「このSSD、ほんとに速いの?」――CrystalDiskMark(CDM)を回してみたけれど、数字のどこを見れば“速い・遅い”が判断できるのか、迷ったことはありませんか。
本記事では、CDMの基本操作から“見るべき指標”の優先順位、SSD/HDD/外付けSSDごとの現実的な目安レンジまで、初心者でも迷わない順番で解説します。
体感のキビキビ感に直結する「4K Q1T1」、大容量コピーの向き不向きを示す「Seq」の違い、USBやPCIeの規格上限とのつき合わせ方、数値が伸びない時のチェックポイントも1ページで把握できます。
すべては「結果を理解し、次の行動に移す」ため。測り方のコツと読み解き方が分かれば、ケーブルやポートの見直し、熱対策、テストサイズの選び方など、無駄なく改善に繋げられます。
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CrystalDiskMarkは“ただ数字を並べるツール”ではなく、ボトルネックを発見して体験を整えるための羅針盤です。
要点をおさらいします。
体感重視なら「RND 4K Q1T1」、大容量転送は「Seq」を見る
規格上限(USB/PCIe)と実測を照らし合わせ、期待値を現実に合わせる
温度・電源モード・空き容量・テストサイズで数値は大きく変動する
3回以上の測定で中央値を見ると再現性が上がる
速度だけで“故障断定”はしない。SMARTや挙動も合わせて判断する
もし数値が想定より低ければ、まずはポート/ケーブルの規格、電源設定、温度を確認し、テストサイズを1→4–8GiBに変更して再測定。改善の糸口が掴めるはずです。
最後に、あなたの環境で出た結果を目安表と見比べ、気づきを1つだけ実行してみてください。
たとえば「USBポートを変更」「ヒートシンク装着」「バックグラウンド停止」など、小さな一歩で体感は着実に変わります。
数字が読めれば、最適化はもう半分完了です。
CrystalDiskMarkとは?
ストレージ(HDD/SSD/外付けSSD/メモリカードなど)の読み書き速度を、パターン別に測る定番ベンチ。
実アプリの体感に近い「ランダム4K(Q1T1)」や大容量コピーに近い「連続(Seq)」などを簡単に確認できます。
インストールと起動
公式配布はポータブル(解凍して実行)とインストーラの2種。管理者権限は基本不要。
日本語UIあり。64bit版を推奨。
測定前の準備(正しい条件づくり)
電源設定:Windowsの電源モードを「高パフォーマンス」へ。ノートはAC接続。
温度:NVMeは熱で落ちる(サーマルスロットリング)。ファン/ヒートシンク推奨。
空き容量:少なすぎるとSLCキャッシュが使えず書き込み低下。目安15–20%は空ける。
接続規格の確認:
NVMeはPCIeレーン(x4など)・世代(3.0/4.0/5.0)
外付けはUSB 3.2 Gen1/Gen2/Gen2x2、Thunderbolt 3/4 など
バックグラウンド停止:Windows Update/ウイルススキャン/クラウド同期を一時停止。
テスト対象ドライブ以外に結果保存(スクショ等)を。
基本の測定手順(CDM8想定)
CDM起動 → 上部の「ドライブ」を測りたい対象に合わせる。
「Test Size(テストサイズ)」はまず1GiB、安定確認は 4–8GiB。
「Count(回数)」は3–5回。
プロファイルは「Default」→ 実アプリ寄りに見るなら「Real World Mix」も参考。
何も触らず「All」をクリックして一括測定。
結果は小数点のMB/s(またはGB/s)表示。必要なら右クリック→コピー/画像保存。
結果の見方
Seq1M Q8T1:1MiBブロック、QD8/スレッド1。大容量の直線的コピーの目安。
Seq1M Q1T1:同じ1MiBだがQD1。OSや単発コピーに近い挙動の確認。
RND4K Q32T1:小さな4KiBブロック、QD32。並列アクセス時の耐性。
RND4K Q1T1:体感へ直結。起動やアプリのキビキビ感を左右(読み書き両方チェック)。
IOPS表示:4Kで重要(MB/s ÷ 4KB ≒ IOPS目安)。遅延が体感に効く。
速度の“目安値”早見表(2025年時点の一般的レンジ)
※製品・容量・ファーム・温度・空き容量・コントローラで大きく変わります。あくまで「健康そうか」の参考レンジ。
内蔵HDD(SATA)
| 種類 | 連続読取 Seq | 連続書込 Seq | 4K Q1T1 読取 | 4K Q1T1 書込 |
|---|---|---|---|---|
| 3.5″ 5400rpm | 100–140 MB/s | 90–130 MB/s | 0.3–1.0 MB/s | 0.3–1.0 MB/s |
