授乳中、ふと胸に手を当てたとき、「あれ、外側にコリっとしたしこりがある」「授乳してもなかなか取れない」と不安になっていませんか。
乳腺炎なのか、ただの母乳の詰まりなのか、それとも別の病気なのか――赤ちゃんのお世話で忙しい中、はっきりしない不安だけが膨らんでしまいやすい症状です。
本記事では、乳房の外側や脇の下あたりにできるしこりに焦点を当て、「どんな原因が多いのか」「自分でできるチェックポイント」「どこまでがセルフケアの範囲で、いつ受診を考えるべきか」を整理して解説します。
授乳を続けてよいのか迷っている方にも、次の一歩を決めるための判断材料としてご活用いただける内容を目指しています。
※以下は一般的な情報提供であり、診断・治療を行うものではありません。気になる症状がある場合は、必ず医師・助産師・看護師などの専門家にご相談ください。
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授乳中の「外側・脇側のしこり」は、
母乳の詰まり(乳汁うっ滞)
乳腺炎なりかけ・乳腺炎
乳瘤
副乳・リンパ節の腫れ
乳がんなど授乳と直接関係しないしこり
など、いくつかの原因が考えられます。
「どこに、どんなしこりが、どれくらい続いているか」を整理し、
軽い症状のうちは、授乳姿勢の工夫や、しこり側からの授乳・搾乳などを試す
痛み・赤み・発熱がある、数日〜数週間たっても改善しない、硬く大きくなっていく、といった場合は早めに受診する
というように、「自分でできる範囲」と「医師に任せる範囲」を分けて考えることが重要です。
授乳中に「外側のしこり」が取れない…まず知っておきたいこと
キーワードが示す典型的な状況とは
「授乳 しこり 取れない 外側」というキーワードで検索している方は、
乳房の外側〜脇寄りにコリっとしたしこりを感じる
授乳や搾乳をしても、なかなか小さくならない
乳腺炎のような高い熱はないが、張りや痛みが気になる
「このまま授乳を続けて良いのか」「乳がんではないか」と不安
といった状態であることが多いと考えられます。
授乳中のしこりの多くは、母乳が乳管の一部にたまった「乳汁うっ滞」や、それに炎症が加わった「乳腺炎なりかけ」によるものとされていますが、乳瘤(母乳のうみ袋のようなもの)、副乳、リンパ節、乳がんなど、他の原因のこともあります。
まずは「どこに、どんなしこりが、どれくらい続いているか」を整理して考えていくことが大切です。
しこりができやすい場所(外側・脇・胸の付け根など)
授乳中にしこりを感じやすい場所として、特に次の部位がよく挙げられます。
乳房の外側(脇に近い部分)
乳房の下側〜外側(ブラジャーのワイヤーが当たりやすいところ)
脇の下(腋のしこり)
胸の付け根付近
乳房の外側〜脇側には乳腺のボリュームが多く集まりやすく、母乳がたまって「しこり」として感じやすい場所です。また、脇の下にはリンパ節や「副乳」と呼ばれる乳腺組織があり、ここが張ってしこりのように感じることもあります。
授乳中のしこりの主な原因と「外側」に多いタイプ
母乳がたまってできるしこり(乳汁うっ滞)
最も多いのが、母乳の通り道の一部が細くなったり、授乳間隔があいたりすることで、一部の乳管に母乳がたまり、固く感じるしこりです。一般に「詰まり」「乳汁うっ滞」と呼ばれます。
特徴としては、
しこりがある部分を中心に張りを感じる
押すと痛みを感じることが多い
授乳や搾乳で母乳がよく出ると、小さくなったり柔らかくなったりする
といった点が挙げられます。
特に外側は、抱き方のクセによっては赤ちゃんの吸う力が届きにくく、母乳が残りがちなエリアです。
乳腺炎なりかけ・乳腺炎のしこり
乳汁うっ滞が続いたり、疲れ・ストレス・体調不良などが重なると、乳腺に炎症が起こり「乳腺炎なりかけ」「乳腺炎」と呼ばれる状態になることがあります。
次のようなサインがある場合は、乳腺炎を疑います。
しこりに強い痛みや熱感がある
しこりの周囲の皮膚が赤くなっている
悪寒やだるさ、発熱(38℃前後)を伴うことがある
軽い段階であれば、授乳や適度なセルフケア、安静でよくなることもありますが、痛みが強い・熱が出てきた・しこりが急に大きくなった場合などは、早めに医療機関の受診が勧められています。
いつも同じ場所にある「乳瘤」のしこり
