「ダウン症とわかり、中絶しました。」
その一文を誰にも言えないまま、夜中にスマートフォンで「ダウン症 中絶しました 知恵袋」と検索してしまう——そのお立場にいらっしゃるのではないでしょうか。
当時の決断は、限られた時間と情報、経済状況や家族の事情の中で、必死に考え抜いた末のものだったはずです。それでもなお、「命の選別をしてしまったのでは」「母親失格なのでは」と、ご自身を責め続けてしまう方が少なくありません。
本記事は、そのような深い罪悪感や後悔、将来への不安を抱える方に向けて、Yahoo!知恵袋などに寄せられた声の傾向と、ダウン症・出生前診断・中絶に関する基礎知識、そして心のケアや相談先の選び方を整理してお伝えするものです。中絶という選択の是非を裁くのではなく、「あのときの自分」と「これからの自分」を少しでもやさしく受け止め直すための材料として、ご活用いただければ幸いです。
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ダウン症・出生前診断・中絶の基礎知識を整理する
ダウン症とはどのような状態か(ごく基本的な整理)
ダウン症(21トリソミー)は、一般に21番染色体が1本多い状態を指します。
特徴として、知的発達の遅れや先天性心疾患などの合併症がみられることがありますが、一人ひとりの状態には大きな個人差があります。支援を受けながら、地域で生活したり働いたりしている方も多く存在します。
ここでは、「重い/軽い」といった単純なラベルでは語り切れない、幅のある状態であるという点だけ押さえていただければ十分です。
NIPT・羊水検査など出生前診断のポイント
出生前診断には、いくつかの方法があります。
NIPT(新型出生前診断)
妊婦の血液から、胎児の一部の染色体の数的異常の有無を推定する検査です。非常に高い精度を持つとされていますが、「可能性」を示す検査であり、確定診断ではありません。羊水検査
子宮内の羊水を採取し、胎児の染色体数や一部の構造を詳しく調べる検査です。NIPTで陽性と出た場合、確定診断として推奨されることが一般的です。
検査を受けるかどうか、陽性であった場合にどうするかは、本来、十分な説明と遺伝カウンセリングを受けたうえで、妊婦とパートナーが自分たちの価値観に沿って考えるべき非常に個人的な問題です。
どの選択にも負担と葛藤が伴うため、「どれが正しいか」ではなく「自分たちにとって納得できるかどうか」が重要になります。
日本で人工妊娠中絶が認められる時期と法律の枠組み
日本で人工妊娠中絶は、「母体保護法」に基づいて、一定の条件を満たす場合に指定医師が実施できると定められています。一般的な枠組みとしては、次の点が挙げられます。
中絶が認められるのは、通常 妊娠21週6日まで(満22週未満) とされています。
それ以降は、胎児が母体外で生命を維持しうると考えられるため、法的にも中絶は認められていません。
実際の適応や具体的な手順は、医師の判断と、妊婦本人および配偶者等の同意が必要です。
ここでお伝えしている内容は、あくまで「一般的な説明」です。個別の判断は必ず、担当医に相談していただく必要があります。
知恵袋などに寄せられる「中絶しました」という声の傾向
中絶した人の主な理由・背景
Yahoo!知恵袋やブログ、インタビュー記事などを見ていると、「ダウン症とわかり中絶しました」と書く方の背景は非常に多様です。
経済的にこれ以上子どもを育てる余裕がない
すでに他の子どもがいて、その子どもたちの生活や教育を守る必要がある
自身やパートナーの健康状態、メンタルの状態が不安定である
合併症や医療的ケアが長期にわたる可能性があり、生活の見通しが立たない
多くの場合、「軽い気持ちで決めた」というケースはほとんどありません。むしろ、時間が限られた中で、何度も話し合い、涙を流しながら出した結論であることが多いと語られています。
中絶後に多く聞かれる後悔と、その裏側にあるもの
中絶後、知恵袋などには次のような後悔の言葉が寄せられています。
「あのとき産んでいたら、今どうなっていただろう」
「抱きしめることもできずに終わってしまった」
「あの子は自分を恨んでいるのではないか」
