SSDに換装したのに体感が変わらない、外付けSSDが思ったより遅い、メーカーの公称値と比べて数字が低くて不安――そんなときに役立つのが、ストレージの速度を手順通りに測れて「どこがボトルネックか」を切り分けやすいCrystalDiskMarkです。
ただ、画面には「Seq」「4K」「Q」「T」など見慣れない項目が並び、回数やサイズの設定もあって、初めてだと「結局どれを見ればいいの?」と迷いやすいのも事実です。
本記事では、CrystalDiskMarkのダウンロードと起動から、初心者が迷わないおすすめ設定、Allボタンでの測定手順、結果の読み方(まず見るべき指標の整理)までを、順番通りにわかりやすく解説します。さらに、数値が低いときにありがちな原因を「接続規格→温度→空き容量→バックグラウンド→設定差」の順で確認できるチェックリストとしてまとめ、最短で納得できる結論にたどり着けるようにしました。
「この数値なら正常」「遅い原因はここかもしれない」と判断できる状態を目指して、一緒に確認していきましょう。
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CrystalDiskMarkでできることと測定前の注意点
CrystalDiskMarkはストレージの読み書きを計測するツール
CrystalDiskMarkは、Windowsでストレージの読み込み速度・書き込み速度を測定するための定番ベンチマークソフトです。SSD(SATA SSD、NVMe SSD)やHDDだけでなく、外付けSSD、USBメモリ、SDカードなど、Windowsがドライブとして認識できる保存先であれば幅広く計測できます。
ストレージの速度は、体感と密接に関係します。ただし「速い=常に快適」とは限りません。たとえば、大きな動画ファイルをコピーする作業が多い方は“連続転送”の速度が効きますが、普段の起動やアプリの立ち上げ、ブラウザの反応などは“小さなデータの読み書き(ランダムアクセス)”の影響が大きくなります。CrystalDiskMarkは、こうした複数のアクセスパターンをテストし、数値として見える形にしてくれます。
また、ストレージの速度は「ストレージ単体の性能」だけで決まりません。接続規格(SATA/PCIe、USBの世代)、PC側の設定、温度、空き容量、バックグラウンド処理など、周辺条件で大きく変動します。CrystalDiskMarkを使う意義は、単なる点数遊びではなく、条件を揃えた上での比較と、遅いと感じたときの原因の切り分けにあります。「換装や購入後に本当に性能が出ているか」「今の遅さはストレージの問題か、それとも接続や設定の問題か」を判断しやすくなります。
測定で書込みが発生することを理解する
CrystalDiskMarkは“読み込みだけ”を測るツールではありません。多くのテスト項目では、読み込みと書き込みの両方を実行し、書き込み速度も表示します。つまり、測定中にテスト用のデータを書き込む動作が発生し、その分だけストレージに負荷がかかります。
SSDには書き込み耐久性(TBWなど)があり、通常の利用でCrystalDiskMarkを数回回した程度で寿命が大きく縮む可能性は高くありません。しかし、気にしておくべき場面はあります。たとえば、以下のような状況です。
すでに不調が疑われるストレージ(HDDで異音、フリーズ頻発、読み書きエラーが出るなど)
空き容量が極端に少ない状態(書き込みが不利になり、結果が歪みやすい)
重要作業の直前(測定中に重くなる、測定後に熱を持つなどの影響が気になる)
特にHDDは、書き込みやランダムアクセスの負荷がSSDより重く感じられることがあります。不安がある場合は、まず回数を少なく、サイズを小さめにして短時間で確認し、必要があれば段階的に条件を上げて測るのが安全です。
また、測定は一時的にPC全体の反応に影響する場合があります。OSが入っているCドライブを測ると、測定中にアプリの起動が遅くなったり、マウス操作がもたついたりすることがあります。これは異常というより、テストがストレージI/Oを使っているために起こる現象です。測定中は重い作業を避け、できれば他のアプリを閉じておくと結果も安定します。
まず確認したい3つの前提条件
測定前に、最低限ここだけ確認しておくと「本当は正常なのに遅いと誤認する」「接続ミスで頭打ちしているのにストレージを疑う」といった遠回りを避けやすくなります。
