賃貸だからテレビの壁掛けはあきらめている――そんなお悩みをお持ちではないでしょうか。
「壁に穴をあけていいのか」「退去時に高額な原状回復費を請求されないか」「子どもがぶつかっても安全なのか」。気になりながらも、具体的にどう動けばよいのか分からず、結局テレビ台のまま……という方は少なくないはずです。
本記事では、ホッチキス式・石膏ピン式・ディアウォール・壁寄せスタンドといった賃貸向けの代表的な工法を、原状回復の観点と安全性の両面から分かりやすく比較します。さらに、国交省ガイドラインや賃貸契約のチェックポイント、管理会社への確認の仕方、DIY手順や子育て世帯ならではの注意点までを一気通貫で整理しました。
「できるだけリスクを抑えつつ、部屋を広く・安全に・すっきり見せたい」。そんな方が、今日から自信を持って一歩を踏み出せるように、賃貸で失敗しないテレビ壁掛けの考え方と具体的な進め方を解説していきます。
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賃貸でも、工法と契約内容を踏まえればテレビの壁掛けは十分現実的です。
ホッチキス式・石膏ピン式・ディアウォール・壁寄せスタンドなど、賃貸と相性のよい選択肢が複数あります。
国交省ガイドライン上は画鋲程度の穴は通常損耗と解釈されることが多いものの、最終判断は契約書と管理会社の方針次第です。
契約書とガイドラインの確認+管理会社への相談
壁材・コンセント位置・テレビ重量を確認
工法を選ぶ(迷ったらホッチキス式 or 石膏ピン式から検討)
必要な工具・パーツを揃え、2人以上で安全に施工
退去時の原状回復方法もあらかじめ把握しておく
賃貸でもテレビを壁掛けにできる?まず押さえたい結論
賃貸での壁掛けテレビは「やり方次第」で現実的に可能
「賃貸だからテレビを壁掛けにするのはムリ」と考える方は多いですが、現在は賃貸向けの壁掛けツールや工法が充実しており、やり方を選べば現実的に実現可能です。
特に、次のような工法は賃貸との相性がよいとされています。
ホッチキスを使う壁掛け金具
細い石膏ピンで固定する壁掛けツール
ディアウォール+2×4材などで「仮の柱」を立てる方法
壁寄せスタンドやフェイクウォールで「壁掛け風」に見せる方法
ただし、どの工法も「絶対に原状回復費がかからない」とは言い切れません。契約内容や管理会社の判断に左右されるため、事前の確認とリスクの理解が重要です。
小さい穴と原状回復の考え方(ガイドラインのポイント)
国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、通常の使用による経年劣化や「通常損耗」は貸主負担とする考え方が示されています。
これを踏まえたインテリア系メディアでは、画鋲程度の小さな穴は借主負担にはならないと解説されています。ただし、賃貸契約書で「壁の穴はすべて借主負担」などと定められている場合はその限りではない、という注意も添えられています。
ホッチキス工法や石膏ピン工法は、いずれも「画鋲より小さい、または同程度の穴」で済むことを売りにしており、退去時に補修材で埋めやすいのが特徴です。
事前に必ず確認したい「3つのチェックポイント」
賃貸で壁掛けテレビを検討する際は、最低限次の3点を確認してください。
賃貸契約書の条文
「釘・ビス・ネジ・アンカー等の使用禁止」「壁の穴はすべて原状回復義務」などの記載がないか。
管理会社・オーナーの方針
小さな穴(画鋲程度)をどこまで許容しているか。
ホッチキス・石膏ピン・2×4材工法について、特にNGの指示がないか。
壁の構造とテレビサイズ
石膏ボードなのか、コンクリートなのか。
テレビのサイズと重量が、想定している工法の耐荷重に収まっているか。
賃貸でよく使われる壁掛けテレビの4つの工法
ホッチキス式金具:穴がほぼ残らない定番工法
家電量販店や専門ショップでも紹介されることが多いのが、ホッチキスを使う壁掛け金具です。代表例として、「TVセッター壁美人」などがあります。
特徴
石膏ボードに、180度開くタイプのホッチキスで針を多数打ち込み、金具を固定。
穴は非常に小さく、メーカーや量販店の記事では「ほとんど見えないレベル」「画鋲より目立たない」と説明されています。
震度7相当の疑似地震試験をクリアしたモデルもあり、想像以上にしっかり固定できます。
メリット
賃貸でも導入しやすい(穴が小さく、原状回復もしやすい)。
必要な工具はホッチキスとドライバー程度で、DIY初心者でも挑戦しやすい。
注意点
石膏ボード以外(コンクリート・ベニヤなど)には基本的に使用不可。
指定された本数・位置にホッチキスを打たないと、設計通りの強度が出ません。
