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退去立会いはしないほうがいい?高額請求を防ぐための正しい判断基

退去立会いについて調べていると、「立会いはしないほうがいい」「立会いに行くとその場で高額請求される」といった情報を目にすることが多いかもしれません。
一方で、不動産会社のサイトでは「基本的には立会いしたほうが安心」とも書かれています。矛盾した情報が多く、何を信じて判断すれば良いのか迷ってしまいます。

本記事では、退去立会いを「しないほうがいい」のかどうかを、法律・ガイドライン・実務の観点から整理し、

  • 立会いをしない場合のリスクと対策

  • 立会いに参加する場合の準備と当日の動き方
    を具体的に解説いたします。

ご自身の状況にあわせて、冷静に選択するための材料としてご活用ください。

※本コンテンツは「記事制作ポリシー」に基づき、正確かつ信頼性の高い情報提供を心がけております。万が一、内容に誤りや誤解を招く表現がございましたら、お手数ですが「お問い合わせ」よりご一報ください。速やかに確認・修正いたします。

この記事のまとめ

「退去立会いはしないほうがいい」という情報は、立会いの場で不当な対応を受けた一部の事例から生まれた側面があります。
しかし、ガイドラインや民法改正で原状回復の考え方が整理されている現在、

  • 立会いそのものを避けるよりも、

  • 立会いの場でどう行動するか、

  • 立会いできない場合にどう記録を残すか

を意識することの方が、トラブル防止には有効です。

目次

退去立会いとは?基本の意味と役割を整理する

退去立会いで何をするのか(流れと所要時間)

退去立会いとは、賃貸住宅を退去するときに、借主と貸主(または管理会社担当者)が室内の状態を一緒に確認し、原状回復の範囲や費用負担の目安をすり合わせる場です。さと賃+1

一般的な流れは次のとおりです。

  1. 引っ越し後、室内の荷物をすべて出した状態で立会いを実施

  2. 壁・床・天井・建具・設備(キッチン・浴室・トイレ等)のキズや汚れを担当者と一緒に確認

  3. 借主負担になりそうな箇所があれば、その場で口頭説明を受ける

  4. 概算費用の目安を共有されたうえで、後日正式な精算書(敷金精算など)が送られてくる

所要時間は、ワンルーム〜1LDK程度であれば30分前後、広いファミリータイプでも1時間程度が目安といわれます。

法律上の義務ではないが「事実上の標準」になっている理由

退去立会いは、法律で「必ずやらなければならない」と定められている手続きではありません。実務上は、貸主側のみが室内を確認し、後日写真などを添えて精算内容を通知する運用も理論上は可能です。さと賃+1

それでも多くの管理会社が立会いを実施するのは、次のような理由からです。

  • 退去時点の状態を双方で確認しておくことで、後から「キズの有無」などを巡る争いを減らせる

  • 借主にとっても、どこまでが自分の負担かをその場で説明してもらえる

  • 鍵の返却や、残置物の取り扱いをその場で整理できる

つまり、立会い自体は義務ではないものの、「トラブル予防のために実施するのが標準」という位置づけになっていると考えてよいです。


「退去立会いはしないほうがいい」と言われる理由

その場で高額な見積もりにサインさせられる不安

ネット上では、「退去立会いに行ったら、その場で高額な見積もり書にサインさせられた」という体験談が話題になることがあります。
確かに、一部の不適切な対応として、その場で十分な説明をせずに署名を求めるケースも指摘されています。

こうした情報から、「立会い=不利な契約を押し付けられる場」というイメージだけが独り歩きし、「立会いには行かないほうがいい」という極端な意見につながっている側面があります。

ただし、署名を急かされたからといって、必ずしもその場でサインをしなければならないわけではありません。後ほど詳しくご説明しますが、
「内容を持ち帰って確認してから回答します」
と伝え、サインを保留することは可能です。

