インフルエンザの予防接種を受けた直後や数日後に、子どもやご自身が高熱を出すと、
「ワクチンのせい?」「インフルにかかった?」「今すぐ病院に行くべき?」
と強い不安を感じる方が少なくありません。
特に、
接種の翌日に39℃前後の熱が出た
数日たっても熱が下がらない
子どもがぐったりしている
といった状況では、ネットで「知恵袋」などの体験談を必死に探してしまう方も多いはずです。
本記事では、
予防接種後の発熱がなぜ起こるのか
どこまでが「よくある副反応」で、どこからが要注意なのか
自宅でできる対処法と、受診・救急に行く目安
を、一般的な医学情報に基づいてわかりやすく整理します。
※本記事はあくまで一般的な目安であり、個別の診断・治療を行うものではありません。「少しでもおかしい」「不安が強い」と感じる場合は、迷わず医療機関や地域の相談窓口にご相談ください。
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インフルエンザ予防接種を受けた後に高熱が出ると、多くの方が「これは副反応なのか」「インフルエンザにかかったのか」と強い不安を抱きます。予防接種後の発熱は一般的な副反応として見られることがありますが、通常は接種当日から翌日にかけて37〜38℃台の発熱が多く、長くても2〜3日以内に落ち着くことが一般的です。一方で、高熱が続く場合や症状が増えていく場合は、インフルエンザ本体や他の感染症が潜んでいる可能性が高く、早めに医療機関を受診することが重要です。
インフルエンザ予防接種の基本と「高熱」が起こる仕組み
インフルエンザワクチンの目的は「重症化予防」
インフルエンザワクチンは、
感染そのものを100%防ぐものではない
発病の可能性をある程度下げ、重症化を防ぐ
ことを主な目的としています。
したがって、
「ワクチンを打ったのにインフルエンザにかかった」
というケース自体は、決して珍しいことではありません。ただし、ワクチンを接種しておくことで、肺炎や脳症などの重い合併症を起こしにくくなると考えられています。
ワクチン後の副反応としての発熱の特徴
インフルエンザワクチン(皮下注射・不活化ワクチン)のあとには、次のような副反応が比較的よく見られます。
接種部位の赤み・腫れ・痛み
全身のだるさ・頭痛・寒気
一時的な発熱(多くは37〜38℃台)
一般的には、
発熱は接種当日〜翌日に出現しやすい
多くは 1〜2日以内、長くても2〜3日程度でおさまる
とされています。
なお、39℃前後の高熱が出るケースもゼロではありませんが、頻度としては多くありません。強い高熱が数日続く場合は、単なる副反応ではなく、インフルエンザや他の感染症を疑う必要があります。
ワクチンを打ってもインフルエンザにかかる理由
「ワクチンを打っているのにインフルにかかった」という状況には、主に次のような理由が考えられます。
接種から十分な免疫がつくまでの2週間程度の間に感染した
その年に流行しているウイルスの型と、ワクチンの型が完全には一致していなかった
そもそものワクチン有効率(発病を防ぐ効果)が100%ではない
したがって、
「予防接種は意味がない」
のではなく、
「かかる可能性は残るものの、重症化しにくくするための“保険”」
と捉えるのが現実的です。
いつ打っていつ熱が出た?タイミング別に原因を整理
予防接種後の高熱を考えるとき、「接種から何日目に熱が出たか」 が重要な手がかりになります。
接種当日〜翌日の発熱:典型的な副反応パターン
接種当日〜翌日に、
37〜38℃台の発熱
接種部位の赤み・腫れ
軽い頭痛・だるさ
が出るのは、よくある副反応の範囲とされています。
【目安】
元気があり、水分も取れている
熱は高くても38〜39℃程度で、1〜2日で下がってきている
このような場合、多くは自宅で様子を見ながら、必要に応じて解熱剤を用いることで経過観察が可能なことが多いです(ただし乳児や基礎疾患のある方は、早めの受診が推奨されます)。
ただし、以下のような場合は副反応としても“強め”であり、受診を検討すべきです。
39℃を超える高熱が続く
ぐったりして反応が悪い
呼吸が速い・苦しそう
繰り返し吐く、ミルクや水分がほとんど取れない
接種後2〜3日目の発熱:副反応か感染症かの境目
接種後2〜3日目に発熱が出てきた場合、
副反応の延長の可能性
インフルエンザ本体や、風邪など他の感染症
の両方が考えられます。
【ポイント】
副反応由来であれば、この頃までには熱が下がり始めることが多い
逆に、熱が徐々に上がってくる・咳や鼻水、喉の痛み、腹痛・下痢など症状が増えてくる場合、感染症の可能性が高くなります
このタイミングで39℃前後の高熱が続く場合は、小児科・内科の受診を強く検討してください。
