ゲームの告知やストア公開が迫っているのに、キャッチコピーが決まらず手が止まってしまう場面は珍しくありません。説明すると長くなり、短くすると内容が薄く見え、さらに「どこかで見た言い回し」になってしまう不安も出やすいものです。特にインディー開発や小規模チームでは、開発・調整・告知素材づくりが同時進行になり、コピーに割ける時間が限られます。その結果、最後の最後で「一言が決まらない」状態になり、公開や告知の判断が遅れがちです。
本記事では、ゲームの魅力を「体験の核」と「差別化要素」に分けて整理し、ストア・PV・SNSなど用途に合わせて短い一言へ圧縮する手順を、具体的な作業として提示いたします。読了後には、用途別に使える候補を10案以上作り、最後に絞り込んで「これで出せる」と納得できる状態を目指します。対象は、個人開発者や小規模チームで告知文を用意したい方、または広報素材の短文に悩む担当者の方です。コピーが上手いかどうかより、材料の集め方と選び方を整えることが目的です。
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ゲームのキャッチコピーが必要になる場面
キャッチコピーは「短くて格好いい言葉」そのものではなく、読者や視聴者が次の行動に進むための“入口”として機能します。入口の形は、掲載場所や接触状況によって変わります。場面に応じて役割を定義できると、必要な情報の優先順位が明確になり、言葉が自然と短くなります。逆に、場面の役割が曖昧なまま「とにかく短い一言」を求めると、何を約束する言葉なのかが定まらず、決め手に欠けた表現になりやすいです。
まず用途別に「そのコピーで何を起こしたいのか」を言語化することを推奨いたします。用途を分けるだけで、同じゲームでも必要なコピーが複数になる理由が理解でき、結果として作業が進みやすくなります。
ストアでは一文で購入理由を作る
ストア(Steam、スマホアプリストア等)では、初見のユーザーは短時間で「自分向けかどうか」を判断します。サムネイル、タイトル、短い説明、タグ、レビューなど複数の要素が並ぶ中で、キャッチコピーは“読むきっかけ”と“買う理由の入口”を同時に担うことがあります。
ストア向けの一文キャッチで重要なのは、以下のどれか一つを明確にすることです。
ジャンルの方向性:何系のゲームかが分かる
体験の快感:遊んだときの気持ちよさが伝わる
差別化の一点:他と違う理由が見える
想定プレイ状況:いつ・どんな気分で遊ぶかが想像できる
一文で全部を入れる必要はありません。むしろ入れすぎると、文が長くなり、印象が薄まります。ストアでは「一文キャッチ」と「補足文」の二段構えが有効です。つまり、一文キャッチで“入口”を作り、補足文で“納得”を補います。
実務上は次のように設計すると迷いにくくなります。
一文キャッチ:まず視線を止める(短く、言い切る)
補足の一段落:一文キャッチを具体化し、誤解を減らす
箇条書き:差別化要素を2〜3個に限定して提示する
この設計により、一文キャッチの勢いを保ちつつ、「薄い」「何のゲームか分からない」という問題を補足で解消できます。
PVと広告では感情を先に動かす
PV(プロモーション動画)や広告バナーは、情報提供というよりも、まず感情を動かすことが目的になります。動画は時間が流れ、バナーはスクロールの中で一瞬しか見られません。そこで必要なのは、仕様の説明よりも「気になる」「遊びたい」という初期衝動です。
PVや広告向けのコピーでは、次の二つを優先して整えると効果が出やすいです。
感情の方向:興奮、緊張、癒し、達成、恐怖、切なさ等
体験の瞬間:プレイ中の一番気持ちいい瞬間、象徴的な行動
例えば、アクションなら「避ける」「叩き込む」「切り裂く」などの動詞が映像と結びつきます。パズルなら「ひらめく」「崩す」「逆転する」などが快感の瞬間を表せます。RPGなら「旅立つ」「選び取る」「抗う」などが物語性を作れます。
