Chromeのスクロールがカクつく、YouTubeがたまに止まる、外部ディスプレイで画面がチラつく——そんな“小さなストレス”の犯人は、実はハードウェアアクセラレーション(HA)の設定かもしれません。
HAは、描画や動画処理をGPUに任せてサクサク動作を目指す一方、環境によっては不安定さの種になることも。
本記事では、オン/オフの切り替え手順から「有効になっているかの見分け方」、症状別のチェックリスト、起動オプションやflagsの使い分けまで、今日から実践できる最短ルートで解説します。
数分の見直しで、あなたのChrome体験は静かに、でも確実に変わります。
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ハードウェアアクセラレーション(HA)とは?
Webページの描画やアニメーション、動画デコード、Canvas/WebGLなどをCPUだけでなくGPUに肩代わりさせる仕組み。
期待できる効果:スクロールやアニメーションの滑らかさ向上、動画再生時のCPU負荷低減、電力効率の改善(特にノートPC)。
起こりがちな副作用:特定GPUドライバでのチラつき/黒画面、WebGLクラッシュ、外部ディスプレイ構成での不具合など。
Chromeのハードウェアアクセラレーションを有効/無効にする手順
共通UI手順
Chrome右上︙ → 設定
左メニュー 詳細設定 → システム(環境により「システムとパフォーマンス」)
「可能な場合はハードウェア アクセラレーションを使用する」 をオン/オフ
右下に出る 再起動 ボタンでChromeを再起動(必須)
英語UIでは Use hardware acceleration when available。企業管理下ではグレーアウトして変更できないことがあります(後述)。
Windows
ディスプレイ設定で拡大率(スケーリング)や外部GPU切替(NVIDIA/AMDの切替GPU)構成が影響することがあります。
リモートデスクトップ(RDP)接続中は、環境によってGPUプロセスが制限される場合があります。
macOS
Macは内部的にMetal/OpenGLのバックエンドを使います。OS/Chromeバージョンにより挙動が変わるため、OSアップデートやChrome更新で改善するケースが多いです。
外部ディスプレイ(特にハイリフレッシュレート)でカクつく場合、リフレッシュレート設定見直しや別のポート/ケーブルに変更して確認。
Linux
ディストリ/ドライバ(Mesa/専用ドライバ)やWayland/Xorgで挙動差が出やすいです。
GPUドライバ更新、VA-APIの可否、--use-gl=desktop(GLX)/--use-gl=egl(EGL)などの起動オプションが影響することがあります(後述)。
Chromebook(ChromeOS)
基本はUI手順でOK。教育/企業管理ドメインではポリシーで固定されている場合があります。
変更が反映されたかの確認
chrome://gpu を開く
Graphics Feature Status に注目
Hardware accelerated(有効) /Software only, hardware acceleration unavailable(無効) /Disabled(ポリシー・フラグで無効)ページ下部のDriver Bug WorkaroundsやProblems Detectedはドライバ回避情報のヒントになります。
Chromeのタスクマネージャ(Shift + Esc)
GPUプロセスが動作していれば加速が効いている可能性が高い(完全保証ではない)。
動画のハードウェアデコード確認
右クリック→「動画の統計情報」(YouTubeなど)で
Codecs / Hardware decoderの有無を確認。さらに掘るなら
chrome://media-internalsを開き、再生セッションでkVideoDecoderNameがMojoVideoDecoderのハードウェア名(環境により名称異なる)になっているかを確認。
トラブル時のチェックリスト
Chrome再起動・拡張機能の一時無効化(特に広告/動画系)
GPUドライバ更新(Windowsならメーカーアプリ or Windows Update、Linuxならパッケージ更新)
chrome://gpu で「Problems Detected」を確認
ここに該当するなら、一旦HAをオフにするか、後述の
Override software rendering listで回避可否を検証(自己責任)。
