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アクセシビリティ検討が必要ですの意味と対処法|Excel・Word・PowerPointで消す方法と直し方

ExcelやWord、PowerPointを編集していると、突然「アクセシビリティ:検討が必要です」と表示されて戸惑うことがあります。エラーのように作業が止まるわけではないものの、「このまま提出して大丈夫なのか」「どこを直せばいいのか」「そもそも何が問題なのか」と不安になりやすいポイントです。特に社内共有や社外提出の直前だと、表示があるだけで“品質に問題があるのでは”と焦ってしまう方も少なくありません。

しかし、この表示は「いますぐ致命的な不具合がある」という意味ではなく、資料の中に読み上げ支援や見え方の違いによって伝わりにくくなる可能性がある箇所がある、という注意喚起です。したがって、対応の最適解は一つではなく、用途と相手に応じて「非表示にして作業を進める」か「チェック結果を見て修正する」かを選ぶことが重要になります。

本記事では、「アクセシビリティ検討が必要です」の意味を整理したうえで、今すぐ表示を消したい方向けの非表示手順、提出・共有で安心できる状態に近づけるための修正手順を、Excel・Word・PowerPointそれぞれの“つまずきやすいポイント”に沿って丁寧に解説いたします。読み終えた頃には、放置してよいケースと直すべきケースが判断でき、必要な作業を最短ルートで進められるようになります。

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目次

アクセシビリティ検討が必要ですの正体と放置してよい条件

「アクセシビリティ:検討が必要です」という表示は、Excel・Word・PowerPointなどのOfficeアプリが、ファイル内に“読みやすさ・伝わりやすさ”の観点で見直したほうがよい箇所を検出した可能性がある、というサインです。エラーのように作業が止まるものではありませんが、資料を共有・提出する場面では、相手の環境や利用方法によっては「読みにくい」「情報が欠ける」「読み上げで意味が通らない」などの困りごとが起きることがあります。

この表示に遭遇すると、多くの人が次の2つで迷います。

  • 放置してよいのか(提出しても問題ないのか、品質指摘されるのか)

  • 消すべきか、直すべきか(表示だけ非表示にしてよいのか、内容修正が必要か)

結論としては、用途と相手が決まると判断が一気に簡単になります。まずは「このファイルは誰に渡るか」「渡る相手がどのように閲覧する可能性があるか」を押さえて、必要な範囲だけ最短で対応するのが現実的です。

この表示が出るタイミングと意味

表示が出る代表的なタイミングは、資料の中身が“視覚前提”になりやすい編集を行ったときです。具体的には次のような操作がきっかけになります。

  • 画像・図形・アイコン・スクリーンショットを貼った

  • グラフやSmartArt、図解を入れた

  • 表を作成した(特にセル結合が多い、見出しが曖昧)

  • 色で重要度を表現した(赤字=重要、灰色=補足など)

  • テキストボックスを多用して、紙芝居的に配置した

  • リンク文字列が長いURLのままになっている

  • タイトルや見出しが“見た目だけ”で、構造(見出しスタイル)がない

アクセシビリティ機能が見ているのは、ざっくり言えば「情報が別の手段でも理解できるか」という点です。たとえば、画像にしか情報がない場合は、読み上げ支援を使う人や、画像が表示されにくい環境では情報が欠けます。表の構造が不明瞭なら、行と列の関係が理解しづらくなります。色だけで区別しているなら、色の見え方が異なる人にとっては判断ができません。

重要なのは、この表示が出たからといって「あなたのファイルが壊れている」「直ちに提出不可」という意味ではないことです。あくまで“見直し候補がある”という通知です。だからこそ、次の「放置してよい条件」を整理すると迷いが減ります。

放置が許されるケースと注意が必要なケース

放置が許されるかどうかは、ファイルの“使い方”で決まります。ポイントは、自分だけが使うか、他者に渡るかです。

放置が許されやすいケース(優先度が下がる)

