Chromebook(クロームブック)は、価格が手ごろで起動が速く、ウイルスにも強いことから、教育現場や個人利用で採用が広がっている端末です。
一方で、「デメリットが多くて不便なのでは」「仕事には使えないのでは」といった不安の声も少なくありません。
本記事では、Windows PCを日常的に使っている方が、サブ機や乗り換え候補としてChromebookを検討する際に、「どのような場面で困るのか」「どの程度の制約なのか」を具体的にイメージできるよう、主要なデメリットとその影響、回避策を整理して解説いたします。
※本コンテンツは「記事制作ポリシー」に基づき、正確かつ信頼性の高い情報提供を心がけております。万が一、内容に誤りや誤解を招く表現がございましたら、お手数ですが「お問い合わせ」よりご一報ください。速やかに確認・修正いたします。
デメリット1:Windows・Mac専用アプリが動かない
どのようなアプリが動かないのか具体例
ChromebookはChromeOSという独自のOSを搭載しており、WindowsやmacOS向けのアプリケーションとは互換性がありません。
代表的に動作しない、または大きく制限されるアプリの例は次のとおりです。
Windows / Mac専用の業務アプリ(販売管理・会計ソフトなど)
Illustrator / Photoshop / Premiere ProなどのAdobe Creative Cloudデスクトップ版
多くのPC向けオンラインゲーム・3Dゲーム
一部のUSBドングル前提の業務ツールや独自クライアントソフト
Chromebookでは、基本的に「Webアプリ」「Androidアプリ」「一部のLinuxアプリ」を利用する前提となります。そのため、既にWindowsやMac用のアプリケーションに強く依存している場合、そのままの形での移行は難しいと考えてください。
Webアプリ・Androidアプリで代替できるケース
もっとも、すべての用途で困るわけではありません。近年は、以下のようにWebアプリやAndroidアプリで代替可能なケースも増えています。
Officeファイルの閲覧・軽い編集 → Web版OfficeやGoogleドキュメント等で代替
画像の簡易編集 → Web版Canva、Pixlrなどの画像編集サービス
動画視聴・音楽鑑賞 → YouTube、各種ストリーミングサービスのWeb版・Androidアプリ
チャット・ビデオ会議 → Google Meet、Zoom、TeamsのWeb版 など
ブラウザ上で完結するSaaSが中心の仕事であれば、Chromebookでも十分に業務が完結するケースは珍しくありません。
代替が難しく、Chromebookが不向きなケース
一方で、次のようなケースではChromebookは基本的に不向きです。
Adobe製品や3D CADなど、重いデスクトップアプリを日常的に使用する
特定のWindows専用業務ソフトが業務フローの中心にある
高負荷なPCゲームを楽しみたい
周辺機器やドライバーがWindows前提でしか提供されていない
これらに該当する場合は、主力マシンとしてはWindows / Macを選択し、Chromebookはあくまで「ブラウジングや軽い作業用のサブ機」として位置づけるのが現実的です。
デメリット2:Microsoft Officeの互換性と使い勝手に注意
Web版Office・Googleドキュメント利用時の制限
ChromebookでWordやExcelなどのMicrosoft Officeファイルを扱う場合、主な選択肢は次の2つです。
Web版Microsoft 365(ブラウザから利用)
Googleドキュメント/スプレッドシート/スライドでの互換モード編集
これらはいずれも「基本的な作成・編集」には十分ですが、インストール型Officeと比べると機能面でいくつかの制約があります。
マクロ(VBA)や一部のアドインが動作しない
複雑なレイアウト・罫線・フォントを多用した資料で表示崩れが起きる
一部のショートカットや細かい操作感が異なる
社内や取引先が高度に作り込まれたOfficeファイルを多用している場合、完全な互換を期待するのは危険です。
レイアウト崩れ・マクロが多いファイルで起きやすい問題
特に注意すべきは、次のようなファイルです。
マクロを用いて自動計算・帳票出力を行っているExcelファイル
企業ロゴフォントや特殊な日本語フォントを前提としたPowerPoint資料
複数シート間連携やピボットテーブルを多用する管理表
これらは、Web版OfficeやGoogleスプレッドシート等で開くと「計算が動かない」「レイアウトが崩れる」「フォントが置き換わる」といった問題が発生しがちです。
