第二種電気工事士を取ったのに、「この作業って自分がやっていいのか」で手が止まる。現場でもDIYでも、いちばん怖いのは“なんとなく”で判断してしまうことです。電気工事は感電や火災のリスクがあり、従事できる範囲も法律上の線引きが存在します。
本記事では、第二種電気工事士でできること・できないことを、作業名のイメージではなく設備区分→軽微の該当→作業類型の順に整理し、迷わず判断できるようにまとめます。コンセント・照明・分電盤・エアコンなどの“よくあるケース”を具体例にしながら、禁止領域や注意点、さらに範囲を広げる方法まで一気に理解できます。
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電気工事士2種でできることの法的な結論
第二種電気工事士が従事できるのは一般用電気工作物等
結論から言うと、第二種電気工事士が従事できるのは、原則として一般用電気工作物等に係る電気工事です。試験機関の整理では、一般用電気工作物等は一般用電気工作物および小規模事業用電気工作物を指します。ここを定義として固定しておくと、情報が混ざりにくくなります。
「一般家庭や身近な小規模施設の低圧設備が中心」と理解すると、現場のイメージが掴みやすいでしょう。反対に、ビル受電設備・工場の受電設備など、規模や受電方式が変わると自家用電気工作物の領域に入ってくる可能性が高くなります。
第二種単体では自家用電気工作物の工事は原則対象外
第二種は便利な資格ですが、万能ではありません。自家用電気工作物の工事に従事できる範囲は、第一種や認定電気工事従事者など別枠の制度と関係します。試験機関の資格概要でも、第二種は一般用電気工作物等に限定される整理が示されています。
また、法令上の「自家用電気工作物」の定義は施行規則で定められており、発電所・変電所・一定規模以上の需要設備などが含まれます。現場で「それっぽい」ではなく、定義に寄せて判断することが重要です。
できるかどうか以前に、軽微な工事は資格不要の例外がある
混乱の原因になりやすいのが「資格があるからできる」と「そもそも資格がなくてもよい」が混ざることです。経済産業省は、電気工事士法施行令第1条で電気工事から除外される“軽微な工事”を列挙しており、そこに該当する場合は電気工事士等の資格が不要とされています。
したがって、次の考え方が安全です。
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まず「軽微の列挙に該当するか」を確認する
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該当しないなら、原則として「電気工事(要資格)」側に倒して考える
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そのうえで、対象設備が一般用電気工作物等なら第二種の範囲になり得る
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自家用なら、第一種や認定など別枠の要件を確認する
電気工事士2種でできることを判断する5ステップ
現場では「コンセント交換できますか?」「照明の交換って2種要る?」といった質問が、工程の途中で突然飛んできます。そこで、迷いにくい判断手順を5ステップにまとめます。これはDIYにも現場にも共通して使える、事故と違法を避けるための“型”です。
ステップ1 対象は一般用電気工作物等か自家用電気工作物か
最初に確認すべきは、作業内容ではなく対象設備の区分です。第二種でできることは一般用電気工作物等が基本であり、ここが自家用なら前提が崩れます。
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一般住宅:一般用電気工作物が中心
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小規模店舗・小規模事務所:一般用+小規模事業用が混在し得る(改正文脈で要注意)
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受電設備(キュービクル等)がある建物:自家用の可能性が高い(まず疑う)
なお、小規模事業用電気工作物は比較的新しい整理で、情報が古いと“全部一般用”として説明されていることがあります。用語が出てきたら、一次情報の更新性を確認する癖をつけると安全です。
ステップ2 作業が軽微な工事の列挙に当てはまるか
次に、経産省の整理に沿って、軽微な工事(施行令で電気工事から除外)に該当するかを見ます。ポイントは「軽微っぽい」ではなく、列挙要件に合致するかどうかです。
典型的には、コードやキャブタイヤケーブルを接続器や開閉器に接続する工事、電気機器端子へのねじ止めなどが列挙されています(ただし範囲・条件は列挙本文で確認が必要です)。
ステップ3 電線相互の接続や壁内配線の変更を伴うか
軽微に当てはまらない場合、次に見るのが「電線相互の接続」や「壁内配線の変更・増設」など、保安上の影響が大きい作業かどうかです。ここに該当する場合は、原則として要資格側になります(具体の境界は施行令・資料に依拠)。
ステップ4 第二種の従事範囲に入るか(一般用電気工作物等か)
ステップ1で一般用電気工作物等と判定でき、ステップ2で軽微でない(=電気工事側)なら、そこで初めて「第二種の守備範囲か」を確認します。第二種は一般用電気工作物等の電気工事に従事できる整理です。
ステップ5 責任分界・契約・体制(監督・外注)を確認する
最後に重要なのが、資格の有無とは別の「体制」の話です。現場では、資格があっても経験が浅い場合は監督が必要な場面がありますし、DIYでも責任分界や事故時の補償が問題になります。
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施工経験が浅い/不明点が残る:有資格者の監督下で判断
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分電盤内部や通電管理が難しい:無理に進めず上長・専門業者へ
