「留守番のたびに吠え続ける」「破壊や粗相が止まらない」「外出の準備をしただけでパニックになる」――犬の分離不安に悩む飼い主にとって、毎日は消耗戦になりがちです。知恵袋を見ても「治った」「治らない」が入り混じり、何を信じて何から始めればいいのか分からなくなることもあるでしょう。
本記事では、まず「治った」と言える状態を3段階で整理し、次に分離不安のサインと重症度をチェックして、あなたの犬がいまどのレベルにいるかを明確にします。そのうえで、環境づくりから外出サインの脱感作、段階的な外出練習まで、留守番トレーニングの手順を具体的に解説します。さらに、受診や薬を検討すべき目安、動物病院に持参すると話が早く進む記録テンプレまでまとめました。
「叱るべき?甘やかし?」という迷いをいったん手放し、犬が落ち着ける時間を少しずつ増やしていくための道筋を、一緒に整えていきましょう。
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犬の分離不安は治ったと言える状態を整理する
犬の分離不安が治ったの現実的な到達点を3段階で考える
「犬の分離不安が治った」という言い方は、実は人によって意味が違います。ある人は「吠えなくなった」、別の人は「留守番中に寝られるようになった」、また別の人は「破壊がなくなった」ことを指します。知恵袋のような体験談を読むほど混乱しやすいのは、この“治ったの基準”が共有されていないからです。
そこで、現実的な到達点を3段階に分けて考えると、いま自分がどこを目指せばいいかが明確になります。
段階1:症状が軽くなる(危険が減る)
ここでの目標は「犬のパニックを下げる」「けがや事故を防ぐ」「極端なストレス反応を減らす」です。
例えば、留守番のたびにドアを掘る・歯を折りそうな勢いで噛む・よだれが止まらない・下痢や嘔吐が続く、といった状態は、まず安全面と健康面が最優先になります。段階1で重要なのは、完璧な留守番ではなく“崩壊しない状態”を作ることです。段階2:生活が回る(必要な外出ができる)
次に目指すのは、飼い主が日常生活を取り戻せることです。買い物、通院、仕事、子どもの送り迎えなど、「避けられない外出」をこなせるようになると、飼い主の焦りが落ち着き、犬への対応も安定します。
この段階では、吠えがゼロにならなくても構いません。例えば「最初の数分は鳴くがすぐ落ち着く」「破壊や粗相がなくなる」「留守番中に休める時間が増える」など、現実的に困りごとが解消されるかどうかが基準になります。段階3:再発しにくい習慣ができる(波があっても戻せる)
分離不安は、生活の変化、引っ越し、家族の在宅時間の変化、雷や工事などの恐怖体験、体調不良などでぶり返すことがあります。段階3は「まったく再発しない」ではなく、「崩れても立て直せる」「いつもの手順で戻せる」状態です。
例えば、旅行や長期休暇で生活リズムが変わっても、数日〜数週間で落ち着きが戻る。急に留守番が増えても、短い練習を挟むことで大きく悪化しない。こうした“回復力”が段階3の目標になります。
分離不安は「ある日突然治る」というより、少しずつ“落ち着ける時間”が伸びていくタイプの問題です。だからこそ、到達点を段階化し、達成できた部分をきちんと評価することが、継続のコツになります。
犬の分離不安は再発しやすいからこそ記録が効く
分離不安の改善で多くの人がつまずくのは、「何が良くて、何が悪かったのか」が分からないまま試行錯誤してしまうことです。特に、症状が日によって揺れる犬ほど、飼い主は「昨日はできたのに今日はダメ」「何をやっても意味がない」と感じやすくなります。
ここで効くのが記録です。記録は“気休め”ではなく、改善の速度を上げる道具になります。ポイントは、細かく書きすぎないことです。続かなければ意味がありません。最低限、次の3つだけでも残してください。
留守番の開始と終了(何分・何時間だったか)
留守番中の様子(できれば動画、難しければメモ)
前後の条件(散歩の有無、来客、天候、工事音、家族の在宅状況など)
