会議用の資料を印刷したら、画面では見えていたはずのコメントが一切出てこない――。逆に、社外提出用の帳票に、うっかり内部メモのコメントまで印刷されて冷や汗をかいたことはないでしょうか。
Excelのコメント印刷は、「ページ設定」と「表示状態」の両方を正しく押さえていないと、思ったとおりの結果になりません。しかも、Microsoft 365・2019・2016などバージョンごとに画面や名称が少しずつ違うため、毎回ネット検索しては迷子になってしまいがちです。
本記事では、「コメントを見たまま印刷する」「シート末尾に一覧で印刷する」「一切印刷しない」という3つの基本パターンを、バージョン差も踏まえながら丁寧に解説いたします。あわせて、「コメントが印刷されない」「一部だけ印刷したくない」といったよくあるトラブルの対処法や、社内レビュー・監査・社外提出といった業務シーン別のおすすめ設定もご紹介します。
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Excelのコメントはそのままでは印刷されない?基礎知識を整理
Excelのコメント(およびメモ)は、初期設定のままでは印刷に含まれない場合が多いです。画面上ではコメントが見えているのに、印刷したら何も出てこない、というお悩みは、この設定が原因であることがほとんどです。
Excelでは、現在「コメント」と「メモ」が別機能として扱われています。印刷の挙動にも違いがありますので、まずはこの点を整理しておくことが重要です。
コメントとメモの違いと印刷への影響
Excelでは、概ね次のように区別されています。
コメント(新しいコメント)
吹き出しにユーザー名や返信が付けられる会話形式
スレッドとして複数人でやり取りができる
バージョンによっては、シート上に表示されたとおりには印刷できず、シート末尾などに一覧形式で印刷される仕様の場合があります
メモ(旧来のコメント)
セル右上に赤い三角形が表示される従来の形式
吹き出しを好きな位置に動かし、その状態で印刷することが可能
「シートに表示されたとおり」「シートの末尾」など印刷形式を柔軟に選べます
本記事では両者をまとめて「コメント」と呼びつつ、必要な箇所で「メモ」の挙動も補足していきます。
デフォルト設定ではコメントは印刷されない理由
多くの環境で、Excelの初期設定は「コメントを印刷しない」になっています。
これは、コメントが内部メモや一時的な指示に使われることが多く、外部に渡す印刷物には不要であるケースが多いためです。
その結果、次のような現象が起こります。
画面上ではコメントが表示されている
しかし印刷プレビューや印刷結果には何も表示されない
この状況を解消するには、印刷前に「ページ設定」でコメントの印刷方法を明示的に指定する必要があります。
Excelでコメントを印刷する基本手順(Microsoft 365 / 2019 / 2016共通イメージ)
ここでは、代表的なバージョンで共通して使える「基本の流れ」をご説明いたします。細かなボタン名称はバージョンによって多少異なりますが、全体の考え方は同じです。
印刷したいコメントを表示状態にする
まず、印刷対象となるコメント(またはメモ)を画面上に表示させます。
コメントが付いているセルを選択します。
リボンの 「校閲」タブ を開きます。
以下のいずれかをクリックします。
「コメントの表示/非表示」
「すべてのコメントを表示」
ポイントは、「画面に表示されているコメントだけが印刷される」設定を選ぶことがあるためです。印刷したいものは表示、不要なものは非表示にしておくと、印刷結果をコントロールしやすくなります。
ページ設定で「コメント」の印刷方法を変更する
次に、印刷時にコメントをどのように扱うか、ページ設定で指定します。
リボンの 「ページレイアウト」タブ を開きます。
「ページ設定」グループ右下の小さな矢印をクリックするか、「印刷タイトル」ボタンをクリックして、ページ設定ダイアログ を開きます。
ダイアログ内の 「シート」タブ を選択します。
「コメント」または「コメントとメモ」という項目から、以下のいずれかを選択します。
「なし」:コメントを印刷しない
「シートの末尾」:最後のページにコメントを一覧印刷
「シートに表示されたとおり」または類似の名称:画面上の吹き出しをそのまま印刷
ここで何を選ぶかによって、印刷物におけるコメントの出方が大きく変わります。
印刷プレビューでコメントの表示を確認する
設定を変更した後は、必ず印刷プレビューで確認してください。
「ファイル」>「印刷」 を選択するか、
Ctrl + Pを押します。プレビュー画面で、次の点を確認します。
コメントがセルの横に吹き出しとして表示されているか
または、シート末尾のページに一覧表示されているか
想定どおりであれば、そのまま印刷します。
誤った設定のまま印刷してしまうと、コメントが一切出ない、逆に出してはいけないメモが出てしまう、といったリスクがありますので、プレビュー確認は必須です。
目的別|コメントの印刷パターン3つ
ここからは、よく使われる印刷パターンを「目的別」に整理して解説します。
画面に表示されたとおりコメントを印刷する
用途のイメージ
上司や同僚とのレビュー・赤入れ
会議資料で、元データの近くにコメントを表示したい場合
設定のポイント
印刷したいコメントのみを表示しておきます。不要なコメントは非表示にします。
ページ設定の「シート」タブで、コメント欄を 「シートに表示されたとおり」 に設定します。
この設定では、セルの近くに吹き出しとしてコメントが印刷されるため、「どの数値に対するコメントか」が直感的に分かります。
