ノートパソコンのキーボードが「べたつく」「特定のキーだけ効かない」といったトラブルが起きると、「自分でキーを外して掃除したい」「キーボードを丸ごと交換したい」と考える方は多いです。
しかし、ノートPCのキーボードは精密な部品で構成されており、無理な力で外そうとすると爪やパンタグラフを簡単に破損してしまうことがあります。
本記事では、分解初心者の方でも理解しやすいように、
- キー1個だけを外す方法
- キーボードユニットを本体から外す・交換する方法
- 作業前後の注意点とチェックリスト
- 自分でやらないほうがよいケース
を順番に解説します。
重要な前提
メーカーや機種、世代によって構造は異なります。
ここで紹介する内容は「一般的な構造」に基づく解説です。
必ずお使いの機種の取扱説明書・メーカーサポート情報もあわせてご確認ください。
※本コンテンツは「記事制作ポリシー」に基づき、正確かつ信頼性の高い情報提供を心がけております。万が一、内容に誤りや誤解を招く表現がございましたら、お手数ですが「お問い合わせ」よりご一報ください。速やかに確認・修正いたします。
- ノートPCのキーボードを外す作業には、キー1個だけ外す方法と、キーボードユニット全体を外す方法の2種類があります。
- どちらの場合も、事前に「保証」「バックアップ」「静電気対策」を確認することが重要です。
- キー1個を外す際は、爪やパンタグラフを壊さないよう、少しずつ角度と力を調整しながら作業してください。
- キーボードユニットの交換は、構造が複雑なモデルも多く、初心者には難易度が高いケースもあります。必ずメーカー公式のマニュアルを参照しましょう。
- 症状やPCの価値によっては、自分で分解せずに、メーカーや専門業者に任せるほうが安全な場合も少なくありません。
作業を始める前に必ず確認したい3つのポイント
1. メーカー保証と分解の関係を確認する
ノートPCを分解すると、メーカー保証の対象外になる場合があります。
特に、まだ購入から1〜2年以内で保証期間中のPCでは、むやみに分解しないほうが安全です。
- 保証書やメーカーサイトの「保証規定」を確認する
- キーボード不良が症状として明らかな場合は、まずメーカーサポートに相談する
- 会社支給PCの場合は、必ずシステム担当・総務に確認する
保証が残っている場合は、自分で分解するよりもメーカー対応を優先してください。
2. データバックアップと電源オフ・バッテリー取り外し
分解作業中にトラブルが起きた場合、最悪PCが起動しなくなることもありえます。
事前に、重要なデータを外付けHDDやクラウドなどにバックアップしておくことをおすすめします。
作業時は必ず以下を行ってください。
- PCをシャットダウンする
- ACアダプターを抜く
- バッテリーが着脱式の場合は、バッテリーも外す
- USB機器や周辺機器もすべて外す
メーカー公式の交換手順でも、電源ケーブル・バッテリーを外した状態から作業を始めることが基本になっています。
3. 静電気対策・作業環境の準備
ノートPC内部の基板は、静電気に弱い精密機器です。
- 冬場など乾燥した時期は、金属製の棚やドアノブに触れて体の静電気を逃してから作業する
- 布団やカーペットの上では作業しない
- 明るい場所で、細かい部品が見やすい環境を用意する
あわせて、以下の道具があると作業しやすくなります。
- 精密ドライバー(マイナス・プラス)
- ピンセット
- ブロワー(ホコリ飛ばし)
- 無水エタノールと綿棒・柔らかい布(掃除用)
まずは構造を理解する|キー1個とキーボードユニットの違い
ノートPCキーボードの基本構造
一般的なノートPCキーボードは、次のような層で構成されています。
- キートップ(キーキャップ)
実際に指で押すプラスチックの部分。 - パンタグラフ機構
キートップの下にある小さな「X字型」の支え。
この部品が上下に動くことで、キーがまっすぐ沈み込むようになっています。 - ラバードーム(シリコンゴム)
パンタグラフの下にあるゴム部品。押すとへこみ、離すと元に戻ることで、キーの「戻り」を支えます。 - キーボードユニット基板
各キーの信号を検出する基板。フラットケーブルで本体と接続されています。
この記事では、
- 「キートップ+パンタグラフ」単位を外す方法
- 「キーボードユニット」全体を本体から外す方法
の2つを分けて解説します。
キートップのロック箇所と折れやすいポイント
キートップは、小さな爪(ツメ)でパンタグラフに引っかけて固定されていることが多いです。
dynabook向けの解説でも、「ロック箇所の爪を折らないように外すこと」が重要なポイントとして紹介されています。
この爪は非常に細く、一度折れてしまうと元に戻せません。
そのため、
- どの方向から持ち上げると爪に負荷がかかりにくいか
