韓国旅行を計画していて、ふと目に入った格安のチェジュ航空。ところが同時に、「チェジュ航空 危ない」「あの大事故以降は乗らないほうがいい」といった情報も目に入り、胸の中にモヤモヤとした不安が残ってはいないでしょうか。すでに航空券を予約済みの方であれば、「このまま搭乗して大丈夫なのか」「家族やパートナーをどう説得すべきか」と悩まれているかもしれません。
本記事では、2024年12月29日に発生した2216便の大事故を含む事実関係や、チェジュ航空の事故・インシデント履歴、整備体制や遅延傾向、専門家の見解といった情報を、できる限り感情論から切り離して整理します。
そのうえで、「どのような人なら利用を検討してよいのか」「不安が強い場合に取り得る現実的な選択肢は何か」という判断軸まで具体的にお伝えいたします。
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チェジュ航空は危ない?
チェジュ航空は「絶対に危険」でも「気にしなくてよい」でもないです。
「チェジュ航空 危ない」と検索される背景には、2024年12月29日に韓国・務安(ムアン)国際空港で発生した2216便の大事故があります。
乗員乗客181人のうち179人が亡くなり、韓国の民間航空史上最悪規模と報じられました。
この事故により、チェジュ航空に「危ない」というイメージが強く付いたことは事実です。一方で、
それまでチェジュ航空には致命的事故はなく、2216便が初の死亡事故であること
韓国政府・航空当局が国内航空各社に対する緊急安全点検を実施していること
など、冷静に見ておくべき事実も存在します。
本記事で扱う範囲と情報の前提
2025年11月時点で公表されている報道・データを前提とします。
事故原因については、最終的には韓国の事故調査委員会による公式報告が決定的な根拠となります。現時点で報じられている内容は暫定的なものであり、将来変更される可能性があります。
本記事は、特定の航空会社の利用を推奨・非推奨するものではなく、読者が主体的に判断するための情報整理を目的としています。
2024年12月29日・チェジュ航空2216便事故で何が起きたのか
事故の概要(発生場所・機材・死傷者数)
事故が起きたのは、2024年12月29日午前、タイ・バンコク発務安(ムアン)行きのチェジュ航空2216便です。
路線:バンコク(スワンナプーム) → 韓国・務安国際空港
機材:ボーイング737-800型機
乗員乗客:181人
結果:滑走路上で胴体着陸を試みたもののオーバーランし、空港施設に衝突・炎上。179人が死亡し、2人が生存。
この事故は、チェジュ航空にとって就航以来初めての死亡事故であり、韓国の民間航空機事故としては最悪規模とされています。
バードストライクと操縦判断など、現在分かっている原因
報道や暫定的な調査結果では、以下のような点が伝えられています。
着陸進入中に、渡り鳥の群れとのバードストライク(鳥衝突)が発生
両エンジンが鳥を吸い込み、少なくとも片側エンジンに大きな損傷が生じた可能性
パイロットがメーデーを宣言し、やり直し進入や胴体着陸を試みた
その過程で、比較的損傷の少ないエンジン側を誤って停止した可能性が報じられている(操縦判断・手順の問題)
着陸装置が正常に展開せず、通常の接地点より先で胴体着陸し、高速のまま滑走路をオーバーラン、空港のコンクリート構造物に衝突・炎上
なお、バードストライク自体は世界各地で起こり得る事象であり、日本でも年間1,000件以上報告される年があります。
今回の事故は、
バードストライクによる損傷
その後の機体操作・エンジン操作
滑走路末端の構造物配置
など複数の要因が組み合わさった結果と見られており、調査は引き続き進められています。
韓国政府・航空当局・警察の対応と今後の調査
事故後、韓国政府および航空当局・警察は以下のような対応を行っています。
韓国国内の全航空会社を対象にした緊急安全点検を実施
特にボーイング737-800型機について、運航・整備状況の集中的な検証
空港運営会社やチェジュ航空本社への家宅捜索、運航・整備・空港設備に関する資料の押収