  • 自分のPCで自分だけが見るメモ、下書き、検討用資料

  • 途中段階のたたき台で、まだ構成が固まっていない

  • 近いうちに作り直す前提のドラフト(このファイルを成果物として渡さない)

この場合は、通知が出ても「時間があるときに直せばよい」です。表示が邪魔なら一時的に非表示にして作業を続ける判断もあり得ます。

注意が必要なケース(優先度が上がる)

  • 社外提出(顧客・取引先・学校提出物・自治体提出など)

  • 全社・全体配布(参加者が多い研修資料、社内ポータル掲載など)

  • チームで共同編集し、複数人が読む・改稿する

  • テンプレートとして繰り返し使う(次回以降も同じ構造を流用する)

この場合、通知を放置すると「読みづらい」「情報が欠ける」「配布後に質問が増える」「品質チェックで戻される」など、後工程で手戻りが起きやすくなります。特に納品・提出前は、目立つ表示があるだけで不安材料になりがちです。最小限でもよいので、チェック結果を開き、優先度の高い項目だけでも潰すほうが安全です。

まず確認したいこと(提出・共有・配布対象)

「消す(非表示)」と「直す(修正)」は、目的がまったく違います。判断に迷う場合は、次の表で整理すると早いです。

状況いまの最優先推奨アクション理由
自分だけで使う下書き作業を止めない非表示でも可/後で見直すいま直しても構成が変わる可能性が高い
社内共有(少人数)読み手の負担を減らすエラー優先で修正質問や読み間違いが減り、合意形成が速くなる
社外提出・納品品質不安を消す警告以上は可能な範囲で修正提出後の差し戻し・信用低下を避ける
テンプレとして流用再発を防ぐルール化して修正次回から毎回ラクになる、チーム品質が揃う
デザイン重視の資料伝達を落とさない色依存・画像依存を補う見た目を保ちつつ情報欠落を防げる

この段階で大切なのは、「全部を完璧に直す」ではありません。提出・共有に必要な最低限を、最短で満たすのが現実的です。次の章では、まず“表示を非表示にする”方法、続いて“直して改善する”方法を、使い分けられるように解説します。


アクセシビリティ検討が必要ですを非表示にする方法

「とにかく今は編集を進めたい」「表示が気になって集中できない」という場面では、非表示にするのは合理的です。ただし、誤解しやすい点があります。

  • 非表示は“問題を解決する”のではなく、“通知を隠す”だけ

  • 中身の状態は変わらないため、共有・提出の品質が上がるわけではない

したがって、非表示は「作業の中断を避けるための一時対応」や、「自分用のメモで割り切る」場合に向きます。社外提出や多人数配布の前に非表示だけで済ませるのは、基本的にはおすすめしません。

Excelでステータスバーから非表示にする

Excelで「アクセシビリティ:検討が必要です」が出る場所として多いのが、画面下部のステータスバーです。この表示は、ステータスバーの表示項目としてオンになっている場合があります。

一般的な手順のイメージは次のとおりです。

  1. Excel画面下部のステータスバー上で右クリックする

  2. 表示項目の一覧から、アクセシビリティ関連の項目のチェックを外す

  3. ステータスバーから表示が消えることを確認する

ステータスバーの表示項目は細かく切り替えできるため、作業中だけ一時的に消して、納品前に再表示して確認する、といった運用も可能です。

オプション設定で非表示にする

ステータスバーだけでなく、アプリ側のオプション設定でアクセシビリティ関連の表示や通知に関する項目を切り替えられる場合もあります。会社の端末設定やアプリのバージョンによって、表現や場所が多少異なることがありますが、「オプション」「設定」「アクセシビリティ」周辺にまとまっていることが多いです。

運用上の注意点として、次を意識してください。

  • 自分の環境だけに反映されるのか(他の人のPCには影響しないのが通常)