- 無理な角度でこじらないこと
が、作業成功のカギになります。
キーボードユニットとフラットケーブル
キーボードユニットは、本体側とはフラットケーブルでつながっています。
ケーブルは「ラッチ」と呼ばれる小さな金具・樹脂部品で固定されており、
- ラッチを手前に起こしてからケーブルを抜く
- 取り付ける際はケーブルを奥までまっすぐ差し、ラッチを戻す
という操作が必要です。
ここでも、無理な力をかけるとコネクタを破損するおそれがあるため、慎重な操作が求められます。
キー1個だけ外したい場合の外し方手順
ここからは、キートップ(キーキャップ)を1個だけ外す場合の手順を解説します。
飲み物を少しこぼした・特定のキーだけべたつくといったケースでは、まずこちらを検討します。
※キーを外すこと自体がメーカー非推奨の場合もあります。
事前に取扱説明書を確認し、不安な場合は無理をしないでください。
必要な道具
- 精密マイナスドライバー(幅の細いもの)
- 必要に応じてピンセット
- ブロワー、綿棒、無水エタノール(掃除用)
金属製ドライバーを使う場合、本体を傷つけないように、
先端に薄くテープを巻くなどの工夫をすると安心です。
キートップを外す基本手順
キーの向きと周囲の隙間を確認する
- キーの四隅を軽く押してみて、どの方向に遊びがあるかを確認します。
- 多くの機種では、片側が「支点」、反対側が「外しやすい側」になっています。
外しやすい側の隙間にドライバーを差し込む
- キーとフレームの隙間に、精密ドライバーの先端をそっと差し込みます。
- 無理に深く差し込まず、表面近くをなぞるような感覚で入れてください。
少しずつ上方向に持ち上げる
- てこの原理で、ゆっくりとキートップを上に持ち上げます。
- 「パチッ」と小さな音がして爪が外れる感覚があります。
完全に外れるまで、左右から少しずつ持ち上げる
- 一箇所だけで強くこじると、反対側の爪に負荷がかかります。
- 左右を交互に少しずつ持ち上げるイメージで、ゆっくり外してください。
キートップを外した状態をよく観察する
- パンタグラフの形状・向き・取り付け位置を確認します。
- 元に戻す際のために、スマホで写真を撮っておくと安心です。
パンタグラフを壊さないためのコツとNG行為
やってはいけないことの例:
- 力任せに一気に引き抜く
- ドライバーを深く差し込み、パンタグラフやラバードームを直接押してしまう
- キートップをねじるように回して外そうとする
修理事例では、無理な力で作業してパンタグラフやキートップの爪が折れてしまい、結果的にキートップ交換やキーボード交換が必要になったケースが多く報告されています。
掃除・クリーニングの手順と乾燥の目安
ホコリをブロワーで飛ばす
- まずはエアダスターやブロワーでホコリを飛ばします。
無水エタノール+綿棒・布で拭き取る
- 無水エタノールを綿棒や柔らかい布に少量含ませ、パンタグラフやラバードーム周辺、キートップ裏面の汚れを拭き取ります。
十分に乾燥させる
- 無水エタノールは揮発性が高いですが、念のため数十分〜1時間程度は放置し、完全に乾燥させます。
キートップを元に戻す
- 位置を合わせて、真上からまっすぐ押し込みます。
- 「パチッ」と音がして固定されればOKです。
元に戻したあとの動作確認
- 対象キーを何度か連続で入力してみる
- テキストエディタなどで、押した回数どおり文字が入力されるか確認
- ぐらつき・沈み込みが不自然でないかチェック
問題があれば、無理に押し込まず、再度構造を確認してください。
キーボードユニットを丸ごと外す・交換する場合
次に、キーボードユニット全体を本体から外す場合の流れを説明します。
こちらは作業範囲が広く、ミスをするとPCが起動しなくなるリスクもあるため、慎重に検討してください。
作業難易度と想定時間の目安
- PC分解に慣れていない方:60〜90分程度
- 分解経験がある方:30〜60分程度
モデルによっては、キーボードを外すために裏蓋やパームレストを大きく分解する必要があり、初心者にはかなり難易度が高いものもあります。
基本的な流れ(代表的な例)
※機種によって手順は変わるため、必ずメーカーのマニュアルも確認してください。
電源・バッテリー・周辺機器をすべて外す
底面のネジを外す
- 一部機種では、キーボード関連のネジに「KB」などの表示があります。
- ネジの位置と本数をメモしたり、写真を撮っておくと再組立てがスムーズです。
キーボード周辺のベゼル・パネルを外す
- キーボード上部の細いパネルを、精密ドライバーや樹脂ヘラで慎重にこじ開けます。
- 金属工具を使う場合は、傷防止のため先端にテープを巻くなどしてください。
キーボード本体を持ち上げる
- 手前側・左右側など、ツメが外れやすい位置から少しずつ持ち上げます。
- ディスプレイ側にスライドさせるタイプもあります。