チェジュ航空の経営陣に対する出国禁止措置・業務上過失致死の可能性を視野に入れた捜査
こうした動きは、単に一航空会社の問題にとどまらず、韓国全体の航空安全システムの見直しへと発展しています。
「チェジュ航空は危ない」と言われる主な理由
大事故によるイメージ悪化と大量キャンセル
2216便事故は、日本を含む世界中で大きく報道され、「チェジュ航空=危ない」というイメージが一気に広まりました。
事故発生から24時間以内に、数万枚規模の航空券キャンセルが発生したと報じるメディアもあります。
SNSや掲示板では、「もう二度と乗らない」「安くてもさすがに怖い」といった感情的な反応が多数見られます。
このような感情面の反応は自然なものですが、「危ない」という印象の大部分が、ごく短期間に形成されたイメージであることも押さえておく必要があります。
整備遅延・運航遅延・インシデントの指摘
事故以前から、チェジュ航空には以下のような懸念が指摘されていました。
韓国国土交通部の資料に基づき、
整備を理由とする遅延件数・遅延率が韓国航空会社の中で突出して高い時期があった
機体稼働率の高さ(1機あたりの運航時間が他社より長い)が整備負荷を高めている可能性
過去のインシデントとして、
翼端の接触事故
不安定進入のまま着陸を続行した事例
客室減圧など技術的トラブル
バードストライクによる引き返し
などが複数報告されている
また、整備士の過重労働や人員不足を訴える声がSNS等で取り上げられ、整備体制の余裕のなさが指摘されてきました。
口コミ・体験談から見える不安要素
旅行メディアや口コミサイトを見ると、チェジュ航空に関する主な不満点は以下の通りです。
便の遅延・時間変更が多い
欠航・大幅遅延時の案内・補償がわかりにくい/不十分と感じる人がいる
コールセンターや空港カウンターでの説明が不親切と感じられるケース
LCC特有の「荷物・座席指定など追加料金が多く、トータルではそこまで安くない」という不満
これらは「安全性」そのものというより、運航の安定性やサービス品質に関する不満です。ただ、遅延や整備理由によるキャンセルが多い航空会社に対して、利用者が「安全面も心配」と感じることは自然です。
データと専門家コメントから見るチェジュ航空の安全性
LCCと大手で安全基準に差はあるのか
航空安全の専門家や元パイロットのコメントでは、しばしば次のような説明がなされています。
各国の航空会社は、国際民間航空機関(ICAO)の基準を踏まえた自国の航空法・安全基準に従って運航している。
「LCCだから安全基準が甘い」「フルサービスキャリアだから安全」は基本的に誤解であり、安全に関する最低基準は同じ。
コスト削減の対象は、主にサービス・座席間隔・手荷物ルールなどであり、安全性を直接削ることは許されない。
つまり、「LCC=危険」「大手=安全」と単純に線を引くのは適切ではありません。
国際的な安全評価・インシデントの位置づけ
国際的な航空会社安全評価サイトでは、チェジュ航空は7段階中「6」という比較的高い評価を受けていたと報じられています(事故前の情報)。
一方で、
事故前から複数の技術的インシデント・運航トラブルが報告されていたこと
2025年にも、別の便で着陸時の一時的な滑走路逸脱などのインシデントが報じられていること
を踏まえると、「決してトラブルが少ない会社ではない」という側面も見えてきます。
重要なのは、
『事故が1件起きたから危険な会社』
『長年事故がなかったから安全な会社』
といった単純なラベリングを避けることです。航空安全は、
運航規模(便数・路線数)
インシデント件数とその内容
再発防止策・組織文化
など、複数の観点から評価する必要があります。
韓国・日本の航空安全監査と再発防止策
2216便事故を受けて、韓国政府は航空安全システム全体の見直しに着手しており、
各社の安全管理体制
整備体制・稼働率
空港側の鳥害対策・滑走路末端の構造物配置
など幅広いテーマが検証対象となっています。
また日本側も、韓国LCCを含む外国航空会社の就航に際して、安全監査や運航審査を行っています。日本の空港に乗り入れる以上、一定の安全基準を満たしていることが前提である点も押さえておくべきでしょう。