1つ目は接続規格です。外付けSSDが想定より遅い場合、最も多い原因がここです。USB 2.0ポートに挿していた、USBハブが低速だった、ケーブルが古くて速度が出なかった、といったケースは珍しくありません。内蔵でも同様で、M.2スロットでもSATA接続のものがあったり、PCIeの世代やレーン数の制約があったりします。
2つ目は電源設定です。ノートPCは省電力設定だと性能が抑えられることがあります。もちろん、ストレージ速度だけが劇的に落ちるとは限りませんが、CPUの挙動やバックグラウンド処理の影響で結果が揺れやすくなります。可能なら、電源モードを「高パフォーマンス寄り」にして、ACアダプター接続で測ると安定しやすいです。
3つ目はバックグラウンド処理です。OneDriveなどの同期、ウイルススキャン、Windows Update、ブラウザの大量タブなどが動いていると、ストレージアクセスが競合して数値が落ちたり、回ごとのブレが増えたりします。「同じ条件で比較したい」のであれば、測定中はなるべく静かな状態を作るのがポイントです。
CrystalDiskMarkのダウンロードと起動方法
入手先の選び方とバージョン確認
CrystalDiskMarkは複数の配布形態があり、どこから入手するかで迷いやすいポイントがあります。基本的な考え方としては、信頼できる配布元(公式情報に近い導線)を選び、バージョンを確認することが重要です。
なぜバージョン確認が大切かというと、記事や動画によって画面が違ったり、項目名やプロファイルが違ったりする場合があるためです。使い方自体は大枠で変わりませんが、「この項目が見当たらない」「表示が違う」と感じたとき、バージョン差が原因になっていることがよくあります。比較をする場合も、バージョンが違うと結果の傾向が微妙に変わる可能性があるため、できれば同一バージョン、少なくとも同系統のバージョンで揃えるほうが安心です。
また、配布ページにはZIP版とインストーラ版、そして32bit/64bit/Arm64などの区分が記載されていることがあります。自分の環境に合うものを選べば問題ありませんが、迷ったら「Windows 11/10の一般的なPCは64bitがほとんど」という点を踏まえ、まず64bit版を選ぶのが自然です。
ZIP版とインストーラ版の違い
CrystalDiskMarkには、主に次の2つの配布形態があります。
ZIP版:圧縮ファイルを展開して使うタイプ
インストーラ版:セットアップを実行してインストールするタイプ
ZIP版のメリットは、インストール作業が不要で、フォルダ単位で管理できる点です。たとえば、USBメモリに入れて持ち運ぶ、複数PCで同じフォルダを使う、不要になったらフォルダを削除するだけ、といった扱いができます。初心者の方でも「展開して実行する」だけなので、比較的手軽です。
インストーラ版のメリットは、スタートメニューへの登録やショートカット作成が自動で行われ、通常のアプリのように扱える点です。一方、PC環境によってはセキュリティ設定や管理者権限でつまずくこともあります。どちらが正解というより、一度試すならZIP版がわかりやすい、常用するならインストーラ版が楽、という理解で差し支えありません。
32bit・64bit・Arm64の実行ファイルを選ぶ
ZIP版を展開すると、複数の実行ファイルが含まれていることがあります。ここで迷いやすいのが、DiskMark32、DiskMark64、DiskMarkA64などの表記です。選び方はシンプルで、PCの環境に合わせて使い分けます。
64bit Windows(一般的なWindows 10/11):DiskMark64.exe を選ぶ
32bit Windows(古い環境):DiskMark32.exe を選ぶ
Arm 64bit Windows(Arm搭載PC):DiskMarkA64.exe を選ぶ
確認方法としては、Windowsの「設定」→「システム」→「バージョン情報」などで「システムの種類」が表示されます。そこに「64ビット オペレーティング システム」等と書かれていれば64bit版を使えばOKです。
なお、誤った実行ファイルを選んでも起動できない、または動作が不安定になるだけで、ストレージが壊れるような話ではありません。起動しない場合は、選び直すだけで解決することが多いです。
CrystalDiskMarkの基本設定とおすすめ設定
測定回数とテストサイズの考え方
CrystalDiskMarkの画面上部には、測定条件を決める項目があります。中でも影響が大きいのが測定回数(回数)とテストサイズ(例:1GiBなど)です。
回数:同じテストを何回繰り返すか
サイズ:テストに使うデータの大きさ(1GiB、4GiBなど)
