「マリガン(mulligan)」とは、ひと言でまとめると「一度ミスした行為を、特別にもう一度やり直すこと」を表す言葉です。
もともとはゴルフで、ティーショットをミスしたときに「その一打をなかったことにして打ち直す」慣習を指す用語として使われてきました。
そこから転じて、カードゲームでは「手札の引き直し」、英語表現では「もう一度チャンスをもらう」という意味でも使われています。
本記事では、次の3つの観点から「マリガン」の意味と使い方を整理いたします。
ゴルフにおけるマリガンの意味・マナー・由来
カードゲームにおけるマリガンの意味と考え方
英語表現としての「mulligan」の意味と例文
「マリガンって結局どういう意味?」という疑問を、この記事1本で解消してください。
ゴルフにおける「マリガン」の意味
ゴルフのマリガンの基本定義
ゴルフで「マリガン」と言った場合、一般的には次のような意味になります。
主にティーショットを大きくミスしたときに、その一打をなかったことにして、ペナルティなしで打ち直すこと
公式ルールではなく、仲間内で合意して採用される“特別ルール”や慣習
朝一番のティーショットや、初心者向けのエンジョイラウンドなどで、「今のはマリガンにしよう」「マリガンOKね」といった形で使われることが多いです。
ポイントは、あくまで「みんなで楽しむためのローカルな救済措置」であり、スコアを厳密に競う場では基本的に用いないという点です。
マリガンは公式ルール?マナー的な注意点
ここで注意したいのは、マリガンはゴルフ規則上の公式ルールではないという点です。ルールブックにも記載はなく、ローカルルールとして定められているケースもほとんどありません。
そのため、次のような場面ではマリガンを使用すべきではありません。
公式競技やクラブ競技、社内コンペなどスコアを厳格に扱うラウンド
ゴルフ場や主催者から、**「ローカルルール以外の特別ルールは禁止」**と案内されている場合
一方で、完全なプライベートラウンドで、全員の合意がある場合は「エンジョイルール」として採用されることがあります。その際は、次のようなマナーを守るとトラブルになりにくくなります。
スタート前に「今日はマリガンありにしますか?」と確認しておく
誰か一人だけが得をしないよう、全員に平等に適用するかどうかを決めておく
後続組が待たされないよう、プレーの進行を妨げない範囲にとどめる
同伴者に確認する際の具体的な声かけ例としては、次のような言い方が自然です。
「今日は初心者も多いですし、朝イチだけマリガン1回ありにしませんか?」
「プライベートですし、全員1ラウンドで1回だけマリガンOKにしませんか?」
このように事前にルールを合わせておくと、「あの人だけマリガンしてずるい」といった不満を防ぎやすくなります。
マリガンの由来・語源
「マリガン(mulligan)」という言葉は、もともと英語圏でよくある姓(名字)です。そのうちの誰の名前から来たのかについては諸説ありますが、代表的なのは次の説です。
カナダのゴルファー、デビッド・B・マリガンに由来する説
ティーショットをミスした彼が、衝動的にもう一度打ち直した
それを一緒に回っていた仲間が「マリガン」と呼ぶようになった
その後、仲間内の“打ち直し”を指す言葉として広まった
ほかにも、ニュージャージーのゴルフ場で働いていた別のマリガン氏に由来するという説など、いくつかのバリエーションがありますが、共通しているのは次の点です。
どの説でも、「マリガン」という人物が仲間に配慮・思いやりを受けて打ち直しを許された
そのやりとりがきっかけで、「ミスを許してもう一度やり直すこと」を表す言葉になった
このような背景から、マリガンには「かたいルールというより、仲間同士の思いやりで成り立つ特別ルール」というニュアンスが含まれています。
カードゲームでの「マリガン」の意味
カードゲームにおけるマリガンの基本
カードゲーム、とくにトレーディングカードゲーム(TCG)やデジタルカードゲームの世界でも、「マリガン」という言葉はよく使われます。
カードゲームにおけるマリガンは、一般的に次のような意味です。
ゲーム開始時に配られた初期手札が悪いときに、手札の引き直しを行うルール
不利すぎる初期手札を避けることで、ゲームとしての面白さ・公平性を高める仕組み
この「最初の状態が悪すぎたときにやり直しを認める」という発想が、ゴルフのマリガンと共通しているため、同じ言葉が使われるようになりました。
なぜマリガンが必要かというと、カードゲームでは初期手札が極端に悪いと、それだけでほぼ勝負が決してしまうことがあるためです。マリガンによって「さすがにこれではゲームにならない」という状況をある程度防ぐことができます。
代表的なタイトルでのマリガンのイメージ
タイトルごとに細かいルールは異なりますが、イメージをつかむために代表的な例を挙げます(ここでは仕組みの概要にとどめます)。
マジック:ザ・ギャザリング(MTG)
初期手札が気に入らない場合、手札を山札に戻してシャッフルし、手札枚数を1枚減らして引き直すルールが広く用いられています(バリアントは複数あります)。
