「概念」という言葉は、企画書やレポート、会議の場などで頻繁に使われます。しかし、「便利そうだから」「なんとなくそれっぽいから」と使ってしまい、後から「結局どういう意味なのか分からない」「話が抽象的だ」と指摘された経験がある方も多いのではないでしょうか。
概念は、正しく使えば思考や議論を整理する強力な道具になりますが、使い方を誤ると、かえって説明を分かりにくくしてしまいます。特に、例文や具体的な使い分けを知らないまま使うと、「観念」「既成概念」「コンセプト」などとの違いが曖昧になり、文章全体の説得力を下げてしまいがちです。
本記事では、「概念」の意味を短く分かりやすく整理したうえで、日常・ビジネス・レポートでそのまま使える例文を豊富に紹介します。さらに、混同しやすい言葉との違いや、概念を“伝わる文章”に変える書き方のコツ、誤用しやすい表現の注意点まで詳しく解説します。
「概念を使っても空回りしない」「抽象的と言われない文章を書けるようになりたい」という方に向けて、今日から実践できる知識をまとめています。
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概念の意味を短くつかむ
辞書的な意味とポイント
「概念」は、ざっくり言えば物事の共通点をまとめた“頭の中の枠”です。たくさんの具体例を見たり経験したりしたときに、「同じ仲間として束ねる」ために作るラベルのようなものだと考えると理解しやすくなります。
もう少し丁寧に言うと、概念には次の二つの側面があります。
具体例をまとめるための枠
例:犬・猫・鳥をまとめて「ペット」という枠で捉える議論や説明で“意味の範囲”を固定する枠
例:「品質」の範囲を、性能だけでなくサポートや納期まで含める、と定義する
ここで重要なのは、「概念=抽象的な言葉」という理解で止めないことです。概念は抽象的である一方、“具体例に支えられている”のが本来の姿です。具体例が出せない概念は、他者と共有しにくく、文章の説得力も落ちやすくなります。
概念を扱うときのポイントは次の3つです。
具体例が出せるか(例が出ないと共有しづらい)
共通点を一言で言えるか(枠が曖昧だと説明が伸びる)
含む・含まないを切り分けられるか(議論の土台が揃う)
この3点が揃うと、「概念」という言葉が“便利な逃げ”ではなく、“整理の道具”として機能し始めます。
概念が必要になる場面
「概念」が活躍するのは、次のような場面です。
事例や情報が多く、整理しないと全体像がつかめないとき
同じ言葉を使っているのに、相手と自分で指している範囲が違い、話が噛み合わないとき
提案や研究で、言葉の意味を固定してから議論したい、つまり前提条件を揃えたいとき
チーム内で判断軸がバラバラで、共通の軸を作る必要があるとき
たとえば会議で「顧客体験が重要です」と言った瞬間、人によって想像する範囲は変わります。Webサイトの使いやすさだけを思い浮かべる人もいれば、購入後のサポートまで含めて考える人もいます。そこで、「顧客体験という概念を、購入前・購入中・購入後まで含める」と定義すると、議論の前提が揃い、話が進みやすくなります。
逆に、概念が曖昧なままだと次の問題が起きます。
反論されているのに論点がずれる(相手は別の範囲を見ている)
施策が散らばる(何を含む概念なのか決まっていない)
“それっぽい言葉”で終わる(具体策につながらない)
つまり「概念」は、議論や文章の交通整理をするための道具です。文章で「概念」を使うなら、交通整理として機能しているかを常に意識すると失敗が減ります。
概念の例文を用途別に使い分ける
日常で使える概念の例文
日常会話では、堅い定義を前面に出すと不自然になりやすいため、「捉え方」「考え方」「イメージ」に寄せて使うと自然です。
日常例文
その話って、そもそも「幸せ」という概念をどう考えるかで答えが変わりそうだね。
子どもにとっては「お金」の概念がまだつかみにくいこともある。
「礼儀」の概念は、世代や文化で少しずつ違う気がする。
友だちの間でも「距離感」という概念が合わないとしんどい。