授乳を続けていても、いつも同じ場所に、丸いしこりが残るタイプがあります。これは「乳瘤」と呼ばれ、母乳が袋状にたまった状態と説明されることが多いです。
押すと痛みを感じることもありますが、常に強い痛みがあるとは限らない
授乳後も大きさがあまり変わらない
長い期間、同じ位置で触れる
といった特徴が挙げられます。
乳瘤そのものは良性のことが多いとされますが、乳管を圧迫して乳腺炎を起こしやすくなる場合もあり、完全に取り除くには外科的な処置が必要と説明されることがあります。
自己判断せず、乳腺外科などで相談することが安心につながります。
脇の下のしこりと「副乳」やリンパ節
乳房の外側〜脇の下に感じるしこりは、必ずしも母乳の詰まりだけとは限りません。次のような原因も考えられます。
副乳(ふくにゅう)
胎児のころの乳腺の名残で、脇の下などに小さな乳房のような組織が残ることがあります。
妊娠・授乳期に乳腺が発達することで、副乳も張ったり、しこりのように感じたりします。
リンパ節の腫れ
脇の下にはリンパ節があり、感染症や炎症などで一時的に腫れてしこりとして触れることがあります。
副乳自体は病気ではありませんが、副乳の中にも乳腺があるため、乳腺の病気が起こることがあります。
脇の下のしこりが長く続いたり、大きさ・硬さが変化していく場合は、乳腺外科などでの確認が安心です。
授乳と直接関係しないしこり(乳がんなど)の可能性
授乳中に感じるしこりの多くは、乳汁うっ滞や乳腺炎、乳瘤などですが、すべてが授乳由来とは限りません。授乳中であっても、乳がんやその他のしこりが見つかることがあります。
一般論として乳がんのしこりは、
硬くゴリっとしていることが多い
触れる位置が変わらず、徐々に大きくなっていく
痛みを伴わないこともある
と説明されることがありますが、自己触診だけでの判断はできません。
「授乳してもほとんど変化しない」「数週間〜数か月、同じしこりが続いている」「形がいびつ・表面がデコボコしている」といった場合は、授乳中でも乳腺外科で検査(主に超音波検査)が行われています
外側のしこりを自分で確認するチェックリスト
5つのチェックポイント(痛み・熱・赤み・硬さ・期間)
ご自分で状態を整理するために、次の5点をメモしておくと、医療者にも伝えやすくなります。
痛みの程度
ほとんど痛くない / 押すと少し痛い / 何もしていなくても強く痛い
しこりの場所と広がり
乳房の外側なのか、脇の下なのか、胸の付け根なのか
指1本ぶん程度か、もっと広い範囲か
熱感・赤みの有無
しこりのところだけ熱い・赤い
体全体が熱っぽい、寒気がする
硬さ・動き方
授乳後に柔らかくなるか
皮膚にくっついたような感じか、少し動くか
どれくらい続いているか
数時間〜1日程度か
3日以上変わらないか
数週間〜数か月単位で続いているか
これらを整理することで、「乳汁うっ滞や乳腺炎なりかけが疑われる状態」なのか、「長く続いているしこりとして検査を考えたい状態」なのかを、医師・助産師が判断しやすくなります。
こんなときは早めに受診を考えるサイン
次のような場合は、早めに母乳外来・産婦人科・乳腺外科などに相談することが勧められています。
しこりの痛みが強くなっている
しこりの部分や乳房全体が赤く、熱を持っている
38℃前後の発熱や悪寒がある
授乳や搾乳、軽いセルフケアを数日続けても、しこりがほとんど小さくならない
数週間〜数か月、同じ場所のしこりが続いている
しこりが硬く、徐々に大きくなっているように感じる
脇の下のしこりが片側だけ、はっきりと大きくなってきている
迷う場合は、「母乳外来」や「乳腺外科」のある医療機関に電話で相談し、受診の必要性やタイミングを確認すると安心です。
外側のしこりが取れないときに試せるセルフケア
※ここでご紹介するのは、高熱や強い痛みがない軽い段階での一般的なケアの例です。痛みが強い・発熱している・悪化している場合は、セルフケアより受診を優先してください。
受診前に試してよいケア
しこり側から授乳・搾乳する
しこりがある側の乳房から授乳を始めることで、その部分の母乳を優先的に流しやすくなります。
抱き方を変えて、しこり側に赤ちゃんのあごが向くようにする
赤ちゃんの下あご〜舌の方向に母乳がよく流れると言われています。横抱き・縦抱き・フットボール抱きなど、抱き方を変えて、しこりのある方向にあごが来る姿勢を試します。
