20歳前後の大学生や、その保護者の方からよくあるお悩みが、
「大学生の国民年金って、みんなどうしているのですか?」
「学生は払うのが普通? 学生納付特例って使ったほうがいい?」
「親が払うべき? 放置している人も多いと聞くけれど大丈夫?」
といったものです。Yahoo!知恵袋などでも同様の質問が多数投稿されています。
本記事ではこうした「みんなどうしてる?」というモヤモヤを整理し、
大学生にも国民年金の加入義務があること
現実的な3つの選択肢(自分で払う/学生納付特例/親が払う)
絶対に避けたい「未納放置」のリスク
今日からできる具体的なステップ
を、公式情報に基づき分かりやすく解説いたします。
※金額・制度は2025年度(令和7年度)時点の情報を参照しています。最新情報は必ず公式サイトでご確認ください。
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国民年金は20歳以上60歳未満の人に原則加入義務があり、大学生も対象です。
大学生の現実的な選択肢は、
自分で払う
学生納付特例で猶予する
親が代わりに払う
の3つであり、未納放置はNGです。
学生納付特例は「免除」ではなく「猶予」であり、追納しないとその期間の年金額には反映されません。
親が支払う場合、社会保険料控除や前納割引などを活用することで、負担を抑えつつ子どもの将来の保障を確保できます。
今後の制度変更に備えて意識しておきたいこと
国民年金保険料や年金額は、物価や賃金に応じて毎年度見直しが行われます。
将来、支給開始年齢や給付水準が調整される可能性はありますが、
→ 「変わるから何もしない」ではなく、
→ 「現行制度の中でベターな選択を取る」ことが大切です。定期的に年金定期便やねんきんネット、日本年金機構サイトをチェックし、自分の記録と制度変更を確認しましょう。
大学生の国民年金「みんなどうしてる?」という悩み
知恵袋に多い質問パターンと背景
知恵袋等で見られる大学生・保護者の質問例は、概ね次のようなパターンです。
「大学生の子どもが20歳になります。皆さん国民年金どうされていますか?」
「大学2年生です。国民年金を学生納付特例にするか迷っています。」
背景には、次のような事情があります。
2025年度の国民年金保険料は月額17,510円であり、大学生の財布には重い負担であること
「学生納付特例」「免除」「猶予」「未納」といった用語の違いが分かりにくいこと
友人同士でもお金の話はしにくく、「みんな実際どうしているか」が見えづらいこと
このため、「制度が難しい」「お金の話はしづらい」という二重のハードルから、判断が先送りされがちです。
「放置」「とりあえず親任せ」が増える理由
制度が分からないまま時間が経つと、次のような行動に流れやすくなります。
書類は届いたが、よく分からないまま未納のまま放置
「親が何とかしているだろう」と思い込み、詳細を確認しないまま親任せ
「学生納付特例を出せばいいらしい」と聞きかじり、内容をよく理解しないまま申請
しかし、これらはいずれもリスクをはらみます。
特に未納放置は、老後の年金額が減るだけでなく、在学中に事故や病気で重い障害を負った場合などに、障害基礎年金を受け取れない可能性も生じます。
まず押さえたい結論とNG行動(放置はNG)
先に本記事の「結論」を整理します。
国民年金は20歳以上60歳未満の全国民に原則加入義務があります。大学生も例外ではありません。
経済的に厳しい大学生向けに、学生納付特例制度という「保険料の納付を猶予できる制度」があります。
親が保険料を支払うことも可能で、その場合は親の所得から社会保険料控除として差し引ける(節税メリット)ことがあります。
絶対に避けたいのは「未納のまま放置」であり、老後の年金額減少だけでなく、障害・遺族年金の受給権を失うリスクもあります。
したがって、大学生・保護者が取るべき現実的な選択肢は、
学生本人が自分で払う
学生納付特例を申請して猶予する
親が代わりに支払う
のいずれかであり、「何もせず未納のまま」は選択肢から必ず外す必要があります。
まずは前提整理:大学生でも国民年金は原則義務
20歳になったら全員に加入通知が来る仕組み
日本年金機構によると、国民年金保険料は原則として20歳から60歳まで支払うことが義務づけられています(第1号被保険者の場合)。
20歳の誕生日の前後には、
「国民年金加入のお知らせ」
「国民年金保険料納付書」
学生納付特例制度の案内
などの書類が自宅に届きます。これを受け取った段階で、
自分で払うのか
学生納付特例を使うのか
親に払ってもらうのか
