※購入先、ダウンロードへのリンクにはアフィリエイトタグが含まれており、それらの購入や会員の成約、ダウンロードなどからの収益化を行う場合があります。

Excelが応答なしで固まる原因と対処法|保存・復元から再発防止まで

Excelで作業している最中に、突然「応答なし」と表示されて固まってしまうと、焦りと不安で頭が真っ白になりがちです。締切や提出が迫っているほど、「強制終了して大丈夫か」「未保存のデータは戻るのか」「また同じことが起きるのでは」と心配が膨らみます。
しかし、Excelの「応答なし」は、必ずしも壊れたサインとは限りません。大きな計算や保存、印刷処理で一時的に止まっているだけのこともあれば、アドインやプリンター、ドライバー、ファイルの肥大化など、原因が複数重なって起きているケースもあります。重要なのは、闇雲に操作せず「いまやるべき順番」を守り、データを守りながら原因を切り分けることです。

本記事では、Excelが固まった直後に取るべき行動(待つ判断、保存を促す方法、強制終了の手順)から、未保存データの復元、セーフモードを起点にした原因の切り分け、アドイン・印刷・ドライバー・重いブック対策、そして再発防止のための運用までを、手順通りに解説します。読み終えたときに「次に何をすればいいか」が迷わず分かり、同じトラブルに振り回されない状態を目指しましょう。

※本コンテンツは「記事制作ポリシー」に基づき、正確かつ信頼性の高い情報提供を心がけております。万が一、内容に誤りや誤解を招く表現がございましたら、お手数ですが「お問い合わせ」よりご一報ください。速やかに確認・修正いたします。

Excelが応答なしになるとき最初にやること

待つべきケースと待たない方がよいケース

Excelで作業中に突然「応答なし」と表示されると、反射的に強制終了したくなります。しかし、実際にはExcelが内部で処理を継続していて、画面だけが追いついていないケースも少なくありません。ここで慌てて終了してしまうと、本来は数十秒〜数分で回復できた処理を止めてしまい、未保存の変更が失われるリスクが上がります。まずは「待つべきか」「待たないほうがよいか」を判断する基準を持つことが大切です。

待つべき可能性が高いのは、Excelが重い処理を実行している場面です。たとえば次のような操作の直後は、処理に時間がかかって当然のことがあります。

  • 大きな表や複雑な数式を含むブックで、再計算が走った直後

  • ピボットテーブルの更新、Power Queryの更新、外部データ接続の更新

  • CSVや大量データの貼り付け、行列の追加・削除、フィルター操作の直後

  • 保存直後(特にネットワークドライブやクラウド同期が絡む場合)

  • 印刷プレビュー、改ページ表示、PDF出力、プリンターを選択した直後

このような場合、Windows側でCPU使用率やディスク使用率が動いていることが多く、しばらく待つと回復する可能性があります。タスクマネージャーを開ける状況であれば、ExcelがCPUやディスクを使っているかを見ると判断材料になります。Excelが一定のリソースを使っているなら「今まさに処理中」のことが多いです。

一方、待たないほうがよいケースもあります。代表的なのは、長時間待っても状況が変わらない、あるいはPC全体が巻き込まれて操作不能になる場合です。

  • 3〜5分程度待ってもまったく変化がない(処理が進んでいる気配がない)

  • Excel以外の操作も極端に重く、マウスやキーボード入力がまともに通らない

  • 何度も同じ操作で固まり、毎回同程度の時間がかかって業務にならない

  • ネットワーク切断やプリンターエラーなど、外部要因が発生した直後に固まった

「何分待てばよいか」はブックの規模やPC性能で変わりますが、判断に迷う場合は、まず短時間だけ待ってみて、改善しなければ次のステップ(保存誘導)へ移る、という流れにすると迷いが減ります。重要なのは、焦って連打や多重操作をしないことです。無理に操作を重ねるほど、Excelの処理がさらに混雑して回復が遅れたり、別の不具合が重なったりします。

