「65歳を過ぎたら、生命保険はもういらないのでしょうか。それとも、万一に備えて続けるべきなのでしょうか。」
Yahoo!知恵袋には、こうした悩みが毎日のように投稿されています。年金生活が始まり、現役時代ほど収入がない中で、毎月数万円の保険料を払い続けるべきかどうか――。
解約して後悔しないか不安な一方で、「本当は払い過ぎているのでは」と感じている方も多いはずです。
本記事では、公的年金や医療保険・遺族年金といった「国のしくみ」と、現在加入している生命保険を整理しながら、65歳以上で生命保険が本当に必要な人・そうでもない人の違いを、できるだけ分かりやすく解説します。
読み終えていただく頃には、「自分は保険を続けるべきか、減らすべきか」がイメージでき、次に取るべき一歩が明確になることを目指しています。
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65歳以上でも生命保険は必要か?まず押さえたい前提
この章では、「65歳以上になっても生命保険は必要なのか」を考えるうえで、前提となる考え方を整理いたします。
そもそも生命保険の役割は「誰の生活を守るため」か
生命保険の役割は、大きく分けると次の3つです。
万一のときに残された家族の生活費を守る(死亡保険)
病気・ケガによる入院・手術などの医療費負担を軽くする(医療保険・がん保険など)
将来に向けた貯蓄・資産形成を兼ねる(貯蓄型保険・個人年金保険など)
現役時代は、特に「残された家族の生活を守る」という目的が強くなります。住宅ローンや子どもの教育費が残っている期間は、収入を失うリスクが大きいため、高額な死亡保障に入る合理性があります。
しかし、65歳前後になると状況が変わってきます。
子どもが独立している
住宅ローンを完済している、または残りが少ない
年金や貯蓄の見通しが立ちつつある
このような場合、現役時代と同じ大きな死亡保障が本当に必要かどうかを、改めて見直すタイミングになります。
65歳以降に想定される主なリスクと公的保障
65歳以降の暮らしでは、次のようなリスクが現実的になります。
自分が亡くなったあとの配偶者の生活費不足
病気やケガで入院・手術をした場合の医療費の自己負担
要介護状態となったときの介護費用
長生きによって、資産が尽きる長生きリスク
これらに対しては、公的な制度がある程度用意されています。
公的医療保険・高額療養費制度
一定額以上の医療費を負担した場合、超過分を後から払い戻す仕組みです。介護保険
要介護認定を受けることで、自己負担1〜3割で介護サービスを利用できます。公的年金・遺族年金
老齢年金に加え、条件を満たせば配偶者が遺族年金を受け取れる場合があります。
大切なのは、これらの公的保障と自分たちの貯蓄・資産を踏まえたうえで、**「どこまでを保険で補うべきか」**を考えることです。
「何となく不安だから続ける」のではなく、役割と費用対効果を整理して判断することが重要です。
知恵袋でよくある「65歳と生命保険」の勘違い
この章では、Yahoo!知恵袋などで見られる典型的な質問・勘違いを整理し、注意すべきポイントを解説いたします。
「年を取るほど保険は必須」は半分だけ正しい
「年を取るほど病気が増えるから、保険は必須だ」という意見は、一部では正しい考え方です。実際に、年齢が上がるほど病気や入院のリスクは高まります。
一方で、次のような点も冷静に見ておく必要があります。
高額療養費制度などにより、医療費の自己負担には上限がある
入院日数は昔より短くなっており、「長期入院前提」の設計は現実とずれ始めている
保険は「不安のすべて」をカバーするものではなく、「大きなリスクに絞って備える」もの
したがって、「年を取る=とにかく保険を増やす」という発想ではなく、
公的保障や貯蓄で足りない部分だけを保険で補う、という考え方が大切です。
「公的保険があるから生命保険はいらない」も危険
逆に、「高額療養費制度や介護保険があるから、民間の保険はすべて不要」という極端な意見も見られます。
しかし、公的保障だけではカバーされない費用も少なくありません。
入院中の食事代・日用品・交通費などの生活関連費
差額ベッド代や、個室を希望する場合の追加費用
自宅をバリアフリー化する費用や、在宅介護に伴う家族の負担増加
こうした「実費」は、公的制度だけでは賄いきれません。
「すべて保険任せ」も、「すべて公的保障だけ」もどちらも偏っており、
公的保障+貯蓄+必要最低限の保険というバランスが現実的です。