いずれかの方針を決め、必要な手続きを行う必要があります。
第1号・第2号・第3号被保険者の違いと大学生の立ち位置
公的年金の加入者は、大きく次の3区分に分かれます。
第1号被保険者:自営業者・フリーランス・学生など
第2号被保険者:会社員・公務員(厚生年金加入者)
第3号被保険者:第2号被保険者に扶養されている配偶者
一般的な大学生は、厚生年金付きのフルタイム雇用ではないため、ほとんどが第1号被保険者(国民年金に自分で加入する立場)となります。
払わないと何が起きる?老齢年金だけでなく障害・遺族への影響
国民年金は「老後のお金」だけではなく、次の機能も持っています。
65歳以降にもらう 老齢基礎年金
病気や事故で重い障害が残ったときの 障害基礎年金
一定の場合の 遺族基礎年金
「未納」の期間が多いと、
老後の年金額がその分減る
障害・遺族年金の受給要件を満たせず、いざというときに年金が受け取れない
といった不利益が生じます。
若い大学生であっても、交通事故や病気のリスクはゼロではありません。「今は関係ない」と思って放置するのは危険です。
大学生の4つの選択肢を整理
自分で払う
アルバイト収入などから、自分で保険料を支払うパターンです。
2025年度の国民年金保険料:月額17,510円
メリット
将来の老齢基礎年金が満額に近づく
障害・遺族基礎年金の要件も満たしやすい
学生納付特例・追納などの追加手続きを気にしなくてよい
デメリット
月々の負担が大きく、学費・生活費とのバランスが難しい場合がある
収入が不安定なアルバイトの場合、支払い忘れが起こるリスク
学生納付特例で猶予する
学生納付特例制度は、所得の少ない学生が保険料の納付を猶予してもらえる制度です。
対象:大学・短大・大学院・高専・専修学校などの学生で、本人所得が一定以下
効果:在学中の保険料の納付が猶予され、「未納」ではなく「猶予」として扱われる
将来:猶予期間分は、10年以内なら追納(あとから納付)可能
メリット
在学中の支払い負担をゼロにできる
未納とは異なり、老後の受給資格期間にはカウントされる
追納すれば、払っていたのと同様に年金額に反映される
デメリット・注意点
「免除」ではなくあくまで猶予のため、追納しないと年金額はその分減る
3年度目以降の追納には加算金(利息のようなもの)がかかることがある
申請し忘れた期間は「未納」扱いになる
親が代わりに払う(+税控除)
保護者が子どもの国民年金保険料を代わりに払うことも可能です。
メリット
学生本人の生活費・学費の負担が軽くなる
親が支払った保険料は、条件を満たせば親の社会保険料控除として所得から差し引くことができ、所得税・住民税が軽減される可能性がある
口座振替や前納を利用すれば、保険料の割引も受けられる
デメリット・注意点
親の家計負担が増える
「どこまで親が負担するか」「将来子が返すかどうか」など、家族内のルールを決めておかないとトラブルのもとになる
誰の口座・カードから支払い、誰が社会保険料控除を受けるかを整理する必要がある
未納のまま放置する(NG)
何も申請せず、保険料も納めない状態です。
これはもっとも避けるべきパターンです。
老後の年金額がその分確実に減る
障害・遺族年金の受給要件を満たせず、万一のときに保障が受けられない可能性がある
過去分の追納にも期限があり、後から気づいてもすべて取り戻せないことがある
「何もしないで放置」は、短期的には楽に見えても、長期的にはリスクしかない選択肢といえます。
大学生の国民年金 4パターン比較表
| 選択肢 | 月々の負担 | 老齢年金への影響 | 障害・遺族年金 | 手続きの手間 | 税控除メリット | 向いているケース |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 自分で払う | 高い(約17,510円/月) | その分だけ満額に近づく | 〇 | 納付のみ | 本人の所得があれば控除対象 | アルバイト収入が安定し、自分で負担したい学生 |
| 学生納付特例 | 0円 | 追納しない期間分は年金額に反映されない | 条件により〇 | 申請+将来追納の検討が必要 | 追納時に社会保険料控除 | 今は余力がないが、就職後に追納を検討する学生 |
| 親が払う | 親の負担 | その分だけ満額に近づく | 〇 | 納付方法の設定が必要 | 親の社会保険料控除 | 親に余力があり、子の将来のために支援したい家庭 |
| 未納(放置・非推奨) | 0円(ただし将来に不利) | その分だけ確実に減る | ×の可能性大 | 何もしないがリスクが非常に高い | なし | どのケースにも向かない(避けるべき) |
