赤ちゃんが息を吸うときに「ヒィー」と高い音が聞こえた瞬間、胸がギュッと締め付けられるような不安に襲われたことはありませんか。
普段は元気に見えるのに、呼吸だけがどこかいつもと違う——。多くの保護者の方が同じような心配を抱え、夜中や授乳中にスマートフォンで検索しては、知恵袋やSNSの情報に翻弄されがちです。
しかし実際には、「ヒィー」という音の背景には、癖や遊びによる一時的なものから、鼻づまり・痰・気道の炎症などの可能性まで、幅広い理由が存在します。中には早めの受診が必要なケースがある一方で、正しく観察すれば落ち着いて対応できるケースもあります。
本記事では、赤ちゃんの呼吸に関する不安を解消するために、
・どのような状態が危険なのか
・どんな場合は様子を見られるのか
・受診や相談のタイミング
・自宅での観察ポイント
を、丁寧に整理しております。
「今どう動くべきか」を安心して判断できるように、必要な情報を一つずつ解説いたします。
※本コンテンツは「記事制作ポリシー」に基づき、正確かつ信頼性の高い情報提供を心がけております。万が一、内容に誤りや誤解を招く表現がございましたら、お手数ですが「お問い合わせ」よりご一報ください。速やかに確認・修正いたします。
陥没呼吸
顔色不良
ぐったりして反応が弱い
授乳がほとんどできない
呼吸が明らかに速い
といったサインが見られる場合は、迷わず救急相談や医療機関を頼ってください。
一方で、大きな危険がなさそうな場合でも、「不安が消えない」という気持ちそのものが受診や相談の理由になります。
赤ちゃんの呼吸の基本と「ヒィー」という音のイメージ
赤ちゃんの呼吸には、大人とは異なる特徴があります。
呼吸の回数が多く、やや速く感じられる
寝ているときや興奮しているときに、リズムが不規則に見える
刺激によって、呼吸が一時的に速くなったりゆっくりになったりする
そのため、保護者の方からすると「これが普通なのか」「苦しがっていないか」が非常に分かりにくく、不安になりやすい状況です。
インターネット上では「ヒィー」「ヒューヒュー」「ゼーゼー」といった表現が混在しており、何が危険な音なのかを見極めるのも容易ではありません。
正常範囲でよく見られる呼吸の特徴
以下のような状況は、必ずしも異常とは限りませんが、気になる場合は相談してよい範囲です。
機嫌よく遊んでいるときにだけ、息を吸うとき「ヒィー」と高い声が漏れる
笑っているときに「ヒッヒッ」と引き笑いのような音がする
寝入りばなに一時的に呼吸が速くなり、その後落ち着いてくる
このような場合、
顔色が良い
ぐったりしていない
授乳やミルクがいつも通り飲めている
といった状態であれば、すぐに救急車が必要でない場合もあります。
ただし、「正常か異常か」を保護者だけで判断しきることは難しいため、少しでも不安があれば、かかりつけ医や相談窓口に連絡してよいとお考えください。
危険な呼吸のサインの全体像
「音」そのものだけでなく、次のような様子がないかを合わせて確認することが重要です。
呼吸が明らかに苦しそうに見える
胸や首元がペコペコとへこむ(陥没呼吸)
顔色が悪い、唇や爪が紫がかって見える
ぐったりしていて、いつもと明らかに様子が違う
これらは、一般に「呼吸困難のサイン」として挙げられるものです。
次の見出し以降で、より詳しく整理していきます。
「ヒィー」と聞こえるときに考えられる主な原因
ここでは、「このような可能性があり得る」という一般的なパターンをご紹介します。
特定の病名を断定するものではないことをご理解ください。
声・遊び・癖など生理的な要因
赤ちゃんが興奮しているときや、声を出して遊んでいるときだけ「ヒィー」と高い声を出すことがあります。
例としては、
天井のライトやモビールを見て興奮したとき
抱っこであやしているときに、笑いながら「ヒィー」と声が漏れる
寝転びながら、連続して「ヒィー!ヒィー!」と声を出している
といった場面です。
このような場合、
呼吸そのものは苦しそうではない
顔色が良く、目の動きも普段通り
その音が終わった後は、普通の呼吸に戻っている
ということが多く、癖や遊びの一部である可能性も考えられます。
ただし、保護者の方が「いつもと違う」「直感的に不安だ」と感じる場合には、癖と決めつけず、小児科で一度確認してもらうことをおすすめいたします。
鼻づまり・痰など上気道由来の音
鼻水や痰が、鼻や喉のあたりに溜まっているとき、空気が通る際に「ズーズー」「ヒュー」「ゴロゴロ」といった音がすることがあります。
このような場合の特徴は、
鼻をすするような仕草が多い
寝ているとき、特にあお向けで音が強くなる
ミルクの後などに、喉のあたりからゴロゴロ音がする
などです。
このときの音は、多くが鼻〜喉のあたりから聞こえるもので、胸に耳を当てると同じ音があまりしないこともあります。
部屋の湿度を適度に保つ、無理のない範囲で鼻をきれいにするなど、環境を整えることで軽減することもありますが、少しでも息苦しそうな様子があれば、必ず医療機関にご相談ください。