回数を増やすと平均化されて安定しやすい一方、測定時間が伸び、書き込み量も増えます。サイズを増やすと、キャッシュの影響が薄れやすくなり、より“素の性能”に近い傾向を見やすくなりますが、その分時間と負荷が増えます。
初心者の方がまずやるべきは、短時間で「大きな異常がないか」を確認することです。速度が極端に低い、書き込みだけ異常に落ちる、測定が途中で止まる、などの問題は、軽い設定でも気づけます。そこで問題がなければ、比較や深掘り目的で条件を上げるのが安全です。
目的別のおすすめは次の通りです。
| 目的 | 回数の目安 | サイズの目安 | 向いている場面 |
|---|---|---|---|
| 正常確認(まず不安を消す) | 1〜3 | 1GiB前後 | 購入・換装直後、初回チェック |
| 比較(換装前後、別PCと比較) | 3〜5 | 1〜4GiB | 条件を揃えて差を見たい |
| 深掘り(原因調査) | 5以上 | 4〜16GiB | キャッシュ影響を減らして傾向を掴む |
ここで大切なのは「回数やサイズを上げれば正解」という発想に寄りすぎないことです。測定条件が違えば結果も変わるため、比較したいときは条件を固定することが何より重要になります。
測定ドライブの選び方と事故を防ぐコツ
CrystalDiskMarkでは、測定対象のドライブ(C:、D:など)を選択できます。ここでの注意点は2つあります。
1つ目は、測定対象を間違えないことです。外付けSSDを測るつもりが内蔵ドライブを測っていた、というのはよくあるミスです。エクスプローラーでドライブを開き、「容量」「ドライブ名」「接続した直後に増えたドライブ」などを確認してから、CrystalDiskMark側で同じドライブを選ぶと確実です。
2つ目は、測定中にそのドライブを使う作業を避けることです。特にCドライブ(OSが入っているドライブ)を測定中に別のアプリを動かすと、結果が乱れやすくなります。測定の再現性を高めたいなら、不要なアプリを閉じ、できればブラウザも最小限にして測るのがおすすめです。
外付けドライブの場合は、事故というより“条件ミス”が起きやすいです。具体的には以下です。
USB 2.0ポートに挿していた(見た目が似ていて気づきにくい)
USBハブ経由で速度が落ちていた
ケーブルが低速対応で頭打ちしていた
Type-Cでも、実は速度が出ない仕様のポートだった
外付けが遅いときは「ストレージの性能が悪い」と決めつける前に、まず接続条件を疑うのが最短ルートです。
プロファイルの違いと初心者の選び方
CrystalDiskMarkには、用途別のプロファイル(設定の組み合わせ)が用意されている場合があります。代表的には、標準的なプロファイル、NVMeを想定したプロファイルなどです。プロファイルは、テスト項目の内容や条件をまとめて切り替えるための仕組みと考えると分かりやすいです。
初心者の方におすすめの運用は次の通りです。
最初はデフォルト(標準)で測る:基本の結果の見方を覚える
比較をするならプロファイルを固定する:同条件で測ることが重要
NVMe SSDの比較を深くしたい場合だけNVMe向けを検討する:目的が明確なときに使う
プロファイルの理解で大切なのは、プロファイル自体が“良い・悪い”ではなく、目的に合う条件で測るための道具だということです。体感の確認であれば標準で十分なことが多く、むしろ「設定が増えて混乱する」ほうがデメリットになりやすいです。
測定のやり方と結果の保存方法
Allボタンで測定する手順
CrystalDiskMarkの基本操作は非常にシンプルです。初心者の方は、まず次の流れで一度測ってみるのがよいでしょう。
CrystalDiskMarkを起動する
上部の項目で、測定対象ドライブを選ぶ
回数とサイズを決める(迷うなら「回数3」「サイズ1GiB」)
Allボタンをクリックして測定開始
すべての項目の数値が表示されるまで待つ
測定終了(すべて埋まったら完了)
測定時間は、ドライブの速度、選んだ回数とサイズ、PC全体の状況によって変わります。外付けUSBメモリや遅いHDDなどでは時間がかかることもあります。途中で止まったように見えても、裏で進んでいる場合があるため、しばらく待ってみるのが無難です。
また、測定はストレージに負荷をかけるため、ノートPCではファンが回ったり、本体が温かくなったりすることがあります。これ自体は珍しいことではありませんが、熱に弱い環境では速度が落ちることもあるため、机の上で通気を確保するなどの配慮があると結果が安定しやすくなります。
測定中にやってはいけないこと