保存を促す安全な試し方

「応答なし」状態でも、Excelが裏で処理を続けている場合、タイミング次第では保存に持ち込めることがあります。ただし、ここでやみくもにクリックしたり、ショートカットを連打したりすると、処理が積み重なって状況が悪化することがあります。保存を促す操作は“最小限を一度だけ”が基本です。

まず試しやすいのが、閉じる動作をトリガーにして「保存しますか?」のダイアログを出せるかどうかです。キーボード入力が通る状態なら、Alt+F4を一度押してみます。Excelが応答を取り戻せれば、保存確認が表示される可能性があります。表示された場合は、ここで初めて保存を実行できるため、被害を大きく減らせます。

ただし、次の点は押さえてください。

  • 反応がないのにAlt+F4を何度も押すのは避ける(裏で「閉じる命令」が溜まり、回復後に一気に閉じてしまうことがある)

  • 保存ダイアログが出たら、保存先がネットワークやクラウドで遅い場合があるため、可能なら一時的にローカルへ別名保存することも検討する

  • 大きなファイルで保存自体が重い場合、保存処理の途中で再度固まる可能性があるため、保存中は追加操作をしない

もしExcelの画面に一切反応がなく、ショートカットも通らない、あるいはPC全体が重くて作業継続が困難なら、保存誘導は深追いせず、強制終了の手順へ移ります。「保存できるかもしれない」よりも「確実に復元へ進む」ほうが安全な場合があるためです。

強制終了の正しい手順

回復が見込めない場合は、強制終了して復元作業へ移ります。強制終了自体は最終手段ですが、正しい手順で行えば、復元できる可能性を残しながら切り替えることができます。Windowsではタスクマネージャーから終了する方法が基本です。

  1. Ctrl+Shift+Escでタスクマネージャーを起動します

  2. 「プロセス」タブで「Microsoft Excel」を探します(複数開いている場合は注意)

  3. 対象を選んで「タスクの終了」をクリックします

タスクマネージャーが開けないほどPC全体が固まっている場合は、Ctrl+Alt+Deleteを押して画面を切り替え、そこからタスクマネージャーを開く方法もあります。それでも難しければ、Windowsの再起動が必要になることもありますが、再起動前に可能な範囲で状況を記録しておくと、後の原因切り分けに役立ちます(いつ固まったか、何の操作をしたか、どのファイルか、印刷だったか保存だったかなど)。

強制終了後に最優先で行うべきことは「復元を確認する」ことです。ここで別作業を始めてしまうと、自動回復の候補が上書きされたり、状況が変わって原因が追いにくくなったりします。次章の手順に沿って、復元導線を一気に確認してください。


未保存データを復元する方法

自動回復から戻す導線

Excelには、異常終了に備えて作業内容を一定間隔で一時保存する仕組み(自動回復)があります。強制終了やクラッシュの後にExcelを起動すると、左側や別ウィンドウで「ドキュメントの回復」などのペインが出ることがあります。表示された場合は、候補を順に開いて内容を確認し、問題なければすぐに別名で保存します。

ここで重要なのは、回復したファイルを「保存せずに閉じない」ことです。回復候補は一時ファイルであることが多く、閉じると消える可能性があります。内容を確認したら、まず保存して“確定版”を作り、そこから必要な修正に入るのが安全です。

回復ペインが出ない場合でも、Excelのメニューから回復候補を探せることがあります。一般的には次の流れです。

  • Excelを起動

  • ファイル → 情報

  • 「ブックの管理」などの項目から「回復されていないブック」や回復候補を確認

表示は環境やバージョンで多少異なりますが、基本は「情報」画面周辺に復元導線がまとまっています。回復ペインが出ないからといって、復元できないと決めつけないことが大切です。

また、復元候補が複数ある場合、どれが最新か分からず迷うことがあります。その場合は、ファイルを開いたときに表示される更新時刻や内容の新しさを確認し、必要なら複数を別名保存して比較します。上書き保存を急ぐと、より新しい候補を潰してしまう可能性があるため、最初は別名保存で確保するのが安全策です。