一時的にHAを無効化して様子見
UIでオフ → 再起動 → 症状(チラつき/黒画面/落ちる)が収まるか検証。
ANGLEやGLバックエンドの切替(上級者向け)
chrome://flags→ Choose ANGLE graphics backend をDefault→OpenGL/D3D11/Metal/Vulkanなどに切替し安定するか比較。
外部要因の見直し
マルチモニタの接続順・解像度・リフレッシュレート、HDRのオン/オフ、可変リフレッシュ(VRR/G-SYNC/FreeSync)を一旦保守的に。
プロファイル/キャッシュ起因の切り分け
ゲストウィンドウ or 新規ユーザープロファイルで再現するか。
RDP/Vmware/仮想環境
仮想GPUやRDPの制約でHAが効かないケースは仕様のことがあります。UI上はオンでも実際は
Software onlyになりがち。
代替手段・上級オプション
起動オプション(トラブル切り分けに有効)
HA無効で起動:
--disable-gpuANGLE/GLの指定(環境により有効)
例:
--use-angle=gl/--use-angle=d3d11/--use-angle=metal/--use-angle=vulkan例:
--use-gl=desktopまたは--use-gl=egl(Linux系)
Windowsのショートカット
右クリック→プロパティ→「リンク先」の末尾に半角スペース+フラグを追記
macOSのターミナル例
chrome://flags(実験的機能・自己責任)
Override software rendering list を Enabled
公式の互換性ブラックリストを無視してHAを試すオプション。表示崩れやクラッシュのリスクあり。
Hardware-accelerated video decode(環境により表示/挙動が異なる)
オンにしてもコーデック・GPU・ドライバ・OSの組合せで無効のままの場合があります。
管理者向け(企業/教育機関)
ポリシーで固定されていると、設定がグレーアウトします。
代表的なChromeポリシー(参考名):
HardwareAccelerationModeEnabled(真偽値)Windows(レジストリ例)
HKLM\Software\Policies\Google\ChromeまたはHKCU\Software\Policies\Google\ChromeにHardwareAccelerationModeEnabled(DWORD, 0/1)
macOS(構成プロファイル例)
ドメイン:
com.google.ChromeにHardwareAccelerationModeEnabled(Boolean)
ポリシーの反映状況は chrome://policy で確認できます。
注意:組織ポリシーは管理者設計によって優先度が異なります。ユーザー側で上書きできないことが通常です。
いつオフにすべき?(判断基準)
描画系の不具合:黒画面、白抜け、チラつき、フォントにじみ、スクロール時のカクつき増加
WebGL/Canvasが頻繁に落ちる、タブがクラッシュする
RDP/仮想環境で挙動が安定しない
→ まずはオフにして安定性を優先。その後、ドライバ更新やバックエンド切替で再度オンに戻すのが王道です。
いつオンにすべき?
動画視聴が多い、複数モニタで作業、3D/Canvas/WebGLを使うWebアプリをよく使う
CPU使用率やファン騒音を抑えたい
→ 問題がなければ基本はオンが推奨です。
よくある質問(FAQ)
Q1. オンにしているのに chrome://gpu が「Software only」と出ます。
A. ドライバの既知問題や仮想環境/リモート接続の制限、ポリシー固定、フラグ/起動オプションの競合が考えられます。ドライバ更新→拡張停止→新規プロファイル→RDP/仮想の有無→flagsの順で切り分けを。
Q2. YouTubeがカクつきます。HAはオンが良い?
A. 多くの環境でオンが有利ですが、症状が出るならいったんオフで比較。動画の統計情報やmedia-internalsでハードウェアデコードの効き方を確認し、ドライバ更新もセットで。
Q3. 画面が真っ黒になります。
A. 典型的なGPUドライバ起因。セーフ手順として、--disable-gpuで起動→UIでHAをオフ→Chromeを通常起動→ドライバ更新→再検証。
Q4. 企業PCで設定が触れません。
A. 組織ポリシーで固定されている可能性が高いです。chrome://policyで該当キーを確認し、管理者に相談してください。