また、「命の選別」「命を選ぶ」という強い言葉が社会の中で使われることで、後悔や罪悪感がさらに重く感じられてしまうこともあります。
しかし、現実には、どの家庭にとっても「どんな状況でも必ず育てられる」環境が整っているわけではありません。
住んでいる地域の支援制度、祖父母や親族のサポートの有無、仕事や収入、持病やメンタルの状態など、見えない条件が複雑に絡み合っています。
後悔があることと、その決断が間違っていたかどうかは、本来切り離して考える必要があります。
「産んだ人」との比較に苦しむ気持ちについて
一方で、ダウン症のあるお子さまを育てている家族のエピソードや、明るい日常の様子を目にすると、
「あの人たちは産んだのに、自分は中絶を選んでしまった」
「同じ状況でも、自分は逃げてしまったのではないか」
と、自分をより強く責めてしまう方も多くいらっしゃいます。
ただし、メディアやSNSに取り上げられるのは「うまくいっている一部のケース」であることも少なくありません。支援体制が整っている家庭とそうでない家庭、パートナーの協力度合い、居住地域の制度など、前提条件は大きく異なります。
他者との比較は、あなたを不必要に苦しめやすいものだということを、まずは知っておいていただきたいポイントです。
中絶後に起こりやすい心の反応とその特徴
喪失体験としての中絶(悲嘆反応)
中絶は、身体への負担に加え、大きな「喪失体験」です。
流産や死産と同様に、あるいはそれ以上に、「自分の決断が関わっている」という点で、悲しみが複雑になりやすい側面があります。
何をしていても中絶のことを考えてしまう
妊婦さんや赤ちゃんを見ると胸が締め付けられる
病院や検査を受けた場所の近くに行くと強いフラッシュバックが起きる
これらは、多くの方が経験しうる自然な反応です。
「時間が経っているのに、まだこんなに苦しい自分はおかしい」と感じる方もいらっしゃいますが、心の回復には身体と同じように個人差があり、「○か月で元に戻る」といった決まった目安があるわけではありません。
罪悪感・自己否定感が強くなりやすい理由
中絶後のつらさが増幅しやすい理由の一つは、「自分が同意書にサインした」「自分が決断した」と感じている点です。
自分が決めた
だからこそ、自分を責め続けなければならない
と考えてしまいがちですが、当時のご自身は、
限られた時間
限られた情報
限られた体力・精神力
家庭や仕事などの現実的な制約
の中で、できる限りの選択をしようとしていたはずです。
今の自分だから見える選択肢を、「当時の自分」に求め続けると、つらさが終わらなくなってしまいます。
パートナーや家族との感じ方の違い
中絶後、パートナーや家族との感じ方の違いに戸惑う方も多くいらっしゃいます。
パートナーは前を向いているように見えるのに、自分だけが立ち止まっていると感じる
家族から「もう忘れなさい」「仕方なかった」と言われ、かえって傷つく
悲しみの出方や表現方法は、人それぞれです。
「どちらがよりつらいか」「どちらのほうが悲しんでいるか」を比べる必要はありません。
感じ方が違うからこそ、お互いの立場や感情を少しずつ言葉にしていくことが大切です。
自分を責めすぎないために、今日からできること
「当時の自分」が置かれていた状況を振り返る
自分を責め続けてしまうときは、あえて当時の状況を紙に書き出してみる方法があります。
家計の状況(収入・支出・貯蓄など)
家族構成・実家のサポートの有無
自分やパートナーの健康状態・メンタルの状態
医師から説明されたリスクや今後の見通し
こうした条件をまとめたうえで、「もし同じ条件の友人が同じ決断をしていたら、自分はその友人を責めるだろうか」と自問してみてください。
多くの方は、「責められない」「むしろ支えたい」と感じます。その視線を、少しずつご自身にも向けてあげることが、自責から離れる第一歩になります。
言葉にしてみる(手紙・日記・小さな儀式のアイデア)
気持ちを整理するために、次のような方法も役立つ場合があります。
生まれてこられなかった子どもに宛てて手紙を書く
誰にも見せない前提で、日記に思い浮かぶ言葉をそのまま書き出す
検査結果を聞いた日や手術の日など、節目に花を飾ったり、静かに手を合わせたりする
