Excelの関数は、覚えれば作業が速くなると分かっていても、いざ検索すると「一覧が多すぎて選べない」「コピペしたのにエラーが出る」「VLOOKUPやIFで手が止まる」といった壁にぶつかりがちです。特に、売上集計や名簿管理など締切のある仕事では、原因が分からないまま時間だけが過ぎてしまい、不安が増えてしまいます。
本記事では、エクセル関数の基本ルールを押さえたうえで、まず覚えるべき頻出関数20選を“そのまま使える例”と一緒に解説します。さらに、目的別にどの関数を選べばよいかが一目で分かる早見表、#N/Aや#VALUE!などの定番エラーを最短で直すチェックリスト、仕事で使える組み合わせ例まで整理しました。読み終える頃には、「何を使えばいいか迷わない」「エラーで止まらない」「作業が確実に短くなる」状態を目指せます。
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エクセル関数でできることと覚え方のコツ
関数と数式の違いと基本ルール
Excelで入力する「=」から始まるものは大きく分けて2種類あります。1つは単純な計算(例:=A2+B2)のような“数式”。もう1つが、Excelがあらかじめ用意してくれている処理のまとまりである“関数”(例:=SUM(A2:A10))です。
関数を使うメリットは次の通りです。
計算や集計の入力ミスが減る(足し算を何十個も連ねる必要がない)
仕様が明確で、他人が見ても意図が伝わりやすい(引き継ぎが楽)
条件付き集計や検索など、手作業だと壊れやすい処理を安定して自動化できる
データが増えても同じ式で対応しやすい(行が増えても範囲を直しやすい)
ただし、関数を扱う前に“最低限のルール”を押さえておくと、つまずきが激減します。
基本ルール(これだけは最初に固定)
ルール1:数式は必ず「=」から始める
例:SUM(A2:A10)と書いても動きません。必ず=SUM(A2:A10)です。ルール2:関数は「関数名(引数)」の形
例:=IF(条件, 真のとき, 偽のとき)ルール3:引数は「関数に渡す材料」
例えばSUMなら“合計したい範囲”、XLOOKUPなら“探す値・探す範囲・返す範囲”などです。
よくある初歩ミス
「=」を忘れる
かっこの閉じ忘れ、かっこの数が合っていない
引数の区切り(カンマなど)が不足している
文字列の扱い(”東京” のようにダブルクォーテーションが必要)を間違える
この段階で重要なのは、関数を覚えることよりも「書き方の型」を固定することです。書き方が安定すると、一覧を見たときに“読める”ようになり、結果として覚える速度も上がります。
引数でつまずかないための読み方
関数で止まる最大の原因は、引数が「何を意味するか」を日本語として理解できていないことです。おすすめは、関数の形を“文章”として読み替える練習です。
例としてXLOOKUPを見てみます。
=XLOOKUP(検索値, 検索範囲, 戻り配列, [見つからない場合], [一致モード], [検索モード])
これを文章にすると、
「この検索値を、検索範囲の中から探して、同じ位置にある戻り配列の値を返す。見つからなければ指定した値を返す」
という意味になります。
この読み替えができると、XLOOKUPに限らず、他の検索・参照系も理解が速くなります。
引数理解のコツ(実務で効く順)
“どこで探すか” と “何を返すか” を分ける
検索範囲=探す列(または行)、戻り配列=返したい列(または行)です。最初は必須引数だけで動かす
任意引数([]で囲まれるもの)は、最初は空欄でも構いません。動かしてから必要に応じて足します。引数を一気に完成させない
途中まで作って動くか確認するほうが早いです。例:検索値と検索範囲だけ決めて、返す範囲を後で調整する。“返ってくるはずの値” を事前に紙に書く
例えば「商品ID=1001なら単価=1500が返るはず」と決めておくと、結果がズレたときに原因を切り分けやすいです。
特に検索系で多いのは、検索値が文字列だったり、前後に空白が混ざっていたりして一致しないケースです。引数の理解と同時に「一致しない理由」も想定しておくと、#N/Aで慌てなくなります。
関数を暗記しない学び方
関数を片っ端から覚えようとすると、途中で息切れします。暗記よりも効率が良いのは、「目的のカテゴリ」を覚えて、必要なときに呼び出す方法です。
Excelで困る場面は、ほとんどが次の6カテゴリに収まります。
