母の葬儀で、息子として喪主の挨拶を務めることになったとき、多くの方が「何をどう話せばよいのか」「感情があふれてしまわないか」と不安を抱かれます。
悲しみの中で準備の時間も限られるなか、失礼のない言葉選びをしながら、母への感謝の思いもきちんと伝えたい――そのようなお気持ちではないでしょうか。
本記事では、「母の葬儀で喪主を務める息子」という状況に焦点を当て、通夜や告別式、家族葬などの場面別にそのまま使える挨拶の例文と、短時間で自分らしい言葉に整えるためのコツを整理してご紹介いたします。
基本の構成やマナーはもちろん、緊張しやすい方でも安心して読み上げられるよう、ひな形テンプレートや準備のチェックポイントも具体的に解説いたします。
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母の葬儀で息子が喪主として述べる挨拶の役割
挨拶の目的と参列者が聞きたいポイント
母の葬儀で息子が喪主を務める場合、挨拶は「儀式の締めくくり」として大きな役割を担います。
参列者の方々は、立派なスピーチよりも、次のような点を静かに受け止めています。
誰が遺族を代表しているのか(自己紹介)
忙しい中で参列してくれたことへの素直なお礼
故人が生前に受けた支えへの感謝の気持ち
母の人柄が少し感じられるエピソード
これからも家族を見守ってほしいというお願い
完璧な言い回しである必要はありません。基本の流れに沿って、落ち着いて感謝をお伝えすることが何より大切です。
息子として意識したい3つの視点
母の葬儀で息子が話すとき、次の3つを意識すると、言葉がまとめやすくなります。
「母の子ども」としての視点
母への感謝や思い出を、短い言葉で一つだけ伝える。
「家族代表」としての視点
兄弟姉妹や家族を代表してお礼を述べる意識を持つ。
「今後も続くお付き合い」への視点
今後とも変わらぬお付き合いをお願いする一文を添える。
この3つを軸に考えると、必要以上に長くならず、礼を尽くした挨拶になりやすいです。
喪主挨拶の基本構成と長さの目安
基本の流れ:自己紹介から結びまで
多くの葬儀社や冠婚葬祭の専門サイトでも、喪主挨拶の基本構成はおおむね共通しています。
一般的には、次のような流れを押さえれば十分です。
自己紹介・故人との関係
「本日、喪主を務めます長男の○○でございます」など。
参列へのお礼
忙しい中で足を運んでくださったことへの感謝。
生前のご厚情へのお礼
母が日頃お世話になったことへの御礼。
母の人柄・エピソード(簡潔に)
無理に長く話さず、一つの特徴に絞る。
逝去の経緯(必要に応じてごく簡潔に)
闘病や老衰など、触れる程度にとどめる。
今後の支え・お付き合いのお願い
遺族一同へのご指導・ご厚誼をお願いする一文。
結びの挨拶
「本日は誠にありがとうございました」で締める。
この順番を意識しておけば、大きく外れることはありません。
挨拶は何分くらいが適切か
多くの解説では、葬儀・告別式の喪主挨拶は2〜3分程度に収めることが推奨されています。
原稿の文字数としては、おおよそ 600〜800字前後 を目安にすると、ゆっくりめの速度でも収まりやすいです。通夜や家族葬など、規模が小さい場合や時間が限られている場合は、400〜600字程度の短めの挨拶でも十分です。
忌み言葉と避けたい表現
葬儀の場では、縁起が良くないとされる「忌み言葉」を避けるのが一般的なマナーです。
代表的なものは次のとおりです。
「重ね重ね」「たびたび」「再び」など、繰り返しを連想させる言葉
「切れる」「途切れる」「浮かばれない」など、不吉な印象を与える言葉
「死ぬ」「四」「九」など、直接的・不吉とされる言い方
言葉を探すのが難しい場合は、無理に凝った表現を避け、次のような無難な言い回しを選ぶと安心です。
「亡くなりました」
「生涯を終えました」
「見送ることとなりました」
場面別・母の葬儀で息子が話す挨拶例文
※以下の文例は、あくまで一例です。実際にお使いになる際は、名前・日付・年齢・状況などを差し替えてご利用ください。
通夜での挨拶例文(標準版)
本日はご多用のところ、母 ○○ の通夜にご参列いただき、誠にありがとうございます。