喘鳴(ゼーゼー・ヒューヒュー)を伴う病気の可能性
医療的には「喘鳴(ぜんめい)」と呼ばれる音があります。
これは、主に息を吐くときに胸の中から聞こえる「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という音です。
気管支が狭くなっているときに起こる音であり、一般的に:
小児喘息
細気管支炎
ウイルス感染に伴う気道の炎症
などの病気で見られることがあります。
次のような場合は、早めの受診が特に重要です。
ゼーゼー・ヒューヒューという音が、数時間〜数日にわたって繰り返し続いている
咳が多く、夜間に何度も咳き込む
呼吸が速く、見ても明らかに苦しそう
喘鳴かどうかは、聴診器を用いて初めて分かるケースも多いため、保護者だけでの判断は困難です。
「胸のあたりからゼーゼー聞こえる気がする」と感じたら、動画やメモを持って小児科を受診することをおすすめいたします。
クループ症候群など吸気性の呼吸音が問題となる状態
息を吸うときに「ヒィー」「キュー」と笛のような高い音がする場合、喉のあたりが狭くなっている状態が関係していることがあります。
代表的なものの一つが、クループ症候群(仮性クループなど)と呼ばれる病態です。一般的に、
犬の遠吠えのような「オーッ」という独特の咳
声がかすれる
夜間に症状が強く出ることがある
といった特徴を伴うことがあります。
このような症状があり、
呼吸が苦しそうに見える
顔色が悪い
泣き声や反応が弱くなっている
といった様子を伴う場合は、急ぎの受診が必要となる場合があります。
クループかどうかにかかわらず、「吸うときに強いヒィーという音がして、しかも苦しそう」という場合は、迷わず医療機関へ相談してください。
今すぐ受診・救急車を検討すべき「危険なサイン」
ここからは、特に重要な「危険なサイン」をチェックリスト形式で整理いたします。
一つでも当てはまる場合は、早急な受診や救急相談を強く検討してください。
呼吸困難を疑うサインチェックリスト
次の表を参考に、お子さまの様子を確認してみてください。
| チェック | 項目 | 具体例のイメージ |
|---|---|---|
| □ | 陥没呼吸がある | 息を吸うたびに、肋骨の間や首元・みぞおちがペコペコへこむ |
| □ | 顔色・唇・爪の色が悪い | 顔全体が青白い/唇や爪が紫がかって見える |
| □ | ぐったりしている | 抱っこしても反応が弱く、普段より明らかに元気がない |
| □ | 授乳・ミルクが飲めない | 息苦しそうで、いつもの半分も飲めない・すぐ疲れてやめてしまう |
| □ | 明らかに呼吸が速い | 胸の上下が普段よりずっと速く動き、見ていて苦しそう |
目安として、
1〜2個当てはまる → 早めに小児科や救急相談窓口に相談する
3個以上当てはまる、または保護者が「危ない」と直感的に感じる → 夜間であっても救急受診・救急車を検討する
というイメージを持っていただくとよいでしょう。
救急車・夜間救急をためらわない方がよいケース
特に次のような場合は、救急車を含めた緊急対応を考えるべき状況です。
呼吸のリズムが乱れ、今にも止まりそうに見える
顔や唇が明らかに紫色っぽい
呼びかけに対する反応が乏しく、目の動きが鈍い
強い陥没呼吸があり、息をするたびに体全体が大きく揺れる
迷うときには、地域の救急相談窓口や小児救急電話相談(例:局番なしの「#8000」など)に連絡し、指示を仰いでください。
数時間以内に小児科受診を検討するケース
以下のような場合は、今すぐ救急車が必要という状況ではないかもしれませんが、数時間〜翌日までを目安に小児科受診を検討すべき状態です。
顔色や機嫌は大きく崩れていないが、「ヒィー」という音が繰り返し続いている
咳・鼻水・発熱などの症状を伴い、呼吸音もいつもと違う
これまでも同じような症状が何度かあり、喘息などが心配
このようなときは、後述する「観察のメモ」や「動画」を準備したうえで、かかりつけ小児科に相談されることをおすすめいたします。
自宅での観察ポイントと記録のしかた
医師に伝えると役立つ観察項目
診察の際に「何となく心配で…」と伝えるよりも、次のような情報があると、医師は状況を具体的にイメージしやすくなります。
いつから音が出るようになったか(例:今日の夕方から、3日前から)
どのくらいの頻度か(1日に何回くらい/ほぼずっと など)
どのようなときに出やすいか(泣いているとき・寝ているとき・興奮したとき など)
併せて見られる症状(発熱の有無、咳・鼻水、ミルク・母乳の飲み具合、おしっこの回数など)
紙やスマートフォンのメモに簡単にまとめておくだけでも、診察に大きく役立ちます。
動画・メモの取り方
呼吸音は、診察時にはたまたま出ていないことも多く、その場合に役立つのがスマートフォンで撮影した短い動画です。
明るすぎず暗すぎない環境で撮る
顔から胸の動きまでが映るようにする
10〜20秒程度、普段の様子のまま撮影する(無理に泣かせたりしない)