日常で使いやすいテンプレ
Aという概念をどう捉えるかで、話が変わる
Aの概念が人によって違う
Aという概念がまだ共有されていない
Aという概念を少し広めに(狭めに)捉える
ポイントは、日常では「概念」という単語を連発しないことです。1回出すだけでも十分伝わります。繰り返したいときは「捉え方」などに言い換えると読みやすくなります。
ビジネスで使える概念の例文
ビジネス文書では、概念は「定義」「範囲の明示」「共通認識の形成」に強みがあります。特に、企画書・提案書・要件定義・KPI設計などで威力を発揮します。
ビジネス例文(定義)
本資料では「顧客」という概念を、購入者だけでなく意思決定者・利用者を含むものとして扱います。
ここでの「品質」という概念は、性能に加えて納期・サポート対応も含みます。
「コスト削減」という概念を、単なる値下げではなく業務プロセス全体の最適化として再定義します。
ビジネス例文(前提合わせ)
「スピード」の概念が部門で異なるため、まずは納期とリードタイムを分けて整理しましょう。
「成功」の概念が曖昧なまま進むと評価が割れるので、指標を先に確定します。
「優先度」の概念を、緊急度と重要度の二軸で統一します。
ビジネス例文(議論の整理)
議論が噛み合わない原因は、「対象範囲」という概念のズレにあります。
現状は「ユーザー」の概念が広すぎるため、施策が分散しています。
「価値」の概念が共有できれば、施策の取捨選択が早くなります。
差し替え可能なテンプレ(そのまま使える型)
本資料ではAという概念を、Bを含みCは含まないものとして定義します。
Aの概念が部門で異なるため、まずDの観点で統一します。
Aという概念を見直すことで、Eの打ち手が成立します。
Aの概念が曖昧なため、評価指標をFに揃えます。
「概念」をビジネスで使う最大のコツは、必ず“境界線”をセットで置くことです。「何を含むか/含まないか」「範囲はどこまでか」を一文でも添えると、伝わり方が大きく変わります。
レポートや論文で使える概念の例文
レポート・論文では、概念はさらに重要になります。なぜなら、研究や考察では「同じ言葉でも、研究によって意味の射程が違う」ことがよくあるためです。そこで、概念の定義を先に置くことで、議論の土台を固定します。
学術寄り例文(定義)
本稿では「学習」という概念を、知識獲得に加えて行動変容まで含むものとして定義する。
「幸福」という概念は多義的であるため、本研究では主観的幸福感に限定して扱う。
「リスク」の概念を期待損失として扱い、確率と影響度で評価する。
学術寄り例文(先行研究との関係)
先行研究で用いられるA概念を踏まえ、本稿ではBの観点を加えて再構成する。
A概念の定義は研究領域により異なるため、以下では本研究の射程を明示する。
A概念を測定可能にするため、指標としてBを用いる。
差し替え可能なテンプレ
本稿ではAという概念を、Bとして定義する。
A概念は多義的であるため、本稿ではCに限定する。
A概念の射程はDであり、Eは対象外とする。
A概念を測定可能にするため、指標としてFを用いる。
論文では特に、「概念を定義する→射程を決める→測定や議論の枠に落とす」という流れが重要です。ここが曖昧だと、後半でどれだけ丁寧に書いても「その言葉の意味が揺れている」と読者に感じられてしまいます。
概念と混同しやすい言葉の違い
観念と概念の違い
「観念」と「概念」は似て見えますが、ニュアンスが異なります。混乱しやすいので、最低限の見分け方を押さえると安定します。
概念:具体例を束ねる枠、共有・定義・整理のためのラベル
観念:心の中のイメージ、主観的な捉え方、思い込み寄り
判断のコツ
「定義して共有したい」「範囲を揃えたい」→ 概念
「その人の思い込み」「縛りになっている考え」→ 観念
例
概念:このプロジェクトでは「成功」の概念を指標で定義する。
観念:失敗してはいけないという観念にとらわれると挑戦できない。
文章で迷う場合は、「それは他者と共有できる枠か、それとも個人の捉え方か」で分けると選びやすくなります。
既成概念と概念の違い