例えば「雨の日は長引く」「散歩が短い日は落ち着きにくい」「鍵を持つだけで不安になる」など、パターンが見えてきます。パターンが見えれば、対策は“気合”ではなく設計になります。
さらに、動物病院や行動診療に相談する場合、記録と動画があると話が早く進みます。「吠えます」だけだと受け取り方が人によって変わりますが、動画があれば強度も継続時間も共有できます。受診を迷っている段階でも、記録を始めておくと判断材料が揃っていきます。
犬の分離不安のサインと重症度を見極める
犬の分離不安でよくある行動と体のサイン
分離不安というと「留守番で吠える」が代表的ですが、実際はもっと幅があります。犬は不安を言葉で説明できないため、行動と体の反応で表現します。見逃しやすいサインも含めて整理します。
行動のサイン
家の中で常に後追いする(トイレ・お風呂・キッチンまで付いてくる)
飼い主が立ち上がるだけで慌てて動く
外出準備(着替え、メイク、バッグ、鍵)でソワソワが始まる
ドア前で吠える、遠吠え、鳴き叫ぶ
ケージやドアを噛む、掘る、体当たりする
窓やベランダに執着する
帰宅時に過剰に興奮し、なかなか落ち着かない
体のサイン
よだれが増える
パンティング(ハァハァ)が強い
震える
下痢、嘔吐、食欲不振
体を舐め続ける、皮膚をかむ(自傷に近い状態)
特に注意したいのは、破壊や自傷、嘔吐・下痢などがセットになっているケースです。これは「困っている」ではなく「苦しくて耐えられない」サインになりやすいからです。留守番のたびにこうした反応が強い場合、トレーニングだけで抱え込むより、早めに医療のサポートも視野に入れた方が安全です。
犬の分離不安に見えて別の病気が隠れるケース
分離不安の対策を頑張っているのに改善しない場合、そもそも分離不安ではない、あるいは分離不安に加えて別の問題が絡んでいる可能性があります。ここを見落とすと、どれだけ練習しても噛み合いません。
見直したい代表例は次の通りです。
痛みや不快感
体が痛い、違和感があると、ひとりで耐えるのが難しくなります。関節痛、歯の痛み、胃腸の不調など、分かりにくい痛みほど行動に出ます。「留守番だけ不安定」でも、実は留守番中に体調が悪化していることがあります。消化器の問題
留守番とセットで下痢や嘔吐が出る場合、ストレス反応の可能性もありますが、食事内容、寄生虫、慢性胃腸炎などの可能性もゼロではありません。先に健康チェックを挟むと安心です。高齢犬の認知機能の変化
高齢になって急に夜鳴きや不安が増えた場合、分離不安だけでは説明できないことがあります。見当識が落ちたり、睡眠が乱れたりすると、飼い主の気配がないだけで混乱しやすくなります。聴覚・視覚の低下
見えづらい、聞こえづらい状態は不安を増やします。音や気配で状況を確認できない犬ほど、ひとりになると不安が強くなることがあります。
分離不安の対策は継続が大切ですが、体の原因がある場合は、努力の方向がズレたまま続いてしまいます。迷ったら「先に健康面を確認してから練習に戻る」という順番が、結果的に近道になることがあります。
犬の分離不安の重症度チェックリスト
重症度を見極めると、やるべきことの優先順位が定まります。ここでは、ざっくり3段階で判断できるように整理します。
軽度
留守番の最初だけ鳴くが、短時間で落ち着く
破壊や自傷はない
おやつや知育トイで気が紛れることが多い
帰宅時の興奮はあるが、数分で落ち着く
→ この段階は、段階的な留守番練習と生活設計で改善しやすい傾向があります。
中等度
外出準備の段階から不安が始まる
吠えが長引く日がある
軽い破壊、粗相が出ることがある
留守番中に落ち着ける時間が少ない
→ 家での練習は可能ですが、難易度調整が重要です。上手くいかない場合は、早めに専門家に相談すると改善が早まることがあります。
重度
留守番中にほぼ休みなく吠える、パニックに近い行動
ドアやケージを壊そうとしてけがの危険がある
下痢や嘔吐、食欲不振など体の症状が出る
飼い主の生活が崩れている(外出できない、睡眠不足、苦情リスク)
