※購入先、ダウンロードへのリンクにはアフィリエイトタグが含まれており、それらの購入や会員の成約、ダウンロードなどからの収益化を行う場合があります。

「QED」とは?意味・由来・使い方を数学の証明からやさしく解説

数学の教科書や先生の板書で、最後にさらりと書かれる「QED」。
なんとなく「証明が終わった印」というイメージはあっても、「そもそも何の略なのか」「どんな場面でどう書くのが正しいのか」までは自信が持てない方も多いはずです。
本記事では、QEDの意味とラテン語に由来する語源、数学の証明における具体的な使い方から、量子電磁力学など他分野での意味までを一度に整理します。
高校生・大学初年級レベルの学習者でも迷わず使えるよう、「試験でそのまま使える」実践的なポイントに絞って分かりやすく解説いたします。

「QED」とは?一言でいうとどんな意味か

「QED(Q.E.D.)」は、ラテン語 quod erat demonstrandum の略で、「これで示すべきことは示された」「証明すべきことは証明された」という意味の表現です。数学の教科書や証明問題の最後に書かれているのを見たことがある方も多いと思います。ウィキペディア+1

QEDはラテン語 “quod erat demonstrandum” の略

quod erat demonstrandum は直訳すると「それは、示されるべき状態にあった」という意味合いのラテン語です。

  • quod:それは

  • erat:〜であった

  • demonstrandum:示されるべき(動形容詞と呼ばれる形)

この三つが合わさって、「(今から示す命題は)示されるべきものであった」という文になり、その命題を実際に証明し終えたところで「Q.E.D.」と締めくくる、という使い方をします。

日本語では「証明終了」「これで示された」と訳される

日本語では、QEDは一般に「証明終了」「証明終わり」「これで示された」といった形で説明されます。厳密にはラテン語のニュアンスがありますが、数学教育の現場では「ここで証明が終わる」という印として理解すれば十分です。


QEDの由来と歴史的背景

ギリシャ語の表現からラテン語への翻訳

この表現はもともと、古代ギリシャ語の

ὅπερ ἔδει δεῖξαι(hoper edei deixai)

という言い回しに由来します。意味はやはり「示されるべきであったもの」で、ユークリッドやアルキメデスといった古代ギリシャの数学者が、命題の証明の最後にこの表現を添えていました。後に中世ヨーロッパでギリシャ語の数学書がラテン語に翻訳された際、これが quod erat demonstrandum と訳され、頭文字を取ってQ.E.D.と表記されるようになりました。

ユークリッド幾何学や哲学書でのQEDの使われ方

ルネサンス期の数学書はラテン語で書かれていたため、多くの証明が「定義・公理 → 命題 → 証明 → Q.E.D.」という構成をとっていました。ユークリッド幾何学はその典型例です。

また、哲学の世界でも、スピノザの『エチカ』のように、論理を数学的な形式にならって展開する書物では、議論の区切りとしてQ.E.D.が用いられています。論証が論理的に完結したことを示す、ひとつの「印」として機能してきたと言えます。


数学の証明におけるQEDの正しい使い方

証明問題の最後にQEDを書く位置と書き方

現代の数学の教科書や授業では、次のような形でQEDが用いられます。

  • 日本語での例

よって、a+ba+b は整数である。Q.E.D.

ここで重要なのは、結論となる文を書いたあとにQEDを書くことです。
結論を書かずに、いきなり

……(途中計算)
Q.E.D.

とだけ書くのは、本来の意味からは外れます。何が「示されるべきこと」だったのかが最後に明示されていないためです。

表記のバリエーション

  • Q.E.D.(各文字の後にピリオド)

  • QED(ピリオドなし)

どちらも使われますが、授業で先生が採用している書き方、あるいは教科書に合わせるのが安全です。

黒四角(∎)との違いとLaTeXでのQED記号

近代以降、活版印刷やコンピュータ組版では、QEDの代わりに「黒四角」「墓石記号」と呼ばれる記号

を使うことが増えました。これはend-of-proof symbol(証明終了記号)とも呼ばれ、数学論文で広く用いられています。

LaTeX(数学文書を作るための組版システム)では、proof 環境を使うと、証明の末尾に自動的にこの記号が挿入されます。

\begin{proof}
... 証明 ...
\end{proof}

特定の位置に記号を置きたい場合には \qedhere などのコマンドも利用されます。

学習レベルのレポートやレジュメでは、手書きなら「QED」「Q.E.D.」、LaTeXでは「∎」が自然な選択です。

試験・レポートでのOK例とNG例

OK例

  • 結論を明示してからQEDを書く

    • 「したがって、△ABCは正三角形である。Q.E.D.」

  • 教科書や講義ノートと同じ表記を使用する

  • 書き方に迷う場合は、日本語で「これで証明が完了する。」と書いて締める

NG例(避けた方がよい例)

