毎日なんとなく使っている「揚げ物用の油」や「炒め物用の油」。スーパーの棚には米油やキャノーラ油が並んでいるものの、「結局どっちが体に良いのか」「家族にはどれを選べば安心なのか」と迷われてはいないでしょうか。SNSでは「米油がいい」「キャノーラ油はやめたほうがいい」といった極端な情報も多く、何を信じればよいのか判断が難しくなっています。
本記事では、米油とキャノーラ油を感覚やイメージではなく、脂肪酸組成・健康への影響・価格・使い勝手といった客観的な切り口から比較し、「ご自身とご家族にとってどちらが最適か」を整理していただけるよう解説いたします。
どちらか一方を悪者にするのではなく、「体質・目的・予算に応じてどう選び分ければよいか」という実践的な視点でまとめていますので、読み終えるころには、明日から自信を持って選べる“わが家の定番オイル”のイメージがはっきりしているはずです。
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米油とキャノーラ油は、どちらも「上手に使えば健康の味方になる」油です。
健康志向・国産志向が強ければ米油、脂肪酸バランスとコスパを重視するならキャノーラ油、と考えると整理しやすくなります。
何より重要なのは、「油の種類」よりも「全体の食事バランス」と「油の使い過ぎを避けること」です。
ご自身とご家族の体質・ライフスタイル・予算に合わせて、米油とキャノーラ油を対立させるのではなく、上手に使い分ける視点を持っていただければ十分です。
米油とキャノーラ油、結論「どっちがいい?」
まず押さえたい前提:どちらも「悪者」ではない
最初にお伝えしたいのは、米油もキャノーラ油も、栄養学的には「基本的に良質な植物油」に分類されるという点です。
どちらも不飽和脂肪酸(とくにオレイン酸など)を多く含み、飽和脂肪酸は少なめで、適量を守れば心血管疾患リスクを下げる方向に働く可能性が示されています。
一方で、どの油も1gあたり約9kcalと高エネルギーであることに変わりはありません。
健康にとって重要なのは「どの油をどれだけ・どう使うか」であり、「この油ならいくら使っても太らない/病気にならない」というものは存在しないと考えてください。
結論:体質・目的・予算で「最適な油」が変わる
この記事では、次のように整理します。
健康機能性・国産志向を重視する人
→ 米油 がやや有利
(γ-オリザノールやビタミンEなど米由来の機能性成分が特徴)脂肪酸バランス(オメガ3も少し欲しい)・コスパ・入手性を重視する人
→ キャノーラ油 がやや有利
(オレイン酸が多く、αリノレン酸(オメガ3)も含み、価格が比較的安い)揚げ物が多い家庭・お弁当で冷めてもおいしく食べたい人
→ 米油 か 高オレイン酸タイプのキャノーラ油 が候補
(いずれも加熱に比較的強く、酸化・劣化しにくいとされる)「とにかく悪い油を避けたい」と極端に心配している人
→ まずは「油の総量」と「加工食品のとり過ぎ」を見直すのが優先で、米油 vs キャノーラ油の差はその次の問題です。
サクッと分かる比較表(米油 vs キャノーラ油)
(※数値は代表的な精製油をベースにした一般的なイメージであり、商品により異なります)
米油
特徴成分:γ-オリザノール、トコトリエノール、ビタミンE
脂肪酸:オレイン酸+リノール酸が中心(オメガ9・オメガ6)
健康:中性脂肪・総コレステロール低下機能をうたう機能性表示食品あり
料理:揚げ物向き、風味おだやか、国産志向にマッチ
価格:キャノーラ油よりやや高めのことが多い
キャノーラ油
特徴成分:オレイン酸が多く、リノール酸・αリノレン酸(オメガ3)も含む