  • チームで同じPCやアカウントを共有している場合、誰かが気づくべき通知まで消える可能性がある

もし組織でアクセシビリティ対応を進めている最中なら、個人判断で恒久的に非表示にするより、チェック結果を見て必要な修正を行うほうが無難です。

再表示する方法と、非表示のデメリット

再表示は、基本的に「非表示にした操作の逆」です。ステータスバーから消したなら、同じ右クリックメニューでチェックを戻します。オプションで消したなら、同じ設定画面でオンに戻します。

ここで改めて、非表示のデメリットを整理します。

  • 提出前の見落としが増える(気づく仕組みを自分で切ってしまう)

  • テンプレート改善の機会を失う(毎回同じ指摘が出続ける)

  • 共同編集時に齟齬が増える(誰かは気づいて、誰かは気づかない状態になる)

非表示は「今この瞬間のストレスを下げる」には有効ですが、資料品質を上げるアプローチではありません。次章で解説する“直す(修正)”とセットで使い分けると、最短で安心まで到達できます。


アクセシビリティ検討が必要ですを直して問題ありませんに近づける手順

「直す」といっても、全部を一気にやろうとすると疲れます。コツは、指摘を種類でまとめ、テンプレで処理することです。たとえば画像が20枚ある資料なら、1枚ずつ悩むのではなく、「代替テキストの方針」を決めて一気に入力したほうが速いです。

また、アクセシビリティチェックは“採点”ではなく“改善支援”です。重要度の高いものから順に対応すれば、時間をかけすぎずに品質を上げられます。

アクセシビリティチェックを開く場所(Office共通)

Officeアプリには、アクセシビリティチェック(チェック機能)があります。場所はアプリやバージョンにより多少違うことがありますが、多くの場合は「校閲」や「ファイル」周辺、もしくは検索バーで「アクセシビリティ」と入力して機能に辿れることが多いです。

チェック画面を開くと、次のような流れで作業できます。

  • 問題の一覧が表示される

  • クリックすると該当箇所へ移動できる

  • 推奨アクション(何をどう直すか)が示される

  • 修正後に再チェックして残件を確認できる

この仕組みを前提に、作業手順は次の3段階にすると、最短で終わります。

  1. エラー(最優先)をゼロにする

  2. 警告(次点)を影響の大きい順に対応する

  3. ヒントは時間があれば改善する(テンプレ化に向く)

「今は時間がない」場合でも、最低限エラーだけ潰しておくと、提出・共有の不安が大幅に減ります。

頻出の指摘と直し方テンプレ(代替テキスト、表、読み順、コントラスト)

ここが最重要です。頻出パターンごとに「原因→直し方→確認」のテンプレを持っておけば、次から悩みません。以下は実務でよく遭遇する代表例です。

代替テキストがない(画像・図形・グラフ)

よくある状況

  • スクリーンショットに手順が書いてある

  • 図解だけで結論を伝えている

  • グラフに重要な傾向がある

直し方テンプレ

  • 画像が“何を示すか”を1文で書く

  • 画像で“伝えたい結論”をもう1文で補う

  • 装飾目的で情報がない場合は、装飾として扱う(情報がないことが分かる書き方にする)

例(スクリーンショット)

  • 「Excelのステータスバーを右クリックし、アクセシビリティ表示のチェックを外す操作画面」

例(グラフ)

  • 「2025年度は第3四半期に売上が最大となり、第4四半期に減少している傾向を示す折れ線グラフ」

ポイントは“長文説明”ではなく、画像がなくても要点が伝わる短い文章にすることです。

表が分かりにくい(見出し、セル結合、構造)

よくある状況

  • 見出しがない、もしくは“空欄”や記号で済ませている

  • セル結合で見た目を整えた結果、行列関係が崩れている

  • 「合計」「小計」などがどこに対応するか分かりづらい

直し方テンプレ

  • 1行目または1列目に明確な見出しを置く

  • セル結合は最小限にし、可能なら避ける

  • 「何の数値か」「単位は何か」「期間は何か」を見出しに含める

  • 注釈は表の外に文章で置き、表内は構造を優先する

表の改善例(見出しに含める要素)