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請負・副業:資格範囲に加え、業務体制・契約・保険・法令上の手続きまで含めて検討(安易に請け負わない)
電気工事士2種でできることの具体例 住宅と小規模施設でよくある作業
ここでは、一般用電気工作物等で頻出する作業を「判断のポイント」とセットで整理します。目的は「施工のやり方」を覚えることではなく、その作業がどの分類になりやすいかを掴むことです。
屋内配線の増設や変更が絡む作業
例えば、部屋の用途変更に伴う回路見直し、増設コンセントのための配線追加、設備更新で配線経路を変える、といったケースは、電線接続や配線変更を伴いやすく、保安上の影響が大きい領域です。
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判断のポイント:
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壁内配線を触るか
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電線相互の接続が発生するか
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既設回路の保護(遮断器容量・配線条件)に影響するか
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このタイプの作業は、第二種が一般用電気工作物等で従事できる作業として説明される文脈に入りやすい一方、経験が浅い段階での独断施工は避けるべきです。安全面のリスクが上がるほど、監督・外注判断の重要性が増します。
コンセントの交換や増設で迷うポイント
コンセント周りは「交換なら簡単」「増設も自分で」と言われがちですが、実際には作業条件で分類が変わります。
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交換でも“配線接続”が伴う場合:要資格側に寄りやすい
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壁内の配線を増やす増設:電気工事側に寄りやすい
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いわゆる“軽微”に当たる可能性がある作業:列挙要件に合致する場合に限る
したがって「コンセントだから2種でOK」と短絡せず、必ず「軽微列挙に該当するか」「配線接続・壁内配線があるか」を確認してください。
照明器具の交換で迷うポイント
照明は、着脱だけで完結するケースと、配線接続が必要なケースが混在します。ここで誤認が起きやすいのは、「器具交換」という言葉が広すぎるからです。
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既設の取り付け方式によって、配線接続の有無が変わる
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“配線接続を伴うか”が分岐点になる
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軽微の列挙に該当するかは、列挙本文に沿って判断する
経験が浅い段階では、照明交換を「作業名」で判断せず、現物を見て「配線接続が発生するか」で判断する癖をつけると、事故を大きく減らせます。
分電盤やブレーカー周りでできることと避けたいこと
分電盤周りは危険度が高く、資格の有無だけでなく、停電・検電・再送電管理など体制が不可欠です。一般用電気工作物等の範囲内の工事であっても、経験が浅い段階で独断対応しないのが原則です。
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判断のポイント:
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作業場所が分電盤内部か(高リスク)
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停電手順・安全確認が確実に取れるか
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既設設備の状態(劣化・改造履歴不明)が不確かでないか
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「第二種でできる」と「自分が今安全にできる」は別問題です。ここを混同すると事故につながるため、分電盤関連は特に“推奨しない領域”として扱うのが安全です。
エアコンや換気扇など住設の電源工事での線引き
住設機器は、機器の設置作業と電源側の工事がセットになっていることが多く、電気工事の範囲が混ざりやすい領域です。専用回路の新設や電源取り出しが必要になると、電気工事側に入りやすくなります。
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判断のポイント:
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専用回路の新設が必要か
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既設回路の変更が発生するか
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電源側の配線接続が必要か
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この領域は「どこまで電気工事に当たるか」を誤解しやすいので、現場では上長確認の頻度が高いポイントです。
電気工事士2種でできないことと要注意の境界線
ここからは「できないこと」を先に固めます。現場では、できることよりも、できないことを明確にした方が事故・違法を避けやすいからです。
自家用電気工作物の工事は第二種単体では対象外になりやすい