フラットケーブルのラッチを外し、ケーブルを抜く
- ラッチを上に起こす/手前に倒すなど、機種ごとに動きが異なります。
- 無理な力をかけず、動く方向をよく確認してから操作してください。
新しいキーボードを接続し、逆順で組み立てる
- ケーブルをしっかり奥まで差し込み、ラッチを確実に戻します。
- キーボードをはめ込む際は、ツメがすべて正しく入り込むよう、端から順に押さえていきます。
交換用キーボードの選び方(型番・互換性)
- PC本体の型番(例:〇〇-15x、CF-〇〇 など)を正確に控える
- できれば、もともと付いていたキーボードの部品番号(P/N)を確認する
- 配列(日本語/英語)、バックライトの有無など仕様が一致しているか確認する
型番が少しでも異なると、ツメの位置やケーブル長さが合わず、取り付けできないことがあります。
メーカー・機種ごとの違いと注意点の例
国内メーカーに多い構造の傾向
dynabookや一部国内メーカーのモデルでは、キートップの構造が独自仕様の場合があり、見た目は似ていても、パンタグラフの形状や爪の位置が微妙に異なることがあります。
また、キーボードユニットの固定方式も、
- 上部ベゼル+ネジ
- 底面ネジ+ツメ
- パームレスト一体型
など、モデルごとにバラつきがあります。
海外メーカー(Dell・Lenovoなど)の公式マニュアル
DellやLenovoなどの海外メーカーは、公式サイトに分解手順動画やPDFマニュアルが公開されていることが多く、キーボード交換もユーザー自身が行う作業として想定されているモデルがあります。
- メーカーサイトの「サポート」「マニュアル」「動画」セクションを確認する
- 自分のモデル番号を入力して、キーボード交換に関する資料があるかを探す
公式情報がある場合は、そちらを最優先で参照してください。
防滴キーボード・特殊構造モデルに注意
防滴キーボードや2in1タイプなど、特殊構造のモデルでは、
- キーボードが本体に接着されている
- 分解のためにリベットや多数のツメを外す必要がある
といったケースもあり、初心者には極めて難易度が高くなります。
このようなモデルでは、無理に分解せず、メーカーや専門業者に相談することを強くおすすめします。
自分でやらないほうがよいケースと、プロに任せる判断基準
次のようなケースでは、自己修理ではなくプロへの相談を検討してください。
分解を控えるべき症状の例
- キーボード全体または広い範囲がまったく反応しない
- 大量の飲み物をこぼしてしまい、本体内部まで濡れている可能性がある
- 電源が入らない、動作が極端に不安定など、キーボード以外の異常も出ている
これらは、マザーボードや他の部品の故障が疑われるため、キーボードだけを外しても解決しないことが多いです。
保証期間内・高価なPCの場合
- 保証期間中である
- 高価なビジネスPC/クリエイター向けPCである
- 仕事で使っており、万一のトラブルが許されない
といった場合は、保証やリスクを優先してメーカー修理・業者依頼を第一候補にしてください。
修理業者に依頼する場合の目安
修理業者にキーボード交換を依頼する場合、
- 部品代+作業料で、概ね数千〜1万円台後半程度の費用感(機種・部品価格により変動)
- 液体こぼしなど、分解清掃を含む場合はさらに高額になるケースもある
といったイメージです(あくまで一般的な目安)。
よくある質問(FAQ)
Q1:どのくらいの力で引き上げればよいですか?
A:片手の指先で「少し強めに押し上げる」程度が目安です。
不安な場合は、いきなり大きなキーではなく、使用頻度の低い小さなキーで感覚をつかんでから本命のキーに取り掛かるとよいでしょう。
Q2:キートップの爪が折れてしまいました。どうすればいいですか?
A:完全に折れてしまった場合は、元どおり固定することは難しいです。
同じ型番のキートップやキーボードユニットを部品として購入し、交換する必要があります。
メーカー・型番が一致しない部品は適合しないことが多いため、購入時は十分にご注意ください。
Q3:キーが1つだけ効かない場合も、キーボードユニットの交換が必要ですか?
A:原因によります。
- 汚れやべたつきが原因:キートップを外して掃除することで改善することがあります。
- 物理的な破損・基板側の不良:キーボードユニット全体の交換が必要になる可能性があります。
まずは掃除で改善するかを試し、それでもダメな場合は修理業者やメーカーに相談するとよいでしょう。
Q4:分解したことはメーカーに伝えるべきですか?
A:保証の観点からは、分解が禁止されている場合もあります。
保証期間内であれば、自己分解は避けるのが基本方針です。
もしすでに分解してしまった場合でも、故障時には正直に状況を説明し、対応可否を確認することをおすすめします。