PVのテロップは、文章として美しいより「一瞬で読める」が重要です。そのため、短く言い切り、映像が伝える情報と重複する語を減らすと、言葉の密度が上がります。
SNSでは一回で意味が取れる短さが要る
SNSでは、閲覧者はスクロールしながら大量の投稿を処理します。読み返しが起きにくい前提があるため、キャッチコピーには「一回で意味が取れる」ことが強く求められます。格好よさよりも、理解の速さが優先される場面です。
SNS向けでは、次の条件を満たすと反応が安定しやすいです。
主語と動詞がすぐ分かる(誰が何をするか)
固有語彙が一つ入る(世界観や独自性の目印)
ジャンル方向が伝わる(ホラー、対戦、育成など)
続きを見たくなる引っ掛かりがある(疑問、対比、数字等)
また、SNSでは「投稿の冒頭」が特に重要です。同じコピーでも、冒頭に置くか、2行目に置くかで読まれ方が変わります。コピーは“素材”として作り、投稿文の構造(冒頭→補足→リンク)に合わせて配置する運用を前提にすると、作り直しが減ります。
ゲームのキャッチコピーの材料を集める方法
キャッチコピーが決まらない原因は、センス不足よりも材料不足であることが多いです。材料とは「何を言うか」の元になる情報です。材料が揃えば、型に当てはめて複数案を作れます。材料が揃っていないと、どの型を使っても中身が薄くなり、既視感が増えます。
材料収集を次の順番で行うことを推奨いたします。順番の意図は「先に判断基準を作り、後の作業を楽にする」点にあります。
ターゲットを一人に絞る
「誰にでも刺さる」は、実際には誰にも刺さりにくくなります。理由は単純で、言葉は相手の状況や欲求に合わせて初めて強くなるためです。ターゲットが広いほど、言葉は抽象化し、結果的に印象が弱くなります。
ここでの「一人に絞る」は、実在の人物でなくても構いません。重要なのは、次のような状況が具体的に想像できることです。
その人は、どんな夜にこのゲームを遊びたくなりますか
直近で遊んだゲームの何に不満がありますか
上手い下手より、何を感じたい人ですか
クリア後に、どんな気持ちになっていてほしいですか
その人が“避けたい面倒”は何ですか(時間、難しさ、競争等)
回答は短文で十分です。例えば「仕事終わりに20分だけ、短い達成感がほしい人」「対戦の緊張が好きだが、長時間の練習はしたくない人」など、状況が見えるほど良いです。ターゲットが固まると、コピーに入れるべき語彙(時間、手軽さ、緊張、癒し等)が自然に決まってきます。
体験ループを一行にする
ゲームの価値は「体験の繰り返し」にあります。そこで、体験ループを一行で表現します。体験ループが書けると、キャッチコピーの中心(何を約束するか)が定まり、余計な説明が減ります。
体験ループは次の型で整理できます。
行動:プレイヤーは何をするか
快感:何が気持ちいいか(達成、緊張、癒し、ひらめき等)
成長:何が変化するか(上達、解放、物語、収集等)
雛形は以下です。
「プレイヤーは〇〇をして、△△の快感を得ながら、□□が積み上がる」
例を挙げると、
「配置して、連鎖の快感を得ながら、盤面支配が上手くなる」
「潜入して、息を潜める緊張を味わいながら、攻略ルートを掴む」
「選び取って、物語の納得を得ながら、結末が分岐する」
といった形になります。
この一行を作る段階で「何が快感か」が曖昧だと、コピーも曖昧になります。快感は抽象語(楽しい、面白い)ではなく、体感に近い語(ひらめく、震える、逆転する、救われる)に寄せると後工程が楽になります。
差別化要素を三つに圧縮する
次に「他作品と違う点」を三つに絞ります。ここで重要なのは“特徴の列挙”ではなく“差別化”にすることです。差別化とは、ターゲットが価値と感じる一点が中心にあり、それを支える要素がある状態です。
差別化要素は、次の観点で洗い出すと整理しやすいです。
仕組み:独自の操作、ルール、AI、手触り
体験:緊張の種類、達成感の種類、没入の形
制約:時間制限、資源制限、情報制限、選択の重さ
表現:音、色、UI、テキスト、演出テンポ
文脈:どの状況で遊ぶと刺さるか(短時間、配信向き等)