→ 安全確保と受診の優先度が高い段階です。練習のやり方次第で悪化することもあるため、自己流で押し切らず、医療と行動面の両方から設計するのが現実的です。
犬の分離不安が起きる原因を飼い主側の変化から探る
犬の分離不安は生活パターンの変化で始まりやすい
分離不安は、犬の“性格の弱さ”ではありません。むしろ、生活の変化をきっかけに突然目立つことが多い問題です。
よくあるきっかけは次のようなものです。
在宅勤務が減り、留守番が増えた
休日が終わり、平日だけ急に留守番が始まった
引っ越しで環境が変わった
家族が増えたり減ったりして、家の雰囲気が変わった
家族の入院や長期不在で、生活リズムが崩れた
犬は「毎日同じ」が得意です。逆に「突然変わる」が苦手です。飼い主にとっては当たり前の変化でも、犬にとっては“世界が変わった”レベルの出来事になります。特に、飼い主が家にいる時間が長かったほど、外出が増えたときの落差が大きくなります。
ここで大切なのは、犬に「ひとりの時間=危険ではない」と学び直してもらうことです。そのためには、留守番をいきなり長時間にするのではなく、“短い成功”を積み上げる必要があります。
犬の分離不安は怖い体験の記憶で強くなる
分離不安は、留守番中の怖い体験で一気に悪化することがあります。例えば、
雷や花火の大きな音
工事の振動や騒音
近所の犬の吠え声に驚いた
地震や停電
留守番中の誤飲や体調不良
こうした出来事が「ひとりのときに起きた」場合、犬は“ひとり=危険”と結びつけやすくなります。そして次の留守番で不安が先回りし、吠えやパニックが強化されます。飼い主が帰宅しても「怖かった」体験そのものは消えません。だからこそ、練習は慎重に難易度を上げる必要があります。
もし悪化したタイミングに心当たりがあるなら、練習を戻して“怖くない経験”を上書きすることが重要です。焦って留守番を続けると、怖さの記憶が積み上がり、改善に時間がかかることがあります。
犬の分離不安を強化してしまう飼い主の反応
分離不安は「犬が不安だから、飼い主が何とかしてあげたくなる」問題です。しかし、その優しさが結果的に不安を強化してしまうことがあります。
よくあるパターンは次の通りです。
出かける前に長く抱きしめたり、声をかけ続ける
→ 犬は「これから大変なことが起きる」と感じやすくなります。帰宅時に過剰に反応する
→ 「飼い主の出入りは一大イベント」と学び、留守番の価値が上がってしまいます。吠えやパニックがひどくて外出を中止する
→ 「騒げば外出が止まる」と学び、次回も同じ行動を取りやすくなります。
大切なのは、冷たくすることではありません。出発と帰宅の“儀式”を小さくし、犬が落ち着いている瞬間を増やすことです。落ち着いているときにこそ「良いことが起きる」経験を積ませると、不安は下がりやすくなります。
犬の分離不安を治す留守番トレーニング手順
犬の分離不安対策は環境づくりが先
留守番トレーニングというと「外出時間を伸ばす」ことばかりに目が向きますが、実は環境づくりが土台です。土台が不安定なまま練習すると、犬は“練習”ではなく“耐える”になってしまいます。
環境づくりで押さえたいポイントは次の通りです。
安心スペースを固定する
クレート、サークル、ベッド、部屋の一角など、犬が落ち着ける場所を決めます。重要なのは「閉じ込める場所」ではなく「休める場所」にすることです。普段からおやつをそこで与える、そこで寝られるようにするなど、良い印象を積み上げます。破壊と誤飲を防ぐ
分離不安の犬は、パニックで物を壊すだけでなく、誤飲につながることがあります。コード、布、靴、ゴミなど危険物は片付け、ケージや柵で安全を確保します。けがのリスクがある犬ほど、環境整備は最優先です。刺激をコントロールする
外の音に反応しやすい犬は、遮音カーテンや配置替え、環境音の活用などで刺激を減らします。完全に無音にする必要はありませんが、急な物音が多い場所は不安を増やしやすいです。見守り手段を用意する
見守りカメラがあると、吠えの時間やパニックの強度が分かります。体感と現実がズレることも多いため、改善の評価にも役立ちます。