| 3.5″ 7200rpm | 150–220 MB/s | 140–200 MB/s | 0.5–1.5 MB/s | 0.5–1.5 MB/s |
| 2.5″ ノート向け | 90–130 MB/s | 80–120 MB/s | 0.2–0.8 MB/s | 0.2–0.8 MB/s |
SATA SSD(2.5″/SATA M.2)
| 種類 | 連続読取 | 連続書込 | 4K Q1T1 読取 | 4K Q1T1 書込 |
|---|---|---|---|---|
| 一般的SATA SSD | 450–560 MB/s | 400–520 MB/s | 25–60 MB/s | 40–120 MB/s |
NVMe SSD(内蔵M.2)
| 規格 | 連続読取 | 連続書込 | 4K Q1T1 読取 | 4K Q1T1 書込 |
|---|---|---|---|---|
| PCIe 3.0 x4 | 1.5–3.5 GB/s | 1.2–3.3 GB/s | 40–80 MB/s | 80–200 MB/s |
| PCIe 4.0 x4 | 5.0–7.5 GB/s | 4.5–6.8 GB/s | 50–100 MB/s | 100–300 MB/s |
| PCIe 5.0 x4 | 10–14 GB/s | 9–12 GB/s | 60–120 MB/s | 120–350+ MB/s |
※ 書き込みはSLCキャッシュ枯渇で大きく落ちることあり(連続長時間書込で顕著)。
外付けSSD・ケース
| 接続 | 想定上限/レンジ(連続) | 備考 |
|---|---|---|
| USB 3.2 Gen1(5Gbps) | ~ 400–450 MB/s | 実効はプロトコルオーバーヘッドで頭打ち |
| USB 3.2 Gen2(10Gbps) | ~ 800–1,050 MB/s | NVMe外付けでよく出る上限帯 |
| USB 3.2 Gen2x2(20Gbps) | ~ 1.6–2.0 GB/s | 対応ポートが必要 |
| Thunderbolt 3/4(40Gbps) | ~ 2.5–3.0 GB/s | 高性能NVMe+筐体で到達 |
メモリカード
| 種類 | 連続読取 | 連続書込 |
|---|---|---|
| SD UHS-I | 70–100 MB/s | 30–90 MB/s(U3~V90で差) |
| SD UHS-II | 150–300 MB/s | 120–260 MB/s |
| microSD UHS-I | 50–100 MB/s | 20–90 MB/s |
“遅い/数値が出ない”ときの診断フローチャート
規格の上限を超える結果を期待していないか?(USB 3.2 Gen1にNVMeは無理)
電源モード省電力・バッテリー駆動になっていないか?
温度は?(NVMe 70℃超で失速=サーマルスロットリング)
空き容量が少なすぎないか?(SLC枯渇で書込激減)
ドライバ/BIOS/ファームは最新か?(NVMe/チップセット/ストレージ)
外付けケーブル・ポートは規格対応か?(Gen2がGen1ポートに刺さっていないか)
暗号化・リアルタイムスキャン・バックアップが動いていないか?
ベンチのテストサイズが小さすぎないか?(1GiB→4–8GiBで再計測)
別ポート・別PC・別ケースで再現するか?(機器不良の切り分け)
ベストプラクティス(再現性UP)
3回以上回して中央値を見る
1GiB→8GiBにサイズを変え、Seqと4K(Q1T1)を重点比較
測定直前に大容量コピーをしない(SLCキャッシュ復帰に時間がかかる場合あり)
NVMeはヒートシンク+ケース内エアフロー確保
外付けは短く品質の良いケーブルを使用
OS/ドライバ更新後に再テストして記録を残す
FAQ(読者の検索意図にヒットしやすいQ&A)
Q. どの数値を重視すべき?
A. 体感に効くのは「RND4K Q1T1(特に読み込み)」、大容量コピーは「Seq」。
Q. 数値が公式値より低い…不良?
A. 環境差が大きいのが普通。まずは電源・温度・規格上限・空き容量を確認。
Q. 外付けNVMeが1,000MB/sで頭打ち
A. USB 3.2 Gen2(10Gbps)の実効上限付近。Gen2x2/TBで改善余地。
Q. テストサイズはどれくらい?
A. 手早くは1GiB、安定評価は4–8GiB。書込特性やSLC枯渇を見たいならさらに大きく。
Q. SSDの健康状態の判定は?
A. 速度だけで断定は不可。総書込量/不良セクタ/温度などSMART情報も併せて確認。