ここで三つに絞る理由は、コピーに入れられる要素が限られるためです。三つに絞れない場合は、次を疑ってください。
ターゲットが広すぎて、何を価値とするかが決まっていない
“特徴”が多いだけで、中心の強みが立っていない
機能や要素が多いが、快感の一点が言語化できていない
差別化は、要素の多さではなく「一点の強さ」で出ます。三つに絞る過程は、その一点を見つけるための作業です。
禁止事項を先に決める
締切前に起きやすい事故は「言い切りすぎ」「比較しすぎ」「固有要素の流用」です。キャッチコピーは短い分、誤解を生みやすく、言い過ぎるとリスクが増えます。そこで、先に“やらないこと”を決めておくと、作り直しが減ります。
制作段階で特に意識したいのは次の点です。
根拠なく最上級を使わない(世界一、史上最高、完全等)
他社の商標やシリーズ名を、比較目的で安易に入れない
断定が仕様変更で崩れないようにする(必ず、絶対等を多用しない)
ジャンル誤認を招く語彙を避ける(ホラーではないのに恐怖を煽り過ぎる等)
既存作品の象徴的な言い回しを、そのまま模倣しない
本記事は一般論としての注意喚起に留めますが、広告出稿や大規模展開がある場合は、法務・運用の観点で社内外のチェック体制を推奨いたします。少なくとも制作段階では「誤解を避ける」「根拠のない断定を避ける」を基本にすると安全です。
刺さるゲームキャッチコピーの型
材料が揃ったら、型に当てはめて候補を量産します。ここで大切なのは「一発で決めようとしない」ことです。最初から完璧な一文を狙うと、検討が止まります。型で量産し、最後に絞り込むほうが、結果的に速く決まります。
最低でも8案(型の数)を作り、さらに有望な型で追加して10案以上にすることを推奨いたします。10案あると、比較の軸が見え、選びやすくなります。
対比で価値を際立たせる
対比は「何が違うか」を一瞬で伝えます。意外性があるほど記憶に残ります。雛形は以下です。
「〇〇なのに、△△」
「優しいのに、手ごわい」
「静かなのに、息が詰まる」
作り方は簡単で、差別化要素の中から“両立しにくい二つ”を選びます。例えば「短時間×濃い達成感」「可愛い×残酷」「シンプル×奥深い」などです。対比が成立すると、一文が短くても情報密度が高くなります。
注意点として、対比は誤解も生みやすいです。対比の片側が誇張になっていないか、ストアの補足文で補えるかをセットで考えると安全です。
できるようになるを約束する
プレイ後の変化を約束すると、ベネフィットが明確になります。雛形は以下です。
「あなたは〇〇できるようになる」
「〇〇を、思い通りに」
「△△を、乗り越えられる」
この型は、上達や習熟が気持ちよいゲーム(アクション、音ゲー、戦略、ローグライト等)と相性が良いです。一方で、約束が強すぎると断定リスクが増えます。その場合は、次の工夫が有効です。
「〇〇を目指す」「〇〇に挑む」のように目標表現にする
「〇〇が分かる」「〇〇が見える」のように理解に寄せる
条件を添える(例:短時間でも、少しずつ等)
約束の型は、ターゲットが求める変化を言語化できているほど強くなります。
世界観を一語で刺す
世界観型は、雰囲気で惹きつけたいときに強い型です。雛形は以下です。
「〇〇の夜」
「△△の都市」
「□□の王国」
「××の記憶」
ポイントは、一般名詞だけで組み立てないことです。一般名詞(魔法、冒険、戦い等)だけだと既視感が増えます。作品固有の要素(地名、組織名、職能名、呪いの名前等)を一つ混ぜるだけで、急に“その作品の言葉”になります。
世界観語彙は、ストアのタグや説明文にも波及します。コピーで使った固有語彙を、説明文やPV内でも再利用すると、ブランドの一貫性が出ます。
疑問形で続きが気になる形にする
疑問形は「続きを知りたい」を作れます。雛形は以下です。
「あなたは〇〇を守れるか」
「△△の正体は何か」
「□□を選べるか」
疑問形のコツは、問いが作品の中核テーマと一致していることです。例えば、推理やミステリーなら「正体は何か」が自然です。サバイバルなら「生き残れるか」が合います。選択肢が重要なら「選べるか」が効きます。