接種後4日以降の発熱:インフルエンザ本体や他の病気を疑う
接種から4日以上経ってからの発熱は、
通常のワクチン副反応だけで説明するのは難しく、
インフルエンザ本体や、その他の感染症(風邪、胃腸炎など)である可能性が高い
と考えられます。
この場合は、
流行状況(園・学校・職場でインフルが出ているか)
周囲の家族の症状
も参考にしつつ、早めに医療機関を受診することが勧められます。
副反応・インフル本体・その他の病気の違い【比較表】
症状・持続時間・流行状況から見る3つの違い
※以下はあくまで一般的な「目安」です。これだけで自己判断せず、迷ったら必ず医療機関にご相談ください。
| 項目 | ワクチン副反応 | インフルエンザ本体 | その他の感染症(風邪・胃腸炎など) |
|---|---|---|---|
| 発熱の開始時期 | 接種当日〜翌日が多い | 感染から1〜3日後。接種との関係は必ずしも一致しない | 病原体による |
| 熱の高さ | 37〜38℃台が多いが、まれに39℃ | 急な高熱(38〜40℃)が出やすい | 37〜39℃まで様々 |
| 熱の持続 | 1〜2日、長くても2〜3日程度 | 3〜5日ほど高熱が続くことが多い | 病気により様々 |
| その他の症状 | 軽い頭痛・だるさ、注射部位の腫れ | 強い関節痛・筋肉痛・頭痛、咳、喉の痛みなど | 咳・鼻水・腹痛・下痢・嘔吐など多様 |
| 周囲の流行 | あまり関係しない | 周囲でインフル流行時に多い | 同様に流行状況に左右される |
こんなときは迷わず受診・救急へ(チェックポイント)
以下のような症状がある場合は、インフルエンザかどうかに関わらず、早急な受診・救急受診を検討してください。
顔色が悪く、ぐったりして反応が弱い
呼吸が速い・浅い・苦しそう、ゼーゼーしている
何度も吐いてしまい、水分がほとんど取れない
けいれんを起こした、または意識がぼんやりしておかしい
39〜40℃の高熱が続き、解熱剤を使ってもすぐにまた上がる
生後3か月未満の赤ちゃんで38℃以上の発熱がある
自宅でできる対処法と注意したいNG行動
水分・食事・睡眠・室温の整え方
自宅で様子を見る場合は、次のポイントを意識します。
水分補給を最優先に
経口補水液やイオン飲料、お茶などを少しずつこまめに
子どもの場合、一口ずつでも良いので時間をかけて飲ませる
食事は無理に食べさせない
食欲がないときは、水分と糖分を優先
食べられるようになってから、おかゆ・うどんなど消化のよいものを
室温・湿度の調整
室温は20〜23℃程度を目安に、厚着をさせすぎない
乾燥しすぎないように適度な加湿を心がける
解熱剤を使うときの目安と注意点
解熱剤は、
「熱を完全に下げる」ためではなく、
「つらい症状を和らげて休ませる」ために使う薬
です。
一般的な目安としては、
ぐったりして眠れない
頭痛や関節痛が強くつらそう
といった場合に使用を検討します。
注意点(一般論)
必ず医師の指示や薬の説明書に従い、用量・用法を守る
子どもに大人用の市販薬を与えない
市販薬を自己判断で併用しない
解熱剤で一時的に下がっても、症状全体を見て受診の要否を判断する
乳幼児や持病のある方の場合は、自己判断で市販の解熱剤を使用せず、必ず医師・薬剤師に相談してください。
入浴・登園/登校・出勤の判断の目安
入浴
高熱のときは無理に入浴させず、汗を拭く程度にとどめる
熱が下がってきて、本人が元気なら短時間のシャワー程度は可能なことが多い
登園/登校・出勤
解熱後も、24時間程度は様子を見るのが一般的な目安
インフルエンザと診断された場合は、学校保健安全法などで出席停止期間の基準があります(医師の指示に従ってください)
受診・救急の判断フローチャート
年齢別・症状別の受診目安
特に小児科クリニックなどでは、
「38.5℃以上の発熱が1日以上続く場合」
「ぐったりしている場合」
は受診を勧めています。
おおまかな目安(一般論)
乳児(1歳未満)、基礎疾患あり、妊娠中
38℃以上の発熱が出た時点で、早めの受診を検討
1歳以上の子ども・成人
38.5℃以上の発熱が24時間以上続く
強い頭痛・関節痛・咳・呼吸苦などを伴う
解熱剤で一時的に下がっても、すぐに高熱がぶり返す
これらの場合は、ワクチン副反応の有無に関わらず、医療機関の受診をおすすめいたします。
夜間・休日に迷ったときの相談先
夜間や休日で受診先に迷う場合、
各自治体の「救急相談電話」
小児救急電話相談(#8000) など
への相談が可能な地域もあります。
電話で相談する際は、
予防接種を受けた日時とワクチンの種類
発熱が始まった日時と最高体温
他の症状(咳、嘔吐、けいれんなど)の有無
を伝えると、より適切なアドバイスが得られます。
よくある質問Q&A(知恵袋の疑問を整理)