自家用電気工作物に係る工事は、第二種単体の守備範囲から外れるのが基本です。自家用に関する定義・範囲は法令(施行規則)でも整理されています。
現場で迷ったら、次のサインがあれば自家用を疑ってください。
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受電設備(キュービクルなど)がある
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施設規模が大きい、または管理部門が受電設備を保守している
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“高圧受電”という言葉が会話に出てくる
この場合、第二種だけで「できる」と断言しない方が安全です。
特殊電気工事 ネオン工事や非常用予備発電装置工事は別枠
資格概要の整理では、特殊電気工事(ネオン工事、非常用予備発電装置工事)や簡易電気工事という区分が規定されており、従事には別途資格が必要である旨が示されています。
つまり、第二種を持っていても、領域が変われば必要な資格が変わる可能性があります。「電気工事は全部同じ」ではない点を押さえてください。
“できる作業”と“仕事として請け負える”は別問題
副業や知人依頼で特に起きやすい誤解が、「資格があるなら請け負っていい」という短絡です。資格はあくまで“従事要件”の一部であり、仕事として請け負う場合は、責任分界・契約・保険・法令上の手続きなど別の論点が出てきます。
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事故時の責任は誰が負うのか
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施工不良が原因で火災が起きた場合の補償はどうするのか
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建物側の管理規約・保安体制に抵触しないか
「できる」と「やるべき」は違います。ここを線引きできると、長期的に信頼を失いません。
軽微な工事はどこまで 資格不要の例外を誤解しない
軽微な工事は、読者が最も誤解しやすい論点です。安全と法令の両面から、ここは丁寧に整理します。
軽微の判断は 施行令で列挙される要件に合致するか
経済産業省は、軽微な工事について「施行令第1条で電気工事から除外される」とした上で、具体的な例を列挙しています。
ここで重要なのは次の2点です。
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軽微は「感覚」ではなく「列挙要件」
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列挙に当てはまらないなら、原則として電気工事(要資格)側
ネット記事や動画は「軽微」をざっくり語りがちですが、誤認が起きると事故と違法につながります。迷ったら一次情報で要件に戻る、これが最も安全です。
軽微でも危険は残るため “安全上やらない”判断も必要
軽微に該当し得る作業であっても、感電・火災の危険が消えるわけではありません。むしろ「簡単そうに見える」ことで油断が起き、通電状態で触ってしまうなど事故につながりやすい面があります。
現場でも家庭でも、次に当てはまる場合は“やらない”判断が合理的です。
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既設設備が古く、劣化や改造履歴が不明
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作業中の安全確保(停電、検電、再送電管理)が確実に取れない
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触れる範囲が分電盤内部や壁内配線へ広がりそう
軽微か迷ったときの安全側ルール
迷ったときに使える安全側ルールを明文化します。
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列挙に合致する確信が持てない → 軽微とは扱わない
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電線相互の接続や壁内配線に触れる気配がある → 電気工事側として扱う
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対象設備が自家用の可能性がある → 第二種単体で判断しない
このルールを持っておくと、現場での判断がブレにくくなります。
できる範囲を広げる方法 認定電気工事従事者と第一種の違い
第二種を取った後、「もう少し範囲を広げたい」「ビル系にも関わりたい」と感じる方は多いです。ここでは、範囲拡張の代表的ルートを“何が増えるか”で整理します。
認定電気工事従事者で増える範囲は 自家用のうち簡易な工事
経済産業省は、認定電気工事従事者について「電圧600V以下で使用する自家用電気工作物(最大電力500kW未満の需要設備)のうち簡易な電気工事」に関する資格である旨を示しています。
講習機関側の説明でも、最大電力500kW未満の需要設備のうち、電圧600V以下で使用する電気工作物の工事(簡易電気工事)に従事できる旨が示されています(ネオン工事・非常用予備発電装置工事は除外などの条件あり)。
ここでの注意点は次の通りです。
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「自家用全部」ではなく「条件付きの簡易」
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条件値(600V以下、500kW未満など)をセットで覚える
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除外領域(特殊電気工事など)に注意する
第一種電気工事士は 自家用の一定範囲と一般用電気工作物等
試験機関の資格概要では、第一種は一般用電気工作物等に加え、自家用電気工作物(最大電力500kW未満の需要設備に限る)の電気工事の作業に従事できる整理が示されています。