  • 悪い例:「売上」「前年差」

  • 良い例:「売上(円)」「前年同月比(%)」

読み上げ順が不自然(テキストボックス多用、配置重視)

よくある状況

  • PowerPointで図形や吹き出しを重ねた

  • Wordでテキストボックスを左右に配置した

  • “視線誘導”のために配置を工夫した結果、読み順が崩れた

直し方テンプレ

  • 重要情報は本文(通常テキスト)として、上から下へ読める順に置く

  • テキストボックスや図形内の文章は最小限にする

  • どうしても図解が必要なら、ノートや本文で要点を文章化する

ここは「見た目」を崩さず改善する工夫ができます。たとえばスライドでは図解を残しつつ、ノートに要点を整理しておくと、読み上げでも意味が通りやすくなります。

コントラスト不足(薄い文字、淡い背景、色依存)

よくある状況

  • 淡いグレー文字+白背景で“おしゃれ”にした

  • 重要箇所を赤にしただけで、文章として説明していない

  • 罫線や背景色が薄く、投影や印刷で消える

直し方テンプレ

  • 文字色を濃くする、背景を明るくする

  • 色だけで区別せず、「重要」「注意」など言葉でも補う

  • 強調は太字・下線・記号などを併用し、色に依存しない

チェックのコツ

  • 印刷プレビューで薄く見えないか

  • プロジェクター投影を想定したときに読めるか

  • スマホで縮小表示しても要点が拾えるか


ここまでの頻出項目を一覧表にまとめます。作業中にこの表だけ見返せるようにすると、最短で進みます。

指摘の種類典型原因直し方の要点最小対応ライン
代替テキスト画像に情報がある何を示すか+結論を短文で情報がある画像は必ず付ける
表構造見出し不足、セル結合見出し明確化、セル結合削減見出しが分かる状態にする
読み上げ順位置重視の配置本文順序を優先、要点を文章化要点が文章で追えるようにする
コントラスト薄い色、色依存文字を濃く、色+言葉で補う重要情報が色だけにならない
リンクURLそのまま意味のあるリンク文言「こちら」ではなく内容を示す

直したあとに再確認するコツ

修正しても「検討が必要です」が残るときは、たいてい次のいずれかです。

  • まだ未修正の指摘が残っている(別シート・別スライドにある)

  • 同じ種類の指摘が複数箇所にある(画像が複数、表が複数)

  • 修正後に再チェックしていない(一覧が更新されていない)

効率的に終えるためのコツは、次の運用です。

  1. 同じ種類をまとめて処理する
    例:画像10枚なら、代替テキストを10枚分まとめて入れる

  2. エラー→警告→ヒントの順で割り切る
    まず提出の不安が消えるラインまで到達する

  3. 最後に必ず再チェックする
    残件があるなら、一覧で場所へ飛んで潰す

さらに、チームで回す資料なら「テンプレ改善」を意識すると次回以降が劇的にラクになります。たとえば、表の見出しを最初から入れておく、スライドのレイアウトをシンプルに統一する、画像に代替テキストを付ける習慣を作る、などです。単発の修正で終わらせず、作り方の癖を変えると、通知自体が出にくくなります。


Word・PowerPointでも困らないためのチェック観点

Excelで対応できても、WordやPowerPointで同じ表示に遭遇するとまた迷います。ここでは「アプリ別のハマりどころ」を押さえて、次から止まらないための観点を整理します。ポイントは、どれも根本は同じで、構造・代替・順序・視認性です。

Wordで起きやすい原因と対策

Wordは文章中心のため、見た目を整える操作がそのまま“構造の欠落”につながりやすいのが特徴です。

起きやすい原因

  • 見出しを太字・大きい文字で作っているが、見出しスタイルではない

  • 画像や図に代替テキストがない

  • 表の見出しが曖昧、セル結合で構造が崩れている

  • 箇条書きを手打ちの「・」で作っている(構造として認識されにくい)

  • 空白や改行でレイアウト調整している(読み上げ順が不自然になることがある)