脂肪酸:オメガ9+オメガ6+オメガ3のバランスが良いとされる
健康:LDLコレステロール低下などを示す研究多数
料理:クセが少なく幅広く使える。高オレイン酸タイプは揚げ物にも良好
価格:安価で入手しやすく、サラダ油の主原料としても一般的
米油とキャノーラ油の基礎知識
原料と製造方法の違い
米油
原料:玄米を精米する際に出る「米ぬか」や胚芽
特徴:日本の米文化に根ざした国産油であり、米由来の機能性成分を含むのが特徴です。
キャノーラ油
原料:菜種(ナタネ)のうち、エルカ酸やグルコシノレートを低く抑えるよう品種改良した「キャノーラ種」
特徴:海外(カナダなど)での生産が中心で、精製された油が輸入され、日本でボトリングされるケースが多いです。
製造方法としては、どちらも「圧搾法」や「溶剤抽出法」などが用いられます。風味や不純物除去のために精製工程(脱ガム・脱酸・脱色・脱臭など)を経るのが一般的で、近年は「圧搾一番搾り」「低温圧搾」など製法にこだわった商品も増えています。
脂肪酸組成とカロリー:共通点と違い
カロリーはどちらも約9kcal/gで、エネルギー量の差はほぼありません。
脂肪酸組成のイメージ
米油:オレイン酸(オメガ9)+リノール酸(オメガ6)が中心
キャノーラ油:オレイン酸が約60〜65%以上と多く、リノール酸・αリノレン酸(オメガ3)も含む
いずれも不飽和脂肪酸が主で、飽和脂肪酸は少ないため、バターやラードなどと比べれば、血中コレステロールへの影響は「好ましい側」に傾きやすいと考えられています。
米油の特徴(γ-オリザノール・ビタミンEなど)
米油には、玄米由来のγ-オリザノールやトコトリエノールなど、他の植物油にはあまり含まれない成分が多く含まれます。これらは以下のような機能が報告されています。
脂質代謝の改善(中性脂肪・総コレステロールの低下)
抗酸化作用(体や油自体の酸化を抑える)
自律神経の調節などへの作用
日本では、γ-オリザノールを関与成分とする米油が機能性表示食品として販売されており、「血中の中性脂肪や総コレステロールを低下させる機能」をうたう製品もあります。
キャノーラ油の特徴(オレイン酸・ω3バランスなど)
キャノーラ油は、以下の点が評価されています。
オレイン酸(オメガ9)が多く、悪玉コレステロール(LDL)を下げる方向に働きやすい
αリノレン酸(オメガ3)も数%含み、現代人に不足しがちな必須脂肪酸の補給源になる
飽和脂肪酸が7%前後と少ない
臨床研究では、キャノーラ油に切り替えることで血中コレステロールや中性脂肪が改善したという報告もあり、「コスパが良く、脂肪酸プロファイルも悪くない日常使いの油」と位置づけられています。
健康面から見る「どっちがいい?」
コレステロール・中性脂肪への影響
米油・キャノーラ油ともに、飽和脂肪酸の多い油(ラード・バターなど)から置き換えることで、LDLコレステロールや中性脂肪の改善につながる可能性が示されています。
米油:
γ-オリザノールを含む米油の摂取で、中性脂肪・総コレステロールが低下したとする報告があります。
キャノーラ油:
LDLコレステロール低下や、全脂質プロファイルの改善を示す研究が複数存在します。
ポイント
「どちらかだけが優れている」というより、
飽和脂肪酸の多い脂(バター・ラードなど)を減らす
適量の米油・キャノーラ油など不飽和脂肪酸の多い油に置き換える
この組み合わせが重要です。
ダイエット中ならどちらを選ぶべきか
ダイエットの観点では、米油・キャノーラ油の間でカロリー差はほぼありません。どちらを使っても、量を使い過ぎれば体重増加につながります。
ダイエット中に重視すべきポイント
「油の種類」よりも「油の総量」
揚げ物の頻度を抑え、炒め物でも油を控えめに