安全が最優先ですので、動画撮影のために長時間その体勢を続けさせたり、無理をさせないようご注意ください。
自宅でしてはいけないこと
次のような対応は、避けていただくことをおすすめします。
家族が処方されている吸入薬や飲み薬を、自己判断で赤ちゃんに使う
インターネットの情報だけを頼りに、「危険サイン」があるのに受診を控える
呼吸が苦しそうなのに、長時間うつ伏せのままにしてしまう
「このくらいで受診するのは大げさかもしれない」と感じるかもしれませんが、心配なときに医師に確認してもらうことは決して無駄ではありません。
知恵袋・SNSの情報との付き合い方と、信頼できる相談先
Q&Aサイトのメリット・限界
Yahoo!知恵袋のようなQ&Aサイトには、同じような不安を抱えた保護者の体験談が多数掲載されています。
【メリット】
「うちも同じでした」という共感が得られる
「結果として大丈夫だった」という話から安心感を得られる
【限界】
回答者が医師とは限らない
それぞれの赤ちゃんの月齢や体質、背景が異なる
緊急性の判断が正確とは限らない
そのため、体験談はあくまで「参考」にとどめ、最終的な判断は医療機関や公的な相談窓口にゆだねることが大切です。
信頼できる情報源・相談先の例
日本国内には、子どもの急な症状に悩む保護者のための公的情報・相談窓口があります。例として、
公的な「子どもの救急」サイト(年齢や症状を選ぶと受診目安の目安が提示される)
夜間・休日の小児救急電話相談(例:局番なし「#8000」など)
地域の小児科・小児救急外来
などが挙げられます。
お住まいの自治体の公式サイト等で、利用できる窓口・時間帯を一度確認しておくと安心です。
情報に振り回されないためのポイント
不安なときほど、インターネットで長時間検索し続けるよりも、「相談する」方向に時間を使う
「受診してみて何もなかったらどうしよう」と悩むより、「何もなかったと確認できて良かった」と考える
一度「問題なし」と言われた後でも、症状が変わってきたら、遠慮なく再度相談する
保護者の方が安心して育児に向き合えることは、赤ちゃんにとっても大切です。
「相談しすぎて迷惑かもしれない」という遠慮は不要です。
よくある質問(FAQ)
Q1:元気で機嫌も良いのですが、息を吸うときにだけ「ヒィー」と言います。様子見でよいですか?
A:顔色が良く、ぐったりしておらず、授乳やミルクも普段通りであれば、緊急性がそれほど高くない可能性もあります。
しかし、保護者の方が不安を感じている時点で、一度小児科や相談窓口に相談する価値は十分にあります。
動画やメモを準備し、かかりつけの小児科で相談してみてください。
Q2:咳も熱もないのに、呼吸音だけが気になります。どうすればよいですか?
A:咳や発熱がなくても、「呼吸音がいつもと違う」「音が続いている」という場合には、一度診察を受けておくと安心です。
音が出ているときの様子を動画に撮る
いつから、どのくらいの頻度で気になっているかをメモする
これらを持参して、小児科で相談されることをおすすめいたします。
Q3:受診する診療科は小児科でよいでしょうか?呼吸器内科に行くべきですか?
A:乳幼児の場合、まずは小児科を受診するのが一般的です。
小児科医が診察したうえで、必要と判断されれば、呼吸器内科など専門科への紹介が行われます。
「どこに行けばよいか分からない」と悩む場合も、まずはかかりつけ小児科に相談して問題ありません。
Q4:同じ症状で何度も受診してもよいのでしょうか?
A:お子さまの症状は短時間でも変化することがあり、「前回と似ているように見えても、実は状態が違う」ということもあります。
保護者の方が強い不安を抱えたまま過ごすよりも、必要に応じて再診して確認するほうが、安全面でも心理面でも望ましいといえます。
「また来たと思われるのでは」と気にされるかもしれませんが、医療機関はそのための場ですので、遠慮なくご相談ください。
まとめと今後のアクション
最後に、本記事のポイントを整理いたします。
赤ちゃんが息を吸うときの「ヒィー」という音には、
声や遊び・癖によるもの
鼻づまりや痰による音
喘鳴や喉の狭さなど、病気に関連する音
など、さまざまな可能性があります。
音だけで「大丈夫」「危険」と判断することは難しく、必ず全身の様子(顔色・機嫌・授乳・呼吸の状態)と合わせて見ることが重要です。
次のような「危険サイン」がある場合は、迷わず救急相談・救急受診を検討してください。
陥没呼吸が見られる
顔色が悪い、唇や爪が紫っぽい
ぐったりして反応が弱い
授乳やミルクがほとんど飲めない
明らかに呼吸が速く、苦しそう
危険サインがない場合でも、
音が続いて心配である
何度も同じような症状をくり返している
初めての症状で不安が強い
といったときには、小児科や小児救急電話相談に遠慮なくご相談ください。
本記事が、知恵袋やSNSの情報だけでは得にくい「受診の目安」や「観察のポイント」を整理する一助となり、
保護者の方が少しでも安心して行動を選択できるきっかけになれば幸いです。