Excelでコピーしたはずの内容を貼り付けようとしたところ、セルの値や表が入る代わりに「データを入手中です。数秒間待ってから、切り取りまたはコピーをもう一度お試しください。」という文言が貼り付けられてしまい、作業が止まることがあります。特に、ブラウザで使うWeb版Excel(Microsoft 365のExcel for the web)で発生しやすく、急ぎの転記・集計・共有作業の最中だと致命的です。
この現象は「貼り付けが失敗した」というだけでなく、コピー対象のデータをクリップボードへ正しく渡せていない状態で起きやすいのが特徴です。そこで本記事では、まず現場で役立つ応急処置から、原因の整理、再発を減らす運用、そしてどうしても直らない場合の代替策まで、同じ順番で詳しく解説します。焦って何度も連打するほど状況が悪化するケースもあるため、手順どおりに一つずつ確認していくのがおすすめです。
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このエラーが起きる場面と困りごと
このエラーは、次のような「貼り付けが頻発する業務フロー」で目立ちます。
Web版Excelで表を作り、Teamsのチャットやメール本文へ貼り付けて共有したい
取引先から受け取った数字を、社内の別シートや別ブックへ転記したい
フィルタ・並べ替え・共同編集(複数人同時編集)をしながら、必要な範囲をコピーして別の場所へ貼りたい
画面上は普通にコピーできたように見えるのに、貼り付け先にエラーメッセージの文章が入る
貼り付け先がExcel以外(メモ帳、Word、Slack、Notion、社内システム)でも同様に起きる
困りごとは大きく分けて3つあります。
1)作業が止まり、締切に直撃する
「コピー→貼り付け」が通らないと、見積や請求、報告資料の作成など、後工程がすべて止まります。貼り付けが成功するまで試行錯誤する間に、時間だけが消費されます。
2)原因が見えにくく、同じ操作を繰り返しがち
見た目にはコピー操作が完了しているため、つい貼り付けを繰り返してしまいます。しかし、根本的にクリップボードへデータが渡っていない場合、貼り付け回数を増やしても改善しません。それどころか、貼り付け先にエラー文が増えるだけで後片付けが大変になります。
3)共同編集やWeb版特有の同期が絡むと再現性が上がる
Web版Excelはサーバー側とやり取りしながら表示・編集する場面が多く、共同編集や自動保存、接続の揺らぎが重なると、コピー処理のタイミングが不安定になることがあります。データ量が多い、複雑な表、条件付き書式が多いなど、負荷が高いブックほど起きやすいと感じる人もいます。
このように、「いつも通りのコピペ」なのに突然崩れるため、心理的にも焦りやすいトラブルです。だからこそ、まずは確実に貼り付けを通すための手順を押さえておくことが重要です。
データを入手中ですと表示される主な原因
原因は一つに限られませんが、現場で起きている事象は次の組み合わせで説明できることが多いです。ここでは、専門用語を最小限にしつつ、何が起きているのかを整理します。
原因1:Web版Excelの同期と処理待ちがコピーに影響している
Web版Excelは、ブラウザ上で表示するためにサーバー側と通信しながら動作します。編集内容の反映、共同編集者との同期、表示更新などが重なると、コピー処理が「内部的に完了する前」に貼り付け先へ移ってしまい、結果として「コピー対象のデータをまだ用意できていない」状態になります。
このとき、貼り付け先へ渡せるのは「コピー対象」ではなく、エラー文として用意されたメッセージだけになり、貼り付け先にその文章が入ります。言い換えると、貼り付け先が悪いのではなく、コピー側の準備が間に合っていないケースです。
原因2:ブラウザのクリップボード制御(権限・仕様・一時不調)
ブラウザは、セキュリティの観点から、クリップボード(コピーした内容を一時的に置く場所)へのアクセスを制御しています。サイトごとに許可が必要な場合もありますし、ブラウザの仕様変更・更新・拡張機能の影響で、コピー・貼り付け挙動が不安定になることもあります。
特に次の条件が重なると、クリップボード周りの不具合が起きやすくなります。