授乳前に軽く温める
明らかな発熱がなく、しこりと痛みが主な症状の場合、授乳前に温かいタオルなどで乳房全体を「気持ちよい程度に」温めると、母乳が流れやすくなることがあります。
しこり部分を軽く押さえながら授乳する
しこりのある部分を、指の腹で軽く支えるように押さえながら授乳し、母乳を流す方法が紹介されています。強く押しすぎたり、長時間グリグリしないよう注意が必要です。
体を休め、水分をしっかりとる
疲れやストレスが強いときは、乳房トラブルが起こりやすいと報告されています。できる範囲で横になり、こまめな水分補給を心掛けてください。
強すぎるマッサージなど、避けたいこと
強く長時間しごくマッサージ
強いマッサージは、かえって乳腺を傷つけたり炎症を悪化させるおそれがあります。自己流で強くもみほぐすことは避けてください。
高熱・強い痛みがあるのに、セルフケアだけで様子を見ること
乳腺炎が進行すると、膿がたまる「化膿性乳腺炎」になることもあり、医師による治療が必要です。
自己判断で授乳を完全にやめてしまうこと
医師等から特別な指示がない限り、授乳や搾乳を急にやめると、さらに母乳がたまりトラブルが悪化するおそれがあります。判断に迷う場合は、必ず医療者に相談してください。
医療機関での検査と治療の流れ
何科を受診する?(母乳外来・産婦人科・乳腺外科)
母乳外来・助産院
授乳姿勢や抱き方、搾乳の仕方など、母乳育児全般の相談に適しています。
産婦人科
産後も継続して通っている場合が多く、乳房トラブルの初期相談に対応している施設もあります。
乳腺外科(乳腺クリニックなど)
長く続くしこりや、乳がんとの区別が必要な場合には乳腺外科での評価が推奨されます。授乳中でも超音波検査などを用いて評価することができます。
最初にどこへ行けばよいか迷うときは、「母乳外来」または「乳腺外科」のある医療機関に電話で相談し、状況を説明したうえで案内を受けるとスムーズです。
診察から検査(エコーなど)の一般的な流れ
一般的には、次のような流れがとられます。
問診:症状の出た時期、痛み・発熱の有無、授乳状況などを確認
触診:しこりの場所・大きさ・硬さ・動き方などを医師が確認
超音波検査(エコー):授乳中でも使用されることが多く、しこりの性状や乳腺内の炎症、膿の有無などを確認
必要に応じて、血液検査やその他の検査
詳しい検査内容は症状や施設によって異なりますが、「授乳中だから検査ができない」というわけではありません。
よくある治療と授乳の続け方の一例
軽い乳汁うっ滞・乳腺炎なりかけの場合
授乳や搾乳を続けながら、休息や鎮痛薬などで様子を見ることがあります。
強い炎症・発熱を伴う場合
医師の判断で、抗生物質や消炎鎮痛薬などの薬が処方されることがあります。
乳瘤や膿がたまっている場合
状況により、針を刺して中身を抜く、切開して膿を出す、外科的にしこりを取り除くといった処置が検討されることがあります。
授乳を続けるかどうかは、原因や治療内容によって異なります。個々の状況に応じて、必ず担当医や助産師と相談しながら決めてください。
繰り返す外側のしこりを減らすために
授乳姿勢・抱き方の工夫
同じ抱き方だけでなく、横抱き・縦抱き・フットボール抱きなどを組み合わせる
外側や脇側のしこりができやすい場合、その方向に赤ちゃんのあごが向く抱き方を意識する
ブラジャーや抱っこ紐の圧迫が強すぎないかを確認する
こうした工夫により、特定の乳管だけに負担がかかるのを減らし、しこりの再発予防につながるとされています。
生活リズムと疲れ・ストレスとの関係
疲れやストレスが強いときに乳房トラブルが起きやすいことが指摘されています。
完璧を目指しすぎず、家事を一部家族に任せる
可能であれば、数時間でもまとまった睡眠時間を確保する
心身の休息を「母乳トラブルの予防ケア」と考え、意識的に休む
といった意識も大切です。
不安な気持ちとの付き合い方
授乳中のしこりは、どうしても「乳がんだったらどうしよう」という不安につながりやすい症状です。
「授乳中でも検査はできる」「相談先がある」ことを知っておく
1人で検索結果だけを見続けるより、母乳外来や乳腺外科に一度相談して安心材料を増やす
不安が続く場合は、パートナーや家族にも気持ちを共有する
ことも、心の負担を軽くする助けになります。