犬の和漢・薬膳フードは「体に良さそうだから興味はあるけれど、本当に大丈夫なのか」「うちの子に合わなかったらどうしよう」と不安を感じておられるのではないでしょうか。
実際、和漢・薬膳ドッグフードや手作り薬膳によって体調を崩したケースもあれば、うまく活用して体調管理に役立てているケースもあります。
本記事では、ペット栄養の観点から、和漢・薬膳フードが「危ない」と言われる理由と、安全に取り入れるためのポイント、「やめた方がよい」ケースまで整理して解説いたします。
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薬膳は治療薬ではなく、あくまで健康サポートであることを理解する
持病・療法食・アレルギーがある場合は必ず獣医師に相談してから始める
新しいフードや食材は少量から、1つずつ導入し、体調の変化をよく観察する
和漢・薬膳フードの導入を検討するときに確認していただきたい項目をまとめます。
目的(何を良くしたいのか)が曖昧なまま「なんとなく良さそう」で選んでいないか
愛犬の年齢・持病・現在のフードを、主治医と共有したうえで相談したか
原材料表を確認し、危険な食材や過度な添加物が含まれていないか
いきなり全量切り替えるのではなく、少量トッピングから試す計画になっているか
体調の変化をメモし、異変があればすぐに中止して受診するつもりがあるか
犬の和漢・薬膳フードとは?基本の考え方
和漢・薬膳の意味と、犬用フードでの位置づけ
「和漢」「薬膳」という言葉には、東洋医学の考え方が背景にあります。
薬膳とは本来、体質や季節、症状に合わせて食材を組み合わせることで、からだのバランスを整え、健康をサポートする食事法です。病気を直接「治す薬」ではなく、あくまで健康維持や症状緩和を目的としたものとされています。
犬用の和漢・薬膳フードは、肉類をベースに穀物や和漢植物(ハーブ・生薬に近い素材)を組み合わせたレシピが一般的です。臓器ごとのケアや体質別サポートをコンセプトにした商品も増えています。
人の漢方・薬膳との違いと、誤解されやすいポイント
人の薬膳や漢方の知識をそのまま犬に当てはめるのは危険です。
人には問題のない食材でも、犬には中毒の原因になるものがある
消化・代謝の仕組みが異なるため、適量や安全ラインが大きく違う
体重が小さい分、少量の過剰や偏りが体調に大きく影響しやすい
特に、ネギ類やブドウ、キシリトール、香辛料、生の豆類、マカダミアナッツなどは犬に与えてはいけない代表的な食材として挙げられています。
人用の薬膳レシピを流用する場合、これらが含まれないかを厳密に確認する必要があります。
療法食・一般食との違いと役割の整理
ドッグフードは大きく分けると、以下のように考えられます。
一般食(総合栄養食):
毎日の主食として、必要な栄養素がバランス良く含まれているもの。療法食:
腎臓病や心臓病など特定の疾患に合わせて、あえて栄養バランスを偏らせた設計のフード。その他の臓器への負担が出る場合もあり、獣医師の指導のもとで与えることが前提です。和漢・薬膳フード:
基本は一般食または補助食品に分類されますが、和漢植物や特定食材を加えることで体質サポートをうたうもの。
和漢・薬膳フードは、療法食の代わりではありません。既に療法食が処方されている場合は、自己判断で切り替えたり併用したりせず、必ず主治医に相談してください。
「犬 和漢/薬膳 危ない」と言われる主な理由
栄養バランスが偏り、他の臓器に負担がかかるリスク
療法食は特定の臓器を守るため、栄養バランスを意図的に変えている「アンバランスなレシピ」であると指摘されています。
同じように、「○○に良い」とされる和漢・薬膳フードや手作り食も、特定の栄養素に偏りが出ると、別の臓器に負担をかける可能性があります。
例としては、以下のようなケースが考えられます。
たんぱく質が多すぎると、腎臓や肝臓、心臓への負担が増える
ミネラルバランスが崩れると、結石や心臓病のリスクに影響する
脂質過多は肥満や膵炎の誘因になり得る
「体に良さそうな素材だから」と一部の食材を増やしすぎることが、結果として別の不調を招くことがある、という点が「危ない」と言われる大きな理由です。
穀物や和漢植物によるアレルギー・消化不良のリスク
市販の薬膳ドッグフードの中には、穀物を多く使用する傾向があると指摘している情報源もあります。体質によっては、穀物の量や種類が原因でアレルギー症状が出る可能性があります。