学生納付特例制度とは?メリット・デメリットと勘違い
学生納付特例の条件・申請方法・期限
対象者の主な条件
大学・大学院・短大・高専・専修学校などに在学していること
本人の前年所得が、目安として「128万円+(扶養親族数×38万円)+社会保険料控除等」以下であること
申請先の例
住民票のある市区町村役場(国民年金担当窓口)
最寄りの年金事務所
一部の大学等(学生納付特例事務法人として、申請書を代行提出)
申請方法の流れ
「国民年金保険料 学生納付特例申請書」を入手・記入
学生証のコピーまたは在学証明書を用意
窓口持参、郵送、またはマイナポータルから電子申請
申請できる期間(さかのぼり)
原則として、申請日の2年1か月前まで遡って申請可能(未納期間を減らせる)
「免除」ではなく「猶予」であることと、追納の仕組み
学生納付特例は、よく「免除」と混同されますが、正確には納付猶予制度です。
猶予:今は払わなくてよいが、将来追納できる
免除:所得が非常に低いなどの条件を満たした場合に、保険料の一部または全額の納付が免除される制度
学生納付特例期間は、
受給資格期間には算入される(年金をもらう資格の月数としてカウント)
ただし、追納しない限り年金額には反映されない
追納できる期限は原則10年であり、それを過ぎるとその期間分は完全に穴が空いた状態になります。
追納した場合・しない場合の将来年金額イメージ
2025年度の老齢基礎年金の満額は年額831,700円(令和7年度)とされています。
例えば、2年間(24か月)を学生納付特例にし、その後追納しなかった場合、
年金額は「満額 minus 24か月分」となり、おおよそ年間数万円程度の差が生じる試算例が多く紹介されています。
追納する・しないでどちらが得かは、
追納に必要な資金余力
年金をどれくらい長く受け取るか(寿命)
他の資産運用とのバランス
によって変わるため、一概に「必ず追納すべき」とも言い切れません。ただし、
未納放置より、学生納付特例のうえ検討して追納する方が、将来の選択肢が広い
という点は押さえておくべきです。
親が国民年金を払う場合のポイント(保護者向け)
親が立て替えるケースのメリット(社会保険料控除など)
保護者が子どもの国民年金保険料を支払った場合でも、一定の条件を満たせば親の社会保険料控除として所得から差し引くことができます。
親の所得税・住民税が軽減される可能性がある
実質的な負担感は、支払った金額よりも小さくなる場合もある
また、保護者が前納(1年分・2年分)を利用することで、まとめ払いによる割引も受けられます。
家族で話し合っておきたいお金とルール
親が支払いを担う場合、次の点を明確にしておくことが重要です。
親がどこまで負担するのか(卒業まで全額/一部期間のみ 等)
将来、子どもが社会人になってから立て替え分を返済するかどうか
返済する場合、その方法(毎月少しずつ/ボーナス時に一括など)
ルールが曖昧だと、
親:「ここまで払ったのに…」
子:「そんなに払ってもらっていたとは知らなかった」
といったすれ違いの原因となります。
支払い方法(納付書・口座振替・クレジットカード)と管理のコツ
主な支払い方法は次のとおりです。
納付書でコンビニ・金融機関で支払う
口座振替
クレジットカード払い
6か月・1年・2年の前納(まとめ払い)
管理のコツ
口座振替・カード払いにしておくと、払い忘れ防止につながる
誰の名義の口座・カードから支払っているかを明確にし、
→ 誰が社会保険料控除を受けるのかを確認しておく前納を利用する場合は、割引額と手元資金のバランスを慎重に検討する
大学生がやりがちなNGパターンとトラブル事例
未納放置で障害基礎年金を受け取れなくなるリスク
障害基礎年金を受け取るには、原則として
初診日の前日における保険料納付要件(一定以上の納付・免除・猶予期間があること)
を満たしている必要があります。
学生時代に未納を放置していると、
部活動やサークル中の事故
交通事故
急な病気
などで重い障害を負っても、納付要件を満たせず、障害基礎年金を受け取れないおそれがあります。
「若いから大丈夫」という感覚で未納のままにすることは、想像以上にリスクが大きい行動といえます。
学生納付特例を出し忘れて「未納」扱いになるケース
「学生納付特例を出せば大丈夫」と思っていても、
そもそも申請書を出していなかった
一部の年度だけ申請漏れがあった
といったケースが少なくありません。
その期間は「未納」扱いとなり、受給資格期間としてもカウントされません。