ブラウザを長時間起動しっぱなしでメモリが逼迫している
タブを大量に開いている、動画会議や重いWebアプリを同時に使っている
セキュリティ系の拡張機能、広告ブロック、クリップボード拡張などを入れている
ブラウザのキャッシュ・Cookieが肥大化している
会社のポリシーでブラウザ機能が制限されている(クリップボードアクセス制限など)
原因3:クリップボード履歴ツールやOS機能が先に「文字列」を拾ってしまう
Windowsのクリップボード履歴機能、またはCliborなどの履歴ツールを使っている場合、コピーの瞬間に「取得した文字列」を履歴へ保存します。ここで、Excel側がデータ準備に失敗し、代替としてエラーメッセージ文字列を返した場合、履歴ツールがその文字列を拾い、以後も同じ文字列を貼り付けてしまうことがあります。
この場合、いくら貼り付けをやり直しても、履歴ツールから取り出す内容がエラー文のままになっているため、延々と同じ現象が続きます。履歴ツールの「取得遅延」や「自動取得」設定が影響することもあります。
原因4:コピー範囲が大きい、または複雑で処理が重い
コピー範囲が広い(例:数千行×多列)、結合セルが多い、条件付き書式が多い、画像や図形を含む、外部参照や複雑な関数が多いなど、ブックの負荷が高いほどコピー処理が重くなります。Web版Excelは環境によって処理余力が変わるため、同じブックでもPCや回線、ブラウザ状況で再現性が変わります。
原因をまとめると、ポイントは次の一文です。
「コピーしたつもりでも、データがクリップボードへ正しく受け渡されていない」
この前提で対処すると、最短で復旧しやすくなります。
すぐ直すための対処手順
ここからは「今すぐ貼り付けを成功させたい」状況を想定し、効果が出やすい順に並べます。上から順に試し、途中で直った時点で止めて問題ありません。
選択を解除して数秒待ち、コピーし直す
最初に試す価値が高いのが、この「待つ」手順です。焦って連打すると逆効果になりやすいため、いったん操作を止めます。
コピーした範囲の選択をいったん解除します(別のセルをクリックして解除でも構いません)
2〜5秒ほど待ちます(通信や処理待ちの時間を与えます)
コピーしたい範囲をもう一度選択します
キーボードショートカットでコピー(WindowsならCtrl+C、MacならCommand+C)を行います
貼り付け先へ移動し、貼り付け(Ctrl+V/Command+V)します
ここでのコツは、コピーの直後にすぐ貼り付けへ飛ばず、コピー操作が内部で落ち着く時間を与えることです。特に共同編集や大量データのときに効果が出やすい手順です。
追加で次も試せます。
コピー後、Excel画面上で一度Escキーを押してから貼り付ける
コピー範囲を小さくして(見出し+数行など)貼り付けが通るか試す
数式や書式が不要なら「値だけ」を貼りたい場面に切り替える(後述の代替手段も参照)
Excelのタブを開き直す
次に手早いのが「タブの開き直し」です。ブラウザ内でWeb版Excelの状態が崩れている場合、画面を作り直すだけで復旧することがあります。
同じブックを別タブで開き直す
いったんタブを閉じてから、リンクやOneDrive/SharePointから再度開く
ブラウザの更新(リロード)を行う
注意点として、共同編集している場合や未保存の入力がある場合は、念のため数秒待って保存が反映されたことを確認してからタブを閉じてください。Web版Excelは自動保存が基本ですが、通信が不安定なときは反映が遅れることがあります。
ブラウザを変える
Chromeで起きるならEdge、Edgeで起きるならChrome、というようにブラウザを切り替えるのは実務的に効果が高い手段です。理由は単純で、ブラウザごとにクリップボードの実装や拡張機能、キャッシュ状態が異なるからです。
今Chromeなら、Edgeで同じファイルを開いて試します
会社PCでEdge指定なら、許される範囲でChromeを試します
MacならSafariも選択肢に入ります(ただし社内制限がある場合は無理をしない)
ブラウザ切替をする際は、次もあわせて確認すると成功率が上がります。
