FPSを遊んでいると「ちゃんとクリアリングしろ」と言われるものの、具体的に何をすればよいのか分からず、不安に感じていないでしょうか。
曲がり角で突然倒される、部屋に入った瞬間に撃たれてしまう――その多くはエイムのせいではなく、クリアリングのやり方を知らないだけです。
本記事では、専門用語をできるだけ避けつつ、クリアリングの意味と基本の考え方、初心者の方でも今日から実践できる動き方を分かりやすく解説いたします。
クリアリングとは?FPSでの意味をまず理解する
この章では、「そもそもクリアリングとは何か」という用語の意味を整理いたします。
クリアリングの基本的な定義
FPSやTPSにおけるクリアリングとは、敵が潜んでいる可能性のある場所を、一つずつ確認しながら安全を確保して進む行為を指します。
具体的には、次のような場所を順番にチェックするイメージです。
曲がり角の先
ドアの向こう側
部屋の四隅
障害物・物陰の裏側
「とりあえず走り抜ける」のではなく、「ここまでは安全」と言えるエリアを少しずつ広げていく作業だと考えると分かりやすいです。
索敵との違いと「安全を確保する」というニュアンス
似た言葉に「索敵」がありますが、索敵は敵の位置情報を得ることが目的であるのに対し、クリアリングは
敵がいそうな場所を確認する
自分や味方が安全に通れるルートを確保する
という、“確認+安全確保”まで含んだ行為です。
したがって、クリアリングには「これ以上前に進んでも大丈夫な状態を作る」というニュアンスが強く、「安全なエリアを広げていく」イメージを持っていただくとよろしいかと思います。
現実の戦術用語としてのクリアリングとの関係
クリアリングという言葉は、もともと軍隊や警察、特殊部隊が室内や建物に突入する際に行う、部屋やエリアを“クリア(安全化)”する作業に由来するとされています。
現実の戦術では、
ドアを開けた瞬間に撃たれないようにする
部屋の角や物陰に潜む敵を素早く排除する
といった目的のために、非常に細かい手順が決められています。
FPSで使われているクリアリングは、その考え方を簡略化したものと考えると、その重要性がより理解しやすくなります。
なぜクリアリングが重要なのか:よくあるデスシーンから考える
この章では、クリアリングを怠ったときに起こりやすい「もったいないデス」を整理し、重要性を明確にします。
曲がり角・ドア前・建物侵入時に起こりがちな事故
クリアリングが甘いと、次のようなシーンで一方的に撃たれやすくなります。
曲がり角をそのまま走り抜けた瞬間、角待ちの敵に撃たれる
ドアを開けてまっすぐ入ったところを、正面や左右の敵に倒される
建物に入った瞬間、階段上や通路の奥から一方的に狙われる
これらは「敵がいることに気付いたときにはもう撃たれている」状態であり、エイム以前の問題であることが多いです。
エイムではなく「確認不足」で負けているケース
撃ち負けたとき、多くの方は「エイムが悪かった」と考えがちですが、実際には
自分は相手の存在を知らない
相手はあらかじめ照準を置いて待っている
という、スタートラインが不公平な状態で撃ち合いが始まっているケースが少なくありません。
このような場面では、いくらエイム練習をしても限界があります。
「そもそもその状況を作らない」ために、クリアリングで事前に情報を取っておくことが非常に重要です。
クリアリングを徹底するとKDと安定感がどう変わるか
クリアリングを意識して徹底すると、次のような変化が期待できます。
不意打ちで倒される回数が明らかに減る
「なぜやられたのか」を振り返りやすくなる
結果としてデスが減り、KDが安定してくる
特別な反射神経や高いエイム力がなくても、立ち回りの改善だけで生存時間や勝率は大きく向上するため、初心者〜中級者ほど効果が出やすい要素と言えます。
初心者向け:クリアリングの基本動作と考え方
この章では、「具体的にどう動けばよいのか」という基本の型を整理いたします。
見るべき場所の優先順位を決める
クリアリングは、「全部を一度に見る」のではなく、優先順位を決めて一つずつ確認することが大切です。
一般的な優先順位の例は以下のとおりです。
もっとも撃たれやすい場所(正面・近距離の角など)
よく敵が潜む場所(強ポジ・物陰・頭出しポジションなど)
もし敵がいたら大きな被害につながる場所(裏取りルートなど)
たとえばドアを開ける場合は、
まず左右の角
次に正面の通路の奥
最後に障害物の裏
といった順番で、確認する場所を事前に決めておくと安定します。
角・ドア・物陰のクリアリングの「型」
代表的なシーンごとに、基本となるクリアリングの型をまとめます。
