シャワー中やプールから上がったあと、片方の耳だけ「ぼわーん」と詰まったような感じが続くと、とても気持ちが悪いものです。
「耳に入った水を確実に出す方法」と検索し、Yahoo!知恵袋の回答を読み漁ったことがある方も多いのではないでしょうか。
一方で、耳はとてもデリケートな器官です。
強く頭を振る・耳の奥に綿棒やティッシュを入れる・呼び水やアルコールを流し込むといった自己流の対処は、外耳道(耳の穴)や鼓膜を傷つけるおそれがあります。
本記事では、
知恵袋などでよく見かける耳の水抜き方法
医療情報に基づいた「安全に試せる方法」と「避けたい方法」
放置してよい目安と、耳鼻科を受診した方がよいサイン
を整理して解説します。
強い耳の痛み・聞こえづらさ・耳だれ(耳から液体が出る)・発熱・めまいなどがある場合は、自己判断で耳をいじらず、速やかに耳鼻咽喉科を受診してください。
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耳に入った水は、多くの場合数時間〜一晩で自然に乾く
「水が入った感じ」が長引くときは、耳垢・外耳炎・中耳炎・耳管の異常など、別の原因が隠れていることもある
知恵袋でよく見かける方法のうち、
◎ 比較的安全:耳介を斜め後ろ上方に引っ張る/水が入った側を下にして横向きに寝る/丸めたティッシュを耳の入り口に当てる
× 危険度が高い:激しい頭振り・ジャンプ/綿棒・こよりを奥まで入れる/呼び水・アルコールを自己判断で流し込む
強い痛み・耳だれ・聞こえづらさ・発熱・めまいがあるときや、違和感が2〜3日以上続くときは、自己処置を続けず耳鼻科を受診する
「耳に入った水を確実に出す方法」を探すと、さまざまな体験談が見つかります。
しかし、安全に確実に近づける一番の近道は、“やってはいけないこと”を知ることです。
耳に入った水が抜けにくい理由|放置してもよいケースは?
耳の構造と「水がハマる」ポイント
耳の穴から鼓膜までは、約3cmほどのS字状の管(外耳道)になっています。その奥、鼓膜の手前には少しくぼんだ部分があり、ここに水が入ると表面張力で張り付いてしまうため、簡単には出てこなくなります。
耳を傾けても水が抜けないときは、この「くぼみ」に少量の水がはまっているイメージです。
どのくらいで自然に乾く?放置してよい目安
正常な耳であれば、外耳道に入った水は数時間〜一晩程度で自然に蒸発し、多くの場合は特別な処置をしなくても元に戻るとされています。
入浴直後:違和感があっても、しばらくすると軽くなることが多い
一晩寝たあと:水が入った側を下にして寝ると、翌朝には改善しているケースが多い
したがって、
強い痛みがない
耳だれや発熱がない
「入浴直後に水が入った」ことが明確
といった場合は、数時間〜1日程度は様子を見てもよいケースが少なくありません。
「水が入った感じ」が長引くときに疑われる別の病気
一方で、「水が入った感じが翌日以降も続く」「一週間以上不快感が取れない」という場合、実際には耳に水が残っているのではなく、別の原因である可能性が高いと指摘されています。
代表的なものとして、以下が挙げられます。
耳垢が外耳道を塞いでいる(耳垢栓塞)
外耳炎・中耳炎などの炎症
耳管の機能異常(耳管狭窄症・耳管開放症など)
低音障害型難聴 など
このような場合、自己処置では改善せず、放置すると悪化するおそれがあります。
「水が原因」と決めつけず、2〜3日以上違和感が続くときは早めに耳鼻科を受診してください。
知恵袋で多い「耳の水抜き方法」を一覧化|まず全体像を把握
Yahoo!知恵袋などでは、耳の水抜きに関してさまざまなアイデアが投稿されています。
