ゲーム配信や実況動画で見かける「〇〇RTA」というタイトル。「なんとなく“急いでクリアしている動画”なのは分かるけれど、普通のタイムアタックと何が違うのか」「TASとかSpeedrunともごちゃごちゃしてきた…」と感じたことはないでしょうか。
本記事では、RTA(Real Time Attack)の正確な意味から、タイムアタック/TAS/Speedrunとの違い、代表的なカテゴリや基本ルール、イベントや配信としての魅力までを体系的に整理します。
さらに、「朝支度RTA」「残業RTA」といった日常スラングとしての使われ方や、初心者が実際にRTAに挑戦してみるための入門ステップも分かりやすく解説します。
この記事を読み終えるころには、「RTA」という言葉を“なんとなく”ではなく、自信を持って使いこなせるようになっているはずです。
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RTAとは?ゲーム用語としての基本的な意味
RTA(Real Time Attack)の正式名称と定義
「RTA」とは Real Time Attack(リアルタイムアタック) の略で、ゲーム開始からクリア条件を満たすまでにかかった「現実世界の経過時間」を競うプレイスタイルのことです。
通常のゲームプレイでは「クリアできるかどうか」が目的になりがちですが、RTAでは 「どれだけ早くクリアできるか」 が主役になります。
ゲーム開始ボタンを押した瞬間からスタート
エンディング到達や特定条件の達成までをゴールとする
その間に流れた“本当の時間”をタイマーで計測する
ここで重要なのは、計測対象が ゲーム内に表示されるプレイ時間ではなく、現実の経過時間(リアルタイム) であるという点です。ロード時間やメニュー操作、ミスからの立て直しなども含めて、その人の“通しプレイの速さ”を測る遊び方です。
タイムアタックとの大きな違いは「実時間」を競うこと
RTAとよく混同されるのが タイムアタック(Time Attack/TA) です。どちらも「速さを競う」点では同じですが、次のような違いがあります。
TA(タイムアタック)
計測対象:ゲーム内に表示されるタイム(インゲームタイム)
ロード時間などは記録に含まれないことが多い
セーブ&ロードを使って有利な状況を引き直すことも前提になりやすい
RTA(リアルタイムアタック)
計測対象:現実世界の経過時間(リアルタイム)
ロード時間やメニュー操作、多少の待ち時間も含めて計測
一度ゲームをスタートしたら、基本的に最後まで通しプレイ
スポーツで例えると、TAは「走っている時間だけを計測した記録」、RTAは「スタートからゴールまでに実際にかかった総時間」というイメージです。
同じタイトルでも、RTAとTAでは「どこをどう短縮するか」「どのバージョンが有利か」など、考え方や戦略が変わってきます。
RTAが生まれた背景とSpeedrun文化との関係
RTAという言葉は日本で広く使われている和製英語ですが、その背景には 海外の「Speedrun(スピードラン)」文化 があります。
海外では、ゲームをどれだけ早くクリアできるかを競う遊び方が2000年代から盛り上がり、記録をまとめるサイトやコミュニティが発展してきました。そこからさまざまなルールやカテゴリが整備され、現在のSpeedrun文化が形成されています。
日本では、この文化が動画投稿サイトや配信サービスを通じて広まり、
「リアルタイムでタイムを競う遊び方」を Real Time Attack=RTA と呼ぶようになりました。
また、「RTA in Japan」に代表されるイベントが定期的に開催されることで、RTAは単なるプレイスタイルを超えた一つのゲーム文化として認知されるようになっています。
RTAと紛らわしい関連用語の違い
TA(タイムアタック)との違い
あらためて、RTAとTAの違いを整理します。
共通点
どちらも「ゲームクリアまでの速さ」を競う
ルート研究・テクニック・運要素など、要素自体は似ている
大きな違い
RTA:現実時間ベースで計測(リアルタイム)
TA:ゲーム内のタイム表示ベースで計測(インゲームタイム)
その結果、次のような差が生まれます。
TAでは、長いロードや演出をスキップしても記録に影響しない場合がある
RTAでは、ロード時間や環境(機種・バージョン)も記録に影響する
TAではセーブデータを用意して「有利な状態だけプレイする」こともあるが、RTAは通しプレイが前提
同じ「速さを競う」といっても、計測方法が違うだけで求められる戦略が変わってくる点がポイントです。
TAS(ツールアシステッドスピードラン)との違い
TAS(Tool Assisted Speedrun/Tool Assisted Superplay) は、RTAと混同されやすい用語ですが、コンセプトがまったく異なります。
エミュレーターなどのツールを使用し、1フレームごとの入力を編集・やり直しながら「理論上の最速プレイ」を作る