測定中は、ストレージに連続してアクセスが発生しています。この状態で別の作業をすると、結果が乱れるだけでなく、PCが重くなって不安になる原因にもなります。避けたい行動を整理すると、次の通りです。
大容量ファイルのコピーや移動
ゲーム起動、動画編集、仮想環境の起動などストレージ負荷が高い作業
外付けドライブの抜き差し、ケーブルの揺れ
スリープや休止状態への移行(設定によっては途中で中断される)
特に外付けは、接触が不安定だと測定が失敗することがあります。机の上で安定した状態に置き、可能ならノートPC側も動かさず測ると安全です。
結果を保存して比較できる形にする
測定結果は、見た瞬間に理解できるとは限りません。だからこそ、結果を保存し、条件も含めて残しておくことが大切です。保存しておくと、次のようなメリットがあります。
同じPCで後日測り直したときに差がわかる
換装前後、接続条件を変えた前後で比較できる
トラブル相談の際に、状況を正確に伝えられる
おすすめの保存方法は、まずスクリーンショットです。画面全体が残れば、テスト項目や条件が含まれるため、後から見返しやすくなります。
さらに一歩進めるなら、以下の“条件メモ”も一緒に残してください。これがあるだけで、比較の精度が上がります。
回数、サイズ、プロファイル
測定対象(C:、外付けSSDなど)
接続条件(USB 3.x直挿し、ハブ経由、Type-Cなど)
空き容量の割合(例:残り20%程度)
測定時の状況(同期停止、AC接続など)
数値そのものよりも、同じ条件で測れているかが判断の土台になります。これを意識するだけで、CrystalDiskMarkは「よくわからない点数表示」から「原因切り分けの道具」へ変わります。
CrystalDiskMarkの結果の見方
まず見るのはSeqと4Kの2系統
CrystalDiskMarkの画面には複数の行(テスト項目)が並びます。最初は難しく見えますが、初心者の方はまずSeq(シーケンシャル)と4K(ランダム)の2つに分けて理解すると整理しやすいです。
Seq(連続アクセス):大きなデータを連続して読み書きする性能
4K(ランダムアクセス):小さなデータ(4KB単位)をランダムに読み書きする性能
この違いが重要なのは、日常の体感がどちらに近いかが用途で変わるからです。
たとえば、大容量動画を外付けSSDにコピーする、写真データを一括バックアップする、といった用途ではSeqが効きます。一方で、OSの起動、アプリの起動、ブラウザのキャッシュ処理などは、4Kのような小さなアクセスが積み重なるため、4K側が快適さに影響しやすい傾向があります。
ここでありがちな誤解は、「Seqが公称値に近いからOK」「Seqが低いから故障」と短絡的に判断してしまうことです。Seqは比較的分かりやすい指標ですが、接続規格の影響を受けやすく、また体感と一致しないこともあります。まずは、Seqと4Kの両方を見て、用途に合わせて解釈することが重要です。
早見表としてまとめると次の通りです。
| 見る場所 | 何を表す目安か | 影響が出やすい場面 |
|---|---|---|
| Seq Read | 連続読み込み | 大きなファイルの読み出し、コピー |
| Seq Write | 連続書き込み | 大きなファイルの書き込み、書き出し |
| 4K Read | 小さな読み込み | 起動、アプリ立ち上げ、普段の反応 |
| 4K Write | 小さな書き込み | 更新が多い作業、軽い書込みの積み重ね |
QとTの意味をざっくり理解する
CrystalDiskMarkの項目には、QやTが含まれます。例として「Q1T1」「Q8T1」などの表記です。これは測定条件を表す記号で、初心者の方が最初から完璧に理解する必要はありませんが、最低限の方向性だけ押さえると混乱が減ります。
Q(Queue Depth):同時に処理する要求の数(キューの深さ)
T(Thread):処理に関わるスレッド数
一般に、Qが大きい条件は「同時にたくさんの要求が来る状況」を想定します。サーバーや高負荷環境では意味が大きい一方、日常の単純な操作ではQが小さい条件のほうが近い場合もあります。だからこそ、初心者の方にとって最重要なのは次の一点です。
比較をするなら、同じQ/T条件の結果を比べる
「Qが高いから良い」「低いから悪い」と単純に評価するのではなく、用途や比較の目的に合わせて見る、という姿勢が安全です。
速いのに体感が変わらない時の読み取り方
「数値は高いのに、体感があまり変わらない」ということは普通に起こります。特に、SSDからSSDへの換装(SATA SSD→NVMe SSDなど)では、Seqの数値が大きく伸びても、普段の操作で劇的に変わったと感じにくい場合があります。
