最初に、この記事の要点をお伝えします。
化膿性汗腺炎のしこりやおできは、基本的に自分で潰したり、針を刺して膿を出すことはおすすめできません。
一時的に楽になったように見えても、炎症が広がったり、瘻孔(トンネル状の穴)や硬い傷跡が残る原因になることがあります。
海外の患者向け情報でも、自分で排膿することは感染拡大のリスクがあるため避けるよう明記されています。
自宅でできることは「清潔を保ち、摩擦を減らす」といった悪化を防ぐケアにとどめ、治療そのものは医師に任せることが基本です。
痛みが強い、赤みや腫れが広がる、発熱がある、長期間治らない・再発を繰り返す場合は、早めに皮膚科や形成外科などの医療機関を受診してください。
「今すぐこのしこりをなんとかしたい」「病院に行くのが恥ずかしい」というお気持ちは当然です。
この記事では、その気持ちに寄り添いながら、自己処置のリスクと、安全な対処法・受診の目安を整理してお伝えします。
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化膿性汗腺炎とは?ニキビや粉瘤との違い
化膿性汗腺炎の特徴と原因
化膿性汗腺炎(かのうせいかんせんえん:Hidradenitis Suppurativa, HS)は、
慢性的に
皮膚の深い部分に
痛みを伴うしこり(結節)や膿のたまったおでき(膿瘍)
トンネル状の穴(瘻孔)や硬い傷跡(瘢痕)
などができる、慢性炎症性の皮膚疾患です。
名前に「化膿」「汗腺炎」と付きますが、近年の研究では、汗腺の感染症ではなく、毛穴(毛包)を中心とした自己炎症性疾患と考えられています。
好発部位と代表的な症状
化膿性汗腺炎が起こりやすい部位は、次のように「皮膚と皮膚がこすれやすい場所」です。
脇の下
鼠径部(足のつけ根)
会陰部・陰部まわり
お尻(臀部)
乳房の下や間
症状の特徴として、
皮膚の下にゴリゴリとしたしこりができて痛い
そこが腫れて、中に膿がたまる
破れて膿が出ると、においが気になる
治ったと思っても、同じ場所や近くに何度も再発する
といった経過をたどることが多いです。
ニキビや単純な「おでき」と違い、深いところで炎症が続き、長期的には傷跡やトンネル状の穴を残しやすいのが大きな違いです。
なぜ「自分で膿を出す」と危険なのか
一時的に楽になっても根本治療にならない理由
膿がたまってパンパンに張っていると、「ここに針を刺して膿さえ出せば楽になるのに」と感じるのは自然なことです。実際、膿が出た直後は痛みが和らぐこともあります。
しかし、化膿性汗腺炎では、
炎症の原因は皮膚の深い部分やトンネル状の病変にある
目に見える膿だけを外に出しても、病変自体は残ってしまう
そのため、根本的な治療にならず、再発を繰り返しやすい
という特徴があります。
感染拡大・瘻孔・瘢痕・におい悪化などのリスク
自分で針やピンを使って刺したり、強く潰したりすると、次のようなリスクがあります。
細菌が周囲に広がり、腫れや赤みの範囲が拡大する
皮膚の深い部分が傷ついて、瘻孔(トンネル)や硬い傷跡が残りやすくなる
不適切な処置で傷口が大きくなり、においが強くなったり、滲出液が増えたりする
まれではありますが、細菌感染が重くなると全身状態が悪化する可能性もあります
とくに免疫力が落ちている方、持病(糖尿病など)のある方では、感染が重くなりやすいため、自己処置は避けるべきです。
まれだが注意したい皮膚がんなどの合併症
長年、同じ部位で炎症と膿を繰り返していると、ごくまれに**有棘細胞癌(皮膚がんの一種)**が生じることがあると報告されています。
「何度も同じところにしこりができる」「傷が治りにくい・形が変わってきた」などの場合は、自己判断せず必ず医師に相談することが大切です。
海外の患者向け情報でも自己排膿NG
海外の医療情報サイトでも、化膿性汗腺炎のしこりについて、患者さんが自分で潰したり排膿したりしないよう強く注意喚起しています。これは、日本でも同様に重要なポイントと考えられます。
自宅でやってはいけないこと・やってよいこと
絶対に避けたい自己処置
次のような行為は、基本的に避けてください。
安全ピンや注射針、裁縫針などで自分で刺して膿を出す
指や爪で強く押しつぶす、しぼる
切開手術の動画や記事を真似して、自分で切り開こうとする
消毒液を大量に使って強くこする など
「少しなら大丈夫」「いつもやっているから」と思っていても、一度の自己処置が大きな悪化につながることもあります。
病院受診までの一時的なセルフケア
とはいえ、すぐに受診できない場合もあると思います。その際に、比較的安全と考えられる「悪化を防ぐための工夫」をいくつかご紹介します。
1. 清潔を保つ(やさしい洗浄)
毎日、シャワーで汗や汚れを洗い流す
ボディソープは刺激の少ないものを選び、ゴシゴシこすらず、手のひらでやさしく洗う
タオルで拭くときも、押さえるように水分を取る
2. 摩擦・圧迫を減らす
きつい下着やジーンズなど、患部を締め付ける服装は避ける
