「売上をもっとブーストしたい」「この機能をオンにすると端末の動作がブーストされます」など、「ブースト」という言葉を耳にする場面は増えています。
一方で、
なんとなく雰囲気で使っている
ビジネスメールで使ってよいのか不安である
英語の“boost”と何が違うのか分からない
ゲームでの「ブースト」と「ブースティング」の違いが分からない
と感じている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、「ブースト/boost」の意味を整理しつつ、分野別の使い方や、ビジネスシーンでの自然な言い換え表現、ゲームにおけるランク上げや「ブースティング」の意味まで解説いたします。
ブースト/boostの基本的な意味
英語“boost”の意味と主な用法
英語の “boost” は、動詞と名詞の両方で使われる単語です。代表的な意味は次のとおりです。
動詞
押し上げる、高める
強化する、促進する、後押しする
(数値・量などを)増加させる
名詞
後押し、援助
増加、上昇
例:
boost sales:売上を伸ばす・売上を増加させる
boost productivity:生産性を高める
give someone a boost:誰かを後押しする、励ます
いずれも、「今より良い状態に押し上げる・強くする」というイメージを持つ言葉です。
カタカナ語「ブースト」の日本語での意味
日本語の辞書では、「ブースト(boost)」は主に次のような意味で説明されます。
押し上げること
与圧すること(圧力を加えること)
電圧を上げること
もともとは技術分野の用語でしたが、現在の日本語では意味が広がり、
数値・性能・能力などを 一時的または集中的に底上げすること
何かを強化するための機能・モード
といったニュアンスで使われることが多くなっています。
英語のboostと日本語のブーストの違い
英語の“boost”と、日本語のカタカナ語「ブースト」は、おおむね同じイメージですが、次のような違いがあります。
| 項目 | 英語 “boost” | 日本語「ブースト」 |
|---|---|---|
| 用法 | 名詞・動詞 | 名詞・サ変動詞(ブーストする) |
| 主な意味 | 押し上げる、高める、増加させる、励ます | 強化、増幅、性能・数値を引き上げる |
| 使われ方 | 日常会話〜ビジネスまで幅広い | IT・ゲーム・技術、ビジネスカジュアルな文脈 |
| フォーマル度 | コンテキスト次第 | 日本語の正式文書ではややカジュアル/専門寄り |
日本語で「ブーストをかける」と言うと、ややカジュアル・IT寄りの印象になります。
公的な文書やかたい文体では、後述する日本語表現に言い換える方が無難です。
分野別に見る「ブースト」の意味と使い方
スマホ・PCでのブースト機能(動作の一時的な高速化)
スマホやPCの設定、アプリの説明で見かける「ブースト」は、多くの場合、
一時的に処理を軽くし、動作を速く感じさせるための機能
を指します。
メモリの解放
不要なバックグラウンドアプリの終了
キャッシュの削除
などをまとめて行うことで、「一時的な軽量化」を実現するイメージです。
ポイント
端末の「性能そのものが上がる」わけではない
あくまで 一時的に最適化して軽くする という意味合いです
ゲームでのブースト(能力・速度・経験値・ランク上昇の一時的上昇)
ゲームの世界で「ブースト」は、次のような効果を指すことが多いです。
能力の上昇
一定時間だけ攻撃力・防御力などが大きく上がる
例:パワーブースト、防御ブースト など
速度の上昇
レースゲームなどで、一定時間だけ移動速度が急上昇する
例:スピードブースト、ダッシュブースト
経験値・報酬の上昇
獲得経験値や報酬が増える
例:経験値ブースト、報酬ブースト
ランク上昇のブースト(ランクポイントの増加)
対戦ゲームなどで、ランクポイント(レート)の獲得量が一時的に増える
例:ランクブースト、ランクアップブースト
この「ランクブースト」では、
特定イベント期間中だけ、勝利時にもらえるポイントが増える
ブーストアイテム購入により、同じ戦績でも通常より早くランクが上がる
といった仕様が導入されることがあります。
ここでの「ブースト」は、開発側が公式に用意した ランク上昇ペースを一時的に引き上げる仕組み という意味です。