シートの末尾にコメントだけをまとめて印刷する
用途のイメージ
監査用・レビュー用として、コメント内容を一覧で確認したい
シート自体は見やすく表示しつつ、コメントは別ページで管理したい
設定のポイント
対象となるコメント・メモを表示状態にします。
ページ設定の「シート」タブで、コメント欄を 「シートの末尾」 に設定します。
この設定では、印刷範囲の最後に「セル番地」と「コメント内容」が一覧で出力されます。監査証跡やチェック履歴として保管する場合に有効です。
コメントを印刷しないようにする(非表示・設定オフ)
用途のイメージ
顧客・取引先に渡す資料
社外提出の見積書や報告書など
設定のポイント
ページ設定のコメント欄を 「なし」 に設定します。
そもそも不要なコメントは削除するか、ファイル共有前にすべて非表示にします。
特に社外向け資料の場合、内部用メモや個人名を含むコメントが印刷されてしまうと、情報漏えいにつながる可能性があります。印刷前に必ず設定とプレビューを確認してください。
バージョン別の操作の違い(Excel 365 / 2019 / 2016など)
基本的な考え方は同じですが、画面やボタンの名称がバージョンによってわずかに異なります。
リボン操作で設定する場合
Microsoft 365 / 2019 以降(Windows)の例
「ページレイアウト」タブをクリックします。
「ページ設定」グループの右下の矢印をクリックします。
「シート」タブを開き、「コメントとメモ」などの項目から印刷方法を選択します。
Excel 2016 など旧バージョンの例
「ページレイアウト」タブ → 「印刷タイトル」ボタンをクリックします。
ページ設定ダイアログの「シート」タブを開きます。
「コメント」欄から「なし」「シートの末尾」「シートに表示されたとおり」を選択します。
リボンのデザインは変わっても、
「ページレイアウト → ページ設定 → シート → コメント」
という流れは共通であると覚えておくと迷いにくくなります。
Altキーのショートカットで素早く設定する方法
マウス操作よりキーボード操作に慣れている方は、Altキーのシーケンスを使うと効率的です(Windows環境の例)。
対象のシートを開いた状態で、
Altキーを押します。続けて
P→Iの順に押し、ページ設定ダイアログを開きます。Alt+Mなどで「コメント」欄に移動し、矢印キーで設定を変更します。Enterで確定し、Ctrl + Pで印刷プレビューを開いて確認します。
頻繁にコメント設定を切り替える場合、ショートカットを習得しておくと作業時間短縮に役立ちます。
よくあるトラブルと対処法
印刷プレビューにコメントが表示されない
主な原因と対処方法は次のとおりです。
原因1:コメントが非表示になっている
対処:
「校閲」タブで「すべてのコメントを表示」をクリックし、印刷したいコメントが表示されているか確認します。
原因2:ページ設定が『なし』になっている
対処:
「ページレイアウト」タブ → ページ設定 → 「シート」タブで、コメント欄を
「シートの末尾」
または「シートに表示されたとおり」
に変更します。
原因3:新しいスレッドコメントの仕様
一部のバージョンでは、スレッド形式のコメントがシート上の吹き出しとしては印刷されず、シート末尾にまとめて印刷される仕様の場合があります。
対処:
印刷プレビューの最後のページを確認し、コメント一覧が出力されていないかを確認します。
一部のコメントだけ印刷したくない・位置が重なる
特定のコメントだけ印刷対象から外したい場合
印刷したくないコメントのセルを選択し、「コメントの表示/非表示」で非表示にします。
そのうえで、ページ設定を「シートに表示されたとおり」にしておけば、表示しているコメントだけが印刷されます。
コメント同士が重なって読みにくい場合
コメントの枠をドラッグして位置をずらしたり、サイズを広げたりしてから印刷します。
印刷プレビューで読みやすさを確認し、必要に応じて調整を繰り返してください。
共有・配布時の注意点(個人的なメモを残さない)
印刷物やPDFとして配布する際には、次の点にご注意ください。
個人名や評価が書かれた内部メモがコメントに残っていないか
コメント印刷設定が「シートの末尾」になっており、意図しないコメント一覧が最後に出ていないか
PDF化した際にもコメントが含まれていないか
社外向け資料では、コメントは原則として印刷・出力しない運用にしておくと安全です。
業務シーン別おすすめ設定例
最後に、実務でよくあるシーン別におすすめ設定をご紹介いたします。
上司レビュー・赤入れ用資料
目的
数値とコメントを並べて、どこにどんな指摘があるかを一目で共有したい
おすすめ設定
コメント印刷方法:「シートに表示されたとおり」
補足運用:
レビュー済みで不要になったコメントは削除または非表示にしておく
コメントの位置をセルの近くに整えておくことで、印刷物が読みやすくなります
監査・打ち合わせ用のチェックリスト
目的
チェック内容をコメントとして残し、後から一覧で振り返りたい
おすすめ設定
コメント印刷方法:「シートの末尾」
補足運用:
コメント内に「担当者」「日時」「対応状況」などを記載すると、監査証跡として有用です。
複数シートを扱う場合は、コメントの先頭にシート名を入れておくと、どのシートのコメントかが明確になります。
社外提出資料でコメントを残さないケース
目的
顧客・取引先には、必要な数値やグラフのみを見せたい
おすすめ設定
コメント印刷方法:「なし」
補足運用:
提出前に、コメントそのものを削除するか、別ファイルとして保存しておきます。
元ファイルを共有する場合も、不要なコメントが残っていないかを必ず確認してください。