注意点として、疑問形は“答えがない”と不満が残りやすいです。作品が問いに応える構造になっているかを確認し、問いを投げっぱなしにしない設計が望ましいです。
数字で具体に寄せる
数字は具体性を出し、理解を速くします。雛形は以下です。
「〇分で一戦」
「△△人で裏切り」
「□□通りの結末」
「××手で盤面が変わる」
数字の強みは、一瞬で特徴が伝わる点です。特にSNSや広告で効きます。一方で、数字は仕様変更に弱いという欠点があります。開発中で数が変わる場合は、次のように弱める判断も有効です。
「短時間で一戦」「いくつもの結末」「多数のビルド」などに置き換える
数字を“目安”として扱い、ストア補足で調整する
数字の型は、開発状況と運用方針に合わせて選んでください。
誓いの宣言で引っ張る
宣言は物語の推進力を作ります。雛形は以下です。
「私は〇〇する」
「最後まで△△を貫く」
「□□を取り戻す」
この型は、物語性が強い作品、主人公の動機が明確な作品と相性が良いです。宣言は一人称にすると強くなりますが、広告やストアの文脈では「あなたは〇〇する」に寄せても構いません。
宣言型は、プレイヤーが主人公と一体化するタイプのゲームで特に効果があります。逆に、観察者視点や群像劇の場合は、宣言の主語を工夫して、誤解を避ける必要があります。
逆説で意外性を作る
逆説は、常識と逆の体験を提示することで記憶に残します。雛形は以下です。
「負けるほど強くなる」
「逃げるほど勝ちに近づく」
「壊すほど整う」
この型は、ルールが独特なゲームに向きます。例えば「攻撃しないほうが有利」「情報を捨てるほど見える」といった体験がある場合、逆説は非常に強いです。
注意点として、逆説は“理解できない”と離脱されます。逆説を使う場合は、補足で「なぜそうなるのか」を一行で添えると、誤解が減ります。
二項でリズムを作る
二項(対句・反復)は読みやすく、広告にも載せやすい型です。雛形は以下です。
「〇〇して、△△する」
「△△より、□□」
「××か、□□か」
この型は、短い言葉でもリズムが出るため、PVテロップやポスターに向きます。完成度を上げるには音読が有効です。目で見て良くても、口に出すと引っかかる場合があります。音読で息継ぎが自然か、言いにくい連続音がないかを確認すると、プロっぽさが増します。
用途別に最適化するコツ
候補を量産したら、次は用途別の最適化です。ここで重要なのは「同じコピーを全用途に無理やり使わない」ことです。もちろん共通の核は必要ですが、用途で役割が違う以上、語彙の優先順位も変わります。核を残しつつ言い換えることが、ブランドの統一感と成果の両立につながります。
文字数の目安と情報の優先順位
文字数は媒体で目安が異なりますが、先に「役割」を決めてから文字数を合わせるほうが安定します。役割が絞れていれば、自然と短くなるためです。
ストアの一文:購入理由の入口(ジャンル方向+強み一点)
PVテロップ:感情の点火(世界観語彙+強い動詞)
SNS冒頭:スクロール停止(対比、疑問、数字などの引っ掛かり)
ポスター:記憶に残す(看板になる言葉、余韻)
「短くする」より「何を起こすかを絞る」ほうが結果的に短くなります。短文化が難しい場合は、役割が複数混ざっていないかを疑ってください。
ストア用の短文と長文をつなぐ
ストアは“一文だけ”で完結させる必要はありません。一文キャッチは入口であり、補足文で納得させる設計が現実的です。次の手順で短文と長文を連携させることを推奨いたします。
一文キャッチを決める(強み一点で言い切る)
約束しているベネフィットを一行で具体化する
体験ループを一行で足す(行動→快感→成長)
差別化要素を2つだけ箇条書きで添える
この構造にすると、コピーの勢いを維持しながら、誤解を減らせます。特に、対比・逆説・疑問形は誤解が出やすい型のため、補足文で支えると安全です。
PV用のテロップと言い回し