テレビサイズや重量に応じた適合モデルを選ぶ必要があります。
石膏ピン式ツール:高耐荷重でしっかり固定したい方向け
次に、石膏ピン固定式のツールです。代表的な例として、賃貸向けをうたう「FLOAT」があります。
特徴
太さ0.9mmの専用石膏ピンを多数打ち込むことで、金具を固定。
メーカーの試験では、350kg以上の荷重に耐えたとされ、非常に高い耐久性が確認されています。
専用の型紙や水準器が付属しており、水平を取りやすい設計です。
メリット
大型テレビ(65インチクラス)にも対応するモデルがあり、しっかり固定したい方に向いています。
ピン穴は小さく、付属の補修剤で原状回復しやすい。
注意点
ホッチキス式と同様、石膏ボードであることが前提。
ピンを打つ位置を間違えたり、本数を減らしたりすると強度が落ちるため、説明書どおりの施工が必須です。
ディアウォール+2×4材:壁に穴をあけない「柱」を立てる方法
壁に一切穴をあけたくない場合は、ディアウォール+2×4材+壁掛け金具のセットが有力候補です。
特徴
床と天井の間に2×4材を突っ張り、仮の柱を作成。
その柱にテレビ用の壁掛け金具を取り付けるため、元の壁には手を加えません。
専用セット商品では、26〜65インチ程度まで対応するモデルが用意されています。
メリット
壁そのものに穴をあけないため、原状回復の手間が少ない。
柱部分をインテリアとしてデザインしやすく、棚や有孔ボードと組み合わせる事例もあります。
注意点
天井高に合った2×4材のカットが必要で、ノコギリ作業に慣れていないとややハードルがあります。
ローリングやズレを防ぐため、設置位置・本数・突っ張り強度に注意が必要です。
天井が弱い石膏ボードのみの場合など、構造によっては不向きなケースもあります。
壁寄せスタンド・フェイクウォール:ほぼ工事不要で「壁掛け風」に
「どうしても壁に触りたくない」「DIYは苦手」という方は、壁寄せスタンドやフェイクウォール(自立型の疑似壁)という選択肢もあります。
特徴
壁寄せスタンド:大きな台座で支える自立式のスタンド。テレビが宙に浮いているように見えます。
フェイクウォール:床から天井までのパネルを設置し、その上に壁掛け金具を固定する工法。後付け感を減らしつつ、配線も内部に隠せるケースが多い。
メリット
壁に穴をあけない、または最小限で済むことが多い。
プロ施工のフェイクウォールであれば、インテリア性も非常に高い。
注意点
壁寄せスタンドは床面積を少し取るため、ワンルームでは圧迫感が出る場合があります。
フェイクウォール施工は費用がかかることが多く、持ち家寄りの選択肢になることもあります。
原状回復とトラブル回避のポイント
国交省ガイドラインと「画鋲程度の穴」の考え方
国土交通省のガイドラインでは、経年劣化や通常の使用による損耗は貸主負担とする考え方が示されており、これをもとに「画鋲程度の穴」は通常損耗と見る解説が一般的です。
そのため、ホッチキスや石膏ピンで開くごく小さい穴は、原則として借主負担にはならないことが多いと紹介されています。ただし、
契約書に別途禁止・負担条項がある場合
穴の数が極端に多い場合
下地を傷めるような施工ミスがある場合
などは、原状回復費用を請求される可能性もゼロではありません。
賃貸契約書で必ず確認すべき条文
契約書では、次のような記載を確認してください。
「壁・天井・床に釘・ネジ・ビス等を打ち込んではならない」
「壁紙の貼り替え・穴の補修は借主負担とする」
「画鋲の使用は認めるが、それ以外の穴あけ行為は禁止する」
こうした条文がある場合でも、管理会社に工法を具体的に説明したうえで相談することで、許可が得られるケースもあります。
管理会社・オーナーに確認するときの伝え方と文例
問い合わせのポイントは次の3点です。
「ホッチキス/石膏ピンを使い、画鋲程度の小さい穴で済む工法であること」
「退去時には補修材で穴を埋める予定であること」
「壁紙の貼り替えが必要になるような施工は行わないこと」
問い合わせ文例(メール)
賃貸契約中の◯号室の◯◯と申します。
現在、リビングのテレビを壁掛けにすることを検討しております。
ホッチキス(または石膏ピン)で固定する市販の壁掛け金具を使用し、画鋲程度の小さな穴のみが開く工法を想定しております。
退去時には、専用の補修材で穴を埋めるなど、原状回復に努める予定です。
上記の方法であれば、管理規約・契約上問題ないかご確認いただけますでしょうか。
このように、具体的な工法と配慮内容を伝えることで、管理会社側も判断しやすくなります。
賃貸でテレビを壁掛けにする手順(チェックリスト付き)
事前準備:壁材・コンセント位置・テレビサイズを確認する