「既成概念」は、「すでに出来上がっていて一般的に受け入れられている枠」です。概念が中立的な“枠”だとすると、既成概念は「社会の中で固まった枠」に寄ります。
概念:枠そのもの(中立)
既成概念:社会的に固まった枠(見直し・打破の文脈が多い)
例
概念:本資料では「顧客体験」という概念を購入後まで含む。
既成概念:高級品は高価であるべきという既成概念を崩す。
ビジネス文脈では、「既成概念を壊す」「既成概念にとらわれない」という表現が定番ですが、単に「概念」と書くと意図が弱くなります。社会的に固まった枠を指したいなら「既成概念」の方が狙いが伝わります。
コンセプトと概念の違い
「コンセプト」は、企画や商品、ブランドの“軸”として使われることが多く、方向性や一貫性を決める言葉です。一方で「概念」は整理や定義の枠です。似て見えますが、役割が違います。
概念:理解・議論・分類のための枠(定義して揃える)
コンセプト:打ち出し・設計の軸(らしさや方針を決める)
例
概念:このサービスで扱う「安心」の概念を、トラブル時対応まで含めて定義する。
コンセプト:このサービスのコンセプトは「初めてでも迷わない安心」だ。
「概念」をコンセプトの意味で使うと、企画意図がぼやける場合があります。逆に、概念を定義すべき場面でコンセプトを出すと、議論が“スローガン”に寄りすぎることがあります。目的が「整理」なのか「打ち出し」なのかで使い分けると失敗しにくくなります。
概念的の意味と使い方
「概念的」は、細部よりも枠組みや全体像に寄せた説明を指します。ただし、褒め言葉にも不満にもなり得ます。
褒めの概念的:全体像が整理されている、枠組みが美しい
不満の概念的:抽象的で具体策がない、現場に落ちていない
例(褒め)
まず概念的な枠組みがしっかりしているので、詳細を詰めやすい。
例(不満)
その説明は概念的で分かるけれど、具体的に何をやるかが見えない。
安全な使い方は、「概念的な全体像」と言ったら、次に必ず「具体例」「手順」「指標」のいずれかで補うことです。概念的で止めない、という意識だけで文章の評価が大きく変わります。
概念をうまく説明する書き方
具体から共通点を抜き出す手順
概念を“伝わる文章”にするには、順番が重要です。おすすめは、次の3ステップです。
具体例を2〜3個出す
具体例の共通点を抜き出す
共通点を「Aという概念」として一言で置く
たとえば「サブスク」という概念を説明する場合を考えます。
具体例:動画配信、音楽配信、ソフトの月額利用
共通点:一定額を払うことで一定期間の利用権を得る
一言定義:サブスクとは「定額で利用権を得る」概念である
この形で書くと、読者は「なるほど、具体例がこうで、共通点がこれで、だからそう呼ぶのか」と納得しやすくなります。
別例として「顧客体験」という概念を定義するなら、こうなります。
具体例:サイト閲覧、購入手続き、配送、問い合わせ対応、アフターフォロー
共通点:購入前から購入後までの接点で生まれる体験
一言定義:顧客体験とは「接点全体での体験品質」の概念
概念は“上からふわっと降ろす”より、“具体から引き上げる”方が伝わります。文章にするときも同様です。
抽象語が空回りしないチェックリスト
「概念」を使う文章が空回りするときは、だいたい次のどれかが欠けています。執筆や資料作成の前にチェックすると安定します。
その概念は、何を含むかが書かれている
その概念は、何を含まないかが書かれている
概念を支える具体例が少なくとも1つある
概念の違いが争点なら、相手と自分の定義が一致している
その単語は本当に「概念」と言う必要があるか(意味/方針/価値観/捉え方の方が自然ではないか)
チェックの結果、「概念」という語が不要だと分かった場合は、潔く言い換えた方が文章が読みやすくなることも多いです。概念は便利ですが、便利さゆえに“煙幕”にもなり得るためです。
伝わる一文に整える言い換え例
「概念」が強すぎたり硬すぎたりする場面では、言い換えが効きます。以下は置き換え候補です。
概念 → 枠組み/定義/前提/捉え方/考え方