喪主を務めます長男の ○○ でございます。母は、生前皆様方より温かいお付き合いとお力添えを賜り、家族一同、心より感謝申し上げております。
今年に入り体調を崩し、しばらく療養しておりましたが、○月○日、家族に見守られながら静かに生涯を終えました。
不器用なところもございましたが、家族や周りの人のことをいつも気にかける人でございました。本日はお忙しい中、こうして母をお見送りいただき、さぞ母も喜んでいることと存じます。
まだ至らぬ点ばかりの家族ではございますが、今後ともお付き合いのほど、よろしくお願い申し上げます。簡単ではございますが、遺族を代表いたしまして、御礼のご挨拶を申し上げます。本日は誠にありがとうございました。
通夜での挨拶例文(短め・家族葬向け)
本日はお忙しい中、母 ○○ の通夜にお集まりいただき、誠にありがとうございます。
喪主の長男 ○○ でございます。ささやかな場ではございますが、母を偲んでいただけますこと、家族一同ありがたく思っております。
本日は生前のお付き合いへの感謝を申し上げますとともに、ゆっくりと母を思い出していただければ幸いです。
簡単ではございますが、まずは御礼のご挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。
告別式・出棺時の挨拶例文(やや長め)
本日はご多用のところ、母 ○○ の葬儀・告別式にご会葬賜り、誠にありがとうございました。
喪主を務めます長男の ○○ でございます。母は、生前より皆様に温かいお心遣いをいただき、今日こうして多くの方に見送っていただけましたことを、何より喜んでいることと存じます。
若い頃から家庭を支え、時には厳しく、しかしいつも私たち子どものことを気にかけてくれる母でございました。
仕事で悩んだときにも、最後まで話を聞き、背中を押してくれたことを思い出します。その母も、○年ほど前から体調を崩し、入退院を繰り返しておりましたが、○月○日に穏やかに最期の時を迎えました。
皆様からの励ましやお支えがあったからこそ、母も安心して過ごすことができたのだと思っております。まだ喪主として至らぬ点も多く、ご迷惑をおかけしたかと存じますが、おかげさまで無事に葬儀・告別式を終えることができました。
今後とも、変わらぬご指導とお力添えを賜りますよう、遺族一同お願い申し上げます。結びとなりますが、本日は最後までお付き合いいただき、誠にありがとうございました。
家族葬・親族中心の小規模葬向け挨拶例文
本日はお忙しい中、母 ○○ を見送るためにお集まりいただき、誠にありがとうございます。
喪主の長男 ○○ でございます。本日は、近しい親族とごく親しい方々にお集まりいただき、ささやかながら母を送らせていただきました。
母は、このように皆様に囲まれて見送られることを、きっと喜んでいることと思います。
これまで母を大切にしてくださったことに、家族一同、心より御礼申し上げます。どうぞこの後も、母の思い出話などをお聞かせいただければ幸いです。
簡単ではございますが、まずは御礼のご挨拶とさせていただきます。本日はありがとうございました。
状況別に使える一文アレンジ集(差し替え用)
状況に応じて使いやすい一文を、差し替え用としてご紹介します。
長期の闘病の末に亡くなった場合
「ここ数年は療養生活が続いておりましたが、多くの方に支えられながら、穏やかに日々を過ごすことができておりました。」
突然のご逝去・急逝の場合
「あまりに急なことで、今もまだ現実として受け止めきれない部分もございますが、皆様にお見送りいただき、母も心強く思っていることと存じます。」
高齢で大往生と受け止めたい場合
「○○歳まで大きな病気もなく過ごし、最後まで自分らしく生涯を全うすることができましたのも、皆様のお支えのおかげと感謝しております。」
看取りの場に家族が間に合った場合
「最期の時を家族で見守ることができましたことは、私たちにとって大きな救いとなっております。」
自分の言葉に直せる「ひな形テンプレート」
一文ごとに役割が分かるテンプレート
以下のテンプレートをベースに、〔 〕部分をご自身の状況に合わせて差し替えてください。