曲がり角のクリアリング
体を大きく出す前に、少しずつ横移動しながら視界の端から中を確認する
角のすぐ内側だけでなく、その先の射線が通る位置も意識する
ドア・建物の入り口のクリアリング
ドアの真正面には立たず、少し横にずれた位置から室内を確認する
入室した直後は、左右の角 → 正面の順に素早くチェックする
物陰・障害物裏のクリアリング
障害物に近づきすぎず、少し距離を取って覗く
敵がいた場合にすぐ隠れられる避難先を確保したうえで覗く
まずはこれらの「型」を毎回意識し、身体で覚えることが上達への第一歩です。
視点(エイム)の置き方とヘッドラインの意識
クリアリング中の視点の置き方も非常に重要です。
敵の頭の高さ(ヘッドライン)付近に照準を置く
常に「敵が出てきそうな位置」に画面の中心を合わせながら移動する
視点が下を向きすぎていると、敵が現れた際に大きく照準を動かす必要があり、反応が間に合いません。
クリアリング中であっても、常にヘッドラインを意識して視点を置いておくことを習慣化してください。
実践テクニック:安全に覗くピークの方法
この章では、もう一段階踏み込んだ「覗き方」のテクニックを紹介いたします。
ゆっくり覗く vs 素早く覗くの使い分け
ピーク(覗き込み)には大きく分けて、次の2種類があります。
ゆっくり少しずつ覗くピーク
敵がいるかどうか情報を集めたいとき
正確な位置が分かっていないとき
素早く一気に飛び出すピーク
敵がそこにいることが分かっており、先手を取りたいとき
何度も同じ場所を覗く必要があり、被弾リスクを下げたいとき
タイトルごとに有効な動きは異なりますが、共通して言えるのは、状況に応じてピークの速度・大胆さを変えることが重要だという点です。
飛び出し撃ちなどリスクを減らす応用テクニック
応用テクニックとして、「飛び出し撃ち」のように角から飛び出すと同時に射撃する方法があります。
基本的な流れは以下のとおりです。
事前に「敵がいそうな位置」に照準を置いておく
角から横方向に素早く移動しながら、同時に射撃を開始する
撃ち終わったらすぐに再び遮蔽物の裏へ戻る
うまく決まれば先手を取ることができますが、外したときのリスクも高いため、ここぞという場面で使う補助的テクニックとして捉えておくとよろしいです。
射線管理と組み合わせたクリアリングの考え方
上達してきたら、「射線管理」の考え方もクリアリングに組み込んでください。
一度に複数方向から撃たれる状況を作らない
あえて見ないエリア(今は捨てるエリア)を決め、その射線が通らない位置に立つ
自分が見ていない方向から弾が飛んでこないよう、壁や遮蔽物を活用する
このように、どの方向から射線が通っているかを意識しながらクリアリングすることで、「確認していない方向から撃たれる」事故を大きく減らすことができます。
クリアリングのNG例と改善ポイント
この章では、初心者の方が陥りやすい失敗パターンと、その改善方法を整理いたします。
体だけ先に出してしまう危険な動き
もっとも多いNG例が、視点(頭)ではなく体を先に出してしまう動きです。
曲がり角で、まず体だけ大きく前に出してから周囲を見る
ドアの真正面に立ってから、中を確認し始める
この状態では、相手側からはすでに自分の体がほとんど見えているのに、自分はまだ敵を視認できておらず、非常に不利です。
改善のポイントは、
壁やドア枠から少し離れた位置に立ち、視点だけ先に動かす意識を持つ
横移動しながら、画面端に少しずつ部屋の中を映していく
といった、「視点を先に出す」感覚です。
同じ場所を何度も顔出ししてしまうクセ
二つ目のNG例は、同じ位置・同じ角度から何度もピークしてしまうクセです。
一度撃ち負けた場所に、同じ角度・同じタイミングで再度顔を出す
敵に位置がバレているにもかかわらず、同じルートで再挑戦する
このような動きは、相手にとって対処しやすい行動です。
改善策としては、
ピークする位置・高さを変える(しゃがみ、立ち、少し前に出るなど)
一度ルートを変え、別方向からクリアリングし直す
など、「同じことを繰り返さない」意識を持つことが重要です。
「やっているつもり」クリアリングの典型パターン
初心者の方がよく陥るのが、「本人はクリアリングしているつもりだが、実際には確認が不十分」というケースです。
左だけ確認して右を見ていない
部屋の一部しか視界に入っていない
視点が下に向きすぎていて、敵の頭の位置を見られていない
この場合、本人としては「ちゃんと見たはずなのにやられた」と感じやすく、原因に気付きにくいです。
対処としては、録画やリプレイを見返し、