これらは宗教的な儀式を強制するものではなく、「あの子を大切に思っている自分の気持ち」を形として受け止めるための小さな行為です。
パートナーや信頼できる人とのコミュニケーション
「相手を傷つけてしまうのでは」「何と言えばよいか分からない」と感じると、何も話せなくなりがちです。
完璧な言葉を探す必要はありません。
「今でもあのときのことを思い出す」
「自分を責めてしまう瞬間がある」
といった、自分の状態を短い言葉で伝えるだけでも、関係性が少し変わることがあります。
声に出すのが難しい場合は、LINEや手紙、メモなど、自分にとって話しやすい方法から試してみてください。
専門家や支援団体に相談するという選択肢
相談できる専門家の種類
気分の落ち込みが続いている、眠れない、食欲がない、日常生活に支障が出ていると感じる場合には、専門家への相談も検討していただきたい状況です。
産婦人科・周産期センター
身体のケアだけでなく、必要に応じて心のサポート窓口や専門機関を紹介してもらえる場合があります。心療内科・精神科
うつ状態や不安障害などの可能性も含め、薬物療法やカウンセリングについて相談できます。臨床心理士・公認心理師などのカウンセラー
感情の整理や、これからの生活をどう整えていくかについて、時間をかけて一緒に考えてくれます。
遺伝カウンセリング・ピアサポートの活用
出生前診断や中絶経験について、専門の遺伝カウンセラーに相談できる窓口や、同じ経験をした人同士が話し合える「ピアサポートグループ」も、徐々に整備されつつあります。
同じ立場の人と話すことで、「自分だけではない」と感じられる
医療者とは違う視点から、経験談や工夫を聞くことができる
といったメリットがあります。オンラインで参加できる場もあるため、人と直接会うことに抵抗がある場合でも検討しやすい選択肢です。
相談先を探すときのチェックポイント
相談先を探す際は、次の点を確認されることをおすすめいたします。
医療機関やカウンセラーの資格・所属・専門分野が明示されているか
出生前診断や中絶後のケアに関する相談実績があるか
「こうすべき」と決めつけず、話をじっくり聴く姿勢があるか
一度相談して「合わない」と感じた場合には、別の専門家を探していただいて構いません。
ご自身が安心して話せる相手と出会うことが何より重要です。
これから妊娠・出産を考える人への情報整理
次の妊娠を考えるタイミングと医師への相談事項(一般論)
「いつになれば次の妊娠を考えてよいのか」という問いに、明確な正解はありません。
一般的には、
身体の回復状況(出血やホルモンバランスなど)
心の状態(過去のことを振り返っても、日常生活を何とか送れるかどうか)
の両方を踏まえ、かかりつけの産婦人科で相談することが望ましいとされています。
中絶の経緯を話すこと自体が苦しい場合もありますが、適切な医療を受けるためには重要な情報です。信頼できる医師を選び、可能な範囲で共有していただくことをおすすめいたします。
出生前検査との向き合い方(情報との距離の取り方)
次の妊娠で、再びNIPTや羊水検査を受けるかどうかについても、人それぞれです。
「今度こそ、できるだけ早く状況を知りたい」と感じる方
「検査でまた同じ選択を迫られるのが怖く、受けたくない」と感じる方
どちらも自然な反応です。
大切なのは、
検査の目的(安心のためか、選択のためか)を事前に整理すること
検査を受ける/受けないのどちらの選択でも、パートナーと十分に話し合っておくこと
陽性だった場合の選択肢やサポート体制について、事前に医師・カウンセラーから説明を受けること
です。検査を「受けるか否か」だけでなく、その背景にある自分たちの価値観を見つめる作業が重要になります。
自分たちの価値観を整理するための質問リスト
次のような問いを、ご自身やパートナーと一緒に考えてみてください。
私たちが「どうしても守りたい」と感じる生活や健康状態は何か
親やきょうだい、友人、行政サービスなど、どの程度の支援を現実的に頼ることができるか
将来の家族像や働き方、暮らし方について、何を大切にしたいと考えているか
これらに「正しい答え」はありません。話し合うプロセス自体が、次の選択を支える土台になります。
よくある質問(FAQ)
中絶したことをいつまで悩み続けるのでしょうか?