女性一人暮らしが感じやすいハラスメント・防犯面の心配

とくに女性一人暮らしの方は、見知らぬ男性担当者と二人きりで室内にいること自体に不安を感じやすいです。note(ノート)+1

  • 高圧的な態度で費用負担を迫られないか

  • 断りづらい空気にならないか

  • そもそも二人きりになることが怖い

といった心理的なハードルから、「立会いに行かないほうが安全なのでは」と感じる気持ちも自然なものです。

ネットやSNSで噂が広がりやすい背景

退去立会いでトラブルがあった事例は、SNSや動画サイトで拡散されやすく、「危険なケース」の情報ばかりが目に入ります。
一方で、「特に問題なく終わった」という多数派のケースは話題になりにくいため、全体像としては実態以上に危険に見えてしまいます。

その結果、「退去立会いはしないほうがいい」という一面的なメッセージが強調され、冷静な比較が難しくなっているのが現状です。


退去立会いをしない場合のデメリットとリスク

修繕費用の妥当性をその場で確認できない

立会いをしない場合、貸主・管理会社のみで部屋を確認し、後日書面で修繕内容と費用が通知されるケースが多くなります。

この方法の問題点は、

  • どのキズ・汚れに対して、いくらの費用が計上されているのか

  • それが通常損耗なのか、借主負担なのか
    をリアルタイムで確認できないことです。

結果として、「本当にその金額が妥当なのか」を判断しづらくなり、不信感やトラブルにつながりやすくなります。

退去時の状態を証明しづらくなり、不当請求と争いになりやすい

立会いは、退去時点の状態を「双方で確認した」という事実を残す役割も持っています。
立会いを行わず記録も残さないままだと、後から新たな損傷が見つかった場合に、

  • それが本当にあなたの退去時点からあったのか

  • その後の工事や次の入居者の使用で生じたものではないのか

といった点を主張・立証することが難しくなります。

写真や動画で記録していれば一定の反論材料にはなりますが、やはりその場で相互確認しておいた方が、後のトラブルを防ぎやすいのは事実です。

敷金精算の結果に納得できなくても、後から覆しにくい

立会いをしていない場合、敷金精算の通知が届いた時点で初めて詳細な金額を知ることになります。
そこから疑問点を問い合わせたり、ガイドラインを調べて反論したりすることは可能ですが、

  • 「そのときの状況はこうだったはずだ」という主張ベースになりがち

  • 賃貸人側の写真・報告書に対抗する証拠が不足しがち

というハンデを抱えることになります。

この意味で、「立会いに行かないほうが高額請求を避けられる」という見方は必ずしも正しくなく、むしろ請求の内容をチェックしづらくなるリスクの方が大きいといえます。


それでも立会いしないほうがいい人・ケースはある?