撃たれる前の数秒間、自分の画面にどの範囲が映っていたか
視点の高さは敵の頭の位置付近にあったか
を確認することで、改善点が見えやすくなります。
シチュエーション別クリアリングのコツ
この章では、プレイ状況ごとの意識ポイントを整理いたします。
ソロ・野良での最低限の意識ポイント
ソロや野良では味方との連携が取りづらいため、次のポイントを最低限意識すると良いです。
自分が通ったルートの「裏」を敵に取られないよう、ときどき振り返る
味方から離れすぎず、「カバーが届く範囲」でクリアリングしながら前進する
足音や銃声から「敵がいそうなエリア」を事前に絞り込み、そこを重点的に確認する
すべての方向を完璧に見ることはできませんので、どこを優先し、どこを捨てるかを決めることが大切です。
デュオ・フルパでの役割分担と声掛け例
デュオやフルパでは、簡単な役割分担と声掛けだけでもクリアリングの精度が大きく上がります。
役割分担の例
プレイヤーA:手前の部屋と左側の角を確認
プレイヤーB:奥の通路と右側の角を確認
声掛けの例
「左クリア」「右まだ見てない」
「この部屋は自分が見るので、通路側お願いします」
重要なのは、「誰がどこを見ているか」をお互いに把握することです。
これにより、見落としや見ている場所の重複が減り、効率的なクリアリングが可能になります。
タイトル別の違い(バトロワ系・タクティカルFPS系)
ゲームタイトルの種類によって、クリアリングの重点ポイントは少し変わります。
バトロワ系タイトル
マップが広く、交戦距離も長くなりがち
高所や開けた場所、遠距離からの射線のクリアリングが重要
タクティカルFPS系タイトル
マップがコンパクトで室内戦・近距離戦が中心
ドア、角、狭い通路といった近距離のクリアリングが特に重要
とはいえ、どのジャンルでも「敵がいそうな場所を想定し、順番に潰していく」というクリアリングの基本概念は共通です。
今日からできるクリアリング練習メニュー
この章では、すぐに実践できる練習方法を紹介いたします。
プライベートマッチ・射撃訓練場での反復練習
実戦の中だけでクリアリングを覚えようとすると、どうしても試行回数が限られます。
そこで、プライベートマッチや射撃訓練場を活用し、次のような練習を行ってください。
よく使うマップの特定ルートを1つ選ぶ
曲がり角やドアの位置ごとに、「見る順番」を決めて歩きながら確認する
慣れてきたら、同じルートを少しずつスピードアップしてなぞる
可能であれば録画し、自分の視点の動きや体の出し方を後から確認すると、改善が早まります。
マップ研究と「敵がいそうな場所リスト」の作り方
クリアリングの精度は、「敵がよくいる場所をどれだけ知っているか」に大きく左右されます。
おすすめのやり方は次のとおりです。
自分が何度もやられた場所をメモしておく
動画配信や大会動画で、上手いプレイヤーがどこに隠れているか観察する
それらをまとめて、「要注意ポジションリスト」を自分なりに作る
このリストを頭に入れておくことで、「ここは敵がいそうだから優先して見る」という判断がしやすくなり、クリアリングが自然と洗練されていきます。
リプレイ・録画を使った自己フィードバックの方法
最後に、リプレイや録画を使った自己分析の方法です。
デスシーンを中心に見返し、「どこを見ていなかったか」を確認する
クリアリングを意識した試合と、そうでない試合を比較する
「この位置からこの射線で撃たれた」という情報をマップ上で整理する
これを繰り返すことで、「次に同じ状況になったら、どの順番でどこをクリアリングするか」が明確になり、実戦での判断が早くなります。
まとめ:クリアリングを身につけて“安定して強い”プレイヤーへ
まず覚えるべきポイントの再確認
最後に、本記事でお伝えしたポイントを簡潔に振り返ります。
クリアリングとは、敵が潜んでいそうな場所を確認しながら安全を確保して進む行為である
目的は「索敵」だけでなく、「安全なエリアを広げていく」ことにある
曲がり角・ドア・物陰ごとに、基本となるクリアリングの型を持つ
視点の高さ(ヘッドライン)と射線管理を意識することで、撃ち負ける確率を下げられる
NG行動を避け、録画やリプレイで自分の動きを振り返ることが上達を早める
一度に完璧を目指さず、1試合1テーマで改善する
クリアリングは、一日で身につくテクニックではありません。
いきなりすべてを意識しようとせず、
「今日は曲がり角のクリアリングだけ意識する」
「このマップの特定エリアだけ丁寧にクリアリングする」
といった形で、1試合につき1つのテーマに絞って改善することをおすすめいたします。