未保存ブックの回復を確認する

保存する前に固まってしまった場合や、新規作成したブックで一度も保存していない場合は、「未保存ブックの回復」が役に立つことがあります。Excelの「開く」画面や最近使ったファイルの画面に、未保存の回復導線がある場合があるため、見落とさずに確認します。

  • Excelを起動

  • ファイル → 開く(または最近使ったファイル)

  • 未保存の回復に関するメニューがあれば開く

  • 候補が見つかったら、まず別名で保存する

未保存の回復が見つからない場合でも、次の観点で復元率を上げられることがあります。

  • 直後に何度もExcelを起動し直したり、別のブックを編集したりしない(回復候補が上書きされる可能性を避ける)

  • 自動回復の間隔が長い設定になっていると、直前の変更が残っていない場合がある(今後の再発防止として設定見直しの対象になる)

  • 大きな操作(大量貼り付け、外部更新)直後に固まった場合、回復候補に反映されないことがある(処理が完了していないため)

復元できた場合も、再発防止の切り分けは必ず行うのがおすすめです。「たまたま戻せた」状態で原因を放置すると、次回は取り戻せないタイミングで固まる可能性があるためです。

OneDriveやSharePointのバージョン履歴で戻す

仕事でOneDriveやSharePoint、Teamsの共有フォルダなどに保存している場合、Excel側の自動回復とは別に、クラウド側の「バージョン履歴」が強い味方になります。これはファイルの過去版を保持している機能で、クラッシュや誤上書きが起きても、一定範囲で過去の状態に戻せる可能性があります。

バージョン履歴を使うときの基本的な考え方は次のとおりです。

  • まず最新ファイルを別名でバックアップしてから操作する(誤って必要な版を消さないため)

  • バージョン履歴から“固まる前の時刻に近い版”を選び、プレビューや復元を試す

  • 復元が不安なら、いきなり置き換えず、過去版をダウンロードして比較する

クラウドの履歴は、Excelの自動回復がうまく働かなかった場合の保険になります。特に「保存はしていたが、直前の変更が消えた」「壊れた状態で上書きしてしまった」などの場面で効果が出やすいです。再発が多い業務では、ファイルをローカルだけで抱えず、履歴が残る保存先を標準にすることが、精神的な安心にも直結します。


Excel応答なしの原因を切り分ける

セーフモードで確認する

原因切り分けで最も効果が高い入り口が、Excelのセーフモードです。セーフモードは、アドインや一部の設定の影響を抑えた状態で起動できるため、「Excel本体の問題なのか」「追加機能や環境要因なのか」を短時間で見極めやすくなります。

起動方法は複数あります。

  • Excelを起動するときにCtrlキーを押し続け、確認ダイアログが出たらセーフモードで起動する

  • Windows+Rを押して「ファイル名を指定して実行」を開き、excel /safe と入力して起動する

セーフモードで起動できたら、普段フリーズする操作を“絞って”試します。やみくもに色々触るより、再現性の高い操作を選ぶことがポイントです。

  • 起動直後に固まるなら、起動後すぐの動作を確認する

  • 入力や編集で固まるなら、同じシート・同じ操作(フィルター、コピー、貼り付けなど)を試す

  • 保存や印刷で固まるなら、同じ保存先・同じプリンター・同じ印刷プレビューを試す

ここで「セーフモードでは固まらない」と分かれば、原因はアドインや設定、周辺環境に寄っている可能性が高くなります。逆に「セーフモードでも固まる」なら、ファイルの問題やOfficeの不具合、ドライバーなど、より広い範囲を疑う必要があります。

セーフモードで直るならアドインが濃厚

セーフモードで問題が出ない場合、まず疑うべきはアドインです。アドインは便利ですが、更新の遅れや他ソフトとの相性、破損などがあると、Excelの起動・保存・印刷・編集の各所で「応答なし」を起こすことがあります。特にCOMアドインは影響が大きいことが多いです。