「完全に忘れられる日が来るか」という意味では、明確な終わりがない場合もあります。
しかし、多くの方は、
最初は思い出すたびに涙が止まらない
時間が経つにつれ、「思い出すけれど、前ほど崩れない」状態に変化していく
と振り返っています。
もし、数か月以上にわたって日常生活に大きな支障が出ている場合や、「死にたい」といった気持ちが強くなる場合には、一人で抱え込まず、早めに専門家に相談していただくことを強くおすすめいたします。
誰かに打ち明けるべきでしょうか、それとも一人で抱えるべきでしょうか?
「必ず誰かに打ち明けるべき」「言わないほうがよい」といった一般的な正解はありません。
話すことで楽になる場合もあれば、相手の反応によって傷つくこともあります。
まずは専門職(医師・カウンセラー)に話し、そのうえで家族や友人に伝えるかどうかを考える、といった段階的な方法もあります。
重要なのは、「自分が今、誰にどこまで話したいのか」を、自分のペースで選べることです。
次の子どもに「ごめんね」と思ってしまうのはおかしいですか?
中絶後に生まれたお子さまに対して、
「あなたが生まれたのは、あの子を犠牲にしたからではないか」
「ごめんね、と心の中でいつも思ってしまう」
と感じる方もいらっしゃいます。
これは、命や子どもを非常に大切に考えているからこそ生じる感情でもあり、「おかしいこと」「母親失格の証拠」ではありません。
ただし、その感情があまりに強く、子どもに向き合えない、育児に支障が出ていると感じる場合には、その気持ちをそのまま専門家に相談してみる価値があります。
「そんなふうに感じる自分」を一緒に受け止め、整理するサポートを受けることができます。
まとめ ─ あなたの選択とこれからの人生について
この記事でお伝えしたかったこと
本記事でお伝えしたかったのは、次のような点です。
ダウン症と診断され、中絶を選ばざるを得なかった方は、日本にも少なくありません。出生前診断で異常が指摘された場合、多くの方が苦しい選択を迫られています。
一般的な人工妊娠中絶も、毎年多くの件数が行われており、「特別な誰かだけ」に起きる出来事ではありません。
だからといって、あなたのつらさが軽いという意味では決してありません。ただ、「自分だけが異常な存在だ」「許されない存在だ」という思い込みからは、少し距離を置いていただきたいということです。
当時のあなたは、限られた時間・情報・体力・生活状況のなかで、必死に考え、悩み、選択をされたはずです。
その事実だけは、どうか否定しないでいただきたいと本ツールは考えます。
今の自分を守るために覚えておいてほしいポイント
最後に、今のご自身を守るためのポイントを整理いたします。
自分を責め続けても、時間を巻き戻すことはできません。けれど、「あの子を大切に思っていた自分」「今も思い続けている自分」は、消えることはありません。
つらさが長く続いていると感じるときは、一人で抱え込まず、医師・カウンセラー・支援団体など、外部の力を借りることも「弱さ」ではなく「大切な選択」です。
法律や支援制度、医療は変化していきます。今後、再度妊娠を考えるときには、必ず最新の情報を医師等から確認し、ご自身とパートナーの価値観に沿った選択ができるよう準備していただくことをおすすめいたします。
「ダウン症 中絶しました 知恵袋」と検索されるほど、今まさに苦しいお気持ちの中にいらっしゃることと思います。
本記事の内容が、少しでも「自分を責め続ける時間」から、「自分とこれからの人生を大切にする時間」へと、わずかでも歩みを進めるきっかけとなれば幸いです。