野菜・魚・豆類を増やし、全体のバランスを整える
そのうえで、あえて選ぶなら、
風味が軽く、少量でも調理しやすい油(米油・キャノーラ油どちらでも可)を使い、
計量スプーンで「大さじ1杯=約12〜14g」を意識する
といった実践が有効です。
子ども・高齢者・持病がある人が注意したいポイント
子ども・高齢者ともに、油の摂り過ぎによるエネルギー過多が最も大きな問題です。
持病(脂質異常症・糖尿病・心疾患など)がある場合は、医師・管理栄養士の指示が最優先ですが、多くの場合
飽和脂肪酸の多い油脂を減らし、
不飽和脂肪酸の多い植物油を適量に保つ
ことが推奨されます。
米油・キャノーラ油のどちらかが「危険」というよりも、揚げ物の頻度・一回に使う量・全体の食事内容を見直すことが優先度が高いと考えてください。
「シードオイルは危険?」情報との付き合い方
近年、SNSなどで「シードオイル(種実油)は毒」「キャノーラ油は危険」などの極端な主張が話題になっていますが、最新のエビデンスでは、以下のように評価されています。
種実油に多いリノール酸(オメガ6)は、適量であれば心血管リスク低下や炎症マーカーの低下と関連する研究も多い。
問題になりやすいのは、
超加工食品に大量に含まれる油の摂り過ぎ
油の総量の過剰摂取
揚げ油の繰り返し使用による劣化物質の増加
自宅で、適量の精製植物油(米油・キャノーラ油など)を使って調理すること自体を「毒」とする根拠は乏しい。
したがって、「米油なら安全・キャノーラ油は毒」といった二元論ではなく、全体の食事パターンと油の使い方に目を向けることが合理的です。
料理・使い勝手から見る「どっちがいい?」
揚げ物に向いているのは?(煙点・酸化しにくさ)
米油
比較的高い煙点・酸化安定性があり、揚げ物で泡立ちにくく、からっと仕上がると評価されることが多い。
キャノーラ油
一般的なキャノーラ油も揚げ物に向くが、特に「高オレイン酸タイプ」は酸化しにくく、揚げ油としての性能が高いとされる。
揚げ物が多い家庭では、
米油または高オレイン酸キャノーラ油を選び、
何度も揚げ直しに使わず、早めの交換を心がける
ことがポイントです。
炒め物・普段使いのメイン油として
炒め物・ソテーなどの加熱調理は、どちらの油でも問題なく対応できます。
風味の違い
米油:ややコクと重みがありつつも、香りは強すぎず、和食との相性が良い
キャノーラ油:ほぼ無味無臭に近く、素材の味を邪魔しない
普段使いのメイン油としては、「好みの風味」「価格」「近所での買いやすさ」で選んで問題ありません。
サラダ・ドレッシングなど生で使う場合
キャノーラ油は風味が軽く、生で使ってもクセが出にくいため、ドレッシングのベースとして使いやすい油です。
米油は、まろやかなコクが欲しい和風ドレッシングやマリネに向きます。
ただし、生で使うオイルの候補としては、オリーブ油やえごま油なども選択肢になり得るため、「サラダ用の香りの強い油」と「調理用の米油・キャノーラ油」を使い分ける家庭も多いです。
風味・におい・仕上がりの違い
米油
揚げ物:衣がややカラッとしやすく、冷めてもベタつきにくいと感じる人が多い
炒め物:若干のコクが加わり、和食のおかずと馴染みやすい
キャノーラ油
揚げ物:非常に軽い仕上がりで、素材の味を前面に出したいときに向く
炒め物:クセが少なく、どんな料理にも合わせやすい
実際には、家庭での火力・調理時間・衣の厚さなどの要素も大きく影響するため、「揚げ物の食感」だけで優劣を決めるのは難しい点も押さえておいてください。
価格・入手性・価値観から選ぶ
価格とコスパの違い
キャノーラ油
大容量ボトルでも安価なことが多く、外食産業や総菜にも幅広く使われる代表的な油です。