切り分けの鉄則は「全部オフにしてから、1つずつ戻す」です。いきなり怪しいものだけを触ると、複数の要因が絡んでいる場合に迷走しがちです。手順の考え方は次のとおりです。

  1. Excelのオプションからアドイン管理画面を開く

  2. COMアドイン、Excelアドインをいったんすべて無効化する

  3. 通常起動で再現しないかを確認する

  4. 改善したら、アドインを1つだけ有効化して再起動し、再現するか確認する

  5. 再現したアドインを特定できたら、更新・設定変更・削除を検討する

ここで注意したいのは「1つずつ戻す」を徹底することです。2つ3つまとめて戻すと、どれが原因か分からなくなります。また、業務環境では、社内ツールやセキュリティソフトがアドインとして入っていることもあるため、削除の判断が難しい場合があります。その場合は、更新がないか、ベンダーの推奨設定がないか、社内IT担当に確認する、といった段階的な対応が現実的です。

アドインが原因の場合、症状は「起動が遅い」「特定の操作で固まる」「印刷が止まる」など様々に見えます。だからこそ、セーフモードで切り分けたうえでアドインへ進む流れが最短になります。

セーフモードでも直らないなら環境・ファイル要因へ

セーフモードでも「応答なし」が再現する場合、アドイン以外の要因を疑う必要があります。代表的なのは、環境要因(プリンター・ドライバー・グラフィック周り)と、ファイル要因(巨大化・破損・外部リンク・見えない残骸)です。

環境要因として特に多いのが、既定プリンターやプリンタードライバーです。Excelは起動時や印刷系の画面を開くときにプリンター情報を参照します。そのため、既定プリンターがネットワーク越しで不安定だったり、ドライバーが古かったりすると、印刷操作だけでなく起動や表示にも影響することがあります。また、グラフィックドライバーの不整合があると、スクロールや拡大縮小、描画のタイミングで固まることがあります。

ファイル要因は「特定ファイルだけ重い」「同じブックでだけ頻発する」などの形で見えやすい一方、内部の残骸や複雑な条件付き書式、外部参照が絡むと、ぱっと見で原因が分かりにくくなります。この場合は、後半の軽量化チェックを進めながら、Officeの更新・修復も並行して行うのが近道です。


再発防止の設定と環境見直し

OfficeとExcelを最新化し、修復を実施する

「原因が多すぎて分からない」「切り分けしても決め手がない」という場合、再発防止としてまず実施したいのが、Officeの更新と修復です。これは“根本対策”の入口で、Excel本体の不具合や破損をまとめて解消できる可能性があります。

更新については、Microsoft 365を利用している場合、機能更新や不具合修正が継続的に配信されています。更新が滞っていると、既に修正済みの問題に当たってしまうことがあります。まずは更新を確認し、適用してから再現性を見ます。

それでも改善しない場合は、修復を検討します。修復には段階があり、軽い修復で直ることもあれば、より深い修復が必要になることもあります。修復を行う前に、次の点を押さえると安全です。

  • Officeを修復する前に、重要ファイルはバックアップしておく

  • 修復後は、セーフモード起点の切り分けをもう一度簡単に確認する(症状が変化していることがある)

  • アドインや周辺ソフトが影響していた場合、修復だけで完全解消しないこともあるため、再現性チェックを忘れない

修復は「怖い操作」に見えるかもしれませんが、原因がExcel本体にある場合、ここを後回しにすると時間がかかります。切り分けの早い段階で実施すると、以後の検証が楽になることも多いです。

既定プリンターとドライバーを疑う

印刷や印刷プレビュー、PDF出力のタイミングで固まる場合は、プリンター周りを最優先で疑います。さらに、起動時に固まる場合でも、既定プリンターがネットワーク上で不安定だと、起動が引っかかることがあります。