手札枚数が減っていく代わりに、より良い初期手札を探しにいけるイメージです。
ポケモンカードゲームなど他TCG
タイトルごとに細かい手順は違いますが、「手札を山札に戻してシャッフルし、同じ枚数を引き直す」「特定条件下のみ引き直せる」など、不利な初期手札を救済する仕組みとしてマリガンが存在します。
デジタルカードゲーム(シャドウバース等)
ゲーム開始時に配られた手札の中から、不要なカードを選んで山札に戻し、新しいカードを引き直すインターフェイスが用意されていることが一般的です。
画面上では「マリガンフェイズ」「手札交換」などと表示される場合があります。
いずれも、ゴルフ同様「スタート時の事故を減らすためのやり直し」という考え方が共通しています。
初心者向け:マリガンの判断ポイント
カードゲームに慣れていないと、「マリガンをするべきかどうか」の判断が難しく感じられることがあります。ここでは、ごく基本的な考え方を整理します。
そのデッキの“理想的な序盤”に必要なカードが1枚もない場合は、マリガンを検討する
コストが重すぎるカードばかりで、最初の数ターンに何もできない場合も、マリガン候補です。
ただし、むやみに何度もマリガンすると、かえって手札が弱くなるゲームもあるため、デッキごとのセオリーを確認することが重要です。
初心者がやりがちな失敗としては、次のようなものがあります。
「なんとなく不安」で、必要なカードまで戻してしまう
逆に、「せっかく引けた強いカードだから」と、序盤には重すぎるカードを抱え込んでしまう
慣れてくると、「この手札ならマリガンせずキープで良い」「この組み合わせはさすがに交換したほうが良い」といった感覚が少しずつ身についてきますので、まずはプレイしながら学んでいくことをおすすめいたします。
英語表現としての「mulligan」の意味
辞書的な意味と用法
英和辞書で「mulligan」を引くと、複数の意味が掲載されています。代表的なものは次の通りです。
《ゴルフ》マリガン:最初のティーショットの打ち直し(非公式ルール)
料理名「mulligan stew」:肉や野菜などを煮込んだごった煮料理
俗語的な用法:やり直し、二度目のチャンスといった意味で用いられることもあります。
日常的には、ゴルフの文脈で使われるか、比喩的に「もう一回やり直そう」という意味で用いられるケースが多いです。
日常会話・ビジネスでの例文
カジュアルな会話や、ややくだけたビジネスシーンでは、mulligan が次のように使われることがあります。
カジュアルな場面の例
I totally messed up that presentation. Can I get a mulligan?
「あのプレゼンは完全に失敗しました。もう一度チャンスをもらえますか。」
Let’s take a mulligan on this project and start over.
「このプロジェクトは一度なかったことにして、やり直しましょう。」
ビジネスシーン(ややカジュアル)の例
Thank you for giving us a mulligan on the deadline.
「締切について、やり直す機会を与えてくださりありがとうございます。」
いずれの表現も、フォーマルな契約書や公式文書には不向きで、あくまで口語的・カジュアル寄りの英語です。使う相手との距離感や場面を選ぶようにしてください。
まとめ:「マリガン」は『思いやりのやり直し』を指す言葉
状況別の意味をおさらい
ここまでの内容を、場面ごとに整理いたします。
ゴルフ
ティーショットなどを大きくミスしたときに、その一打をなかったことにしてペナルティなしで打ち直す慣習。
公式ルールではなく、仲間内のエンジョイラウンドで合意のうえ採用される特別ルールです。
カードゲーム
ゲーム開始時の初期手札が悪いときに、手札を引き直す仕組み。
ゴルフのマリガンから転用された概念で、ゲームバランスを保つための救済措置という役割があります。
英語表現としてのmulligan
ゴルフの打ち直しを指すほか、比喩的に「もう一度チャンスをもらう」「やり直す」といった意味で使われます。
カジュアル寄りの表現のため、使う場面には注意が必要です。
実際の場面で困らないために
実際にゴルフ場やゲーム、英会話などの場面で「マリガン」という言葉を耳にしたときは、次の点を意識していただくと安心です。
何よりもまず、「これは一度ミスしたものを、特別にやり直すことを指している」と理解する
ゴルフでは、競技かプライベートかを見極め、マリガンを使って良い場面かどうかを事前に確認する
カードゲームでは、タイトルごとのルールにしたがいつつ、「なぜマリガンするのか」という考え方を押さえる
英語表現として使われたときは、「やり直し」「二度目のチャンス」というニュアンスで解釈する
このようなポイントを押さえておけば、「マリガン」という言葉に出会っても意味に迷うことはほとんどなくなるはずです。ゴルフでもゲームでも英会話でも、「マリガン」を上手に活用しながら、プレーやコミュニケーションをより楽しんでいただければ幸いです。