合計・平均・件数(SUM / AVERAGE / COUNT系)
条件分岐(IF / AND / OR)
条件付き集計(SUMIF(S) / COUNTIF(S))
検索・参照(XLOOKUP / VLOOKUP / INDEX / MATCH)
文字・日付の整形(LEFT / RIGHT / MID / TEXT / DATE など)
丸め・エラー回避(ROUND / IFERROR など)
暗記を捨てて伸びる学び方(おすすめの順番)
ステップ1:頻出関数だけ先に使えるようにする(本記事の20選)
ステップ2:目的別の早見表で「どれを選ぶか」を決められるようにする
ステップ3:つまずきポイント(エラー、参照のズレ、型の違い)を先に潰す
ステップ4:組み合わせ例で“仕事の形”にする(IF×AND、XLOOKUP×IFなど)
この順番だと、学習が「できた感」につながりやすく、現場で役に立つまでが早くなります。
まず覚えるエクセル関数20選と使い方の例
ここでは「使用頻度が高く、覚えると即効性がある」ものに絞ります。例は“自分の表へ置き換えやすい形”にしています。まずはコピペして動くのを確認し、列や範囲を自分の表に合わせて差し替えるのが最短です。
合計と平均と件数を出す関数
合計・平均・件数は、あらゆる集計の土台です。ここが早くなるだけで、月次や週次の作業がかなり短縮されます。
1) SUM:合計
例:
=SUM(A2:A10)
A2〜A10の合計を返します。
複数範囲の合計
例:
=SUM(A2:A10, C2:C10)
離れた列や範囲もまとめられます。
よくあるミス
合計したい範囲に文字列が混ざっている(SUMは文字列を無視することがある)
見た目は数値だが実は文字列で、別の計算と組み合わせると#VALUE!になる
2) AVERAGE:平均
例:
=AVERAGE(A2:A10)
対象範囲の平均を返します。
注意点
空白セルは無視されますが、0が入っているセルは平均に含まれます。0を“未入力”として扱いたいときは、別途条件を考える必要があります。
3) COUNT:数値の個数
例:
=COUNT(A2:A10)
“数値セル”の個数だけを数えます。数字に見えても文字列の数字は数えません。
4) COUNTA:空白以外の個数
例:
=COUNTA(A2:A10)
文字列も含めて“空白ではないセル”を数えます。
使い分けの目安
入力件数(名前・IDなど)→ COUNTA
数値入力件数(点数・金額)→ COUNT
5) MAX / MIN:最大・最小
例:
=MAX(A2:A10)/=MIN(A2:A10)
最大値・最小値を返します。売上の最大、納期までの日数の最小などに使えます。
条件で分ける関数
条件分岐は「自動判定」「ステータス付け」「例外処理」で必須です。最初はIFだけでも十分ですが、AND/ORを覚えると実務での表現力が大きく上がります。
6) IF:条件で値を返す
例:
=IF(C2="Yes", 1, 2)
C2がYesなら1、違うなら2を返します。
IFが活躍する典型
合否判定、達成/未達、期限内/期限外、在庫あり/なし
例外データの扱い(未入力なら空欄にする、など)
IFの作り方(迷わない手順)
条件を日本語で書く(例:「売上が10万円以上ならOK」)
条件式にする(例:
B2>=100000)真のとき返す値を決める(”OK”)
偽のとき返す値を決める(”NG”)
組み立てる:
=IF(B2>=100000,"OK","NG")
7) AND / OR:条件の組み合わせ
AND:すべて満たす
例:=AND(A2>=0, A2<=100)OR:どれか満たす
例:=OR(B2="東京", B2="大阪")
AND/ORは単体でも使えますが、IFと組み合わせると実戦向きになります(組み合わせ例で詳しく扱います)。
条件付きで集計する関数
条件付き集計は「手作業でフィルターして合計」から卒業するための核です。SUMIF/SUMIFS、COUNTIF/COUNTIFSをセットで覚えると強いです。
8) SUMIF:条件に合う合計
例:
=SUMIF(B:B,"東京",C:C)
B列が東京の行のC列を合計します。
意味の分解
どこを見る? → B列
条件は? → “東京”
何を足す? → C列
9) SUMIFS:複数条件の合計
例:
=SUMIFS(C:C, B:B, "東京", D:D, ">=2025/01/01")
条件を複数指定できます。