高い保険料を払い続けて老後資金を圧迫するケース
知恵袋で特に多い相談が、次のようなケースです。
年金生活なのに、月3〜4万円の保険料を払い続けている
若い頃に勧められるまま加入し、内容をよく理解しないまま放置している
解約してよいのか不安で、見直しを先延ばしにしている
例えば、月3万円の保険料を10年間支払い続けると、その総額は360万円になります。
老後資金が心配される中で、本当に必要かどうか分からない保険に多額の保険料を払い続けることは、大きな負担になりかねません。
65歳以上で生命保険が「必要な人・そうでもない人」
この章では、65歳以降も生命保険が必要となりやすいケースと、見直し・解約を検討してよいケースの目安を整理します。
引き続き大きな死亡保障が必要な人の条件
次の条件に複数当てはまる場合、65歳以降も一定の死亡保障を維持する意義がある可能性が高いです。
配偶者の年金額が少なく、自分の年金収入に大きく依存している
自分の死亡後、配偶者の生活費を試算すると赤字になる
住宅ローンがまだ多く残っており、団体信用生命保険が付いていない
障害のあるお子さまなど、長期的な生活支援が必要な家族がいる
自営業で厚生年金がなく、遺族年金がほとんど期待できない
これらに該当する場合、**「生活費としての死亡保障」**が残された家族を守るうえで重要な役割を果たします。
保障を減らしたり解約を検討してよい人の条件
一方で、次のような条件が揃っている場合には、保障を減らしたり、場合によっては解約を検討する余地があります。
子どもは独立し、教育費の負担がない
住宅ローンは完済済み、または完済の目途が立っている
配偶者の年金・自分の年金・貯蓄を合わせれば、配偶者一人でも最低限の生活費は確保できる
葬儀費用として、200〜300万円程度の現金・預貯金を確保できている
このようなケースでは、現役時代並みの「数千万円単位の死亡保障」を維持する必要性は低いことが多く、
葬儀費用+α程度の小さな終身保険に整理して保険料を抑えるといった見直しが有力な選択肢になります。
医療保険・がん保険を重視した方がよいケース
65歳以降は、「死亡保障」よりも「医療・がん・介護への備え」を重視した方がよいケースもあります。
がん・心疾患・脳血管疾患などの家族歴があり、不安が大きい
一人暮らし、または高齢の配偶者と二人暮らしで、入院時の付き添いが難しい
貯蓄だけでは、長期入院や先進医療の自己負担に不安がある
このような場合、高額な死亡保険を削減し、その分を医療・がん保険に回すという発想も検討に値します。
ただし、医療保険を増やしすぎても保険料負担が重くなるため、「どこまでを保険で、どこからを貯蓄で備えるか」のバランスが重要です。
かんたんチェック!65歳からの生命保険見直しフロー
この章では、実際にどのような手順で保険を見直せばよいか、3つのステップで整理いたします。
ステップ1:現在の加入内容と保険料を洗い出す
最初のステップは、「自分がどのような保険に、いくら払っているか」を正確に把握することです。保険証券や保険会社からの案内をもとに、次の項目を一覧にしてください。
保険会社名・商品名
保険の種類(終身・定期・医療・がん・介護など)
保険金額・給付金額
月払(または年払)の保険料
保険料払込期間(何歳まで払うのか)
保障期間(終身か、一定の年齢までか)
特に重要なのは、合計の保険料が月いくらになっているか、そして何歳まで払い続ける予定なのかです。
年金生活の収支と照らし合わせ、「無理なく払える範囲かどうか」を確認してください。
ステップ2:公的年金・遺族年金・貯蓄を確認する
次に、「自分が亡くなったあとの家計」をざっくりとイメージします。以下の数字を紙に書き出すと整理しやすくなります。
自分と配偶者の年金受給額(年間・月額)
自分が亡くなった後に、配偶者が受け取れる遺族年金(見込み額)
預貯金・投資信託・定期預金などの金融資産の残高
毎月の生活費(住居費・食費・光熱費・通信費・保険料など)
ここでの目的は、「配偶者一人になっても、最低限の生活が維持できるかどうか」を確認することです。
不足しそうな部分があれば、その不足分を死亡保険でどこまで補うかを検討します。
ステップ3:必要な保障額をざっくり試算する
最後に、必要な死亡保障額を簡易的に計算してみます。
配偶者が一人で生活する場合に必要な毎月の生活費(最低ライン)を決める
配偶者の年金やその他収入で、毎月いくら確保できるかを見積もる