仕事でOfficeを多用する人が判断すべきポイント
仕事でOfficeを日常的に使う方は、次のように切り分けて判断すると良いでしょう。
「閲覧が中心」「簡単な修正程度」であればChromebookでも運用可能
「高度な編集・マクロ利用」が多い場合は、メイン環境としてはWindows PCを維持する
重要な帳票作成や最終版の調整はWindowsで行い、Chromebookは外出先での軽作業に絞る
Chromebook一台で完結させるのではなく、「用途によって使い分ける」という前提に立つと、デメリットを大幅に軽減できます。
デメリット3:オフライン環境ではできないことも多い
オフラインでもできる作業(文書編集・Gmail下書きなど)
「Chromebookはオフラインだと何もできない」という印象がありますが、実際には多くの機能がオフラインでも利用可能です。
代表的なものは以下のとおりです。
Googleドキュメント/スプレッドシート/スライドのオフライン編集
Gmailの受信済みメール閲覧と新規メールの下書き
Google Keepなどを使ったメモ作成
事前にダウンロードした動画・音楽・画像・PDFの再生・閲覧
ローカル保存したOfficeファイルの編集(互換モード)
ただし、これらを利用するには事前にオフライン機能を有効化し、必要なファイルを同期しておく必要があります。
インターネット接続が必須となる作業
一方で、次のような作業はインターネット接続が前提です。
Webサイトの閲覧、Webサービスの利用全般
クラウド上の最新データの編集(Google Driveや他クラウドのオンラインファイル)
メールの送受信(送信完了・受信の反映)
SNSの投稿・タイムライン閲覧
オンライン会議(Meet / Zoom / Teams など)
これらの作業が多い場合は、テザリングやモバイルWi-Fiなど、ネット環境の確保が前提となります。
出張・移動が多い人が事前に確認すべきこと
出張や移動が多い方は、Chromebookを導入する前に次の点を確認してください。
オフライン時に必ず必要になるファイルやアプリは何か(事前ダウンロードで対応可能か)
出先でのネット回線(テザリング・モバイルルーター)の用意が現実的か
社内ルールとして、社外からのクラウドアクセスが制限されていないか
これらを満たせない場合、オフラインや不安定な回線環境での業務が多い方にとってChromebookはストレスになる可能性があります。
デメリット4:ストレージ容量・スペックが控えめなモデルが多い
よくあるスペック構成と、向いている使い方
Chromebookは、低価格帯モデルにおいて「ストレージ容量が32〜64GB程度」「メモリ4GB」「エントリークラスのCPU」といった構成が一般的です。
このようなスペックは、次のような用途には十分です。
Webブラウジング、メール、SNS
オンライン学習(動画視聴、Web教材利用)
軽い文書作成・表計算
クラウドベースのSaaS利用
一方で、ローカルに大容量の動画・写真を保存したり、重いアプリを動かす使い方には向きません。
画像編集・多タブ作業で起きやすい“重さ”の問題
スペックが控えめなモデルで起きがちな問題として、
ブラウザのタブを大量に開くと急に動作が重くなる
オンライン会議と複数のWebアプリを同時に動かすとカクつく
画像編集や複雑なスプレッドシートで処理が遅くなる
といった現象があります。これは主にメモリ容量やCPU性能に起因します。
スペック不足を避けるための選び方の目安
サブ機とはいえ快適に使いたい場合、次のようなスペックを一つの目安とするとよいでしょう。
メモリ:8GB以上
ストレージ:128GB以上(ただしクラウド活用前提なら64GBでも可)
CPU:Intel Core / Ryzenクラス、または同等性能の最新SoC
価格はやや上がりますが、「安さを優先しすぎて動作に不満が残る」ことを避けられます。
デメリット5:プリンタなど周辺機器の対応状況
特に注意したいプリンタ・複合機の互換性
Chromebookはクラウド前提の設計であるため、印刷まわりに制約が残る場合があります。特に複合機などでは、ChromeOS非対応の機種も存在します。
企業や学校で既に導入しているプリンタをそのまま使いたい場合、以下の点を確認してください。
メーカーサイトでChromeOS対応状況が明記されているか
IPP(インターネット印刷プロトコル)など標準プロトコルで印刷可能か
USB接続しか想定していない旧型プリンタではないか
事前に確認しておきたいチェックポイント
家庭用であれば、Chromebook対応をうたうWi-Fiプリンタを新規購入してしまうのがもっとも簡単です。一方、既存機を使う場合は、