  • 結論を書かずにQEDだけを書く

    • 「AB=ACとなることがわかる。Q.E.D.」
      (本来の命題が「△ABCが正三角形であることを示せ」の場合、最後に「したがって△ABCは正三角形である。」を明示してからQEDと書く方が適切です。)

  • 自分のレポートだけ極端に独自の記号を使う(クラスの標準から外れる)

  • 教員の指示と異なる形式をあえて使う

特に試験では、QEDを書くことが点数に直結するわけではありません。結論をきちんと書くことを最優先とし、QEDはあくまで「きれいな締めくくり」として位置づけてください。


「証明終了」以外のQED:量子電磁力学などの意味

物理学におけるQED(Quantum Electrodynamics)の概要

QEDは、数学の略語だけではなく、物理学では

Quantum Electrodynamics(量子電磁力学)

の略としても広く使われています。これは、光(電磁波)と電子など荷電粒子の相互作用を扱う量子論で、現代物理学の基礎理論のひとつです。

理論そのものは高度ですが、「QED:光と物質の不思議な理論(QED: The Strange Theory of Light and Matter)」のように、一般向けに解説した書籍もあります。タイトルにあるQEDは、この量子電磁力学を指しています。

書籍・作品タイトルとしてのQEDの意味

QEDは、以下のように書籍や小説シリーズのタイトルにも使われます。

  • 物理学書『QED: The Strange Theory of Light and Matter』

  • 日本のミステリー小説シリーズ『QED』など

この場合、”数学のQED(証明終了)物理のQED(量子電磁力学)”の両方のイメージを重ね合わせて、「真実が証明される」「謎解きが完了する」といったニュアンスを込めているケースもあります。


似た略語・関連表現も押さえておこう

Q.E.F.など、QEDに似たラテン語略語

QEDに似た表現として、次のようなラテン語略語もあります。

  • Q.E.F.(quod erat faciendum)

    • 意味:「これがなされるべきことであった」

    • 主に作図問題や構成問題など、「ある図形を作ること」自体を目的とする問題の結びで使われてきました。

ただし、現代の数学教育では、これらの略語を厳密に区別して使うことはあまり多くありません。高校レベルでは、QEDを押さえておけば十分と言えます。

英語で「これで証明が終わりです」と言う表現

QEDと同じ意味を、英語の文で表現することもよくあります。代表的なものは、次のような言い回しです。

  • This completes the proof.

  • Hence the proof is complete.

英語の教科書や論文では、これらの文の後にQ.E.D.を付けたり、代わりに∎を置いたりするケースがあります。


まとめ:QEDの意味と使い方を一度で整理

学習者が最低限おさえておきたいポイント

  • QEDはラテン語 “quod erat demonstrandum” の略で、「これで示すべきことは示された」という意味を持つ。

  • 日本語では「証明終了」「証明終わり」などと説明され、数学の証明の最後に置く印として使われる。

  • 結論となる文を書いたうえで、その直後に「Q.E.D.」または「QED」と書くのが基本的な形である。

  • 物理学では”Quantum Electrodynamics(量子電磁力学)”の略としてもQEDが使われるが、これは別の意味である。

今日から使えるQEDの書き方チェックリスト

実際にQEDを使う際は、次の点を確認してください。

  1. 何を証明したかを最後の文で明示しているか

    • 例:「したがって、△ABCは正三角形である。」

  2. その直後にQEDまたはQ.E.D.を書いているか

    • 例:「したがって、△ABCは正三角形である。Q.E.D.」

  3. 授業・教科書のスタイルと大きくずれていないか

    • 教科書に合わせる、あるいは教員の指示に従う

  4. 迷った場合は日本語の文章だけで締めてもよいと知っているか

    • 「これで証明が完了する。」など