確認の進め方は、原因を絞るために「既定プリンターを変えて検証する」のが手堅いです。

  1. 既定プリンターを別のプリンターに変更する(例:Microsoft Print to PDFなど、安定しやすい仮想プリンター)

  2. Excelを起動し直し、印刷プレビューや印刷操作で再現するか確認する

  3. 改善する場合、元のプリンターのドライバー更新、再インストール、接続方式の見直しを検討する

この検証で改善が見えるなら、Excel側を疑い続けるより、プリンター環境の整備が近道になります。企業環境では、ドライバーの配布や管理がIT部門の管轄の場合もあるため、検証結果(既定プリンター変更で改善した)を具体的に共有すると、対応が進みやすくなります。

また、プリンタードライバーだけでなく、PDF作成ソフトや印刷管理ソフトが介在している場合もあります。こうしたソフトがアドインや仮想プリンターとして動作し、Excelと競合していることもあるため、印刷系で頻発する場合は周辺ソフトも含めて疑うのが現実的です。

表示系の不具合対策として設定を見直す

スクロールやズーム、ウィンドウ操作、シート切り替えなど、画面描画が絡む場面で固まりやすい場合は、表示系の要因が関係している可能性があります。ここはPCのグラフィックドライバーや複数ディスプレイ環境、リモートデスクトップの有無など、環境差が出やすい領域です。

設定を見直す際の基本方針は「変更点を最小限にし、戻せるようにする」です。表示系の設定は効果がある場合もありますが、環境依存で、改善しないことも珍しくありません。そのため、次のような進め方が安全です。

  • まずドライバー更新など“正攻法”の整備を検討する(社内PCなら管理方針に従う)

  • 次に、ExcelやOffice側の表示関連設定を確認し、必要な変更を1つずつ試す

  • 変更したら、再現性の高い操作で検証し、改善しなければ元に戻す

ここでの目的は、闇雲に設定をいじることではなく、「表示系が原因かどうか」を見極めることです。原因が別にあるのに設定変更を重ねると、後で元に戻すのが大変になり、問題の追跡が難しくなります。


重いブックが原因のときの軽量化チェック

ファイルサイズ肥大の典型を減らす

「特定のファイルだけで応答なしになる」「ファイルを開くだけで重い」「保存に時間がかかる」といった場合、ブックの肥大化が原因である可能性が高いです。軽量化は奥が深いですが、まずは誰でも着手できる典型原因から潰すだけでも、改善することがあります。

代表的な肥大化要因は次のとおりです。

  • 不要なシート、使っていない行列が大量に残っている

  • 画像、図形、スクリーンショットを多数貼り付けている

  • 条件付き書式が必要以上に広範囲に設定されている

  • ピボットや集計用データが同一ファイルに詰め込まれている

  • 外部リンクや参照が多く、開くたびに参照更新が走る

  • 形式(xlsx、xlsmなど)と用途が合っておらず、無駄に重くなっている

軽量化のコツは、いきなり完璧を目指さず、まず「フリーズしない状態」を取り戻すことです。たとえば、不要シートの削除、条件付き書式の整理、貼り付けた画像の圧縮や削減だけでも、体感が大きく変わることがあります。

また、ネットワークドライブ上に巨大ファイルを置いている場合、ファイルそのものの重さに加えて通信遅延が加わります。保存が遅い・固まる場合は、いったんローカルへコピーして操作し、挙動が変わるか確認すると、ネットワーク要因の切り分けになります。

残骸オブジェクトや定義名など見えない重さを点検する

ファイルサイズはそれほど大きくないのに重い、データ量も多くないのに固まる、という場合は、ブック内部の“見えない重さ”が蓄積している可能性があります。Excelは長年使い回したブックほど、不要な情報が溜まりやすい傾向があります。