概念的 → 全体像として/大づかみに/枠組みとして/方針レベルで
言い換え例
この議論は顧客体験という概念がずれている。
→ この議論は顧客体験の前提がずれている。まず概念的に整理します。
→ まず全体像として整理します。成功の概念を統一しましょう。
→ 成功の定義を統一しましょう。
相手や読者に「分かりやすさ」を優先したい場面ほど、言い換えが有効です。「概念」と言わなくても伝わるなら、そちらを選んだ方が文章として強くなります。
概念の誤用と注意点
固定概念は避けたほうがよい理由
「固定概念」は、文脈によって意図が伝わらない可能性があり、文章では避けたほうが無難です。理由は、似た表現として「固定観念」「既成概念」があり、読み手によって「どちらの意味で言っているのか」が揺れやすいためです。
思い込み・個人の偏りを指したい → 固定観念
社会的に固まった枠を指したい → 既成概念
たとえば、次の文は少し曖昧です。
その固定概念を壊そう。
これを意図に合わせて直すと明確になります。
思い込みの話なら:その固定観念を手放そう。
常識の話なら:その既成概念を疑おう。
読み手が迷う表現は、文章の推進力を落とします。「概念」を扱う文章ほど、周辺語の選択は丁寧に行う方が安全です。
便利な言葉ほど起きる曖昧さの罠
「概念」は、きちんと使えば強力ですが、雑に使うと“意味があるようでない文章”になってしまいます。特に危ないパターンは次の3つです。
定義がないのに「新しい概念です」と言う
→ 何が新しいのか分からず、説得力が出ません。「概念的には理解できる」で止まる
→ 具体策や判断基準がなく、行動に移せません。相手と概念の範囲が違うのに進める
→ 途中で必ず齟齬が噴き出します。
対策はシンプルです。概念を出すなら、最低でも次のどれかをセットにします。
一文定義(ここで言うAはBである)
具体例(たとえばCのようなもの)
範囲(Bは含むがDは含まない)
指標(評価はEで行う)
これだけで、「概念」という言葉が“説明”になります。
相手に伝わらないときの言い直し
相手に伝わっていないと感じたら、言い直しのテンプレを持っておくと便利です。おすすめは次の順番です。
含む範囲を言う:「ここで言うAは、Bを含みます」
具体例を出す:「たとえばCのようなケースです」
一言でまとめる:「つまりDということです」
例(顧客の概念が伝わらない場合)
ここで言う顧客は、購入者だけでなく意思決定者と利用者も含みます。
たとえば、導入を決める管理職と実際に使う現場担当者の両方です。
つまり「購買に影響する関係者全体」を顧客として扱います。
この型は、会議でも文章でも同じように効きます。「概念」を使う場面ほど、相手が迷った瞬間にこの型で戻せると、議論が崩れにくくなります。
概念のよくある質問
概念は一言で何ですか
いくつかの具体例に共通する点をまとめた枠組みです。別の言い方をすると、「同じ仲間として束ねるためのラベル」です。文章で使うなら、具体例とセットにして示すと誤解が減ります。
観念とどちらを使えばよいですか
「共有したい枠・定義」なら概念、「個人の捉え方・思い込み」なら観念が合いやすいです。迷った場合は、次で判断すると外しにくくなります。
定義できる/範囲を決められる → 概念
心の中のイメージや思い込み寄り → 観念
既成概念と固定観念の違いは何ですか
目安としては次のとおりです。
既成概念:社会や集団の中で一般化して固まった枠(常識に近い)
固定観念:個人や集団が強く信じ込んでしまう思い込み(心理に近い)
同じ「とらわれる」という文脈でも、主語が社会寄りなら既成概念、個人寄りなら固定観念を選ぶと文章が自然になります。
概念的は褒め言葉ですか
褒め言葉にも、改善要求にもなります。使われる文脈で意味が変わるため、受け取る側も、書く側も注意が必要です。
褒め:枠組みが整理されている、全体像が掴めている
不満:抽象的で具体策がない、行動に落ちない
「概念的」という言葉を使う場合は、続けて具体例・手順・指標のいずれかを添えると誤解が減り、文章としても強くなります。