環境が整うと、犬は「ひとりの時間でも安全」と感じやすくなり、練習の成功率が上がります。
犬の分離不安は外出サインの脱感作から始める
分離不安で多いのが「外出する前から不安が始まる」タイプです。飼い主が鍵を持つ、上着を着る、バッグを持つ、メイクをする、玄関に向かう。こうした“外出サイン”がスイッチになっていると、実際に外に出る前に不安が最大になります。
この場合、外出時間を伸ばす練習の前に、外出サインの脱感作が必要です。やり方はシンプルです。
鍵を持つ、上着を着る、バッグを持つなど、いつもの外出サインを出す
しかし外出しない(ソファに座る、机に戻る、家の中で別の作業をする)
犬が落ち着いていられたら終了
これを1日数回、短く繰り返します。犬が緊張している場合は、サインを小さくします。例えば「上着を着るだけ」「バッグを触るだけ」など、犬が崩れない強度から始めます。
外出サインの脱感作は地味ですが、ここが抜けていると、外出練習を始めても毎回スタート地点で不安が爆発しやすくなります。まず“予告の不安”を下げることが、改善の土台になります。
犬の分離不安を減らす段階的な外出練習
段階的な外出練習の基本は、「犬が崩れない範囲で時間と距離を伸ばす」ことです。成功の定義は「吠えない」ではなく、「不安サインが強く出ない」「パニックにならない」「落ち着ける時間がある」など、犬が学習できる状態を保つことです。
練習のステップ例は次の通りです。
隣の部屋に移動してすぐ戻る(数秒〜10秒)
玄関に行って戻る
玄関の外に出てすぐ戻る
10秒、30秒、1分、3分、5分…と少しずつ伸ばす
ここで重要なのは“飛び級しない”ことです。昨日3分できたから今日は30分、という伸ばし方は失敗しやすいです。犬の不安は波があるので、日によって難易度が変わります。伸ばす幅は小さくし、同じ時間を複数回成功させてから次へ進みます。
また、うまくいかない日は「戻す」ことが正解です。戻すことは後退ではなく、学習を守るための調整です。失敗が続くほど「ひとり=怖い」の学習が強化され、改善が遠のきます。
練習のタイミングは、犬が過度に興奮していない時間帯が向いています。散歩直後で落ち着きやすい犬もいれば、逆に疲れすぎると不安が増える犬もいます。記録を見ながら、犬に合う時間帯を探してください。
犬の分離不安に効く留守番中の過ごし方を設計する
留守番中に不安が高い犬ほど、「暇」や「緊張」で心が満杯になります。そこで、留守番中の過ごし方を設計して、安心できる要素を増やします。
出発前に排泄と軽い運動を済ませる
エネルギーが余っていると、不安が行動に出やすくなります。とはいえ、激しい運動で興奮しすぎると逆効果になる犬もいるため、落ち着ける程度の運動が目安です。留守番専用のアイテムを用意する
知育トイ、長持ちおやつ、噛むおもちゃなどは「留守番=良いことが起きる」の紐づけに役立ちます。ポイントは“留守番専用”にすることです。いつもある物だと特別感が薄れます。帰宅時は淡々と、落ち着いてから関わる
帰宅後すぐに大興奮の対応をすると、犬は「帰宅は一大イベント」と学び、留守番の価値が上がりすぎます。落ち着いたタイミングで静かに声をかけ、普段通りに過ごすことが、長期的には不安の軽減につながります。
ただし、重度でパニックに近い犬は、知育トイに集中できないことがあります。その場合、留守番中の“気晴らし”よりも、環境整備と練習の難易度調整、そして受診の検討が優先になります。
犬の分離不安の2週間メニュー例
「仕事があり、練習時間が限られている」家庭向けに、2週間のモデルを示します。大事なのは、ここに書いた通りに完璧にやることではなく、“短い成功を積む”方向に生活へ組み込むことです。
1〜3日目:外出サインを薄める
外出サインの脱感作を1日5回(鍵を持つ→外出しない、上着を着る→外出しない など)
隣室移動10秒〜30秒を数回
成功の目安:犬が追いかけてもパニックにならず戻れる、吠えが強く出ない
4〜7日目:玄関周りの練習
玄関に行って戻る、玄関の外に出て10秒で戻る
10秒が安定したら30秒、60秒へ
成功の目安:外出後に犬が落ち着ける時間がある(吠えが少ない・止まる)