代表的なものを整理すると、以下のようなグループに分けられます。
叩く・片足けんけん・頭を振るタイプ
水が入った側の耳を下にして、反対側を軽く叩く
片足けんけんしながら耳を下にしてジャンプする
激しく頭を振り、遠心力で水を飛ばす など
手のひらで圧迫する・呼び水・アルコールを入れるタイプ
手のひらで耳をふさぎ、圧力をかけては離す
耳に少量の水を追加で入れて「呼び水」で出す
消毒用アルコールを耳に垂らして水と一緒に出す
ティッシュこより・綿棒で吸い取るタイプ
ティッシュで細いこよりを作り、耳の中の水を吸い取る
綿棒を耳の奥まで入れて水を吸わせる
耳を斜め後ろに引っ張る・横向きに寝るタイプ
耳介の上部をつまみ、斜め後ろ上方に引っ張る
仰向けに寝てから、水が入った側を下にしてゆっくり体勢を変える
水が入った耳を下にして横向きに寝る など
一見どれも「効きそう」に見えますが、安全性や確実性には大きな差があります。
次の章で、医療情報を踏まえた評価を行います。
耳鼻科情報で安全性をチェック|やってよいこと・やめた方がよいこと
今すぐ試せる「おすすめ度◎」の安全な方法
以下は、耳鼻科医のコメントや医療系サイトでも推奨されている、比較的安全性の高い方法です。
1. 耳介をつまんで斜め後ろ上方に引っ張る
水が入った側の耳介(耳の外側)上部を指でつまみます。
そのまま斜め後ろ上方にそっと引っ張ります。
外耳道がまっすぐになり、水が抜けやすくなるとされています。
力を入れすぎず、「耳の穴の通りをまっすぐにするイメージ」で行ってください。
2. 水が入った耳を下にして横向きに寝る
いったん仰向けに寝ます。
数分ほどそのままにしたあと、水が入った側を下にして横向きになります。
重力で水が出やすくなります。プールサイドやベッドの上で、安全な場所で行ってください。
3. 丸めたティッシュを耳の入り口に当てて水分を吸わせる
ティッシュを細く丸め、「やわらかい棒」のような形にします。
耳の入り口付近までそっと差し込み、しばらく当てます(奥まで入れない)。
外耳道をこすらないように注意しつつ、水分だけを吸わせる方法です。
条件付きで注意が必要な「おすすめ度△」の方法
軽いジャンプ・軽い頭の傾き
水が入った側の耳を下にして、軽くジャンプする
首を痛めない範囲で、ゆっくり頭を左右に傾ける
ポイント
激しく何度もジャンプしたり、大きく頭を振るのはNG
足場が滑りやすい(浴室など)場所では行わない
「どうしても軽く動かしたい」という場合、安全第一で“控えめ”に行うことが重要です。
アルコールを使用する方法
一部のサイトでは「消毒用アルコールを一滴入れて、水と一緒に蒸発させる」といった方法が紹介されています。
しかし、
鼓膜に穴が開いている場合
外耳炎などで外耳道が炎症を起こしている場合
には、刺激やめまいの原因となるおそれがあります。自己判断で行うのは避け、必要であれば必ず医師に相談してください。
医師がNGとする「おすすめ度×」の危険な方法
医師や医療系サイトが避けるべきと明言している方法もあります。
綿棒やティッシュこよりを耳の奥まで押し込む
外耳道の皮膚は非常に薄く、簡単に傷つきます
外耳道炎や出血、鼓膜損傷の原因になることがあります
激しく頭を振る・何度も強くジャンプする
転倒やむち打ち、めまいなどのリスクがあります
力任せに行っても効果が保証されるわけではありません
呼び水・アルコールを自己判断で大量に流し込む
めまい・炎症悪化・鼓膜穿孔時の合併症などの危険があります
「知恵袋で誰かがやっていたから」ではなく、耳鼻科医が推奨していない方法は避けることが大切です。
