「コンプライアンスって、結局なにを守ればいいんだろう……」「違反と言われても、どこからがアウトなのかよく分からない」。
そう感じながらも、今さら周りには聞きづらいとお悩みではないでしょうか。
本記事では、コンプライアンスを「法律だけでなく、会社や社会のルールを守ること」という身近な視点から、できるだけ専門用語を使わずにわかりやすく解説いたします。
Yahoo!知恵袋に寄せられるような素朴な疑問をヒントに、
一言で説明できるコンプライアンスの意味
職場で起こりがちな“あるある”事例とNG行為
「これってコンプラ違反？」というモヤモヤを整理する考え方
今日から使えるチェックリストと、迷ったときの相談の仕方
までを、Q&A形式で丁寧にまとめました。
新人・若手社員の方はもちろん、部下や後輩に説明する立場の方にも、そのまま使える内容となっています。
まずは肩の力を抜いて、「自分の仕事にどう関係するのか」という視点で読み進めてみてください。
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コンプライアンスとは？一言でいうとこういうこと
最初に、一言でまとめます。
コンプライアンスとは、「法律だけでなく、会社や社会のルールを守って、公正に行動すること」です。
もう少し丁寧に言うと、次のようなイメージです。
法律を守る
会社の就業規則や社内ルールを守る
社会の常識・マナー・倫理にも反しないように行動する
つまり「バレなければいい」「法律に書いていないからいい」ではなく、世の中の目線から見て“おかしくないか”を含めて考えることが、コンプライアンスです。
コンプライアンスの基本的な意味（法令遵守＋社会のルール）
コンプライアンス（Compliance）は、元々「（ルールに）従う」「守る」という意味の英語 comply から来ています。
企業の場面で使うときは、一般的に次のように説明されます。
狭い意味：法令遵守（法律や条例、業界ルールなどを守ること）
広い意味：法令に加え、社内規程・社会規範・倫理・マナーを守ること
日本では長く「コンプライアンス＝法令遵守」と訳されてきましたが、現在は**「法律＋社会のルールの両方を守ること」**という広い意味で使われるのが一般的です。
なぜ最近コンプライアンスが重視されているのか
ここ数年、ニュースや社内研修で「コンプライアンス」という言葉を聞く機会が増えています。その背景には、次のような理由があります。
SNS やネットの拡散により、不祥事がすぐに世の中に広まる
企業不祥事によって、会社だけでなく取引先や従業員にも大きな被害が出る
法令違反だけでなく、「モラルを欠いた行動」にも社会から厳しい目が向けられている
一人ひとりの何気ない行動が、企業全体のブランドや信頼に直結する時代になっているため、コンプライアンスがより強く求められています。
身近な例でわかるコンプライアンス【働く場面・日常生活】
ここからは、一般の会社員の方を想定して、日常で起こりやすい例をもとに見ていきます。
職場でよくあるコンプライアンス違反・グレーゾーン例
代表的なシーンを、表に整理します。
| 領域 | 具体例 | どこが問題か | 望ましい対応 |
|---|---|---|---|
| 労務管理 | タイムカードの「代打ち」 | 実際の勤務時間と記録が合わず、労働法違反の恐れ | 必ず本人が打刻し、実態どおりに記録する |
| 情報管理 | 顧客リストを自宅PCや私物USBにコピー | 情報漏えい・不正利用のリスク | 持ち出しルールを守り、許可なくコピーしない |
| 取引先対応 | 特定の取引先への過度な接待・贈答 | 贈収賄・公正な取引の妨げになる可能性 | 会社の接待・贈答規程の範囲内にとどめる |
| 職場の人間関係 | 部下・後輩への執拗な叱責、人格否定 | パワハラとして問題。安全配慮義務にも抵触しうる | 行動・成果に絞ってフィードバックする |
| 情報発信 | 社内の愚痴・内部情報をSNSに投稿 | 会社の信用失墜、情報漏えいのリスク | SNSで会社情報・内部事情は原則投稿しない |
これらは、ニュースに出るような大事件ではなく、**どの職場でも起こり得る“身近な行動”**です。
「自分は大丈夫」と思っていても、知らないうちにラインを越えてしまうことがあります。
SNS・チャット・メールで気をつけたいこと
最近のコンプライアンスは、SNSやチャットツールとも深く関係します。
顧客名や具体的な案件内容を、社外に向けて投稿してしまう
社名や部署が分かるプロフィールで、差別的・攻撃的な発言をする
同僚や取引先を特定できる形で、愚痴や悪口を投稿する