対策の基本方針

  • 見出しは必ず見出しスタイルを使う

  • 箇条書きは箇条書き機能を使う

  • 表は見出しを明確にし、セル結合を減らす

  • 画像には代替テキストを付ける

  • レイアウト調整は、なるべく段落設定や表、セクション機能で行う

Wordは「文章が読める」ことが最優先です。見た目を整えるために構造を壊すより、構造を整えたうえで見た目を調整するほうが、読み手にも作り手にもメリットが大きいです。

PowerPointで起きやすい原因と対策

PowerPointは、視覚的に情報を伝える設計のため、アクセシビリティ観点の“落とし穴”が多いアプリです。特に多いのが、読み上げ順序と、図解への依存です。

起きやすい原因

  • 図形やテキストボックスを自由配置している

  • 装飾要素(アイコン、矢印、背景図形)が多い

  • 重要情報が図解だけで完結している

  • 色だけで重要度を表している

  • フォントが小さく、投影や縮小表示で読めない

対策の基本方針

  • 重要情報はスライド本文(通常テキスト)でも追えるようにする

  • 図解は「何を言っているか」を文章で補う(スライド内またはノート)

  • 色に依存せず、言葉や記号、配置で意味を補う

  • スライドのレイアウトを統一して、読み手の負担を減らす

  • 小さすぎる文字を避け、余白を確保する

PowerPointでは、見た目を崩さずアクセシビリティを上げるコツとして、次が効果的です。

  • 図解は残すが、要点を文章で添える(読み上げでも理解可能にする)

  • 装飾要素は“情報があるかどうか”で分ける(情報がない装飾は最小限に)

  • スライドごとに伝えるメッセージを1つに絞る(読み手の認知負荷を下げる)

共有前の簡易チェックリスト

提出・共有前に、5分で確認できるチェックリストを置きます。忙しいときは、これだけでもやっておくと安心が増します。

  • 画像・図形・グラフに、何を示すか分かる説明が付いている

  • 表の見出しが明確で、セル結合が最小限になっている

  • 色だけで意味を区別していない(言葉や記号でも区別できる)

  • 重要情報が、図解だけで完結していない(文章でも追える)

  • 見出しや箇条書きが、機能として設定されている(見た目だけにしない)

  • 最後にアクセシビリティチェックを再実行し、エラーが残っていない

このチェックは、アクセシビリティのためだけでなく、資料の品質全般(読みやすさ、誤解の少なさ)にも効きます。結果的に、配布後の質問が減り、説明コストも下がります。


アクセシビリティの基礎知識とガイドラインの考え方

ここまでで、Office内の対処はできるようになります。ただ「なぜそれが必要なのか」が腹落ちすると、対応が“作業”から“設計”に変わり、次回からそもそも通知が出にくくなります。この章では、必要最低限の基礎と、ガイドラインの捉え方を整理します。

Officeの警告とウェブアクセシビリティの関係

Officeのアクセシビリティチェックはアプリ内機能ですが、考え方はウェブアクセシビリティとよく似ています。共通するのは、「特定の環境だけを前提にしない」という姿勢です。

たとえば、同じ資料でも閲覧条件はバラバラです。

  • スマホで縮小して見る人

  • 印刷して読む人

  • 投影された画面を遠くから見る人

  • 画面拡大や読み上げを使う人

  • 色の見え方が一般と異なる人

  • 通信・端末性能が低く、画像が重くて表示が遅い環境

こうした条件の違いがあるとき、情報が“画像だけ”“色だけ”“配置だけ”に依存していると、伝わらないケースが出ます。逆に言えば、代替テキストを付ける、構造を整える、色依存を減らす、という対応は、幅広い人にとって読みやすさを上げる“普遍的な改善”です。

また、アクセシビリティは「特別な対応」ではなく、最終的には「分かりやすい資料の作法」に近づきます。見出しが整理され、表が理解しやすく、図解に要点が添えられている資料は、誰にとっても読みやすいからです。