また、和漢植物やハーブ類は少量で作用が出やすい素材も多く、消化器の弱い犬では下痢や嘔吐などの消化不良が起こることがあります。
特に、以下のような犬では注意が必要です。
食物アレルギー歴がある
皮膚トラブルや慢性的な下痢・軟便が続いている
フードを変えるたびに体調を崩しやすい
こうした場合は、初めての薬膳フードをいきなり主食として与えるのではなく、「ごく少量から」「単一製品から」始めて反応を確認することが重要です。
持病や投薬中の犬で、治療を妨げる可能性
薬膳はあくまで健康サポートの一手段であり、病気そのものを治すものではありません。持病や体質に合わない食材を使うと、副作用が出たり、現在行っている治療の妨げになる可能性があると注意喚起されています。
特に注意したいのは次のようなケースです。
腎臓病・肝臓病・心臓病などで療法食や薬を使用している
甲状腺疾患やホルモン系疾患で治療中
抗がん剤やステロイドなど、作用の強い薬を服用している
自己判断で薬膳フードに切り替えたり、サプリ感覚で和漢素材を追加したりすると、薬の効き方や臓器への負担が変わる場合があります。必ず主治医に相談し、「この原材料は治療に影響しませんか?」と具体的に確認してください。
人の薬膳・漢方知識をそのまま犬に当てはめる危険性
人用の薬膳本やインターネット情報を参考に、「人に良いから犬にも良いはず」と考えて与えてしまうのは大きなリスクです。
犬にはNGな食材が混じりやすい(ネギ類、香辛料、アルコールなど)
塩分や糖分が人向け基準で多く含まれている
体重1〜5kg程度の小型犬では、わずかな過剰が大きな影響を与えやすい
「人用レシピを流用しない」「犬用に安全性が確認されたレシピだけを使う」という基本ルールを守ることが、安全性を確保するうえで非常に重要です。
犬に薬膳フードを与える前に確認すべきこと
まず押さえたい「薬膳は治療薬ではない」という前提
薬膳は、病気を治す「薬」ではなく、あくまで日常の健康管理の一環として取り入れるべきものとされています。
そのため、
病気の治療や薬をやめる代わりに薬膳に切り替える
医師の指示よりも薬膳情報を優先する
といった使い方は誤りです。
薬膳は「+αのサポート」であり、「−(マイナス)をゼロに戻す治療」とは目的が異なる、という前提をしっかり押さえておきましょう。
獣医師に必ず相談すべきケース(シニア犬・持病持ちなど)
以下のような場合は、薬膳フードを始める前に必ず主治医の獣医師に相談してください。
7歳以上のシニア犬
腎臓・肝臓・心臓・膵臓などの持病がある
てんかんやホルモン疾患など、継続的な治療を受けている
現在、療法食を与えている
相談の際には、
検討しているフード名や原材料表
1日に与えようとしている量
目的(食欲アップ、体重管理、消化サポートなど)
を持参し、「この子の病気や薬との相性で問題がないか」「療法食との併用が可能か」を確認すると安心です。
禁止・注意すべき代表的な食材と調味料
薬膳レシピや和漢食材の中には、犬にとって危険なものが含まれる場合があります。代表例として、次のような食材は犬には与えないよう注意が必要とされています。
ネギ類(玉ねぎ、長ねぎ、にんにく、ニラなど)
ブドウ・レーズン・グレープシードオイル
キシリトール(ガム・お菓子など)
香辛料(唐辛子、胡椒、カレー粉など)
生の豆類の一部
マカダミアナッツ
また、塩分・糖分・脂質が高い調味料(醤油、砂糖、みりん、油類など)も、人用の味付けのままでは犬には過剰になりやすいため、基本的に使用しない前提で考えましょう。
和漢・薬膳フードを安全に取り入れるためのポイント
市販の薬膳ドッグフードを選ぶときのチェックリスト
市販フードを選ぶ際は、以下のポイントを確認するとリスクを減らせます。
総合栄養食か、副食・トッピング用か
主食にできるのか、あくまでトッピング用なのかをパッケージで確認します。
主原料が何か
肉類が主原料か、穀物の比率が極端に高くないかをチェックします。穀物アレルギーの既往がある場合は特に注意が必要です。
和漢・薬膳素材の種類と量
たくさん入っているほど良いとは限りません。少数の素材を適量使っている方が安心な場合もあります。
添加物の有無と内容
保存料・着色料などの添加物が必要以上に多くないかを確認します。
メーカーの情報開示の度合い
原材料の詳細や栄養成分、製造ロット管理、問い合わせ窓口などの情報が明示されているかも信頼性の指標になります。
初めて与えるときの量と切り替えステップ
初めて薬膳フードを与えるときは、次のようなステップをおすすめします。