これらは、情報漏えいや名誉毀損、ハラスメントといった観点から問題になる可能性があります。企業によっては、SNS 利用に関するガイドラインを設けている場合もありますので、必ず確認しておくことが大切です。
ハラスメントや情報漏えいもコンプライアンス？
結論から言うと、ハラスメントや情報漏えいもコンプライアンスに含まれます。
ハラスメント
労働施策総合推進法などに基づき、企業にはハラスメント防止措置が求められています。
会社のハラスメント防止規程に違反する行為は、コンプライアンス違反です。
情報漏えい
個人情報保護法や不正競争防止法など、複数の法令に関わる可能性があります。
社内の情報管理規程に違反する場合も、コンプライアンス違反です。
「法律に触れるほどではない軽い冗談」「少しだけなら大丈夫」という感覚が、重大な問題につながることもあります。相手の立場に立ってどう感じるかを常に意識することが重要です。
よくある勘違いQ&A（知恵袋的な素朴な疑問）
ここでは、Yahoo!知恵袋などにもよく見られる質問イメージに近い形で、よくある疑問を整理します。
「コンプライアンス＝法律さえ守ればOK」ではない理由
Q. 法律に違反していなければ、コンプライアンス違反ではないのでは？
A. 法律だけでなく、社内ルールや社会の常識も含めて守る必要があります。
例えば次のようなケースです。
法律上は問題ないが、社内規程で禁止されている行為
違法ではないが、社会的に強い批判を受けるような行為（差別的発言など）
顧客や取引先との信頼関係を損なう行為
このような行為は、法律には直接触れなくても、企業倫理や社会規範に反するとしてコンプライアンス問題になります。
「上司の指示だから」は言い訳になる？
Q. 上司に『やれ』と言われたことなら、責任は上司にありますよね？
A. 指示した上司の責任はもちろんありますが、実行した本人も責任を問われる可能性があります。
明らかに違法・不適切と思われる指示を、そのまま実行してしまう
「みんなやっているから」「これがうちのやり方だから」と深く考えない
こうした行動は、後から「言われたからやっただけ」と主張しても、自分の責任が完全に免れるわけではありません。
迷ったときは、次のような行動が重要です。
指示の意図を丁寧に確認する
不安がある旨を正直に伝える
信頼できる別の上司・人事・コンプライアンス窓口などに相談する
コンプライアンス違反を見かけたときはどうすべき？
Q. 同僚がコンプライアンス違反かもしれない行為をしているのを見ました。どうしたらよいですか？
状況によりますが、一般的な考え方としては次のようなステップが考えられます。
まず事実を確認する
勘違い・誤解の可能性もあるため、即断しない。
信頼できる上司や人事に相談する
直接本人を責めるのではなく、判断を仰ぐ。
社内に相談窓口・内部通報制度があれば活用する
匿名で相談できる窓口があれば、利用を検討する。
「見て見ぬふり」をすると、結果的に会社全体を危険にさらすことになります。早めの相談が、本人を守り、会社を守ることにつながります。
コンプライアンスと似た言葉との違いを簡単に整理
コーポレートガバナンスとの違い
まず、代表的な3つの用語を表で比べてみます。
| 用語 | 一言の意味 | 主な対象 | 視点・目的 |
|---|---|---|---|
| コンプライアンス | 法律・ルール・倫理を守ること | 企業・従業員の行動 | ルールを守り、不正やトラブルを防ぐ |
| コーポレートガバナンス | 企業統治の仕組み | 経営体制・組織の仕組み | 経営の透明性を高め、不正や暴走を防ぐ |
| CSR | 企業の社会的責任（社会への良い影響） | 企業活動全体 | 社会・環境・地域への貢献を重視した企業活動 |
コーポレートガバナンスは、「社外取締役」「監査役」「監査法人」などの仕組みを通じて、経営を監視・チェックする枠組みです。
一方でコンプライアンスは、その枠組みの中で、一人ひとりが実際にルールを守ることを指します。
CSR（企業の社会的責任）との違い
**CSR（Corporate Social Responsibility）**は、企業が社会の一員として果たすべき責任を指す言葉です。
環境保護への取り組み
地域社会への貢献
ダイバーシティの推進 など
イメージとしては、
コンプライアンス：最低限守らなければならない「やってはいけないことをしない」
CSR：より良い社会のために「進んで良いことをする」
と考えると、違いをつかみやすくなります。
社内ルール・就業規則との関係
社内ルールとコンプライアンスの関係は、次のような階層イメージで捉えると整理しやすくなります。
法律（労働基準法、個人情報保護法など）
業界ルール・ガイドライン