遠方・仕事などでどうしても時間が取れない場合

とはいえ、誰にとっても「必ず立会いがベスト」とは限りません。

  • 転勤や海外赴任で既に遠方に引っ越している

  • 仕事がどうしても休めず、立会い時間の調整が困難

  • 高齢の親の代わりに子どもが手続きしており、日程が合わない

といった事情がある場合、立会いを行わない選択肢も現実的にはありえます。

この場合、「立会いなしでも構いませんが、その代わりに○○を徹底してください」という意識で準備することが重要です。

代理人に任せる/詳細な写真・動画でカバーする方法

どうしても自分で立会いに行けない場合は、次のような代替案が考えられます。

  • 家族やパートナーなど信頼できる人に代理で立ち会ってもらう

  • 引っ越し業者などが代理立会いサービスを提供していれば利用する

  • 事前に室内全体を写真・動画で撮影し、管理会社に共有したうえで確認してもらう

代理人に依頼する場合でも、

  • 契約書のコピー

  • 特に気になっているキズや汚れのメモ

  • 費用負担の考え方(ガイドラインの要点)
    などを渡しておくと、あなたの意向をある程度反映してもらいやすくなります。

立会いなしで退去する際に必ずやるべき「証拠残し」

立会いを行わない場合は、代わりに「自分でできる証拠残し」を徹底することが大切です。

  • 各部屋ごとに、壁・床・天井・設備を広角とアップの両方で撮影

  • キズや汚れが気になる箇所は、近距離でピントを合わせた写真を複数枚撮る

  • 日付が分かる形(スマホの撮影日時など)で保存しておく

  • 可能であれば、動画で室内を一周撮影しておく

こうした記録があれば、後から「そのキズは本当にあなたが退去した時点で存在していたのか」を争う際の材料になります。


ガイドラインと民法改正から見る「原状回復」の正しい考え方

通常損耗・経年劣化と借主負担の違い

国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」および民法改正を踏まえると、原状回復の基本的な考え方は次のとおり整理されています。

  • 通常の使用による損耗や経年劣化 → 原則として賃貸人(オーナー)の負担

  • 借主の故意・過失・善管注意義務違反による損耗 → 借主の負担

  • 通常の使用を超える使い方による損耗 → 借主の負担

具体例としては、

  • 日焼けによるクロスの変色 → 通常損耗(オーナー負担が原則)

  • 家具の設置跡程度のへこみ → 通常損耗

  • タバコのヤニ汚れ・臭い、落書き、ペットによる大きなキズ → 借主負担になりやすい

といったイメージです。

ガイドラインの要点を退去立会いでどう活かすか

ガイドラインの内容を、退去立会いの場で活かすポイントは次のとおりです。

  • 「これは経年劣化ですか、それとも私の負担になりますか?」と、区別を前提に質問する

  • 「ガイドラインでは通常損耗は貸主負担と聞いていますが、このケースはどういう理由で借主負担になりますか?」と、理由を丁寧に確認する

  • 一度で理解できない場合は、「説明内容をメモしたうえで、後日確認させてください」と伝える

このように、「どうせ言っても無駄」と諦めるのではなく、根拠を尋ねる姿勢が重要です。

明らかに不当と言える請求例のイメージ

個別のケースにより判断は異なりますが、ガイドラインの考え方からすると、次のような請求は不当と判断される可能性があります。

  • 経年劣化と考えられるクロスの全面張り替え費用を、全額借主負担とする

  • すでに十分に古い設備(耐用年数を超えているようなエアコンなど)の交換費用を全額請求する

  • 入居前からあったキズ・汚れについても、退去時にまとめて借主に請求する

不当と思われる請求を受けた場合は、契約書やガイドラインのコピーを確認したうえで、管理会社・オーナーに説明を求め、それでも解決しない場合は消費生活センターや専門家に相談することを検討してください。


立会いに参加する場合のチェックリストと当日の流れ

事前に準備しておくもの(契約書・写真・掃除など)

立会いに参加する場合は、次のようなものを準備しておくと安心です。

  • 賃貸借契約書(原状回復・敷金に関する条文)

  • 入居時に撮影した写真や、入居時のチェックシート

  • 退去直前に撮影した室内の写真・動画

  • 身分証明書・印鑑(必要と案内されている場合)

  • 鍵一式・設備の取扱説明書等

また、軽い掃除をしておくことで、借主負担の汚れと通常の汚れの線引きがしやすくなります。
完璧にクリーニングする必要まではありませんが、「通常の生活で生じる汚れ」を超えた部分はできる範囲で落としておくと良いでしょう。

当日に確認すべきポイントと、写真の撮り方

立会い当日は、次のポイントを意識して確認・記録すると安心です。

  • 借主負担になりそうなキズ・汚れの「箇所」と「理由」を担当者に説明してもらう

  • 壁紙・床などは、どこまで張替え・補修する前提なのかを聞いておく

  • 気になる箇所は、担当者の説明を聞きながら、スマホで写真を撮っておく

写真を撮る際は、

  • キズのアップ写真

  • 部屋全体の中でどの位置にあるか分かる引きの写真
    の両方を撮影しておくと、後から見返したときに状況を把握しやすくなります。

その場でサインを求められたときの安全な断り方・保留の仕方

立会いの最後に、見積もりや確認書への署名を求められることがあります。内容に納得している場合は問題ありませんが、少しでも不安があるときは、無理にその場でサインする必要はありません。