代表例としては次のようなものがあります。

  • 使われていない定義名が大量に残っている

  • 参照先がなくなったリンク情報が残っている

  • かつて貼った図形やオブジェクトの残骸が残っている

  • スタイルや書式情報が過剰に増殖している

  • クエリや接続の情報が整理されないまま積み重なっている

こうした要素は、見た目で分かりにくい一方、Excelの処理(開く・保存・再計算)に継続的な負荷を与えます。対策としては、不要な定義名やリンクの整理、オブジェクトの見直しなどが候補になりますが、状況によっては「新規ブックに必要データだけ移植して作り直す」ほうが早いこともあります。特に、長期間運用してきた基幹ファイルで応答なしが頻発する場合は、修繕より再構築が有効なケースが多いです。

点検や作り直しの際は、いきなり上書きせず、必ずコピーを作ってから進めてください。軽量化作業は、必要な要素まで削ってしまうリスクもあるため、段階的に戻せる状態で行うのが安全です。

運用で再発を減らす

軽量化は「一度直したら終わり」ではなく、運用次第で再び重くなります。特に業務では、担当者が変わったり、データ量が年々増えたりして、ファイルが膨張しやすい環境にあります。再発を減らすには、作り方・使い方のルールを設けるのが効果的です。

  • 入力用と集計用を分ける(入力シートは軽く、集計は別で行う)

  • 月次・年度などでファイルを分割し、1ファイルに全期間を詰め込まない

  • 画像や図形は必要最小限にし、資料化が目的ならPowerPoint等へ分ける

  • 外部データ更新やピボット更新は、作業時間帯を決めてまとめて行う

  • クラウド保存でバージョン履歴を活用し、復旧力を高める

  • 共有運用の場合、勝手に書式や条件付き書式を増やさないルールを設ける

運用ルールは面倒に見えますが、「応答なし」で業務が止まる損失に比べれば、十分に回収できる投資です。特に締め作業や報告前など、止まってはいけない局面がある業務ほど、事前の運用整備が効きます。


Excelが応答なしになりやすい場面別の対処

起動時に固まる

起動時に固まる場合は、原因の候補がある程度絞れます。まずは次の順番で切り分けると、遠回りになりにくいです。

  1. セーフモードで起動し、起動直後の固まりが再現するか確認する

  2. セーフモードで直るなら、アドイン無効化で原因を特定する

  3. セーフモードでも直らないなら、既定プリンター・ドライバー、Office更新と修復を検討する

起動時フリーズは、開いた瞬間に作業が止まるため、焦りやすい症状です。しかし、手順を固定すれば、判断がブレにくくなります。特に、セーフモードで直るかどうかは強力な分岐になるため、最初に必ず確認するとよいです。

また、起動時に特定ファイルが自動で開かれる設定になっていたり、起動時にアドインが外部サーバーへアクセスしようとして固まったりすることもあります。社内ネットワークやVPNの状況で再現性が変わる場合は、起動時にネットワーク要因が絡んでいる可能性も視野に入れます。

入力や編集で固まる

入力や編集で固まる場合、原因は大きく「再計算負荷」「書式・条件付き書式の負荷」「外部参照やリンク」「アドインや環境要因」に分かれます。まずはセーフモードで再現するかを確認し、直るならアドインを疑います。

セーフモードでも固まる場合は、ファイル側の負荷を疑うのが現実的です。特に次のような状況は、入力するたびに重い処理が走りやすく、「応答なし」に見えやすいです。

  • 参照範囲が巨大な数式(SUMIFSやVLOOKUP/XLOOKUP、配列計算など)が多い

  • 条件付き書式が広範囲に設定され、入力のたびに再評価される

  • テーブルやピボットが同じブック内で連鎖し、更新が連動する

  • 共有ブックや共同編集で、同期が絡んで遅延が起きている

対処としては、軽量化章の典型原因(不要範囲、書式、画像、リンク)を整理し、必要なら計算方法や構造を見直します。数式や構造の最適化まで踏み込むと効果が出やすいですが、まずは「再現する操作を固定し、何を変えると改善するか」を一つずつ検証することが重要です。