拡張機能が少ないブラウザを優先する
シークレット/プライベートウィンドウで試す(拡張機能が無効化される設定になっていることが多い)
同期アカウント(Microsoftアカウント/組織アカウント)が正しくログインできているか確認する
ブラウザのキャッシュを削除する
ここまでで直らない場合、キャッシュやCookieの影響を疑います。キャッシュ削除は効果が出ることがありますが、ログインし直しが必要になることもあるため、業務中はタイミングに注意してください。
Chromeでの目安手順(Windows/Mac共通の考え方)
設定から「閲覧履歴データの削除」を開く
期間を「過去24時間」または「全期間」にして、キャッシュとCookieを削除する
ブラウザを再起動し、Excel for the webへ再ログインして再試行する
Edgeでも同様
設定から「閲覧データをクリア」を開く
キャッシュとCookieを削除する
再起動して再ログインする
社内ポリシーでキャッシュ削除が制限されている場合は、無理に設定を変えようとせず、次の方法が現実的です。
シークレット/InPrivateでExcelを開いて試す
一時的に別端末(許可されている範囲で)で試す
代替手段(デスクトップ版への切替)へ移る
再発を減らす設定と運用のコツ
応急処置で直っても、同じ条件が揃うと再発しがちです。ここでは「毎回同じことで止まらない」ための、現実的で負担の少ない運用策をまとめます。
大きい範囲は二回に分けてコピーする
もっとも効果が出やすいのが、コピー範囲を小分けにすることです。理由は単純で、コピー処理が軽くなり、クリップボードへの受け渡しが安定しやすいからです。
たとえば次のように分割します。
まず見出し行+必要な数行をコピーして貼り付け、形式が崩れないことを確認
次に残りの行を数百行ずつ分割して貼り付け
最後に列幅や書式を整える
「一気にやったほうが速い」と思いがちですが、エラーでやり直す時間が発生すると結局遅くなります。特に締切直前は、成功率を上げる手順に切り替えることが重要です。
加えて、表の中に次の要素が多い場合は、分割コピーの効果が上がります。
結合セル
条件付き書式
画像・図形
外部参照や大量の数式
フィルタやピボットに近い複雑な範囲
ネットワークが不安定な場所ではWeb版での大量コピペを避ける
Web版Excelは通信状態に左右されやすく、特に「コピーの瞬間」に同期や処理待ちが重なると失敗しやすくなります。体感として、次のような状況では再発率が上がります。
在宅Wi-Fiが混雑している時間帯
VPN越しで接続している
ビデオ会議をしながら大きな表を扱っている
モバイル回線のテザリングで作業している
対策としては、難しいネットワーク設定を触らなくても、次の工夫が効果的です。
大量コピペのタイミングだけでも、安定した回線へ切り替える
会議や大容量ダウンロードと同時にやらない
Excelのタブ以外を閉じ、ブラウザの負荷を下げる
共同編集者が多い時間帯を避けられるなら避ける
クリップボード履歴ツールを使っている場合は取得タイミングを遅らせる
Windowsの履歴機能やCliborなどを使っている場合、コピー時に「取得した内容」が履歴に残ります。ここで、Excel側がエラー文を返すタイミングと重なると、履歴ツールがエラー文を固定的に拾ってしまい、以後の貼り付けでもエラー文が出続けることがあります。
対策としては、次のどれかが有効です。
履歴ツールの自動取得を一時的にオフにする
取得の遅延(一定秒数後に取得)設定を入れる
問題が起きた直後に、履歴ツール側の履歴からエラー文を削除する
OSのクリップボード履歴を一時的にオフにする(運用ルールとして)
業務で履歴ツールが必須の場合でも、トラブルが出たときだけ一時的に無効化する運用にしておくと、作業停止のリスクを下げられます。
どうしても直らないときの代替手段
応急処置や再発防止策を試しても改善しない場合、環境側の制約(社内ポリシー、ブラウザ制限、アカウント制御、端末の状態)が絡んでいることがあります。その場合は「同じ土俵で戦い続けない」ことが重要です。ここでは、現実的に成果へつなげるための代替策を紹介します。