たとえば、次のようなフレーズで対応できます。

  • 「内容を持ち帰って家族(または第三者)と確認してからご連絡してもよろしいでしょうか。」

  • 「金額の根拠をもう少し整理してから判断したいので、本日はサインを控えさせてください。」

  • 「ガイドラインも照らし合わせて確認したいので、見積書だけ先にいただけますか。」

このように、冷静に「一度持ち帰る」意思を伝えれば、多くの場合は応じてもらえます。
もし強く迫られて不安を感じた場合は、その場の音声ややり取りをメモに残し、後日改めて相談することを検討してください。


女性一人での退去立会いが不安なときの対策

家族・友人に同席してもらう/オンライン通話で見守ってもらう

防犯面やハラスメントへの不安が強い場合は、「一人で立ち会わない」ことを前提に準備すると安心です。

  • 家族・友人・パートナーに一緒に来てもらう

  • どうしても同席が難しい場合は、オンライン通話をつないでおき、第三者に様子を見守ってもらう

  • 事前に管理会社へ「女性担当者の同席をお願いできるか」相談してみる

といった工夫が考えられます。

不安を感じたときに使える具体的なフレーズ例

立会いの場で不安を感じたときは、感情的にならず、次のようなフレーズで距離を取ることが有効です。

  • 「突然のことで動揺しているので、一度落ち着いてから回答したいです。」

  • 「今一人なので、家族にも相談してから決めたいです。」

  • 「録音させていただきますがよろしいでしょうか。」

録音については、地域や状況によって扱いが異なる場合もありますが、「記録のために残したい」という趣旨で丁寧に伝えると、担当者の言動がより慎重になりやすい効果も期待できます。

事後にトラブルになった場合の相談窓口

もし退去立会い後にトラブルが発生した場合は、以下のような相談窓口の利用を検討してください。

  • お住まいの自治体の消費生活センター

  • 不動産関連の相談窓口(宅建業者団体など)

  • 弁護士会の法律相談(必要に応じて)

「一人で抱え込まないこと」が何より重要です。請求書ややり取りのメール・メモ・写真などを整理して持参すると、より具体的なアドバイスを受けやすくなります。


結局、退去立会いはしたほうがいい?判断フローチャート

条件別「立会いしたほうがいい人」「立会いしなくてもよい人」の目安

ざっくりとした目安として、次のように考えると判断しやすくなります。

立会いをしたほうがよい人の例

  • 初めての退去で、費用の相場やルールがよく分からない

  • 借主負担になりそうなキズ・汚れがいくつか思い当たる

  • 敷金の金額が大きく、精算結果をしっかり確認したい

  • 将来的にトラブルになりたくないので、今のうちに説明を受けておきたい

立会いをしなくてもよい(または難しい)人の例

  • 遠方に既に引っ越しており、往復の交通費や時間が大きな負担になる

  • 信頼できる家族・パートナーを代理人として立てられる

  • 室内の状態を写真・動画で十分に記録できている

  • 管理会社との事前のやり取りが丁寧で、報告内容の透明性が高いと感じる

どちらを選んでも共通して大切な3つのポイント

立会いをするかどうかに関わらず、共通して大切なポイントは次の3つです。

  1. 契約書とガイドラインの考え方を事前に確認しておく

  2. 入居時・退去時の室内を写真・動画で記録しておく

  3. 納得できない請求や説明には、すぐにはサインせず「確認したい」と伝える

この3つを押さえておくだけでも、トラブルの多くは避けられます。

不安が強い場合にすぐできる行動

  • まずは契約書を読み直し、原状回復に関する条文に付箋をつける

  • 国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」の概要に一度目を通す

  • スマホで室内を一周する動画を撮影しておく

  • 立会い当日に使うつもりのフレーズをメモしておく

「完璧に理解してからでないと立会いしてはいけない」と考える必要はありません。
できることから一つずつ準備していけば、当日の不安は確実に軽くなります。