オンラインゲームや動画配信のコメント欄などで、「今回の戦犯は〇〇」「自分が戦犯でした…」といった表現を目にすることが増えていると思います。
しかし「戦犯」という言葉は、本来は戦争犯罪人を指す、非常に重い意味を持つ言葉です。そのため、ゲーム用語として気軽に使われていることに違和感を覚える人も少なくありません。
ここではまず、「戦犯」の本来の意味と、ゲーム用語としての意味の違いを整理いたします。
「戦犯」とは?ゲームでの意味をまず押さえましょう
本来の意味(戦争犯罪人)との違い
もともと「戦犯」は「戦争犯罪」「戦争犯罪人」の略語であり、第二次世界大戦後の裁判などの文脈で使われてきた言葉です。
戦争中に重大な国際法違反を行った人物
大きな人的被害・損害に対して責任を負う立場の人
といった、歴史的・政治的に非常に重い背景を持っています。
この「大きな被害の責任を負わされる人」というイメージが転じて、のちにスポーツやゲームなどで「敗因となった人」を指すスラングとしても使われるようになったと考えられています。
ゲーム用語としての「戦犯」の定義
ゲームの文脈では、「戦犯」はおおよそ次のような意味で使われています。
試合やマッチに負けた主な原因となったプレイヤー
チームプレイを乱したり、大きなミスで味方の足を引っ張った人
オンラインゲームの用語辞典などでも、
「試合に負けた一番の要因になったプレイヤー」
「ゲームなどで負けた原因を作ったプレイヤー」
といった説明がされています。
つまりゲーム用語としての「戦犯」は、戦績の悪さや判断ミスによって負けの原因を作った人を指す俗語と言えます。
どんな場面で「戦犯」と呼ばれるのか(ゲーム内の具体例)
実際には、次のような場面で「戦犯」と言われることが多いです。
チーム戦のFPSやMOBAで、デスが極端に多い
明らかな判断ミスで、大事なオブジェクト(タワー・拠点など)を失う
作戦を無視して単独行動を繰り返し、チームが崩壊した
スポーツゲームや対戦ゲームで、決定的な場面でミスをしてしまった
SNSや掲示板では、「この試合は自分が戦犯だった」「〇〇が戦犯だから負けた」などの書き込みもよく見られます。
ゲームでの「戦犯」の使い方と、やってはいけない使い方
ここでは、実際にどのような使い方がされているのか、比較的トラブルになりにくいケースと、問題になりやすいケースに分けて整理いたします。
フレンド同士での軽い自虐としての「戦犯」
比較的問題が少ないのは、仲の良いフレンド同士での自虐表現です。
「さっきの試合、完全に自分が戦犯でした…」
「今日ずっと調子悪くて、毎試合戦犯してる」
このように、自分のミスを冗談交じりに振り返る場面では、相手を傷つける意図がないことが多く、周囲も冗談として受け止めているケースが少なくありません。
ただし、フレンド同士であっても次のような場合は注意が必要です。
相手が落ち込んでいるときに、繰り返し「戦犯」と呼ぶ
関係性の浅い人や初対面の人に対して使う
相手の性格やそのときのメンタル次第では、冗談として受け取れず、強いストレスになる可能性があります。
他人を責めるために使うと何が問題なのか
もっとも問題になりやすいのは、他人を責めるラベルとして使う場合です。
「お前が戦犯だから負けた」
「この人戦犯だからブロック推奨」
SNSでプレイヤー名とともに「こいつ戦犯」と晒す
このような言い方は、単なるプレイ内容の指摘を超えて、人格否定や晒し行為と受け取られやすくなります。
さらに、「戦犯」が本来は戦争犯罪人を指す重い言葉であることを踏まえると、
「そこまで言う必要があるのか」
「言葉の選び方として配慮に欠けるのではないか」
と感じる人も少なくありません。
結果として、ゲーム内チャットでの口論、通報・ブロック、SNS上での炎上などに発展することがあります。
オンラインコミュニティでトラブルになりやすいケース
代表的なトラブル事例として、次のようなケースが挙げられます。