8〜10日目:短時間外出を形にする
1分〜5分を複数回
留守番専用の“開始スイッチ”(知育トイ等)を固定
帰宅後は淡々と、落ち着いたタイミングで関わる
11〜14日目:10分〜30分へ
10分が崩れなければ15分、20分へ
途中で崩れる場合は、前の時間に戻して成功率を上げる
平日は維持(短時間でも成功)、週末に少し伸ばす、など家庭に合わせて調整
このメニューは「2週間で完治」を目指すものではありません。「練習が回り始め、方向性が見える」ことを目標にしてください。症状が強い犬ほど、成功率を守りながら進めることが重要です。
犬の分離不安で動物病院と薬を考える目安
犬の分離不安で受診した方がよいサイン
受診をためらう人は多いですが、分離不安は“気合で乗り切るほど悪化しやすい”ことがあります。次に当てはまる場合は、相談する価値が高いです。
留守番のたびに長時間吠え、近所への影響が現実的
破壊が激しく、歯や爪、体を傷つける危険がある
下痢・嘔吐・食欲不振など、体の症状が留守番とセットで出る
生活が回らず、飼い主が限界に近い
自己流で試し続けたが改善が乏しい、むしろ悪化している
「飼い主がつらい」も立派な受診理由です。なぜなら、分離不安の改善は家庭内での継続が必要で、飼い主が崩れると継続が途切れ、犬も不安定になりやすいからです。まずは続けられる状態に戻すことが、犬のためにもなります。
犬の分離不安の治療は行動療法が中心で薬は補助
分離不安の改善で中心になるのは、段階的な学習(行動療法)です。犬は「ひとりでも安全」「戻ってくるのが当たり前」を学び直す必要があります。薬が話題に上がるのは、重度の不安で学習が成立しにくい場合です。
薬のイメージで混乱しやすい点は2つあります。
薬だけで治すものではない
薬は「不安をゼロにする魔法」ではなく、「学習できる状態に近づける補助」になりやすいです。つまり、薬を使っても練習と環境調整は必要です。必要かどうかは個別判断
不安の強さ、体調、年齢、他の病気、家庭の状況などで判断は変わります。だからこそ自己判断で結論を出さず、記録と動画を持って相談することが大切です。
薬を検討すること自体は悪いことではありません。むしろ、犬が毎回パニックで苦しんでいるなら、早く楽にしてあげるための選択肢になり得ます。重要なのは、医療と行動面をセットで考えることです。
犬の分離不安で受診するときの持参情報テンプレ
動物病院に相談するとき、準備があるかないかで得られるアドバイスの質が変わります。次の項目をメモして持っていくとスムーズです。
留守番中の動画(できれば全体、難しければ問題行動の部分)
留守番の頻度、最長時間、時間帯
外出サインへの反応(鍵、上着、バッグ、玄関など)
出る症状(吠え、破壊、粗相、よだれ、震え、下痢、嘔吐など)
これまで試したこと(クレート、知育トイ、練習方法、散歩量、音対策など)
生活制約(共働き、育児、近所事情、外出を避けられない曜日など)
犬の基本情報(年齢、体重、既往歴、食事内容)
受診の目的は「叱り方を教えてもらう」ではなく、「この犬とこの家庭に合う設計を一緒に作る」ことです。情報が揃うほど、設計の精度が上がります。
犬の分離不安が改善しないときのチェックとFAQ
犬の分離不安が長引くときに見直す5項目
頑張っているのに改善が見えないと、「うちの犬は治らないのでは」と不安になります。ただ、長引くときには、たいてい“どこかの難易度が高すぎる”か、“別の要因が混ざっている”ことが多いです。次の5つを順に見直してください。
段階を飛ばしていないか
伸ばす幅が大きいほど失敗が増えます。失敗は不安の学習を強めやすいので、時間の伸ばし方を小さくします。外出サインの脱感作を省いていないか
外出前から不安が始まる犬は、ここが抜けると毎回スタートで崩れます。外出練習より先に、サインを薄める練習を増やします。環境が安全で落ち着ける状態か
破壊できる物、外の刺激、暑さ寒さなど、犬の不安を増やす要素が残っていないか確認します。安全が守れないと、学習が成立しにくくなります。留守番時間が日によって大きくブレていないか