縫い目やゴムが当たらないよう工夫する
長時間同じ姿勢にならないよう、ときどき体勢を変える
3. 市販薬に過度な期待をしない
インターネット上では、さまざまな市販薬やサプリが紹介されていますが、化膿性汗腺炎を市販薬だけで治すことは難しいとされています。
痛み止め(解熱鎮痛薬)を一時的に使用することはあっても、長期的な自己判断での服用は避け、できるだけ早く医師に相談するようにしてください。
どのタイミングで病院に行くべきか
受診の目安チェックリスト
次のような場合は、できるだけ早く皮膚科や形成外科を受診することをおすすめします。
強い痛みで日常生活(歩く・座る・眠るなど)に支障が出ている
赤みや腫れが広がってきている
発熱・寒気・体のだるさなど、全身症状がある
同じ場所・近くに3回以上繰り返している
膿が出たり引いたりを何カ月も繰り返している
傷跡が硬く盛り上がってきた、穴があいている感じがする
自分で潰してしまい、悪化してきた・不安が強い
一つでも当てはまる場合は、「行くべきか迷う」段階は過ぎていると考え、受診を検討してください。
何科を受診する?皮膚科・形成外科・HS専門外来
日本では、化膿性汗腺炎は主に
皮膚科
形成外科
で診療されています。地域によっては、化膿性汗腺炎専門外来を設けている病院もあります。
どこに行くべきか迷う場合は、まずは皮膚科を受診し、必要に応じて形成外科・専門施設を紹介してもらう流れが一般的です。
はじめての診察で伝えておきたいこと
受診の際には、次のような点をメモして持参すると、診察がスムーズです。
最初に症状が出た時期
今までに似た症状を繰り返した回数
症状が出る部位(脇・鼠径・お尻など)
自分や家族に、似た症状があるかどうか
既往歴や飲んでいる薬
妊娠中・授乳中であるかどうか など
【知恵袋の疑問まとめ】Yahoo!知恵袋でよくある質問に回答
ここからは、「知恵袋」によく見られる質問に近い形で、よくある疑問にお答えします。
※あくまで一般的な解説であり、個別の診断・治療は必ず医師にご相談ください。
Q. 痛くて我慢できないとき、潰したらダメ?
A. 基本的には、潰す・刺すといった自己処置は避けてください。
一時的に楽になっても、炎症が広がったり傷跡が残るリスクがあります。
「今すぐなんとかしたい」ほど痛い場合こそ、医療機関での切開・排膿を検討する段階と考えてください。
痛みがつらい場合は、市販の痛み止めを一時的に使用することはありえますが、自己判断での長期使用は避け、早めに受診してください。
Q. 仕事が忙しくて通院できません。放置するとどうなりますか?
A. 症状が軽いうちは大きなトラブルにならないこともありますが、放置すると次のようなリスクがあります。
しこりや膿瘍が大きくなり、痛みやにおいが強くなる
炎症が長く続くことで、瘢痕や瘻孔が残り、治療が難しくなる
ごくまれに、長年の炎症部位から皮膚がんが発生することがある
「忙しいからこそ、早めに小さい段階で治療した方が、結果的に負担が少なくて済む」ケースも多いです。
Q. 手術はどれくらい痛い?跡は残りますか?
A. 切開・手術の痛みや傷跡は、範囲や部位、個人差によって大きく異なります。
切開・排膿は、局所麻酔をしてから行うため、処置中の痛みはある程度コントロールできます。
ただし、術後数日は痛みや違和感が残ることもあります。
傷跡は、一般的に程度の差はあっても残ることが多いですが、長年の自己処置でできた傷跡より、きれいに治る可能性が高い場合もあります。
不安な点は、事前に医師に率直に伝え、傷跡や術後の生活についても説明を受けたうえで納得して治療を選ぶことが大切です。
Q. 匂いがつらくて人前に出るのが怖いです。
A. 化膿性汗腺炎に伴うにおいは、多くの患者さんが悩まれる点です。
においの原因は、膿や滲出液と皮膚常在菌などが混じり合うことによるとされています。
自己処置で傷口を増やすと、においが余計に気になることもあります。
医療機関で適切な治療を行い、膿の量や炎症を抑えることが、におい対策の第一歩になります。
一人で抱え込まず、医師や看護師に「においがつらい」と正直に相談することも大切です。
日常生活でできる予防と付き合い方
体重・喫煙・服装など生活習慣との関係
研究では、化膿性汗腺炎と
肥満
喫煙
摩擦・圧迫
などとの関連が指摘されています。
体重管理(急激なダイエットではなく、無理のない生活改善)
禁煙・減煙の検討
こすれにくい服装選び
などは、長期的な悪化予防に役立つ可能性があると考えられています。
メンタル面のつらさとの付き合い方
化膿性汗腺炎は、痛みだけでなく、
見た目やにおいへのコンプレックス
人間関係や仕事への影響
将来への不安
など、心の負担も大きい病気です。
つらい気持ちを一人で抱えず、
信頼できる家族や友人に打ち明ける
医師にメンタル面のつらさも含めて相談する
患者会やオンラインコミュニティなど、同じ悩みを持つ人の情報に触れる
といった方法も、支えになることがあります。