年に一度は「ねんきんネット」等で、自分の記録を確認し、未納期間がないかチェックすることをおすすめいたします。
追納を後回しにして加算金が増えるケース
学生納付特例期間は、原則として10年以内であれば追納可能ですが、3年度目以降に追納する場合には加算金が上乗せされることがあります。
「余裕ができたら払おう」と先延ばしにする
気づいた時には加算金負担が増え、支払いがさらに重く感じる
といった悪循環にはまりがちです。
就職後に一定の余裕ができたら、早めに追納計画を立てることが重要です。
今日からできる具体的ステップ(チェックリスト)
大学生本人のチェックリスト
ご自身の状況を、以下の項目で確認してみてください。
20歳前後に届いた「国民年金加入のお知らせ」などの書類をきちんと確認したか
自分が現在、第1号被保険者(国民年金加入が必要な立場)であることを理解しているか
「自分で払う」「学生納付特例」「親が払う」のどれを基本方針とするか決めたか
学生納付特例を利用する場合、申請書を提出済みかつ、年度ごとの更新をしているか
ねんきんネット等で、自分の納付・猶予状況を一度でも確認したか
保護者と、国民年金の負担をどのように分担するか、話し合ったことがあるか
学生納付特例分を将来追納する場合、大まかな目安(就職後○年かけて等)をイメージしているか
3つ以上「いいえ」がある場合は、一度立ち止まり、方針と手続きの見直しを検討するタイミングです。
保護者向けチェックリスト
保護者の方は、次の観点を確認いただくと安心です。
お子さまが20歳になった時点で、国民年金関連の書類を一緒に確認したか
お子さまの年金記録(学生納付特例・納付・未納)がどうなっているか把握しているか
親が保険料を負担している場合、社会保険料控除として確実に申告しているか
支払い方法(前納・口座振替・カード払いなど)を最適化し、払い忘れリスクを減らしているか
「どこまで親が負担するか」「将来返済してもらうかどうか」について、家族で合意が取れているか
自身の老後資金計画とのバランスを踏まえ、無理のない範囲で支援しているか
迷ったときに確認すべき公的窓口・公式情報
判断に迷ったときは、以下の情報源が頼りになります。
日本年金機構 公式サイト
国民年金の保険料・前納制度
学生納付特例制度・追納制度
最寄りの年金事務所
住民票のある市区町村役場の国民年金窓口
大学の学生課・学生納付特例事務法人窓口
制度・金額は毎年見直されるため、必ず最新の公式情報を確認することが重要です。
よくある質問(FAQ)
「年金はどうせもらえないのでは?」という不安
少子高齢化が進む中で、「自分が年金をもらう頃には制度がなくなっているのでは?」という不安を持つ方は多くいらっしゃいます。
しかし、政府・公的資料では、年金制度は
「何ももらえなくなる」のではなく、
給付水準や支給開始年齢を調整しながら継続していく仕組み
として設計・議論されています。
将来制度がどう変わるかを正確に予測することはできませんが、
まったく払わない(未納放置)
よりも、学生納付特例や追納、親の支援などを活用し、現行制度下でベターな選択を取る
ことの方が、合理的でリスクの低い判断と言えます。
投資とどちらが得?年金を払う意味
「年金を払うくらいなら投資に回した方がいい」という意見もありますが、両者は役割が異なります。
投資:自己責任でリスクを取って増やすお金
公的年金:長生きリスク・障害・遺族に対する保険的な仕組み
つまり、年金は「元本と利回りだけで比較する商品」ではなく、社会保険としての機能を持っています。
「年金は一切払わず、全部投資に回す」という発想は、保障を自ら手放すことになり、リスクが非常に高い選択です。
留学・休学中でも学生納付特例は使える?
日本の大学等に在籍している場合、留学や休学中でも学生納付特例の対象となるケースがありますが、在籍形態や留学先との関係によって取り扱いが異なる場合があります。
まずは在籍している大学の学生課
住民票のある市区町村窓口・年金事務所
に相談し、ご自身のケースでの取り扱いを確認することが重要です。
過去分を今から追納すべきか?
追納すべきかどうかは、次の要素で総合的に判断する必要があります。
追納対象期間の長さ(何年分か)
現在の家計にどれだけ余裕があるか
将来どの程度年金に頼るライフプランか
つみたてNISAやiDeCo等、他の資産形成手段とのバランス
原則としては、
加算金が付かない(または少ない)期間から優先して追納する
どうしても難しい場合は、60歳以降の任意加入などで保険料納付期間を増やして調整する
といった選択肢もあります。迷う場合は、FP等の専門家に相談するのも有効です。