最初はごく少量から
いつものフードに、体重1kgあたりティースプーン1杯程度をトッピングする程度から始めます。
3〜7日間は体調観察期間とする
便の状態、食欲、皮膚の様子などを毎日観察し、変化があれば中止します。
問題なければ徐々に割合を増やす
1〜2週間かけて、最終的な目標量(主食にするのか、トッピングでとどめるのか)まで少しずつ増やします。
複数製品を同時に変えない
1つずつ試すことで、もし不調が出ても原因を特定しやすくなります。
手作り薬膳ごはんの基本ルールと失敗パターン
手作り薬膳は自由度が高い反面、次のような失敗が起こりやすい点に注意が必要です。
肉や主食の量に比べて薬膳素材を入れすぎる
人用レシピをそのまま犬に流用する
カルシウムや微量ミネラルが不足し、長期的に骨・歯・内臓に負担をかける
基本ルールとしては、
安全が確認された犬用レシピをベースにする
新しい食材は1種類ずつ、少量から試す
長期的に手作りを主食にする場合は、必ず栄養バランスについて獣医師やペット栄養士に相談する
といった点を押さえておくとよいでしょう。
和漢・薬膳フードを「やめた方がいい」ケース
すぐに中止して受診した方がよいサイン
薬膳フードや手作り薬膳を始めてから、次のような症状が見られた場合は中止し、できるだけ早く獣医師に相談してください。
繰り返す下痢・嘔吐、黒色便や血便
急な食欲不振や極端な多飲多尿
皮膚の強いかゆみ、発疹、赤み、脱毛
ぐったりして元気がない、呼吸が荒い
「たまたま体調が悪いだけ」と自己判断せず、「フードを変えてからの変化」として必ず伝えるようにしましょう。
体質・ライフステージ的に向かない犬の特徴
以下のような犬は、和漢・薬膳フードをメインにすることは避け、主治医と相談しながら慎重に検討した方がよいケースです。
重度の腎臓病・肝臓病で、厳密な栄養制限が必要な犬
多数の食物アレルギーを持っており、使える食材が限られている犬
パピー期(〜1歳前後)の成長が著しい犬
妊娠・授乳中の犬
こうした場合は、基本的に獣医師が指定したフードを優先し、薬膳素材はサプリメント的に少量のトッピングから始める、あるいは使用しないという選択肢も含めて検討します。
療法食を自己判断でやめてはいけない理由
療法食は、特定の臓器を守るために栄養バランスを細かく設計した「治療の一部」です。自己判断で和漢・薬膳フードに切り替えると、守られていた臓器への負担が一気に増えるリスクがあります。
検査値が一時的に良くなったからといって、すぐに療法食をやめてよいとは限らない
外見上元気に見えても、内臓に負担がかかっていることは検査をしないと分からない
このため、「療法食から和漢・薬膳フードへ切り替えたい」と考えた場合は、必ず主治医に相談のうえ、段階的な切り替えと定期的な血液検査をセットで行うことが重要です。
上手な付き合い方:和漢・薬膳を活かす具体例
日常のフードに少量トッピングする活用法
薬膳フードをフルチェンジするのではなく、「いつものフード+少量トッピング」として取り入れる方法は、安全性と続けやすさのバランスが取りやすい方法です。
例としては、
いつもの総合栄養食に、薬膳フードを10〜20%程度混ぜる
薬膳素材を使ったトッピング(加熱した野菜や肉など)を少量のせる
といった使い方があります。いずれの場合も、体調の変化がないかを観察しながら、少しずつ量を調整していきます。
季節や体調に合わせた食材アレンジ例
薬膳の考え方では、「冷やす食材」「温める食材」など、性質の違いを意識して選びます。犬の場合も、基本的な安全性を守ったうえで、以下のようなアレンジが考えられます
夏場:
きゅうりやトマトなど、体を冷やすと言われる野菜を少量トッピング(必ず加熱し、細かく刻む)
胃腸が弱いとき:
よく煮込んだキャベツやかぼちゃをペースト状にして少量混ぜる
元気がない・食欲が落ち気味なとき:
消化しやすい鶏むね肉をゆでて細かく裂き、少量トッピング
いずれも、「少量から」「加熱して消化しやすい形にする」「体調を見ながら調整する」という基本は共通です。
無理なく続けるための考え方と、他のケアとの組み合わせ
和漢・薬膳はあくまで食事面からのサポートにすぎません。
定期的な健康診断
適切な運動
ストレスの少ない生活環境
といった他のケアと組み合わせてこそ、意味を持ちます。
「すべてを薬膳フードに頼る」のではなく、「全体のケアの中で、食事の工夫としてできることの一つ」として位置づけると、無理なく続けやすくなります。