ファイルをダウンロードしてデスクトップ版Excelで作業する
最も確実性が高いのが、デスクトップ版Excelで作業する方法です。Web版Excelで起きやすい「同期待ち」や「ブラウザのクリップボード制御」の影響を受けにくく、コピー・貼り付けの安定性が上がります。
実務での手順は次のイメージです。
Web版ExcelのファイルをOneDrive/SharePoint上で開いている場合、必要に応じてダウンロードします
ローカルのExcel(デスクトップ版)で開きます
コピー・貼り付け作業をデスクトップ版で完了させます
必要なら上書き保存してクラウドへ戻す、または完成物を別ファイルとして共有します
注意点として、共同編集中のファイルをローカルで開くと競合が起こる場合があります。チームで同時編集している場合は、次の運用が安全です。
コピー・貼り付けが必要な時間だけ「編集担当」を一人に寄せる
いったん複製(コピー)したファイルで作業し、後から差分を統合する
重要な更新前にバージョン履歴を確認し、戻せる状態を作っておく
社内でデスクトップ版の利用が許可されていない場合は、IT管理者へ「コピー貼り付け障害が業務へ影響している」ことを具体例つきで伝え、代替手段の許可(特定端末だけ、特定部署だけ等)を相談するのが現実的です。
いったんメモ帳などのテキストエディタを経由する
次に現場で役立つのが「中継」手段です。表の体裁や数式を維持する必要がなく、値だけが欲しい場面では特に有効です。
Excel → メモ帳(またはプレーンテキストのエディタ)へ貼り付け
メモ帳側の内容をコピーして、目的の貼り付け先へ貼る
この方法のメリットは、書式やオブジェクトをそぎ落として、純粋なテキストとして扱える点です。Web版Excel側で書式付きコピーが失敗していても、テキスト貼り付けなら通る場合があります。
ただし、デメリットもあります。
表の罫線、列幅、色などは失われます
タブ区切りや改行の扱いで貼り付け先の見え方が変わることがあります
数式ではなく計算結果だけが必要なのか、数式も必要なのかを判断する必要があります
そのため、「報告チャットに数値を貼りたい」「社内システムに数値だけ登録したい」など、見た目より内容が重要な用途で使うのが適しています。
よくある質問
Web版Excelだけで起きますか
発生報告としてはWeb版Excelで目立ちます。ブラウザのクリップボード制御や同期処理が関係しやすいためです。ただし、端末の状態や拡張機能、セキュリティソフトの影響次第では、デスクトップ版でも別の形の貼り付け不具合が起こることはあります。まずは「Web版で起きる問題」として、ブラウザ切替やデスクトップ版への移行を試すと切り分けが進みます。
完全に出ないようにできますか
完全にゼロにするのは難しい場合があります。理由は、通信状況、共同編集者の状態、ブラウザ更新、社内ポリシーなど、複数の要素が絡むためです。ただし、次の運用を徹底すると再発は大幅に減らせます。
大きい範囲を小分けにしてコピーする
ブラウザの負荷を下げる(タブを減らす、拡張機能を整理する)
不安定な回線・VPN越しのときは大量コピペを避ける
直らないときはすぐにデスクトップ版へ切り替える「逃げ道」を用意する
貼り付け先がTeamsやメールだと特に起きます。対策はありますか
貼り付け先がExcel以外の場合、貼り付け形式(リッチテキスト、HTML、プレーンテキスト)やアプリ側の制約が影響することがあります。まずは「コピー側(Web版Excel)が正常にクリップボードへ渡せているか」を確認し、必要ならメモ帳経由でプレーンテキストとして貼る、もしくはデスクトップ版Excelでコピーして貼るのが安定します。
ここまでの内容を実務で使うなら、次のルールにまとめると判断が早くなります。
今すぐ直したい:待ってコピーし直す → タブを開き直す → ブラウザ変更 → キャッシュ削除
再発を減らしたい:範囲を分割 → 回線・負荷を下げる → 履歴ツール設定を見直す
どうしても直らない:デスクトップ版へ切り替える → メモ帳経由で値だけ渡す
同じエラーでも、環境によって効く手が変わります。上の順で試せば、最短で復旧しやすく、再発時も迷わず対応できます。