同じような言葉に「バフ」がありますが、「ブースト」はより「急激な加速・強化」「短期間で一気に上げる」というニュアンスが強いことが多いです。
ブースティング(boosting)の意味と注意点
一方で、ゲームコミュニティなどで使われる 「ブースティング(boosting)」 は、上記の「正規のブースト機能」とは異なる意味を持ちます。
本来の実力以上のランク・レートに、不正またはグレーな方法でアカウントを引き上げる行為 を指すことが多い
代表的な例は次のとおりです。
代行プレイ型ブースティング
上級者や業者に自分のアカウントでプレイさせ、ランクを上げてもらう
談合・意図的マッチ操作型ブースティング
複数アカウントやフレンド同士でマッチングを操作し、意図的に勝ちやすい試合を作ってランクを上げる
極端な「キャリー」による不自然なランク上昇
明らかに実力差のある高ランクプレイヤーが低ランクアカウントを継続的に「持ち上げ」ることで、短期間でランクを上げる
多くのオンライン対戦ゲームでは、このようなブースティング行為は 利用規約違反 とされており、アカウント停止などのペナルティ対象になる場合があります。
「公式のランクブーストアイテム」=ゲーム内で認められた仕組み
「ブースティング」=本来想定されていない方法でランクを不自然に引き上げる行為
という区別を意識しておくことが重要です。
自動車・エンジンのブースト(過給・出力アップ)
自動車分野では、ターボチャージャーなどによる 過給圧(ブースト圧) を指す専門用語として使われます。
エンジンに送り込む空気の圧力を高める
その結果、燃焼に使える空気が増え、出力が上がる
といったイメージであり、比較的技術的・専門的な用法です。
音楽・音響分野でのブースト(特定の音域を持ち上げる)
音響機器や音楽制作では、
特定の周波数帯域の音量を持ち上げること
を「ブースト」と呼びます。
ベースブースト:低音域を強調する
トレブルブースト:高音域を強調する
イコライザーの特定の帯域を上に持ち上げるイメージです。
ビジネスシーンでの「ブースト」の使い方
「売上をブーストする」はアリ?ナシ?
社内チャットや会議で、
「この施策で売上をブーストしたい」
「まずはトラフィックをブーストしましょう」
といった表現を目にすることが増えています。
結論としては:
社内のカジュアルな会話・チャット: 使用されることが多く、問題になりづらい
フォーマルな資料・対外的な文書: 日本語に言い換えた方が無難
と考えると良いです。
理由は、
カタカナ語に不慣れな相手には意味が伝わりにくい
公的な文書では、より明確で誤解の少ない日本語が好まれる
ためです。
資料・メールで使える自然な日本語の言い換え例
「ブースト」を、ビジネス文書で自然な日本語に言い換える例を挙げます。
| 元の表現 | 意味のイメージ | 推奨される言い換え例 |
|---|---|---|
| 売上をブーストする | 売上を大きく伸ばす | 売上を伸ばす/売上を増加させる/売上を押し上げる |
| アクセスをブーストする | アクセス数を増やす | アクセス数を増やす/流入を増やす |
| エンゲージメントをブーストする | 反応・参加を高める | エンゲージメントを高める/反応率を向上させる |
| チームの士気をブーストする | やる気を高める | 士気を高める/モチベーションを高める |
| プロジェクトをブーストする | 進行を加速させる | プロジェクトを加速させる/推進する |
ポイント
「何をどうしたいのか」を具体的な動詞に置き換える
数値:増やす/伸ばす/向上させる
進行:加速させる/推進する
人の気持ち:高める/盛り上げる
このように言い換えると、相手にとっても意味が明確になり、誤解を防ぎやすくなります。
フォーマルな場で避けたいNG/注意したい使い方
次のようなケースでは、「ブースト」を避ける方が安全です。
官公庁・金融機関・大企業向けの正式な提案書
契約書・規程類などのリーガル文書
年配の方が中心の会議・書面
このような場面では、
「ブースト」という言葉自体が伝わらない
「軽い/カジュアルすぎる」という印象を与える
可能性があります。
その場合は、次のような日本語表現を用いると良いでしょう。
売上を増加させる
利益率を向上させる
体制を強化する
プロジェクトを加速させる
類義語・対義語・関連用語との違い