チェジュ航空を利用するか迷ったときの判断軸
渡航目的・同行者・リスク許容度から考える
チェジュ航空を利用するかどうかは、「安さ」と「安心感」のどちらをどこまで重視するかによって変わります。判断の際には、次のような観点を一度整理してみてください。
渡航目的
仕事・重要な商談・受験など遅延が致命的な影響を持つ予定か
観光・推し活など、多少の遅延なら許容できる予定か
同行者
一人旅/友人同士の旅か
小さなお子様連れ・高齢のご家族連れか
自身の不安の強さ
飛行機に乗ること自体に強い不安があるか
「安いなら多少のリスクは許容できる」と考えるか
利用を検討してよいケース/避けた方がよいケース
あくまで一つの目安ですが、次のように考えることもできます。
利用を検討してよいケースの例
価格重視で、多少の遅延やスケジュール変更は許容できる
LCCのサービス水準(座席の狭さ・有料オプション等)に慣れている
一人旅または大人同士の旅行で、万一の予定変更にも柔軟に対処できる
事前に旅行保険などで一定の備えをした上で、リスクを理解して選ぶ
利用を避ける/慎重に検討した方がよいケースの例
小さなお子様・高齢者を含む家族旅行で、少しでも不安要素は減らしたい
出張・学会・試験など、遅延が大きな不利益につながる予定がある
2216便事故の報道を見て精神的に強い不安や恐怖を感じており、フライト中も落ち着かないと想像できる
「少しでも不安を感じる航空会社は避けたい」と考える価値観を大切にしたい
不安が強い状態で搭乗すると、ちょっとした揺れや音にも過敏になり、旅行自体の満足度も下がってしまいます。「安さ」と同じくらい、「気持ちの安定」も大切な判断材料です。
他社・他ルートへの切り替えを検討するパターン
すでにチェジュ航空を予約済みだが、
追加費用を払ってでも安心感を優先したい
家族に強く反対されている
他社便でも、時間帯や日程の調整によって、許容できる価格に収まりそう
このような場合には、
航空券の規約(変更・取消手数料)を確認
他社便の価格・時間帯を比較
総額(キャンセル料+新規航空券)と安心感のバランスで判断
というステップで検討することをおすすめします。
それでも乗る場合にできる具体的なリスク低減策
フライト選び・時間帯・乗継の組み方
チェジュ航空に限らず、LCCを利用する際には次のような工夫がリスク低減につながります。
可能であれば直行便を選ぶ(乗継トラブル・ミスコネクトを避ける)
重要な予定の前日に到着するフライトを選び、当日入りは避ける
早朝・深夜など、代替手段の少ない時間帯のフライトは慎重に検討する
冬場や台風シーズンなど、天候リスクが高い時期は余裕を持ったスケジュールを組む
当日までにしておきたい準備と機内での安全行動
予約情報・運航状況をこまめに確認し、遅延・機材変更情報を早めにつかむ
チェックインは余裕を持って行い、空港での案内・掲示をよく確認する
機内では、
安全ビデオ・安全のしおりを一度はしっかり確認する
非常口の位置・避難経路を自分の言葉でイメージしておく
シートベルト着用サインが消えても、着席中は基本的にベルトを緩めに締めておく
これらは航空会社にかかわらず、自分で取れるリスク低減策です。
旅行保険・キャンセル規定・代替手段の事前確認
航空機遅延・欠航・乗継遅延に対応した旅行保険に加入する
航空券の規約で、
欠航時の他社振替の有無
払い戻しの条件
を事前に把握しておく
万一の場合の代替手段(他社便・別空港・陸路)をざっくり頭に入れておく
「何かあってもこのくらいの対処はできる」と分かっていれば、不安はかなり軽減されます。
まとめ|チェジュ航空とどう付き合うか
今後注視したいポイント
今後、チェジュ航空および韓国の航空安全を評価する上で注目すべきなのは、次のような点です。
2216便事故の最終調査報告の内容
韓国政府・航空当局による安全基準の見直しや制度改正の有無
チェジュ航空自身の
整備体制の強化
運航計画(稼働率)の見直し
遅延率やインシデント件数の推移
透明性のある情報公開や、利用者への説明姿勢
これらが中長期的にどう変化していくかによって、「危ない」という評価は変わり得ます。