まず、次の3点をチェックします。
壁材:石膏ボードか、コンクリートか、木質か
→ 石膏ボードならホッチキス・石膏ピン工法が候補になります。コンセント位置:テレビを掛けたい場所の近くに電源・アンテナ端子・LAN端子があるか。
テレビ:インチ数と重量、VESA規格(背面ネジ穴の間隔)を確認する。
この情報が分かれば、対応する金具や工法をスムーズに選べます。
工法別に必要なものリスト(ホッチキス/石膏ピン/ディアウォール)
ホッチキス式
壁掛け金具本体(ホッチキス対応タイプ)
180度開くホッチキス
ホッチキス針(純正推奨)
プラスドライバー、水平器(付属している場合もあり)
石膏ピン式
石膏ピン対応の壁掛けツール(例:FLOAT)
付属の石膏ピン一式
付属の型紙・水平器
プラスドライバー
ディアウォール+2×4材
ディアウォール(上下セット)×必要本数
2×4材(天井高に合わせてカット)
テレビ用壁掛け金具(2×4材対応可能なもの)
木ネジ、ドライバー、メジャー、水平器
作業の流れ:取り付け〜配線〜水平チェックまで
細かな手順は製品ごとに異なりますが、基本の流れは共通しています。
テレビ背面にブラケットを取り付け
VESA穴の位置に合わせて、付属のネジで固定します。
壁側金具または柱を設置
ホッチキス・石膏ピン工法:型紙を壁に当てて位置決めし、指示どおりにホッチキスやピンを打ち込みます。
ディアウォール工法:2×4材を立てて突っ張り、そこに金具を取り付けます。
テレビを掛ける・固定する
2人以上で作業し、ブラケットと金具を噛み合わせ、セーフティボルトなどで落下防止を行います。
配線処理と水平チェック
電源やHDMIケーブルをつなぎ、配線カバーなどで見た目を整えます。
水平器で最終確認し、必要に応じて微調整します。
退去時の原状回復のコツと補修グッズ
ホッチキス・石膏ピンの穴は、専用の補修材やパテ+白いペンなどで埋めると、ほとんど目立たなくできます。
壁紙の柄や色が特殊な場合は、完全に目立たなくすることは難しいため、管理会社に事前相談しておくと安心です。
穴を埋める前後の写真を残しておくと、トラブル時の説明材料になります。
子育て世帯にうれしい、壁掛けテレビのメリットと注意点
転倒防止・ロボット掃除機・収納面でのメリット
壁掛けテレビは、特に子育て世帯にとって多くのメリットがあります。
転倒リスクの低減
テレビ台の上に置くタイプに比べ、子どもが画面を押したり、よじ登ったりしても倒れにくく、安全性が高まります。掃除のしやすさ
テレビ台をなくせば床面が広がり、ロボット掃除機も動きやすくなります。収納・インテリアの自由度向上
テレビ台スペースを収納家具に変えたり、壁一面をインテリアとして活用したりしやすくなります。
大型テレビほど注意したい「耐荷重」と「地震対策」
一方で、大型テレビになるほど次の点には十分注意が必要です。
耐荷重のマージン
カタログ上の耐荷重ぎりぎりではなく、テレビ重量+αの余裕を持たせる。地震時の揺れ
震度7相当の試験をクリアした製品であっても、取付ミスがあれば安全性は低下します。配線の引っ掛かり
地震時にケーブルが突っ張ってしまうと、壁や端子に負担がかかるため、多少の余裕を持たせて配線することが重要です。
無理せずプロに依頼した方がよいケース
次のような場合は、無理にDIYせずプロの施工業者を検討してください。
壁構造が分からず、下地の有無を判断できない。
65インチ以上の大型テレビを壁掛けにしたい。
フェイクウォールやエコカラットなどを組み合わせ、インテリア性も重視したい。
プロに依頼することで、耐荷重計算や下地補強、配線の隠し方まで含めたトータル設計が可能になります。
よくある質問Q&A
何インチまでなら賃貸でも現実的?
使用する工法・金具によりますが、賃貸向けをうたうホッチキス・石膏ピン工法やディアウォールセットでは、37〜65インチ程度まで対応するモデルがメインです。
ただし、同じインチ数でもテレビの重量はモデルによって異なるため、必ず重量とVESA規格を確認してください。
失敗して穴が増えたらどうする?
同じ場所に何度も打ち直さないことが基本です。
間違えた穴は早めに補修材で埋めておき、見た目と強度を確保します。
穴が多くなりそうな場合は、それ以上のDIYは控え、ディアウォール等の「壁に触らない」工法への切り替えも検討してください。
すでに小さな穴がある壁を再利用してもよい?
画鋲跡などがすでにある壁を使うこと自体は問題ありませんが、
穴の数が極端に多くならないよう配慮する
下地が弱くなっていないか確認する
退去時にはまとめて補修する前提で、写真を残しておく
といった点に留意してください。