会社の就業規則・社内規程
職場ごとのローカルルール・慣習
社会の常識・マナー・倫理
コンプライアンスは、これらをトータルで守ることです。
特に、会社が独自に定めた社内規程は、法律より厳しい基準を設けていることもあります。最終的には、自社のルールを確認することが非常に重要です。
会社や組織が整えるべきコンプライアンス体制の基本
ここからは、少し組織寄りの視点です。ただし、一般社員の方にも関係のある「最低限知っておきたいポイント」に絞って説明します。
最低限押さえたい「仕組み」
組織としてコンプライアンスを守るには、次の3点が基本となります。
ルールを決める（整備）
就業規則・各種規程・マニュアルなどの文書化
ルールを伝える（教育）
研修・eラーニング・社内ポータルなど
ルールを守れているか確認する（点検・改善）
内部監査・アンケート・通報窓口からの情報など
このサイクルを回すことで、はじめてコンプライアンスは「仕組み」として機能するといえます。
教育・研修で伝えるべきポイント
コンプライアンス研修で重要なのは、自社にとって特にリスクの高い領域を、具体的な例で伝えることです。
どのような行為が起きやすいか（例：情報漏えい、ハラスメント、労務管理など）
それがなぜ問題なのか（法令・社会的評価・社内の信頼の観点）
どうすれば防げるのか（行動レベルでの対策）
また、「何かあったときに相談してよい」「早めの相談が評価される」というメッセージを伝えることで、報告や相談が上がりやすい風土づくりにもつながります。
相談窓口・内部通報制度の役割
多くの企業では、コンプライアンスに関する相談窓口や内部通報制度を設けています。
直属の上司に相談しにくい場合の“逃げ道”としての役割
匿名での相談・通報ができる仕組み
通報者への不利益取り扱いを禁止する仕組み など
一般の社員の方にとって重要なのは、「どこに、どのように相談できるのかを把握しておくこと」です。社内ポータルや就業規則に記載されていることが多いので、一度は目を通しておくと安心です。
個人が今日からできるコンプライアンス実践チェックリスト
最後に、一人ひとりが今日から実践できるポイントをチェックリストにまとめます。
行動前に確認したい5つの質問
何か迷う行動を取ろうとしているとき、次の5つの質問を自分に投げかけてみてください。
法律や会社のルールに反していないか？
相手（顧客・同僚・部下）を不快にさせないか？
社外の人が見てもおかしくない行動か？（ニュースになっても大丈夫か？）
家族や友人に胸を張って話せるか？
会社の価値観や方針から外れていないか？
5つのうち一つでも「微妙かも」「自信がない」と感じたら、一度立ち止まり、誰かに相談するサインと考えるとよいでしょう。
迷ったとき・不安なときの行動パターン
コンプライアンスは、「迷ったら相談」が鉄則です。行動パターンとしては、次の3ステップがおすすめです。
一人で決めない
「まあいいか」で判断しない。
事実を整理してメモに残す
いつ・どこで・誰が・何をしたのかを簡単にメモ。
信頼できる相手に早めに相談する
上司、人事、コンプライアンス窓口など。
トラブルの多くは、「早い段階で相談していれば、大問題になる前に防げた」ものです。小さな違和感のうちに動くことが、最大の予防策になります。
まとめ｜コンプライアンスを“自分ごと”として捉えるために
この記事の要点のおさらい
コンプライアンスとは
法律だけでなく、会社や社会のルール・倫理を守って、公正に行動すること。
なぜ重要か
一人ひとりの行動が、企業全体の信頼・ブランド・経営に直結するため。
身近な例
タイムカードの不正、情報の持ち出し、SNSでの不用意な発信、ハラスメントなど。
勘違いしやすい点
「法律に違反していなければOK」「上司の指示だから大丈夫」という考え方は危険。
似た用語との違い
ガバナンスは“統治の仕組み”、CSRは“社会貢献”。コンプライアンスは“守る行動”。
個人ができること
行動前に5つの質問でセルフチェックし、迷ったら一人で抱え込まずに相談する。
明日からの行動を一つだけ変えてみる
コンプライアンスは、特別な知識を持つ人だけの話ではなく、全ての従業員の日々の小さな判断の積み重ねです。
明日から、次のどれか一つだけでも意識してみてください。
何か違和感を覚えたら、すぐにメモを取り、相談の準備をする
顧客情報・社内情報を扱うときは、「これが外に漏れても大丈夫か？」と一度考える
SNS での発信前に、「会社や関係者の立場で見てどうか」を確認する
また、法改正や社内ルールは随時変わる可能性があります。本記事は一般的な解説であり、最終的には自社の就業規則・コンプライアンス規程、必要に応じて専門家の助言を確認することをおすすめいたします。