複数条件で失敗しやすい点
条件範囲のサイズが揃っていない(列全体参照なら揃うが、部分範囲だとズレやすい)
日付の条件が文字列になっていて判定が狂う
10) COUNTIF:条件に合う件数
例:
=COUNTIF(B:B,"東京")
11) COUNTIFS:複数条件の件数
例:
=COUNTIFS(B:B,"東京", E:E,"完了")
使い分けの目安
「何件あるか?」→ COUNTIF(S)
「いくら合計か?」→ SUMIF(S)
表から探して取り出す関数
検索・参照は「別表(マスタ)から情報を引く」ための要です。名簿から部署名を引く、商品IDから単価を引く、顧客コードから担当者を引くなど、仕事の“データ連携”はここに集約されます。
12) XLOOKUP:検索して対応値を返す
例:
=XLOOKUP(A2, 商品表[商品ID], 商品表[単価], "該当なし")
A2の商品IDを商品表のID列で探し、同じ行の単価を返します。見つからなければ”該当なし”です。
XLOOKUPの強み
返す範囲を自由に選べる(右の列でも左の列でもOK)
見つからない場合を自然に指定できる(エラーだらけになりにくい)
表の列順を変えても壊れにくい(テーブル参照を使えばさらに強い)
13) VLOOKUP:縦方向検索(旧定番)
例:
=VLOOKUP(A2, 商品表!A:D, 4, FALSE)
A2を商品表のA列で探し、見つかった行の4列目(D列)の値を返します。FALSEは完全一致です。
VLOOKUPの注意点
列番号指定が必要(列を追加すると壊れやすい)
原則として検索列の右側しか返せない(左方向が苦手)
テーブル構造が変わる現場では事故が起きやすい
14) MATCH:位置を返す
例:
=MATCH(A2, 商品表[商品ID], 0)
0は完全一致。見つかった位置(上から何番目か)を返します。
15) INDEX:指定位置の値を返す
例:
=INDEX(商品表[単価], MATCH(A2, 商品表[商品ID], 0))
MATCHで見つけた位置をINDEXに渡して単価を返します。
INDEX+MATCHは少し難しく見えますが、「位置を探す」と「値を返す」を分けているだけです。複雑な表でも壊れにくいので、XLOOKUPが使えない環境や高度な参照をしたい場面で有効です。
文字と日付を整える関数
文字列と日付の整形は地味ですが、ここが整うと検索・集計の精度が上がります。表記揺れ、桁ズレ、日付の扱いが安定すると、#N/Aや集計漏れが大幅に減ります。
16) LEFT / RIGHT / MID:文字の切り出し
LEFT:
=LEFT(A2,3)(左から3文字)RIGHT:
=RIGHT(A2,4)(右から4文字)MID:
=MID(A2,3,2)(3文字目から2文字)
例:
支店コードが先頭3桁、個別番号が末尾4桁、といったルールがあるデータに便利です。
17) LEN:文字数
例:
=LEN(A2)
桁数のチェックに使えます。IDが本来10桁なのに9桁しかない、といった異常を見つけやすくなります。
18) TEXT:表示形式を整える
例:
=TEXT(A2,"yyyy/mm")
日付や数値を一定の表示に揃えたいときに使います。集計表や提出資料で、見え方を整える目的で便利です。
19) DATE / TODAY:日付を作る・今日を返す
DATE:
=DATE(2025,12,1)TODAY:
=TODAY()
締切日から残日数を出す、月次の基準日を自動化するなどで活躍します。
丸めやエラー回避に使う関数
最後に、計算結果の整形やエラー対策です。ここを押さえると、現場の“壊れやすさ”が下がります。
20) ROUND:四捨五入
例:
=ROUND(A2,0)(整数)例:
=ROUND(A2,2)(小数第2位)
補足:IFERROR(エラー回避)
頻出20に含めていませんが、実務では非常に役立ちます。
例:
=IFERROR(XLOOKUP(...), "未登録")
「エラーなら代替値」という方針を決められるので、表全体が#N/Aだらけになるのを防げます。
目的別に選ぶエクセル関数の早見表
一覧を見ても迷うのは、「自分がやりたいこと」に対して、どれが近道か分からないからです。ここでは“目的→推奨関数→用途例”で逆引きできるようにします。
集計を速くしたいときの選び方
| やりたいこと | 推奨するエクセル関数 | 使いどころの例 |
|---|---|---|