Q. ワクチンでインフルエンザに「感染」することはありますか?
現在、日本で一般的に使われている不活化ワクチン(注射)は、ウイルスを不活化(増えない状態)にしたものを使っており、
それ自体でインフルエンザに感染・発病することはありません。
一方で、海外を含め一部では経鼻タイプの生ワクチンも存在しますが、日本で主流なのは不活化ワクチンです。いずれにしても、ワクチンの種類によって性質が異なるため、疑問があれば接種した医療機関に確認してください。
Q. 接種翌日に39℃出て、検査でインフル陽性でした。ワクチンのせいですか?
一般的には、
接種前の数日〜1週間のあいだにすでに感染しており、潜伏期間を経て発症した
と考えられるケースが多いです。
ワクチンのせいでインフルの検査が陽性になることは、注射の不活化ワクチンでは通常ありません。ただし、詳細は検査方法やワクチンの種類にもよるため、医師からの説明をよく聞き、不明点はその場で質問することが大切です。
Q. 一度高熱の副反応が出ました。来年以降も接種して大丈夫ですか?
過去にインフルエンザワクチン接種後の副反応で、
高熱が続いた
強いアレルギー反応が出た
などの経験がある場合、次回接種前に必ず医師に相談してください。
接種歴と副反応の内容
どれくらいの期間続いたか
などを詳しく伝えたうえで、
ワクチンを変更する
接種を見合わせる
といった判断を含め、医師と一緒に検討することになります。
Q. すでにインフルにかかったあとでも、ワクチンを打つ意味はありますか?
インフルエンザウイルスには複数の型があり、
1シーズンに異なる型が流行すること
一度かかった型と、今後流行する型が異なる可能性があること
から、インフルエンザに一度かかった人でもワクチン接種に一定の意義があるとされています。
ただし、罹患直後は体力も落ちているため、
症状が完全に回復してから
医師と相談のうえでタイミングを決める
ことが重要です。
リスク・注意点と公的な救済制度
まれだが重い副反応について
インフルエンザワクチンは、多くの人にとって安全性の高い予防接種ですが、まれに重い副反応が起こる可能性も報告されています。
例としては、
アナフィラキシー(急性の重いアレルギー反応)
けいれん
ショックなど
が挙げられます。
接種後しばらくは、
顔色や呼吸の様子
皮膚の発疹、強いかゆみ
などに注意し、異常を感じた場合はすぐに医師の診察を受けてください。
予防接種健康被害救済制度の概要
予防接種が原因で、重い健康被害が生じたと認められた場合、
「予防接種健康被害救済制度」 による医療費・障害年金などの公的な補償が受けられる仕組みがあります。
制度の対象や申請方法などの詳細は、
厚生労働省
お住まいの自治体(市区町村)
の公式情報をご確認ください。
まとめ:今日の行動を決めるためのチェックリスト
最後に、「インフルエンザ予防接種をしたのに高熱が出た」ときに確認したいポイントをチェックリストにまとめます。
今すぐ受診・救急を検討すべきチェックリスト
顔色が悪く、ぐったりして呼びかけに反応が弱い
呼吸が速い・苦しそう・ゼーゼーしている
何度も吐いてしまい、水分がほとんど取れない
けいれんを起こした/意識がはっきりしない
39〜40℃の高熱が2日以上続いている
生後3か月未満で38℃以上の発熱がある
保護者やご本人が「明らかにいつもと違う」と強く感じる
ひとつでも当てはまる場合は、時間帯にかかわらず受診・救急の相談をおすすめいたします。
自宅で様子を見るときの確認ポイント
接種した日・ワクチンの種類をメモしている
発熱が始まった日・時間、最高体温を記録している
水分が取れており、尿が半日以上まったく出ていないことはない
解熱剤の使用状況(いつ・何mg)を記録している
元気な時間帯もあり、表情や反応が普段と大きく変わっていない
不安なときに相談できる医療機関・電話相談窓口を把握している
インフルエンザ予防接種後の高熱は、
多くは一時的な副反応の範囲におさまる一方で、
インフルエンザ本体やその他の病気が隠れている場合もある
という、判断が難しい場面です。
本記事の内容を参考に、
接種からのタイミング
熱の高さや持続時間
全身状態
を整理しつつ、最終的な判断は必ず医師の診察にゆだねるようにしてください。