つまり、キャリアの観点では次のように整理できます。
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第二種:身近な低圧の一般用電気工作物等を中心に強い
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認定:自家用のうち“簡易”を条件付きでカバー
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第一種:自家用の一定範囲まで含めて担当領域が広がる
第二種の価値を上げるのは “判断が速い人”になること
新人のうちは、作業スキル以前に「線引きが速い人」が信頼されます。理由は単純で、線引きを誤ると事故と違法につながるからです。この記事の判断ステップ(設備区分→軽微→作業類型→資格→体制)を身につけることが、現場での評価に直結します。
よくある質問 現場とDIYで混乱しやすい論点
自宅のコンセント増設は自分でできる
壁内配線の施工や電線接続を伴う場合、一般に電気工事側に寄り、第二種の従事範囲になり得ます。ただし、感電・火災リスクが高く、経験が浅い場合は有資格者の監督下または業者依頼が安全です。
また、軽微な工事に該当するかどうかは、施行令で列挙される要件に合致する場合に限られます。
照明交換は資格が必要
照明交換は「配線接続を伴うかどうか」で分類が分かれます。軽微の列挙に当てはまると考える前に、まず列挙要件の確認が必要です。該当が不明なら要資格側に倒して考えるのが安全です。
友人宅の工事を頼まれたらやってよい
資格範囲に入るかどうかに加え、責任分界・契約・補償を整理できない場合は安易に引き受けないのが安全です。事故や施工不良が起きたときに、関係性が壊れるだけでなく、法的・金銭的負担が発生し得ます。
副業で請け負える
「できる作業がある」と「仕事として請け負える」は別問題です。請負は品質保証・補償・法令上の手続きも含めて成立します。まずは勤務先や上長の方針、保険・契約体制、対象設備区分を確認し、リスクを受け止められる範囲で判断してください。
太陽光やEV充電設備は第二種で対応できる
設備の規模・接続方式・建物区分で扱いが変わります。特に事業用との境界や制度改正の影響もあり得るため、「作業名」だけで判断しないでください。まず設備区分(一般用/小規模事業用/自家用)を確定し、軽微列挙・従事範囲に照らして判断するのが安全です。
まとめ 電気工事士2種でできることは 判断の順番で確実に決まる
第二種電気工事士の「できること」は、気合いや経験談で決めるものではなく、一次情報に沿って機械的に判断できます。最後に要点を整理します。
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第二種電気工事士は原則、一般用電気工作物等の電気工事に従事できる(一般用+小規模事業用)。
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軽微な工事は施行令で電気工事から除外される列挙があり、該当する場合は資格不要。該当しないなら要資格側に倒すのが安全。
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自家用電気工作物は第二種単体では対象外になりやすく、拡張するなら認定や第一種の理解が必要。
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現場で迷わないコツは「設備区分→軽微→作業類型→資格→体制」の順に確認すること。
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施工経験が浅い段階では「できる=推奨」ではありません。安全確保と責任分界を優先し、監督・外注判断をためらわないことが最短で成長につながります。
参考にした情報源
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e-Gov法令検索:電気工事士法
https://laws.e-gov.go.jp/law/335AC0000000139/ -
e-Gov法令検索:電気工事士法施行規則
https://laws.e-gov.go.jp/law/335M50000400097/ -
経済産業省:電気工事の安全(軽微な工事の列挙等)
https://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/sangyo/electric/detail/koji.html -
経済産業省:電気工事士等資格が不要な「軽微な工事」とは(PDF)
https://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/sangyo/electric/files/1-3keibi.pdf -
一般財団法人 電気技術者試験センター:電気工事士の資格概要
https://www.shiken.or.jp/construction/about/ -
一般財団法人 電気技術者試験センター:電気工作物の概要(電気技術者資格との関係)
https://www.shiken.or.jp/shiken/qualification/ -
経済産業省:認定電気工事従事者
https://www.meti.go.jp/information/license/c_text27.html -
日本電気技術者講習センター:認定電気工事従事者認定講習
https://www.eei.or.jp/approval/ -
日本電気技術者講習センター:小規模事業用電気工作物と電気工事等(更新性のある解説)
https://www.eei.or.jp/column/archives/792 -
経済産業省:電気工事士法の逐条解説(PDF)
https://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/law/files/koujisichikujyou.pdf