| 合計・平均・最大最小 | SUM / AVERAGE / MAX / MIN | 売上合計、平均単価、最高売上、最小納期 |
| 件数を数える | COUNT / COUNTA | 数値入力件数、入力済み件数、回答数 |
| 条件に合う合計 | SUMIF / SUMIFS | 支店別、担当別、期間別の売上合計 |
| 条件に合う件数 | COUNTIF / COUNTIFS | ステータス別件数、地域別件数、未回収件数 |
選び方の判断軸
条件が1つなら「〜IF」、2つ以上なら「〜IFS」
日付を条件に入れる場合、日付が文字列になっていないかを先に確認する
条件付き集計を多用するなら、列見出しを固定してデータ型を揃える(後半の表の作り方が効きます)
集計作業が速くなる“型”
「集計シート」と「データシート」を分ける
集計側はSUMIFS/COUNTIFSで集計し、フィルター手作業を減らす
条件セル(支店名や期間)をセル参照にして、同じ式を使い回す
検索と参照で迷ったときの選び方
| やりたいこと | 推奨するエクセル関数 | 判断のポイント |
|---|---|---|
| キーから値を取り出す | XLOOKUP | 検索範囲と戻り配列を分けられる。見つからない場合も指定できる。 |
| 旧式の表で縦検索 | VLOOKUP | 列番号指定が必要。表構造変更に弱い。 |
| 位置を知りたい | MATCH | 参照の場所(何番目)だけ欲しいときに軽い。 |
| 複雑な参照 | INDEX + MATCH | 列構造に強く柔軟。XLOOKUPが使えない環境でも強い。 |
迷わないための結論(運用のコツ)
基本はXLOOKUP(見つからない場合も含めて安定)
古いテンプレ・互換性要件があるならVLOOKUP
参照が複雑で、表の構造変化に備えたいならINDEX+MATCH
この方針を決めておくだけで、「検索系が増えるほど表が壊れる」問題を減らせます。
名寄せや整形をしたいときの選び方
| やりたいこと | 推奨するエクセル関数 | 例 |
|---|---|---|
| 文字を切る | LEFT / RIGHT / MID | 支店コード、商品分類コードの切り出し |
| 長さを確認する | LEN | ID桁数チェック、入力ミス検知 |
| 表示を整える | TEXT | 日付の年月表示、数値の表示統一 |
| 日付を作る | DATE / TODAY | 月次基準日、当日判定の自動化 |
整形が効く場面
検索キー(商品ID、顧客コード)の前後に空白がある
全角半角が混ざる
日付が「2025/12/1」と「2025-12-01」のように混在する
“数値に見える文字列”が混ざり、集計が狂う
整形は「見た目を整える」だけでなく、「集計・検索の精度を上げる下ごしらえ」だと考えると、優先度が上がります。
エクセル関数のよくあるエラーと直し方
エラーは避けたいものですが、実務では“エラーが出たらどう直すか”が重要です。慌てず、原因を型で切り分ければ復旧できます。
#N/Aと#VALUE!が出る典型原因
| エラー | よくある原因 | 直し方の方向性 |
|---|---|---|
| #N/A | 検索値が存在しない/表記揺れ(空白・全角半角)/一致条件が合わない | 検索値の整形、表記統一、見つからない場合の指定(XLOOKUP第4引数、IFERROR) |
| #VALUE! | 数値のはずが文字列/引数の型が違う/不要な空白が混ざる | 数値化、空白除去、引数を分解して検証 |
#N/A対処の実践手順(おすすめ)
検索値が本当に存在するか、検索範囲で目視確認する
検索値の前後に空白がないか確認する(貼り付けデータで多い)
全角半角や記号が混ざっていないか確認する(ハイフンの種類違いなど)
“見つからない場合”を設定して運用を安定させる(”未登録”など)
それでもダメなら、検索範囲・戻り配列の指定がズレていないか見直す
#VALUE!対処の実践手順
エラーが出るセルだけを単体で確認し、どの部分でエラーになるか分解する
文字列の数字(例:”1000″)が混ざっていないか確認する
日付が文字列になっていないか確認する
演算を一度やめて、途中計算のセルを作り、何が入っているか目で見る
現場でありがちなのは「見た目は数字・日付だが実体が違う」ケースです。ここを疑う習慣が付くと、復旧が速くなります。
参照がずれる問題を防ぐ方法