ランクマッチや野良マッチで、面識のない相手を「戦犯」呼ばわりする
VC(ボイスチャット)で感情的になり、「戦犯」を連呼する
配信中に特定プレイヤーを名指しで「戦犯」「ゴミ」などと組み合わせて批判する
SNSでクリップやスクリーンショットを貼り、「こいつ戦犯」と晒す
これらは、相手の気持ちや評判を大きく傷つける行為であり、ゲーム内の規約やプラットフォームのガイドラインに抵触する可能性もあります。
短期的にはストレス発散になるかもしれませんが、長期的には自分自身の評価や人間関係を悪化させるリスクが高く、避けた方が無難です。
「戦犯」という言葉をめぐる背景と問題意識
ここからは、「戦犯」という言葉がどのような経緯で現在のような使われ方をするようになったのか、その背景と、それに対する問題意識を整理いたします。
戦争犯罪・東京裁判からスポーツ・ゲーム用語へ
「戦犯」はもともと、第二次世界大戦後の東京裁判などで裁かれた戦争指導者などに対して使われた言葉です。
戦争犯罪の責任を問われた人物
多数の犠牲を出した決定に関わった指導者
といった、極めて重い責任を負わされた人を指していました。
その後、「責任を取らされる人」「敗北の責任を負う人」というイメージが広がり、スポーツ報道などで、試合に負けた原因とされた選手や監督に対して「戦犯」という表現が使われるようになります。
さらに、オンラインゲームが普及する中で、
負けた原因を作ったプレイヤー
チームの足を引っ張ったと見なされた人
を指すネットスラングとしても使われるようになり、現在に至っています。
子どもや初心者への影響と、教育現場での懸念
近年は、小学生〜中高生でもオンラインゲームをプレイすることが一般的になっています。
その一方で、歴史教育や語彙の学習がまだ十分でない段階で、
「戦犯=ゲームで負けた人」という意味だけを覚えてしまう
本来の意味(戦争犯罪人)を知らないまま使い続ける
といったケースも増えています。
学校や家庭で本来の意味を知ったときに、
「そんな重い意味があるとは知らなかった」
「相手に対してかなり失礼な言葉を使っていたかもしれない」
と驚く子どももいます。
保護者や教員からは、
重い歴史的背景を持つ言葉を、軽いノリで使ってほしくない
他者をレッテル貼りする言葉として広まっていることが心配
といった懸念の声も上がっています。
SNS・配信での炎上例から考えられるリスク
SNSや配信の世界では、「戦犯」という言葉が炎上のきっかけになることがあります。
有名プレイヤーや配信者が、味方や視聴者を「戦犯」呼ばわりする
その場面が切り抜き動画として拡散され、「言葉がきつすぎる」と批判される
スポンサーの付いている選手であれば、チームや企業のイメージダウンにつながる
このような事例からわかる通り、「戦犯」という言葉は、使う人の立場や影響力によっては大きなリスクを伴う表現です。
単に「ゲーム界隈でよく使われているから」という理由だけで安易に用いることは、避けた方が良い場面も多いと言えます。
「戦犯」の代わりに使える言い換え・フレーズ集
ここからは、「戦犯」という言葉を使わずに、状況を共有したり振り返ったりするための言い換え表現をご紹介いたします。
状況を冷静に説明する中立的な言い換え(敗因・ミスなど)
まずは、状況を客観的に説明する中立的な表現です。
「今回の敗因は終盤の集団戦の負けですね」
「あの場面で前に出すぎたのが良くなかったかもしれません」
「自分がポジションをミスしてしまったのが大きかったです」
「序盤のデスが多くて、こちらのペースを作れませんでした」
このように、
どの場面で
何が起きて
結果としてどうなったのか
を具体的に説明することで、「戦犯」という一言よりも、ずっと建設的な振り返りになります。
また、「敗因」「ミス」といった言葉も、個人に向けるのではなく、
「試合の敗因」
「チーム全体のミス」
といった形で使うことで、責めるニュアンスを弱めることができます。