該当機種名+「Chromebook」で検索して、実際の動作報告を確認する
メーカーのサポート情報でChromeOS対応状況を確認する
といった下調べをおすすめいたします。
デメリット6:自動更新期限(AUE)による“寿命”の概念
AUEとは何か?いつまでアップデートされるのか
Chromebookには、自動更新期限(Auto Update Expiration; AUE)と呼ばれる「OSアップデートのサポート期限」が設定されています。
モデルごとにあらかじめAUE日付が決まっている
2021年以降のChromeOSデバイスは、プラットフォームのリリースから最大10年間、自動アップデートが保証される方針に変更された
AUEまでは、自動的にセキュリティアップデートや新機能が提供され、最新の状態で利用できます。
AUEが切れた後に起こるリスクと影響
AUEを過ぎたからといって、直ちにChromebookが起動しなくなるわけではありません。しかし、次のようなリスクが高まります。
セキュリティ更新が止まるため、脆弱性のリスクが増える
新機能の追加が行われなくなる
管理コンソール(教育機関・企業向け)の一部機能が利用できなくなる可能性
特にインターネットに常時接続して利用する端末であることを考えると、セキュリティ更新が止まった状態で長期間使い続けるのは推奨されません。
中古・安価モデルを選ぶ際の注意点
中古のChromebookや、非常に安価な旧モデルを購入する際には、必ずAUEの残期間を確認してください。
AUEまであと1〜2年しか残っていない場合、短期間しか安全に使えない
一見お得な価格でも、実質的な「有効利用期間」が短い可能性がある
購入前には、Googleの公式一覧や、実機の「設定」→「ChromeOSについて」→「詳細」から「更新スケジュール」を確認すると安心です。
クロームブックが向いていない人・向いている人
クロームブックが向いていない典型的なケース
これまでのデメリットを踏まえると、次のような方はChromebook単体運用には向いていないと考えられます。
Adobe製品や3D CADなど、重いデスクトップアプリを日常的に利用する方
Microsoft Officeのマクロや複雑なレイアウトを使ったファイルを頻繁に扱う方
オフライン環境(客先・工場・出張先など)での作業が多く、ネット回線を確保しづらい方
既存のWindows専用業務ソフト・周辺機器に強く依存している組織の方
これらに該当する場合は、メインマシンとしては従来どおりWindows / Macを選択するほうが安全です。
デメリットを理解したうえで“刺さる”ユーザー像
一方で、Chromebookのデメリットを理解したうえであれば、次のような方には非常に相性の良い選択肢になり得ます。
主な用途がWebブラウジング・動画視聴・クラウドサービス利用である
文書作成や表計算は、Googleドキュメント/スプレッドシート程度で十分
価格を抑えつつ、起動が速く、ウイルス対策の手間を減らしたい
GIGAスクール端末に近い環境を家庭でも再現したい保護者の方
このようなニーズであれば、Chromebookのシンプルさとセキュリティの高さは大きなメリットになります。
Windowsとの併用でデメリットを小さくする考え方
「すべてをChromebookに置き換える」のではなく、「Windowsと併用する」前提にすると、デメリットをかなり緩和できます。
重い作業やOfficeの最終編集 → 自宅や職場のWindows PCで実行
外出先での下書き・調査・軽作業 → 軽量なChromebookで実行
データはOneDriveやGoogle Driveに置き、どちらの端末からもアクセス
このように役割分担を行うことで、Chromebookの弱点を避けつつ、強み(軽さ・起動の速さ・セキュリティ)を活かすことができます。
後悔しないためのチェックリストとまとめ
最後に、Chromebookの購入前に確認しておきたいポイントをチェックリストとしてまとめます。
□ 日常的に使っているアプリは、Web版・Android版で代替できるか
□ 仕事で扱うOfficeファイルに、マクロや複雑なレイアウトは多くないか
□ オフラインで必ず必要な作業は何か、それはオフライン機能でカバーできるか
□ 想定する使い方に対して、メモリ・ストレージ・CPU性能は十分か
□ 利用予定モデルのAUE(自動更新期限)は何年までか、中古の場合は特に確認したか
□ 既存のプリンタ・周辺機器がChromeOSで利用可能か調べたか
□ Windows / Macとの併用か、Chromebook単独運用かを決めているか
これらを一つひとつ確認していただければ、「買ってから想定外のデメリットに気づいて後悔する」リスクは大幅に減らせます。