「式をコピーしたら壊れた」は、参照のルール(相対参照・絶対参照)で説明できます。
相対参照:コピーすると参照先が移動する(A2 → 右へコピーするとB2、下へコピーするとA3)
絶対参照:コピーしても参照先が固定される($A$2)
複合参照:列だけ固定($A2)、行だけ固定(A$2)
よくある事故パターン
参照元は固定すべき“マスタ表”なのに、相対参照のままコピーしてズレる
行方向にコピーしたいのに列もズレてしまい、条件範囲が崩れる
範囲の一部だけが固定になっておらず、数行目から結果が狂う
防止の考え方
“動いてほしい参照”と“固定すべき参照”を分ける
例:売上の数値列は行ごとに変わってよいが、税率セルは固定したい → 税率は$で固定集計や検索の「マスタ」は基本固定(絶対参照またはテーブル参照)
同じ式を縦にコピーするなら、列固定($A2)の出番が多い
実務でのおすすめ
可能ならテーブル(構造化参照)を使う
商品表[単価]のように参照でき、列追加・並べ替えにも強くなります。結果として“参照ズレ”の事故が減ります。
動かない式を復旧するチェックリスト
動かない式は「原因の場所」を特定できれば直ります。次の順に確認してください。
「=」から始まっている(先頭にアポストロフィが入って文字列になっていない)
かっこ「( )」の数が合っている(閉じ忘れがない)
引数の区切りが正しい(カンマやセミコロンなど、環境に合わせる)
ダブルクォーテーションが必要な文字列条件になっている(例:”東京”)
範囲指定が意図通り(列全体参照が重すぎないかも確認)
絶対参照にすべき場所が固定されている($の付け忘れがない)
検索系は「検索範囲」と「戻り配列」が同じ行数(列数)で対応している
検索値の前後に空白がない(貼り付けデータの典型)
数値が文字列になっていない(見た目だけで判断せず、別セルで計算できるか確認)
エラーが出る場合はIFERROR等で“運用上の返し方”を決めておく(未登録、0、空欄など)
このチェックリストは、焦って試行錯誤するより結果的に早く直ります。特に「参照」と「型(数値/文字列)」が原因の大半です。
仕事で使えるエクセル関数の組み合わせ例
単体の関数は“部品”です。仕事では部品を組み合わせて「判定」「検索の例外処理」「期間集計」といった“完成品”にします。ここでは現場で使い回しやすい3つを紹介します。
IFとANDとORで条件分岐を作る
例として「80点以上、かつ欠席0なら合格。それ以外は不合格」を作ります。
式:
=IF(AND(B2>=80, C2=0), "合格", "不合格")
意味の分解
AND(B2>=80, C2=0) が真なら “合格”
偽なら “不合格”
この形は、評価表、チェック表、審査条件などで頻出です。
ORを使う例
「AまたはBのどちらかに該当したら優先、それ以外は通常」
式:
=IF(OR(D2="A", D2="B"), "優先", "通常")
条件分岐の設計で失敗しないコツ
まず日本語で条件を書く(仕様を先に固める)
条件が増えたら、AND/ORで整理して読みやすくする
例外(空欄、未入力)を最初に処理する
例:=IF(A2="","",IF(AND(...),"合格","不合格"))
こうすると未入力行が無駄に“不合格”判定にならず、表が見やすくなります。
XLOOKUPとIFで見つからない場合を安全にする
検索系で一番困るのは「該当データがない」ケースです。現場では“未登録”が混ざるのが普通なので、最初から安全策を入れると表が安定します。
XLOOKUPの見つからない場合を使う
例:
=XLOOKUP(A2, 商品表[商品ID], 商品表[単価], "未登録")
この形にしておけば、未登録があっても#N/Aになりません。提出資料や集計では、この差が大きいです。
IFERRORでまとめて安全にする
例:
=IFERROR(XLOOKUP(A2, 商品表[商品ID], 商品表[単価]), "未登録")
XLOOKUP側で設定しても、IFERRORで囲んでも構いません。運用として「エラーは出さず、未登録で返す」と決めておくと、後工程(ピボットや集計)も安定します。
さらに実務的な工夫
未登録は文字ではなく0で返して集計しやすくする:
..., 0)
ただし、0が意味を持つ場合(本当に0円があり得る)には、”未登録”のほうが誤解が少ないです。用途に合わせて決めてください。
SUMIFSと日付条件で月次集計する