WCAGとJISの位置づけを最短で理解する

組織で説明が必要になったとき、よく出る疑問が「どこまでやれば十分なのか」です。このとき参照枠として使われるのが、国際的なガイドラインや国内規格です。

  • WCAG:ウェブアクセシビリティの国際的なガイドラインとして広く参照される

  • JIS X 8341-3:日本でウェブコンテンツのアクセシビリティを扱う際によく参照される規格

ここで大切なのは、Officeファイルを作る人が、いきなり規格全文を読み込む必要はないということです。実務では次の程度を押さえると十分です。

  • 目的:誰にとっても情報が利用しやすい状態にする

  • 手段:構造を整える、代替を用意する、色依存を減らす、操作・理解の負担を下げる

  • 運用:全件完璧より、優先順位をつけて改善する(影響が大きいところから)

つまり、規格は“やり方の根拠”として使い、日々の制作はアクセシビリティチェックとテンプレで回す、という整理が現実的です。

組織で取り組む場合の導線(デジタル庁資料)

個人の資料改善にとどまらず、組織でアクセシビリティを求められると、次のような課題が出ます。

  • 担当が決まっていない、責任範囲が曖昧

  • どこまで対応するかの合意がない

  • 制作者ごとに品質がばらつく

  • チェックの手順が属人化する

  • 納品や公開のゲートがない

この状況では、個々人が頑張るだけでは疲弊しやすいです。そこで有効なのが、導入や推進の考え方をまとめた公的資料を参照し、方針と手順を整えることです。たとえば、制作フローに「アクセシビリティチェック実行」「エラーはゼロ」「警告は影響が大きいものを対応」といったゲートを置くだけでも、品質が揃いやすくなります。

また、テンプレート(社内標準の表、見出し、スライドレイアウト、代替テキストの書き方例)を配布すると、制作スピードを落とさずに改善しやすくなります。アクセシビリティは“追加作業”に見えがちですが、運用設計ができると、むしろ手戻り削減で総工数が下がるケースも多いです。


よくある質問

非表示にしたら相手にバレますか

非表示は、基本的に「自分の画面に表示される通知」を消す操作です。相手が同じファイルを開いたときにどう表示されるかは、相手のアプリ環境や設定、ファイル内容によって変わります。つまり、非表示にしたからといって“相手側で問題が消える”わけではありません。

社外提出や多人数配布では、「バレるかどうか」よりも「読みにくさが残らないか」を基準に考えるのが安全です。通知を消して安心するより、影響が大きい指摘(エラーや主要な警告)だけでも直しておくほうが、結果的にトラブルを避けやすくなります。

直しても表示が消えないのはなぜ

よくある原因は次の3つです。

  1. 未修正の指摘が残っている
    画像が1枚直っても、別の画像が未対応だと残ります。

  2. 別の場所に同種の指摘がある
    Excelなら別シート、PowerPointなら別スライド、Wordなら別の表や図に残っていることがあります。

  3. 再チェックしていない
    修正後に再確認(再実行)しないと、一覧が更新されない場合があります。

対処としては、チェック画面の一覧を上から順に見て、該当箇所へ移動し、同種の指摘をまとめて潰し、最後に再チェックする、という流れにすると解決しやすいです。

どこまで直せば十分ですか

「十分」の基準は、ファイルの用途で変わります。おすすめの割り切りは次のとおりです。

  • 社外提出・納品:エラーは必ず対応。警告も可能な範囲で対応(特に画像・表・色依存は優先)

  • 社内共有(少人数):エラー優先。警告は影響が大きいものから対応

  • 自分用:非表示でも可。ただし、次回も使うテンプレなら最低限の改善はしておくとラク

もし迷うなら、「相手がこの資料を初見で読んだとき、誤解なく理解できるか」という観点で判断してください。アクセシビリティ対応は、突き詰めれば“説明の分かりやすさ”に直結します。完璧を目指して手が止まるより、優先度の高いところから順に改善して、提出・共有に必要な安心ラインまで到達するのが最短です。