保存や印刷で固まる

保存や印刷で固まる場合は、プリンターや保存先が絡むため、切り分けがしやすい領域です。まずは次の観点で疑います。

  • 既定プリンターを変更すると改善するか(プリンタードライバー要因の切り分け)

  • 印刷プレビューや改ページ表示を開くと固まるか(印刷系表示の負荷)

  • 保存先がネットワークやクラウド同期で遅延していないか(保存先要因の切り分け)

  • ファイルが肥大化しており、保存処理自体が過重になっていないか(ファイル要因の切り分け)

印刷が絡む「応答なし」は、Excel本体よりもプリンター側が原因であることが少なくありません。特に、ネットワークプリンター、共有プリンター、古いドライバー構成、PDF関連ソフトの介在などがある環境では、切り分けの優先順位を「プリンター→Excel」にすると解決が早いことがあります。

保存についても同様で、保存先をローカルに変えるだけで改善するなら、ネットワーク要因や同期要因が濃厚です。業務では共有が必要なため最終的に戻す必要がありますが、原因を特定したうえで対策(同期設定、保存タイミング、ファイル分割、運用ルール)を選ぶと、再発が減ります。


よくある質問

強制終了したら復元できないのか

強制終了しても復元できる可能性はあります。Excelには自動回復があり、異常終了後の再起動時に回復候補が提示されることがあります。また、回復ペインが出なくても「情報」画面や未保存回復の導線から候補を探せる場合があります。

ただし、必ず戻るわけではありません。自動回復のタイミングより前の変更は残らないことがありますし、重い処理の途中で固まった場合は、処理結果が回復候補に反映されないこともあります。だからこそ、日頃から次のような備えが重要です。

  • 重要な作業では、区切りごとに保存する

  • クラウド保存でバージョン履歴を使える状態にしておく

  • 自動回復の間隔を必要に応じて見直す(短くしすぎると逆に重くなることがあるため、業務実態に合わせる)

復元の成否に関わらず、「なぜ固まったか」の切り分けを行うことで、次回の損失リスクを下げられます。

セーフモードで直ったが通常起動に戻すには

セーフモードで直る場合、アドインや設定が原因である可能性が高いです。通常起動に戻して安定させるには、アドイン切り分けを行い、問題のアドインを特定して対処するのが基本です。

  • いったんアドインを全停止して通常起動で再現しないか確認する

  • 再現しなければ、アドインを1つずつ戻して再現するものを特定する

  • 特定できたら、更新、設定変更、削除、代替手段の検討を行う

ここで「とりあえず全部オフのまま使う」という選択もあり得ますが、業務上必要な機能がある場合は現実的ではありません。原因アドインが社内配布のものなら、検証結果を添えてIT部門へ相談し、推奨版や設定の案内を受けるとスムーズです。

同じPCだけで起きる場合と同じファイルだけで起きる場合の違い

切り分けの考え方として非常に重要なのが、「PC依存か」「ファイル依存か」です。これを見極めると、対処の方向性が大きく変わります。

  • 同じPCだけで起きる:環境要因(アドイン、Officeの状態、既定プリンター、ドライバー、更新不足、周辺ソフト)が疑わしい

  • 同じファイルだけで起きる:ファイル要因(肥大化、破損、外部リンク、見えない残骸、過重な再計算、書式増殖)が疑わしい

見極めはシンプルで、次の2つを試します。

  • 同じファイルを別PCで開く(別PCで問題が出るならファイル要因が濃厚)

  • 同じPCで別ファイルを開く(別ファイルでも出るなら環境要因が濃厚)

この結果に合わせて、セーフモード起点の分岐と、環境(プリンター・ドライバー・修復)/ファイル(軽量化・再構築)のどちらを優先するか決めると、解決までの距離が短くなります。応答なしは原因が複合することも多いですが、最初の大きな分岐を誤らなければ、無駄な作業を減らしやすくなります。