PVは音と映像があるため、文章の“情報量”より“視認性”が重要になります。テロップの完成度を上げる具体策は次の通りです。
一画面の情報を減らす:一文を二つに割る
漢字の密度を調整する:ひらがなを混ぜて読みやすくする
映像と重複する語を削る:映像が「戦闘」を見せるなら「戦う」を省く等
動詞を強くする:「する」より「奪う」「暴く」「潜る」など
音読する:ナレーションの有無に合わせ、息継ぎが自然か確認する
PVのテロップは、視聴環境(スマホ、ミュート再生等)にも左右されます。ミュートでも伝わる言葉、音があるとより強い言葉、両方を意識して複数案を用意すると運用しやすくなります。
ゲームキャッチコピーの推敲とチェック
最後に、推敲とチェックで品質を上げます。ここでの目的は、言葉を美しくするよりも「既視感」「誤解」「リスク」を減らし、意図通りに伝わる確率を上げることです。特に短文は、わずかな語彙の違いで印象が大きく変わります。チェック項目を持つだけで、完成度が安定します。
既視感を減らす置き換えの考え方
既視感の多くは、抽象語の多用で起きます。抽象語は便利ですが、誰の作品でも使えるため、そのままでは差別化になりません。置き換えの基本は次の3点です。
抽象名詞を固有名詞へ:冒険 → 砂漠都市の逃避行
弱い動詞を強い動詞へ:遊ぶ → 奪い合う、解き明かす、潜り抜ける
形容詞を体験へ:楽しい → 1手で盤面がひっくり返る
さらに、既視感を減らす実用的な方法として「禁句リスト」を作るのも有効です。例えば、自分のジャンルでありがちな語(爽快、究極、伝説、壮大等)を一度禁止し、別の言い方で表現してみると、作品固有の言葉が見えやすくなります。禁止は永久ではなく、最終的に戻しても構いません。まずは“抜け道”を探すことが目的です。
誇大表現と権利の注意
短文の広告表現は、誤認リスクが高い領域です。本記事は一般論として、制作段階での事故を減らす観点からチェックリストを提示いたします。
最上級や断定が根拠なしで入っていない
比較表現が過度で、他社や他作品を不必要に想起させていない
「無料」「放置で勝てる」など、誤解を生みやすい断定がない
ジャンル誤認を招く表現になっていない
他作品の象徴的なフレーズや固有の言い回しを、安易に流用していない
仕様が変わる可能性がある数値を、断定で書いていない
特に開発中は、仕様変更が起きやすいです。仕様変更があり得る部分は、断定を弱めたり、補足文で調整できる設計にしておくと、安全に運用できます。大規模出稿や契約が絡む場合は、最終的に専門家の確認を前提にしてください。
第三者テストの手順
作り手は作品を知りすぎているため、短文の誤解に気づきにくいです。そこで、簡易の第三者テストを行います。大掛かりなユーザーテストではなく、短文の伝わり方だけを見る「5秒テスト」が有効です。
手順は次の通りです。
コピーを見せる時間は5秒
「何のゲームだと思ったか」を一言で答えてもらう
「面白そうだと思った理由」を一言で答えてもらう
誤解が出た単語をメモし、固有語彙へ差し替える
必要なら補足文やタグで誤解を回収する
このテストを2〜3人に回すだけでも、「伝わると思っていたが伝わっていない」点が顕在化します。修正は表現力より、誤解の原因になった単語を置き換える作業になります。短文の推敲は、センスというより検査に近い作業として扱うと安定します。
事例から学ぶゲームキャッチコピーの盗み方
事例は非常に有効ですが、「真似る」と似てしまいます。安全かつ再現性が高いのは「分解して置き換える」方法です。事例は完成形ではなく、型と要素の組み合わせとして扱います。すると、事例は無尽蔵のテンプレになります。
有名コピーを要素に分ける観点
事例を見たら、次の観点で分解してください。
誰に向けて言っているか(ターゲット像)
何を約束しているか(ベネフィット)
どんな感情を動かすか(興奮、緊張、癒し等)
体験の核は何か(体験ループの中心)
固有語彙はどれか(その作品だけの言葉)
型はどれか(対比、疑問、宣言、数字等)