このときの読み取り方として、次の観点が役立ちます。
体感に効きやすい4Kが伸びているか:Seqほど差が出ないこともある
別のボトルネックがないか:CPU、メモリ不足、常駐ソフト、ブラウザの負荷など
温度や電源設定で性能が維持できているか:薄型ノートで熱だれするケース
作業内容がストレージ依存でない可能性:ネット回線、アプリ側の処理待ちなど
CrystalDiskMarkは万能ではありませんが、「ストレージが原因で遅いのかどうか」を切り分ける材料として非常に有効です。数値が高ければストレージ以外を疑う、低ければ接続条件や設定を疑う、といった判断ができるようになります。
数値が低いときの原因切り分けチェックリスト
接続規格とポートの見落としを潰す
数値が低いと感じたとき、最初に確認すべきは“構造的に上限が決まる要因”です。ここが原因だと、どれだけ設定を工夫しても速度は伸びません。代表例は接続です。
外付けストレージの場合
USB 2.0ポートに挿していないか
速度が出るポート(USB 3.x、対応Type-C)か
ハブや延長ケーブルを挟んでいないか
ケーブルが低速対応ではないか(見た目で判断しにくいことがある)
内蔵ストレージの場合
SATA SSDなら、SATAの世代やポートの制約がないか
NVMe SSDなら、M.2スロットが帯域共有になっていないか
マザーボードの仕様上、特定スロットが低速になる条件がないか
外付けSSDが遅い相談の多くは、USB 2.0やハブが原因です。まずは「PC本体のポートに直挿し」「別ポートに差し替え」「別ケーブルで試す」という上流の確認が最優先です。
温度と空き容量とバックグラウンドを確認する
接続に問題がなさそうなら、次は“条件でブレる要因”を確認します。ここが原因だと、測定回によって結果が変わったり、時間が経つと落ちたりします。
温度
NVMe SSDは高性能な分、発熱しやすい傾向があります。温度が上がると、保護のために速度が落ちる(いわゆるサーマルスロットリング)場合があります。測定を連続で回したときに2回目以降が落ちる、あるいは最初は速いが途中から遅くなる、といったパターンは温度の疑いが強くなります。対策としては、通気を確保する、ノートPCなら机の上で測る、可能なら冷却を改善するなどが考えられます。
空き容量
空き容量が少ないと、特に書き込み速度が落ちやすいことがあります。SSDは内部でデータの整理をしながら書き込むため、余裕が少ないと不利になりやすいです。目安として、残りが10%未満のような状況では結果が極端に落ちることもあります。測定前に不要ファイルを整理し、余裕を作ってから測ると判断しやすいです。
バックグラウンド
同期、スキャン、アップデート、ダウンロードなどが裏で動いていると、ストレージにアクセスが発生して結果が下がります。「測定中はPCを触らない」「同期を一時停止する」「大きな処理が終わってから測る」といった工夫で、再現性が上がります。
設定差と比較条件のズレを揃える
「前は速かったのに遅い」「友人のPCより遅い」といった比較では、比較条件のズレが原因になっていることが多々あります。特に注意したいのは次の点です。
回数が違う
サイズが違う
プロファイルが違う
測定中のPC状況が違う(アプリを開いていた、電源設定が違う)
測定対象ドライブが違う(外付けを測るつもりが内蔵だったなど)
比較の基本は、同条件で測って差を見ることです。測定条件が揃っていない場合、結果が違って当然であり、そこから故障や性能差を判断するのは危険です。逆に言えば、条件を揃えるだけで「思ったより普通だった」「接続が原因だった」と納得できるケースが多いです。
改善しない場合の次の一手
チェックリストを確認しても改善しない場合、次の一手としては「証拠(結果と条件)を揃え、環境側の切り分けを進める」ことが有効です。
結果をスクリーンショットで保存する
**条件メモ(回数、サイズ、プロファイル、接続、空き容量)**を残す
外付けなら、別ポート・別ケーブルで再測定する
可能なら、別PCでも測る(ストレージの問題か、PC側の問題かを分ける)
内蔵なら、マザーボード仕様や設定(BIOS/UEFI)を確認する
ここまでやると、原因の方向性がかなり絞れます。たとえば、別PCでは速いのに自分のPCでは遅いなら、PC側(接続や設定)の可能性が濃厚です。どの環境でも遅いなら、ストレージ自体かケーブル類の可能性が上がります。闇雲に設定を触るより、切り分け順を守って整理していくほうが、結果的に早く解決しやすくなります。
よくある質問