週末だけ長時間、平日は短時間など、生活上のブレは起こります。ただ、練習中に“突然の長時間”が入ると、積み上げが崩れることがあります。必要な日は預け先などの代替策を検討し、練習日は成功率を優先します。体調不良や加齢要因が隠れていないか
痛み、胃腸の不調、認知機能の変化などがあると、留守番が難しくなります。改善が止まったら、一度健康面を確認するのは有効です。
この5つを整えるだけで、同じ努力でも結果が変わることがあります。「犬の根性」ではなく「設計」を疑うのが、改善の近道です。
犬の分離不安でやってはいけないこと
分離不安は、飼い主が真面目なほど間違った努力をしやすい問題です。逆効果になりやすい行動をまとめます。
いきなり長時間の留守番に挑戦する
「慣れれば平気になる」は通用しないことが多いです。恐怖は“慣れる”より“強化される”ことがあります。吠えやパニックを叱る
叱られて止まっているように見えても、不安そのものが下がるわけではありません。むしろ「ひとり=怖い」に加えて「叱られる=怖い」が上乗せされることがあります。出発と帰宅を大イベントにする
事前に長く構う、帰宅時に大騒ぎする、こうした儀式は不安を増やしやすいです。落ち着いた日常の一部にしていく方向が基本です。失敗を放置して同じ難易度で繰り返す
失敗が続くと、犬は「やっぱり怖い」を学びます。うまくいかないときは、必ず難易度を戻して成功を作り直します。
やってはいけないことを避けるだけでも、悪化を止められるケースがあります。改善は“追加で何かをする”だけでなく、“余計な刺激を減らす”ことでも進みます。
犬の分離不安のよくある質問
犬の分離不安は本当に治った人はいますか
います。ただし「治った」の中身は人によって違います。吠えがゼロになった例もあれば、吠えは少し残るけれど生活が回るようになった例もあります。大切なのは、到達点を段階で捉え、自分の家庭にとって必要なレベルを現実的に定めることです。
また、重度の場合は、家庭での練習だけで抱え込まず、専門家のサポートを早めに入れるほど改善が進みやすいことがあります。
犬の分離不安は何歳でも改善しますか
改善の考え方自体は年齢に関係なく使えます。ただし、若い犬と高齢犬では“つまずきやすい点”が違います。高齢犬では体調や認知機能の影響が混ざることがあるため、急な変化があれば健康面の確認を優先してください。若い犬でも、怖い体験や生活変化が重なると一気に悪化することがあるので、早めに手当てするほど改善しやすい傾向があります。
犬の分離不安で留守番できない日はどうしたらいいですか
練習中は「練習日」と「どうしても外出が必要な日」を分けると、積み上げが崩れにくくなります。
どうしても外出が必要な日は、家族の協力、預け先、ペットシッター、短時間でも誰かが在宅できる工夫など、“犬が崩れない選択肢”を用意すると悪化を防ぎやすくなります。毎回パニックになる留守番を繰り返すほど、改善は遠のくことがあるため、代替策を検討する価値は十分にあります。
犬の分離不安はクレートに入れた方が治りますか
犬によります。クレートが“安心できる巣”になる犬もいれば、閉じ込められることで不安が上がる犬もいます。大切なのは「クレートに入れること」ではなく、「そこで落ち着ける状態を作ること」です。普段から自分で入って休める、そこで良いことが起きる、という経験を積んだうえで留守番に使うと成功しやすくなります。嫌がる犬を無理に入れると、留守番=閉じ込められる恐怖になって逆効果になることがあります。
犬の分離不安の改善が遅いとき、薬はすぐ必要ですか
すぐ必要かどうかは個別判断です。ただ、留守番のたびに強いパニックや体の症状が出る場合は、早めに動物病院へ相談する価値があります。薬は「犬が学習できる状態を作る補助」になることがあり、行動療法や環境調整と組み合わせて考えるのが基本です。
自己判断で結論を出すより、動画と記録を持参して相談し、「どのレベルの不安なのか」「家庭の制約下で何が現実的か」を一緒に整理してもらうと、改善の道筋が明確になります。