本日はご多用のところ、〔母 ○○〕の〔通夜/葬儀・告別式〕にご参列いただき、誠にありがとうございます。
喪主を務めます〔長男の ○○〕でございます。〔母は、生前より皆様に温かいお付き合いとお力添えを賜り、家族一同、心より感謝申し上げております。〕
〔ここ数年は体調を崩しておりましたが、○月○日、家族に見守られながら静かに生涯を終えました。〕
〔不器用なところもございましたが、家族や周りの方をいつも気にかける人でございました。〕本日はお忙しい中、母のためにこのようにお集まりいただき、〔母もさぞ喜んでいることと存じます〕。
まだ至らぬ点も多い家族ではございますが、今後とも変わらぬご指導とお力添えを賜りますようお願い申し上げます。簡単ではございますが、遺族を代表いたしまして御礼のご挨拶とさせていただきます。本日は誠にありがとうございました。
1〜2文ずつ区切って考えると、差し替えやすくなります。
エピソード部分が長くなりすぎる場合は、「一つだけ」に絞るとまとまりが出ます。
母の人柄・エピソードを自然に盛り込むコツ
母の人柄を伝えるときは、次のようなポイントを意識すると、短くても伝わりやすくなります。
「性格」+「具体的な行動」のセットで表現する
例:「周りに気を配る人で、近所の方の相談にもよく乗っておりました。」
関係の浅い参列者にも分かりやすい内容を選ぶ
ごく身内だけしか知らない細かな事情より、誰にでも伝わる面を選ぶ。
武勇伝・自慢話になりすぎないよう、控えめな表現を心がける
宗教・地域の習慣への配慮ポイント
挨拶の基本的な流れは宗教・地域によって大きくは変わりませんが、次の点には注意が必要です。
神式・キリスト教式など、宗教によって呼び方や表現が異なる場合がある
地域の慣習で、喪主ではなく「親族代表」が挨拶をすることもある
詳しい文言や順番は、担当の葬儀社・寺院・教会に確認しておくと安心です
本記事の文例は、一般的な仏式葬儀を前提とした内容です。宗教・地域の慣習によっては適宜調整してください。
緊張しやすい息子さん向け・挨拶準備のステップ
原稿作成から当日までの準備チェックリスト
まずはテンプレートに沿って原稿を書く
本記事のテンプレートに沿って、名前や状況を書き込む。
声に出して読み、時間を測る
ゆっくり読んで2〜3分以内に収まるか確認する。
言いにくい言葉を言い換える
口に出したときに噛みやすい箇所は、言い換えておく。
印刷した原稿を2部用意する
自分用と、万が一のために葬儀社スタッフ用などを用意。
当日持ち歩くものをまとめておく
原稿、メガネ、ハンカチなどを一つにまとめておく。
読むか暗記か・声の出し方と姿勢のポイント
喪主挨拶は、原稿を見ながら話して問題ありません。多くの葬儀現場でも、原稿を手にして落ち着いて読む方が一般的です。
読むか暗記か
無理に暗記する必要はありません。
冒頭の「ご挨拶」と結びの一文だけ、できればほぼ覚えておくと自然な印象になります。
声の出し方
少しゆっくりと思うくらいの速度で話す。
一文ごとに、短く間を取ると落ち着いた印象になる。
姿勢と目線
原稿は胸のあたりの高さで持ち、時々顔を上げて全体を見る。
目線を特定の人に固定しすぎず、参列者全体を見る意識を持つ。
失敗しないための最終確認ポイント
挨拶直前に、次の3点だけ確認しておくと安心です。
原稿のページが逆さま・順番違いになっていないか
故人の名前・自身の名前の漢字や読みが正しいか
宗教・式次第に合わない表現(明らかな誤り)が入っていないか
もし途中で言葉に詰まってしまっても、深呼吸をして、
「申し訳ございません。少し言葉が詰まってしまいました。」
と一言添えてから読み直せば、十分礼を尽くした対応になります。
まとめ:完璧を目指すより「感謝」と「お礼」をまっすぐ伝える
母の葬儀で、息子として喪主の挨拶をするのは、大きな負担に感じられるかもしれません。
しかし、参列者の方々が求めているのは、難しい言葉や立派なスピーチではなく、
母への感謝
参列してくださったことへのお礼
今後のお付き合いを願う素直な気持ち
といった、率直で丁寧な言葉です。
本記事の基本構成・テンプレート・例文をもとに、ご自身の言葉を少しだけ加えていただければ、十分に気持ちの伝わる挨拶になります。