HDDやUSBメモリでも測っていいのか
測定は可能です。CrystalDiskMarkはドライブとして認識されていればテストできます。ただし、HDDやUSBメモリはSSDに比べて遅いのが普通であり、特にランダムアクセス(4K)では大きな差が出ます。そのため、SSDの結果と同じ感覚で見てしまうと「壊れているのでは」と不安になりやすい点に注意が必要です。
また、HDDは書き込みを伴うテストが負担になりやすい場合があります。すでに不調が疑われるHDDでの連続測定は避け、短時間設定での確認に留めるほうが安心です。USBメモリやSDカードも同様に、製品の品質や世代差で結果が大きく変わるため、「比較するなら同じ製品・同条件で比較する」ことを意識してください。
何回・何GiBで測ればいいのか
迷う場合は、回数3、サイズ1GiB前後が扱いやすい目安です。短時間で終わり、結果のブレもある程度抑えられます。
ただし、比較の目的によって最適は変わります。換装前後などで“差”を見たい場合は、回数を3〜5にし、サイズも1〜4GiB程度にして条件を揃えると判断しやすくなります。逆に、深掘り目的でサイズを大きくすると、キャッシュの影響が減り、より厳密な傾向が見える場合がありますが、時間と負荷が増える点には注意が必要です。
大切なのは「一回で完璧な設定を探す」ことではなく、目的に合わせて段階的に測ることです。まず短く測って状況を掴み、必要なら条件を上げて再測定する、という流れが安全で確実です。
メーカー公称値と違うのは故障なのか
公称値は、多くの場合「特定条件下での最大値」です。実環境では、接続規格、PC側の仕様、温度、空き容量、バックグラウンド処理などが絡むため、同じ数値が出なくても直ちに故障とは言えません。
まず確認すべきは、外付けならUSBの世代やポート、ケーブル、ハブの有無です。内蔵なら、SATAやPCIeの制約、スロットの仕様、電源設定などです。そのうえで、測定条件(回数、サイズ、プロファイル)を揃えて再測定し、傾向が再現するかを見ます。
ただし、「以前は出ていた速度が急に落ちた」「読み込みだけ異常」「書き込みが極端に落ちる」「測定が途中で止まる」といった症状が再現する場合は、ストレージの不調や接続の不具合の可能性が高まります。外付けならケーブル交換や別PCでの測定、内蔵ならS.M.A.R.T.情報の確認など、追加の切り分けを進めると安心です。
バージョンが違うと結果は変わるのか
変わる可能性はあります。CrystalDiskMarkはバージョンによって表示の違い、プロファイルの扱い、内部のテスト条件の最適化などが起こり得ます。そのため、結果を比較する場合は、できれば同じバージョンで揃えるほうが安全です。
また、インターネット上の解説記事と画面が違う場合も、バージョン差が原因であることが少なくありません。項目が見当たらない、表記が違う、と感じたときは、まず自分のバージョンを確認し、その上で同じ系統の説明を探すと理解が早くなります。比較の際は、スクリーンショットにバージョンが写るように残しておくと、後から条件を思い出しやすくなります。
まとめ
今日やることの整理
CrystalDiskMarkで迷わず成果を得るために、今日やることを整理します。
まずは短時間設定(回数1〜3、サイズ1GiB)で測定し、極端な異常がないか確認する
結果はSeq(連続)と4K(ランダム)を中心に見て、用途(コピー中心か、普段の反応か)に合わせて解釈する
遅いと感じたら、接続規格とポート→温度→空き容量→バックグラウンド→設定差の順に上流からチェックする
結果はスクリーンショットで保存し、回数・サイズ・接続条件などのメモも一緒に残して比較できる形にする
この流れを守ると、単発の数値に振り回されず、「どこが原因で、次に何をすればよいか」が見えやすくなります。
仕様変更や更新時の見直しポイント
CrystalDiskMarkは定番ツールですが、バージョン更新で表示やプロファイルが変わることがあります。更新が入ったとき、あるいは過去の結果と比較したいときは、次の点を見直してください。
測定条件(回数・サイズ・プロファイル)が同じか
測定対象ドライブが同じか(同型番、同接続形態か)
接続条件が同じか(外付けならポート・ケーブル・ハブ有無)
測定時の状況が同じか(バックグラウンド処理、電源モード)
バージョンが同じか、少なくとも記録できているか
条件が変われば数値も変わります。逆に、条件を揃えられればCrystalDiskMarkはとても強力な比較ツールになります。数値の上下に一喜一憂するのではなく、条件とセットで結果を扱うことが、納得感と安心につながります。