人間がリアルタイムで再現するのはほぼ不可能なレベルの精密操作や運ゲーの引き当てが可能
実際のプレイというより、「ゲームの限界性能を見せる作品」に近い側面が強い
つまり、TASは「ツールありの最速」、RTAは「人間がリアルタイムで操作したときの最速」です。
TAS動画は、RTA走者にとっても「ここまで短縮できる可能性がある」という研究資料として参照されることがありますが、記録としては別枠で扱われます。
SpeedrunとRTAの関係性
英語圏では一般的に Speedrun という言葉が使われます。
Speedrun:ゲームを素早くクリアするプレイ全般を指す広い概念
RTA(Real Time Attack):その中でも「リアルタイム計測」のスタイルを指す、日本でよく使われる名称
海外のプレイヤーに「RTA」と言っても通じない場合があり、英語で情報収集する際は「Speedrun」というキーワードを使うほうが無難です。
RTAの基本ルールと主なカテゴリ
Any%・100%・Glitchlessなど代表的なカテゴリ
RTAは、同じゲームでも複数のカテゴリ(部門)に分かれていることが一般的です。代表的なものは次の通りです。
Any%(エニーパーセント)
クリア条件さえ満たせば、ルートや進行度は問わない
バグ技(グリッチ)の使用が許可されていることも多い
最短ルートをひたすら追求する、もっとも「速さ重視」のカテゴリ
100%
ゲーム内の要素(アイテム・クエスト・図鑑など)を一定の基準まで“完全制覇”することを条件としたカテゴリ
「何をもって100%とするか」はタイトルごとに定義が異なり、コミュニティで詳細なルールが決められている
Glitchless(グリッチレス)
バグ技の使用を禁止したカテゴリ
「どこまでをグリッチとみなすか」がよく議論になるポイントで、これも事前に細かくレギュレーションが定められる
このほか、
ノーダメージ(ダメージ禁止)
ノーセーブ
特定キャラクター限定
など、コミュニティ独自の細かなカテゴリが多数存在します。
RTAでよく使われる専門用語(走者・WR・PBなど)
RTA配信や動画で頻出する用語をまとめます。
走者(そうしゃ)/Runner
RTAに挑戦しているプレイヤーのことです。WR(World Record)
あるゲーム・カテゴリにおける世界記録(世界一のタイム)です。PB(Personal Best)
自分の自己ベストタイムを指します。「PB更新」は自己記録更新のことです。Glitch(グリッチ)
バグや想定外の挙動を利用したテクニックの総称です。Reset(リセット)
序盤のミスなどで好タイムが狙えなくなった際に、その走りを中断して最初からやり直すことです。
配信タイトルやチャット欄にこれらが出てきても、意味を知っていれば内容を理解しやすくなります。
計測開始・終了の基準とレギュレーションの考え方
RTAでは、「どこからどこまでをタイムとして記録するか」がとても重要です。
計測開始の例
「ニューゲーム」を選択した瞬間
プレイヤーキャラクターの操作が可能になった瞬間
計測終了の例
ラスボスに最後の一撃を与えた瞬間
操作不能のエンディングに入った瞬間
特定アイテムを入手した瞬間
これらはゲームごとに、コミュニティが事前に決めている レギュレーション(ルール) に従います。
公平性を保つため、記録を申請する際は「どのカテゴリ・どのレギュレーションに基づいたタイムか」を明確に示すことが一般的です。
RTAが人気を集める理由と視聴の楽しみ方
RTAの魅力:自由度・奥深さ・ストーリー性
RTAが多くの人を惹きつける理由として、次のような魅力があります。
同じゲームを“別のゲーム”のように楽しめる
普段は寄り道するダンジョンやイベントを大胆にスキップしたり、あえてダメージを受けて移動短縮に使ったりと、通常プレイとは全く違う発想が求められます。タイム短縮の積み重ねで成長を実感しやすい
1秒縮めるだけでも難しくなっていき、少しの改善が大きな達成感につながります。自分との戦いという側面が強い遊び方です。視聴コンテンツとしての“盛り上がりやすさ”
タイマーが常に表示されているため、視聴者も状況を把握しやすく、「ここから自己ベスト更新できるのか」というドキドキ感を共有できます。
イベントや配信文化(RTA in Japan など)の広がり
RTAは、イベントや配信文化と結び付くことで、より多くの人に親しまれるようになりました。
長時間にわたってさまざまなタイトルのRTAを披露するイベント
チャリティを目的にした企画
個人配信者による「自己ベスト更新チャレンジ」配信 など
特に、日本の大型イベントでは、有名タイトルだけでなくニッチなゲームのRTAも多数取り上げられます。視聴者は「こんな遊び方があるのか」「こんなゲームがあったのか」と新しい発見を楽しむことができます。
視聴者としてRTA配信を楽しむポイント
RTA配信をより楽しむためには、次のようなポイントを押さえておくと便利です。
単にタイムだけを見るのではなく、「どの区間でどれくらい短縮・ロスが出たか」に注目する
