかる
手作り食
食材の内容をコントロールしやすい
ただし、栄養バランスの管理が難しく、栄養が偏るリスクがある
そのため、完全に切り替える場合は、獣医師やペット栄養学の専門家と相談しながら進めることをおすすめいたします。総合栄養食として設計されたウェットフードを選ぶ、サプリメントで不足を補うなど、プロの助言があると安心です。
Q4:多頭飼いで1頭だけ食べません。どう対処すべきですか?
A:
多頭飼いでは、
競争心から早食いする犬
逆にプレッシャーで食べられない犬
など、性格の違いがはっきり出ることがあります。
対処例としては、
食事の時間だけケージや別室を利用し、1頭ずつ落ち着いて食べられる環境をつくる
先に食べ終わった子の食器はすぐに片付け、他の犬のご飯を取れないようにする
特に食べるのが遅い子には、静かな場所で単独で食べさせる
といった方法が有効です。1頭だけ食べない場合でも、体調不良が隠れていることもありますので、様子がおかしければ受診を検討してください。
チェックリストとまとめ
自宅でできるチェックリスト(症状・生活環境・食事ルール)
症状チェック
元気がなく、ぐったりしている
繰り返す嘔吐や、水のような下痢がある
急に体重が減ってきた
24時間以上ほとんど何も食べていない
1つでも当てはまる場合は、自己判断は避け、早めに動物病院へ相談してください。
生活環境・ストレス要因チェック
最近、引っ越しや家族構成など大きな変化があった
食事場所が落ち着かない(テレビの前、人通りの多い場所など)
多頭飼いで、他の犬の存在がプレッシャーになっていそう
食事ルール・おやつルールチェック
ご飯を食べないと、すぐに別のフードやおやつに変えている
家族それぞれがおやつをあげており、全体量を把握していない
ご飯を出しっぱなしにして、ダラダラ食べさせている
当てはまる項目が多いほど、生活習慣やしつけの見直しで改善できる余地が大きいと言えます。