月次集計は“条件付き集計の王道”です。例として「今月の東京支店の売上合計」を作る場合を考えます。
まず、集計期間の開始日と終了日をセルで用意します。
開始日セル:例)G1
終了日セル:例)H1
次にSUMIFSを組み立てます。
例:
=SUMIFS(金額範囲, 支店範囲, "東京", 日付範囲, ">="&G1, 日付範囲, "<="&H1)
ポイント
条件をセル参照にすることで、月が変わってもG1/H1を変えるだけで済む
日付範囲のデータ型が日付として正しく入っていることが大前提(文字列日付は事故の元)
支店名の表記揺れ(東京、東京都、東京支店など)があると集計漏れが出るため、マスタ化や入力規則で揃えると強い
この型を覚えると、担当別・商品別・チャネル別など、条件を差し替えるだけで集計が作れます。
エクセル関数を定着させる練習方法と時短ワザ
最後に「使えるようになったものを、忘れずに積み上げる」ための方法です。関数は一度身につくと、日々の作業のストレスを確実に減らしてくれます。
自分用チートシートの作り方
最短で定着するのは、自分の業務に直結したチートシートを作ることです。おすすめは、次の3列で1枚のシートを作る方法です。
目的(何をしたいか)
使う関数(単体/組み合わせ)
コピペ用の最小例(自分の表の列に合わせた式)
例(イメージ)
| 目的 | 関数 | 最小例 |
|---|---|---|
| 支店別の売上合計 | SUMIFS | =SUMIFS(金額,支店,"東京",日付,">="&開始,日付,"<="&終了) |
| 商品IDから単価を引く | XLOOKUP | =XLOOKUP(ID,商品ID列,単価列,"未登録") |
| 合否判定 | IF+AND | =IF(AND(点数>=80,欠席=0),"合格","不合格") |
作るときのコツ
“正しい式”だけでなく、“つまずきポイント”も1行で添える(例:見つからない場合、参照固定など)
自分の表で実際に動いた式を保存する(一般例より価値が高い)
週次・月次の作業が終わったら、1つだけ追記する(増やしすぎない)
これを続けると、検索する回数が目に見えて減ります。
オートサムと関数の入力支援を使う
関数を速く入力するコツは「手で全部打たない」ことです。Excelには入力を助ける機能がいくつもあります。
オートサム:合計を素早く入れる
合計したい数値列の下(または右)のセルを選び、オートサムを使うとSUMが自動挿入されます。関数の入力支援:関数名の候補、引数の説明が表示される
引数の順番を間違える事故が減ります。
特に初心者のうちは、入力支援を「学習」ではなく「確認」として使うのが効果的です。引数の意味を表示で確認しながら組み立てると、ミスが減って定着が早くなります。
ミスを減らす表の作り方
関数が壊れる原因は、式だけでなく“表の作り”にあります。表が整うほど、関数は安定して長持ちします。
最低限守りたいルール
列ごとにデータ型を揃える
数値列に文字、日付列に文字列日付が混ざると、集計・比較が壊れやすいです。見出し行を固定し、列の意味をぶらさない
同じ列に違う意味の値を入れない(例:金額列に「未定」を入れるなど)マスタ(商品一覧・顧客一覧)は別表にし、検索・参照で引く
直書き修正を減らすほど、ミスが減ります。表記揺れを減らす
支店名、担当名、ステータスなどは入力規則や選択式にすると、集計漏れが激減します。参照が増える表は“固定”を意識する
マスタは固定、条件セルは固定、データ行は相対、という基本方針を持つと崩れにくくなります。
表作りは一見遠回りに見えますが、関数の事故対応の時間が減るため、トータルでは確実に時短になります。
まとめ
エクセル関数は、暗記よりも「目的別に選ぶ」「よくある失敗を先に潰す」「組み合わせで仕事の形にする」を意識すると、一気に使えるようになります。
まずは頻出20選を“動かせる”状態にする(合計・条件・検索・整形・丸め)
迷ったら早見表で「集計」「検索」「整形」のカテゴリに当てはめる
エラーは#N/A(見つからない)と#VALUE!(型が違う)を起点に切り分ける
参照ズレは相対/絶対参照のルールで防ぐ
最後はチートシート化し、業務の中で1つずつ積み上げる
もし次に取り組むなら、「XLOOKUPでマスタから引く」→「SUMIFSで条件付き集計」→「IF+ANDで判定」と進めると、現場で役に立つ順に力が付きます。これだけでも、手作業が減ってミスが減り、提出物の安心感が大きく変わります。