「1−2」で出た不足額に、想定する年数(例:10〜15年)を掛け算する
この計算で出てきた金額が、「生活費としての目安の必要保障額」です。
この金額と、現在の死亡保険金額・貯蓄・その他の資産を合わせた金額を比較して、
すでに十分足りている → 保障を減らす・解約を検討
少し不足している → 必要額に近づくように保障を調整
大きく不足している → 保障を維持・一部見直しつつ、他の対策も検討
といった方向性を判断していきます。
65歳以上でも新たに生命保険に入るときの注意点
この章では、「65歳から新たに生命保険に加入する」場合に押さえておきたいポイントを解説します。
加入可能年齢と保険料水準の現実
多くの生命保険商品には加入年齢の上限があり、60〜80歳前後に設定されています。年齢が上がるほど、
保険料は高くなる
健康状態によっては加入できない、条件付きでしか加入できない
といった制約が厳しくなります。
そのため、65歳以降で新規加入を検討する際には、
何のリスクに備えたいのか(死亡、医療、介護など)
そのリスクを、公的保障と貯蓄でどこまでカバーできるか
そのうえで、「保険料に見合う保障」になっているか
を明確にしたうえで選択することが重要です。
終身保険・定期保険・一時払い終身の使い分け
65歳以降に検討されることが多い主な生命保険のタイプは、次の3つです。
終身保険
一生涯の死亡保障が続く保険です。葬儀費用の準備として、比較的小さな金額で加入するケースが多いです。定期保険
一定期間のみ死亡保障を準備する保険です。遺族の生活費が不足しそうな「期間が限定されている」場合に適しています。一時払い終身保険
保険料を最初にまとめて支払い、一生涯の死亡保障を確保するタイプです。相続対策の一環として活用されることもあります。
65歳以降では、複雑な設計にするよりも、
「葬儀費用+少しの生活立て直し資金」をシンプルに確保するといった目的に絞る方が、保険料とのバランスを取りやすくなります。
持病がある高齢者向けの選択肢と注意点
高血圧・糖尿病などの持病がある場合、次のような保険商品も選択肢に入ってきます。
引受基準緩和型保険
通常の保険よりも健康条件が緩い代わりに、保険料が高く設定されています。無選択型保険
告知や医師の診査がほとんど不要ですが、保険料が非常に高く、保障内容も限定的な場合が多いです。
これらの商品は、「通常の保険にどうしても入れないときの選択肢」に近い性格があります。
そのため、加入前に必ず、
保険料総額と得られる保障内容
老後の家計全体への影響
を確認し、「保険料が老後の生活を圧迫しないか」を慎重に検討してください。
親の生命保険を見直したい子ども世代へ
最後に、「親が高齢にもかかわらず高額な保険料を払い続けていて心配」という40〜50代の方向けに、確認すべきポイントをまとめます。
親と話し合うときに確認したい5つのポイント
親御さんの保険を見直すときには、次の5点を一緒に確認しておくと整理がしやすくなります。
加入中の保険の種類・保険金額・保険料
保険料の払込期間(いつまで支払いが続くか)
公的年金額や預貯金の目安(大まかで構いません)
親がその保険を続けている「目的」(葬儀費用・相続・遺産など)
保険を減らした場合・解約した場合の老後資金への影響
「目的のわりに保険金額が多すぎる」「年金収入に対して保険料が重すぎる」といった状況であれば、見直しの余地があると考えられます。
保険を減らす・解約するときの手続きの流れ
見直しの結果、一部の保障を減らす・不要な保険を解約する方針になった場合、一般的な手続きは次のとおりです。
保険会社(または担当者)に連絡し、「解約」「減額」「払済(これ以上保険料を払わず、保障だけ残す)」などの選択肢を確認
各選択肢における解約返戻金の有無・金額を確認
必要な書類を取り寄せ、親御さん本人の署名・押印などを行う
解約返戻金がある場合、その資金を老後資金としてどのように管理するかを検討
すべての保険を一度に解約する必要はなく、目的に合わない部分だけを整理するという考え方も有効です。
迷ったら専門家に相談すべきシグナル
次のような場合は、ファイナンシャルプランナーや保険ショップなどの専門家への相談も選択肢に入れてください。
契約内容が複雑で、自分たちだけでは判断しきれない
相続や贈与、将来の介護のことも含めて整理したい
兄弟姉妹との間で、将来の負担や遺産分けの話し合いが必要になりそう
その際には、特定の商品を強く勧めることを目的としていない、中立的な立場の相談先を選ぶことが重要です。