走者の説明(ルート選択の理由、技の採用理由、失敗時のリカバリー)に耳を傾け、考え方の奥深さを味わう
「PB更新」「WR挑戦」など、走者が設定している目標を意識して見る
こうした視点を持つだけで、「何となく眺めている配信」から一段深い楽しみ方に変わります。
ゲーム以外で使われる「〇〇RTA」の意味
日常スラングとしてのRTA:「朝支度RTA」「残業RTA」など
最近では、RTAという言葉がゲーム以外でも、日常的なスラングとして使われています。
代表的な例として、次のような使い方があります。
「出社まで30分しかないから、ここから朝支度RTAだ」
「この資料作成、1時間RTAで終わらせたい」
「お風呂RTA成功したから、今日は早く寝られる」
いずれも、元の意味である 「一定のタスクをどれだけ早く終わらせるかに挑戦する」 というニュアンスを、そのまま日常生活に当てはめた表現です。
どういうニュアンスで使われているか(冗談・自虐・チャレンジ)
「〇〇RTA」という言い回しには、次のようなニュアンスが含まれます。
冗談や自虐を交えた表現
「バタバタしている自分」「時間に追われている自分」を笑いに変えるイメージです。軽いチャレンジ宣言
「今日は集中して早く終わらせよう」という前向きな気持ちを、ゲーム用語になぞらえて表現しています。共感を呼ぶネタ
SNSで使うと、「わかる」「自分もやりがち」といった共感を呼びやすい表現になります。
ゲームに詳しくない人でも、文脈からなんとなく意味を推測できることが多く、ネットスラングとして広がっています。
ビジネスシーンやSNSで使う際の注意点
便利な表現ではありますが、ビジネスシーンで使う際には注意が必要です。
ゲームに馴染みのない相手には意味が伝わらない可能性がある
公式なメール・資料・プレゼン資料など、フォーマルな場では避けた方が無難
社内チャットやクローズドなSNSでも、使う相手・場面を選ぶことが大切
カジュアルな雑談やフランクなSNS投稿など、「ある程度ノリが共有されている場」で使う表現と考えるとよいです。
初心者がRTAにチャレンジするための入門ステップ
どのゲームで始めるか?タイトル選びのポイント
はじめてRTAに挑戦する場合、タイトル選びで難易度が大きく変わります。次の条件に当てはまるゲームから始めることをおすすめします。
すでに通常プレイで 1回以上クリアしたことがある タイトル
RTAでも1〜3時間程度でクリアできる、比較的短めの作品
既にRTA動画や解説記事があり、 ルートの参考資料が手に入る タイトル
いきなり世界記録が激戦のタイトルを選ぶ必要はありません。まずは「自分の中での最速クリア」を目指すつもりで、慣れ親しんだゲームから始めると続けやすくなります。
タイマーや録画環境など、最低限の準備
本格的な環境を整える前に、以下のような最低限の準備をしておくとスムーズです。
タイマーソフト
PCでプレイする場合は、ストップウォッチアプリやRTA向けタイマー(例:LiveSplitなど)を利用します。コンシューマ機の場合も、PC側でタイマーを動かしておけば問題ありません。録画・配信ツール
まずは録画なしでも構いませんが、後で振り返りたい場合や人に見せたい場合は、OBSなどの無料配信・録画ソフトを用意すると便利です。メモ・ログの管理
区間ごとのタイムやミスした箇所、うまくいった工夫などをメモしておくと、改善ポイントが見えやすくなります。ノートでもスプレッドシートでも構いません。
「タイムを測る」「ざっくり記録を残す」という最低限の仕組みがあるだけで、上達のスピードが大きく変わります。
記録の残し方・コミュニティとの関わり方
慣れてきたら、記録の残し方やコミュニティとの関わり方も意識してみてください。
自分用の記録
日付・タイム・主なミス・改善した点などを簡単にメモ
公開用の記録
動画サイトにノーカットでアップロードし、説明欄にカテゴリやルールを記載
コミュニティとの交流
同じゲームのRTAをしている配信者を見つけて視聴し、チャットで情報交換する
必要に応じて記録サイトに申請してみる
公式認定の世界記録を目指すかどうかは人それぞれです。最初はあくまで「自分の成長記録」として気楽に残していくのがおすすめです。
無理なく楽しみながら続けるコツ
RTAは、突き詰めるほど奥が深く、時にはストレスも感じる遊びです。長く楽しむためには、次のようなポイントが役立ちます。
1日ごとに「今日は完走するだけ」「序盤のルートだけ詰める」など、小さな目標を設定する
タイムが伸びない期間も、「安定して完走できるようになった」「ミスが減った」など、別の成長ポイントに目を向ける
他の走者のプレイを見て、新しいルートや考え方を取り入れ、モチベーションに変える
RTAは、世界記録保持者だけのものではありません。
「自分なりの最速を楽しむ遊び」 だと考えれば、誰でも今日から始めることができます。まずは、あなたが一番好きなゲームで、気軽に「自分だけのRTA」を試してみてください。