例えば、格好いい言葉に見えても、実際には「ターゲットに刺さる不満を突く」「快感の瞬間を動詞で言う」「固有語彙で世界観を固定する」など、機能の集合になっています。この機能を見抜けると、自作に転用できます。
自作テンプレに差し替える手順
最後に、実際に候補を10案出し、用途別に使える形へ整える手順をまとめます。ここまでの内容を作業として実行するためのチェックリストとしてご利用ください。
ターゲット一人を文章で固定する(状況が見える短文で)
体験ループを一行にする(行動→快感→成長)
差別化要素を三つに絞る(中心の一点を立てる)
8つの型を並べ、各型で1案ずつ作る(最低8案)
有望な型で2案追加し、合計10案以上にする
用途別に言い換える(ストア、PV、SNSの役割に合わせる)
チェックリストで事故を潰す(誇大、誤認、既視感、権利)
5秒テストで伝わり方を確認する(誤解の原因単語を修正)
最終的に3案へ絞る(用途別に1案ずつでも良い)
運用しながら改善する(反応やCVに合わせて差し替える)
この流れで作ると、「思いつかない」から「選べない」状態へ移ります。「選べない」は前進です。候補があるからこそ、用途に合わせた最適化や、第三者テストによる改善が可能になります。最終的には「この一言なら、作品の強みを守りながら伝えられる」という納得感で決め切れるはずです。
FAQ
キャッチコピーとキャッチフレーズは何が違いますか
一般的には似た意味で使われることが多く、厳密に分けなくても運用は可能です。ただし、チームで制作する場合は用語の混乱が成果物の混乱に直結します。社内では、例えば「ストアの一文をキャッチコピー」「PV冒頭の短い言葉をタグライン」「SNS冒頭の引っ掛かりをフック」など、役割で言葉を定義しておくと、修正指示が通りやすくなります。重要なのは名称よりも役割の統一です。
既存作品に似てしまうときはどうすればよいですか
似てしまう原因の多くは、ジャンル共通語彙だけで組み立てている点にあります。対策としては、次の順番で戻るのが有効です。
体験ループの「快感」を具体化する(抽象語を避ける)
差別化要素の中心を一点に絞る(特徴の列挙をやめる)
固有語彙を一つ入れる(地名、組織名、仕組みの名称等)
弱い動詞を強い動詞へ置換する(行動が見える言葉へ)
また、事例を見すぎて似る場合は、一定時間事例から離れ、素材(体験ループと差別化)だけで型を回すと、自然と自作の言葉に戻りやすいです。
ストア用は何文字くらいが目安ですか
媒体差があるため一律には言えませんが、運用としては「短文を複数案用意し、実際の見え方で調整する」方針が安全です。ストアの一文は入口であり、情報は補足文で支える設計が現実的です。まずは短文を3案程度作り、見た目と誤解の有無を確認しながら詰めてください。文字数は結果として整います。
誇大表現や権利侵害が不安です
根拠のない断定や最上級を避け、他社の商標・固有名詞の使用には慎重であるべきです。特に「比較」を匂わせる表現は誤解を生みやすく、意図せずリスクを増やすことがあります。本記事は一般論としての注意喚起に留めますが、出稿規模が大きい場合や契約が絡む場合は、社内外の確認体制を前提に進めてください。制作段階では、断定を弱める・補足で回収できる設計にするだけでも事故が減ります。
まとめ
キャッチコピーは「短く格好いい」より、用途の役割を先に決めると作りやすくなります
体験ループを一行化し、差別化要素を三つに絞ると材料が揃います
8つの型に材料を差し込むと、短時間で10案以上を作れます
最後はチェックリストと5秒テストで、伝わらなさと事故を潰してください
次の行動としては、本記事の手順でまず10案作り、用途別に3案へ絞ってストア・PV・SNSへ配置してください。反応(クリック、ウィッシュリスト、フォロー、滞在など)を見ながら差し替えることで、コピーはさらに強くなります。なお、仕様変更や表現規制、法令解釈の運用は将来的に変化し得るため、公開前の最終確認と、公開後の運用改善を継続的に行うことを推奨いたします。