米油
一般的なキャノーラ油と比べると、同じ容量でやや高めの価格帯になることが多いものの、ここ数年でスーパーでの取り扱いが増え、価格も徐々にこなれてきています。
家計重視で揚げ物が多い家庭では、
キャノーラ油(必要に応じて、部分的に米油を併用)
という組み合わせも現実的です。
国産志向・サステナビリティの観点
米油は、日本国内で生産される米ぬかを原料とする「国産油」として、地産地消・フードロス削減の観点からも注目されています。
キャノーラ油は、原料は主に海外産ですが、大規模生産により安定供給・価格の安定という利点があります。
「なるべく国産の原料を使いたい」という価値観が強い方にとっては、米油は魅力的な選択肢になり得ます。
ラベルの読み方(製造方法・原材料・機能性表示)
油を選ぶ際は、ラベルの次のポイントを確認してください。
原材料名
「食用こめ油」「食用なたね油」「キャノーラ油」など、何から作られているかを確認
製造方法・精製方法
「圧搾」「一番搾り」などが記載されている場合もあります
機能性表示食品かどうか(米油の場合)
γ-オリザノールなどを関与成分とする表示があれば、血中脂質改善機能の表示内容を確認
保存方法・賞味期限
高温多湿を避け、開封後はなるべく早めに使い切る
ケース別:あなたには米油・キャノーラ油どっちがいい?
コレステロール・中性脂肪が気になる人
食生活全体の見直し(揚げ物・脂質の総量を減らす)が最優先です。
そのうえで、
米油:中性脂肪・総コレステロール低下機能をうたう製品がある
キャノーラ油:LDL低下に寄与した研究が多い
ため、どちらか一方を「悪」とする必要はなく、総脂質量を抑えつつ、どちらか(あるいは両方)を適量に使うスタイルが現実的です。
揚げ物が多い・お弁当づくりが多い家庭
冷めてもベタつきにくく、衣がカラッとしやすい点を重視するなら米油が候補
大量に使う揚げ物でコスパを重視するなら**キャノーラ油(高オレイン酸タイプがあればなお良い)**も現実的
「週末は米油でとんかつ、平日はキャノーラ油で軽い炒め物」というように、併用して使い分けるのも一つの答えです。
家計重視でコスパも大切にしたい人
日常のほとんどの調理をキャノーラ油でまかない、
こだわりたい料理(天ぷら・特別な揚げ物)だけ米油を使う、
といったメリハリ使用がおすすめです。
国産・機能性成分を重視する人
国産原料+米由来の機能性成分(γ-オリザノールなど)を重視する場合、米油が最有力候補です。
機能性表示食品の米油であれば、1日の摂取目安量と機能性の内容を確認しながら利用できます。
今日からできる「油の賢い使い方」チェックリスト
1日の適量の目安と減らし方
目安:1日あたり大さじ1〜2杯程度(調理に使う油+ドレッシングなどを合計)を意識
減らし方の例:
フライパンはテフロン加工を使い、油は小さじ1杯から試す
揚げ物の回数を週1〜2回までに抑える
ドレッシングは市販品を控え、酢・しょうゆ・少量の油で自家製にする
他の油との組み合わせ方(オリーブ油・えごま油など)
米油・キャノーラ油:加熱調理のメイン
オリーブ油:風味付け・生食用
えごま油・アマニ油:オメガ3補給用として、生で少量かける
このように、用途別に油を使い分けることで、栄養バランスとおいしさの両立がしやすくなります。
買い替え・保存のコツ
大容量ボトルを長期間放置せず、1〜2か月で使い切れるサイズを選ぶ
直射日光・高温を避け、暗く涼しい場所で保管
開封後はキャップをしっかり締め、におい移りに注意
酸化した油は、風味が落ちるだけでなく、体にとって望ましくない成分が増える可能性もあるため、早めの使い切りと適切な保存が大切です。