【フロー】耳に入った水を安全に出す3ステップ
ここからは、実際に水が入ってしまったときの行動を、フローチャート的に整理します。
ステップ1:まずは耳をいじりすぎず、症状をチェック
いつ・どこで水が入ったか
入浴・シャワー・プール・海など
次の症状の有無を確認します。
チェックすべき症状
強い耳の痛み
耳だれ(血や膿を含む液体)
発熱・めまい
急に聞こえづらくなった など
これらがある場合は、自己処置をせず、速やかに耳鼻科へ。
ステップ2:安全なセルフケアを順番に試す
症状が軽く、「入浴直後に水が入った」と明らかな場合に限り、次の順番でセルフケアを試してみてください。
耳介を斜め後ろ上方に引っ張る
水が入った耳を下にして横向きに寝る/仰向けからゆっくり体勢を変える
丸めたティッシュを耳の入り口に当てて水を吸わせる(奥まで入れない)
この3つを試しても改善しない場合、あとは自然乾燥を待つという選択もあります。
ステップ3:この症状があれば自己処置をやめて耳鼻科へ
次のいずれかに当てはまる場合、自己処置を続けるのは危険です。
違和感が24〜48時間以上続いている
強い痛み・聞こえづらさ・耳だれ・発熱・めまいなどがある
耳に病気(中耳炎など)の既往がある、または鼓膜に穴が開いていると言われたことがある
「まだ水が残っているだけ」と思い込まず、早めに耳鼻科で診察を受けてください。
大人・子ども・持病ありのケース別注意ポイント
子どもの耳に水が入ったときの注意点
子どもの耳は大人に比べて、外耳道がまっすぐで水が入りやすい一方、自分で耳をいじってしまうことが多く、外耳炎を起こしやすいとされています。
強いジャンプや激しい頭振りをさせない
綿棒やこよりを親が奥まで入れるのは避ける
痛みや機嫌の悪さが続く場合は早めに小児耳鼻科へ
セルフケアをする場合も、耳介を引っ張る・横向きに寝る程度のソフトな方法にとどめましょう。
高齢者・持病(中耳炎・鼓膜穿孔歴)がある場合
中耳炎を繰り返している
鼓膜に穴が開いていると言われたことがある
といった方は、外耳道や鼓膜の状態が弱くなっている可能性があります。
この場合、アルコールや呼び水はもちろん、強い圧力をかける方法も避けるべきです。
違和感があるときは、自己判断の前に耳鼻科で相談することをおすすめいたします。
プール・海・シャワー別のシチュエーション注意点
プール・海
水質の影響もあり、外耳炎のリスクが高まります
泳いだ後に違和感が続く場合は、軽くセルフケアをしたうえで、早めの受診も検討を
シャワー・入浴
シャンプーや石けん成分が入ると刺激になることがあります
違和感が長引く場合、成分による炎症の可能性も考えられます
耳に水が入りやすい人ができる予防策
入浴・シャワー時にできる工夫
シャワーを頭頂部から当て、耳の方向へ強く噴射しない
顔を洗うときに、耳の穴に直接お湯を入れない
子どもの場合、入浴時に軽く耳を押さえてあげる
プール・海で使える耳栓・スイムキャップ活用法
医療系サイトでも、耳栓やスイムキャップを使った予防が推奨されています。
自分の耳のサイズに合った耳栓を選ぶ
子どもには、外れにくいタイプの耳栓+耳までしっかり覆うスイムキャップを併用
耳栓の装着・取り外しも、決して乱暴に行わず、ゆっくりと行ってください。
耳かきのしすぎは逆にリスクになることも
耳垢は本来、耳を保護する役割も担っています。
耳かきをしすぎて外耳道を傷つけたり、耳垢を奥に押し込んでしまうと、水が入りやすくなったり、外耳炎を起こしやすくなったりすることがあります。
耳かきは月1〜2回程度が目安
痒みや違和感が強い場合は自己処置を控え、耳鼻科で耳垢取りをしてもらう
といった対応が安全です。