チームで前向きに振り返るときのおすすめフレーズ
チーム全体で次につなげることを目的にするなら、次のような表現がおすすめです。
「次はもう少しまとまって動いてみましょう」
「自分が前に出すぎたので、次は引き気味に行きます」
「今の負け方だと、オブジェクトの意識を全員で合わせたいですね」
「序盤は良かったので、中盤以降の動き方を見直してみませんか」
ここでのポイントは、
主語を「誰が悪いか」ではなく、「自分」または「チーム」に置く
過去のミスではなく、「次にどうするか」に焦点を当てる
という二点です。
これだけで、チームの雰囲気が大きく変わり、同じ内容でも受け取られ方が柔らかくなります。
チャットでそのまま使える表現テンプレート
テキストチャットで使いやすい、簡単なテンプレートもご紹介いたします。
「さっきのラッシュ、自分が前に出すぎました。次は気をつけます。」
「終盤の集団戦の入り方が良くなかったですね。次はウルト合わせましょう。」
「今回の負けは、オブジェクトの意識がバラけていたのが大きかったと思います。」
「初心者なのでミス多いですが、少しずつ慣れていくのでよろしくお願いします!」
このようなフレーズをあらかじめいくつか覚えておくと、「戦犯」と短く言い切る必要がなくなり、より穏やかで前向きなコミュニケーションを取りやすくなります。
これからのゲームでの言葉選びとコミュニケーションのコツ
最後に、「戦犯」に限らず、オンラインゲームでの言葉選びを少し良くするための考え方をまとめます。
批判ではなく「改善のためのフィードバック」に変える
イライラしたときほど、
「お前が戦犯」
「下手すぎ」
といった短く強い言葉を投げつけたくなります。
しかし、長くゲームを楽しむためには、
何が良くなかったのか
次にどうすれば改善できるのか
というフィードバックの形に変換することが大切です。
「戦犯」というラベルは、原因を単純化する代わりに、改善の余地を見えにくくしてしまいます。
一度この言葉を頭の中から外し、具体的なプレイ内容に焦点を当てて言語化することを意識してみてください。
チーム内で最低限のマナーやNGワードを共有する
固定メンバーやフレンドグループで遊ぶ場合は、あらかじめ簡単なルールをすり合わせておくのも有効です。
冗談でも使わない言葉(「戦犯」「○○(差別的表現)」など)を共有する
指摘するときは「こうしてほしい」までセットで伝える
ミスしたプレイヤーを責め続けない
このような最低限のルールがあるだけで、雰囲気が良く、続けやすいチームになりやすくなります。
初心者・視聴者への配慮で、ゲーム体験をもっと良くする
配信者や上級者にとっては当たり前のスラングでも、初心者や若い視聴者にとっては意味がわからなかったり、過剰にショックを受けたりすることがあります。
初心者と遊ぶときは、専門用語やきついスラングを減らす
配信では、視聴者の年齢層や多様性を意識して言葉を選ぶ
コメント欄で攻撃的な言葉が続く場合は、モデレーションで対処する
といった工夫を行うことで、より多くの人にとって居心地の良いコミュニティをつくることができます。
まとめ:「戦犯」の意味を理解して、誰も傷つけないゲームコミュニケーションを
本記事では「戦犯 意味 ゲーム」というテーマで、
「戦犯」の本来の意味(戦争犯罪人)と、その歴史的背景
ゲーム用語としての「戦犯」=負けの原因を作ったプレイヤーという俗語的な意味
フレンド同士の自虐的な使い方と、他人を責める使い方の違い
子どもや初心者・視聴者への影響や、炎上リスク
「戦犯」を使わずに済ませるための言い換え表現・チャット例
などを整理してご説明いたしました。
「戦犯」という言葉を絶対に使ってはいけない、と一律に決めつけることが目的ではありません。
大事なのは、
この言葉が元々どういう意味を持っていたのか
どのように受け取る人がいるのか
自分はどんな言葉選びをしたいのか
を理解したうえで、意識的に選択することです。