類義語(強化する・底上げする・伸ばす など)
「ブースト」と近い意味を持つ、日本語の代表的な表現は次のとおりです。
強化する
促進する
底上げする
伸ばす
押し上げる
加速させる
活性化する
文脈に合わせてこれらを使い分けることで、より正確で自然な表現になります。
対義語・反対のニュアンスをもつ言葉
明確な1対1の対義語はありませんが、方向性として反対のイメージに近い言葉としては以下が挙げられます。
弱める/低下させる
抑制する
減少させる
減速させる
「ブーストする」が「上向きに押し上げる」イメージであるのに対し、これらは「下向き」「抑え込む」方向のイメージです。
関連用語「ブースター」「バフ」との違い
ブースター(booster)
「ブーストするための装置・薬剤・人」などを指す語
例:Wi-Fiブースター(電波を強くする機器)、ワクチンのブースター接種(追加接種) など
バフ(buff)〔ゲーム用語〕
キャラクターの能力を上げる効果・状態を指すゲーム用語
「ブースト」とほぼ同じ場面で使われることも多いものの、
バフ:能力が上がっている「状態」
ブースト:能力や数値を一気に「押し上げる行為・効果」
といったニュアンスの違いが意識されることがあります。
例文で理解する「ブースト」の使い方
日常会話・カジュアルな文脈の例文
このアプリを入れると、スマホの動作がちょっとブーストされるよ。
エナジードリンクで、朝のパフォーマンスをブーストしたいです。
新しい広告で、フォロワー数を一気にブーストできました。
いずれも、友人同士や同僚同士のカジュアルな会話で使われるイメージです。
ビジネスメール・資料での例文(カタカナ+日本語の併用例)
カタカナ語を完全に排除する必要はありません。相手や場面を選びつつ、次のように 日本語と併記する 形にすると、誤解が少なくなります。
本キャンペーンにより、短期的に売上をブースト(押し上げ)することを狙います。
新機能追加により、利用頻度をブースト(向上)できると考えています。
プロモーション施策で、初動の流入をブースト(加速)する計画です。
よりフォーマルにしたい場合は、「ブースト(〜する)」部分をそのまま日本語に置き換えます。
本キャンペーンにより、短期的に売上を押し上げることを狙います。
新機能追加により、利用頻度を向上できると考えています。
英語“boost”を使った英文例
英語で“boost”を使うときの基本的な例です。
We need a new strategy to boost sales next quarter.
(次の四半期に売上を伸ばすために、新しい戦略が必要です。)This campaign will boost our brand awareness.
(このキャンペーンは自社のブランド認知を高めてくれます。)Regular exercise can boost your energy level.
(定期的な運動はエネルギーレベルを高めてくれます。)
日本語の「ブースト」と同じく、「今より良い状態に押し上げる」というイメージで使われます。
まとめ:意味を理解して、場面に応じて正しく「ブースト」を使おう
最後に、本記事のポイントを整理いたします。
「ブースト/boost」は
「押し上げる」「強化する」「増加させる」といった意味を持つ言葉
日本語では、主にIT・ゲーム・自動車・音響・ビジネスカジュアルな文脈で使われる
分野別のイメージ
スマホ・PC:一時的な軽量化・高速化
ゲーム:能力・速度・経験値・ランクポイントの一時的な上昇
正規の「ランクブースト」と、規約違反になり得る「ブースティング(ランク代行行為)」は別物
自動車:過給による出力アップ
音楽・音響:特定の音域を持ち上げる
ビジネスシーンでは
社内のカジュアルな会話・チャットでは「売上をブーストする」などもよく用いられる
かたい資料・対外的な文書では、「伸ばす」「向上させる」「押し上げる」「加速させる」などの日本語に言い換えると無難
迷ったら、日本語の具体動詞に置き換える
数値:増やす/伸ばす/向上させる
プロジェクト:加速させる/推進する
人・組織:強化する/活性化する/士気を高める
「ブースト」という言葉の核にあるイメージは、あくまで 今より良い状態に力を加えて押し上げること です。
そのイメージを押さえたうえで、相手や場面に応じて、日本語表現と上手に使い分けていただければ幸いです。