PCゲームの設定画面で「垂直同期」「V-SYNC」という項目を見かけるものの、
オンにすべきかオフにすべきか分からず、そのまま放置している方も多いのではないでしょうか。
本記事では、垂直同期の基本から、オン/オフの違い、さらにVRR(G-SYNC / FreeSync)時代における最適な考え方まで、分かりやすく解説します。
垂直同期とは?まず押さえたい基本概念
垂直同期(V-SYNC)の役割と仕組み
垂直同期(V-SYNC)とは、
PCが描画するフレームレート(fps)と、モニターのリフレッシュレート(Hz)を同期させることで、画面のズレ(テアリング)を防ぐ仕組みです。
- フレームレート(fps):
グラフィックボード(GPU)が1秒間に何枚の画像(フレーム)を描画できるか - リフレッシュレート(Hz):
モニターが1秒間に何回画面を書き換えられるか
例えば、60Hzのモニターは1秒間に60回画面を更新します。
一方で、GPUが70fpsなどモニターより多くのフレームを描画すると、
画面の上と下で異なるフレームが混ざって表示され、「割れた」ように見える現象が起こります。
これがテアリングです。:contentReference[oaicite:11]{index=11}
垂直同期は、モニターが画面を書き換えるタイミングに合わせてGPUの出力タイミングを調整し、テアリングを抑える役割を持ちます。
テアリング・スタッタリング・入力遅延の基礎用語
垂直同期を理解するうえで、次の3つの用語を押さえておくと整理しやすくなります。
- テアリング(Tearing)
画面の一部が横方向にズレて見える、映像が「割れた」ように見える現象。 - スタッタリング(Stuttering)
一定間隔でコマ落ちが発生し、映像がカクカク・ガクガクと引っかかって見える状態。 - 入力遅延(Input Lag)
マウスやコントローラーで操作してから、画面に反映されるまでのタイムラグ。
垂直同期をオンにすると、テアリングは抑えられる一方で、スタッタリングや入力遅延が増える場合があるため、「万能ではない」点が重要です。
なぜ垂直同期が必要になるのか
テアリングが起こる理由
テアリングの原因は、GPUが描画している最中のフレームが、モニターに中途半端な状態で送り出されてしまうことにあります。
60Hzモニターの例で考えると、
- モニター:1秒間に60回画面を書き換える
- GPU:軽いゲームで80fps出せる
この場合、モニターが1回画面を更新している間に、GPUは1フレーム目の上半分、2フレーム目の下半分……といった具合に、違うフレームが混ざって表示されてしまうことがあります。これがテアリングです。
垂直同期をオンにすると、モニターの更新タイミングに合わせてGPUのフレーム更新を行うので、1回の画面更新で1枚のフレームだけが表示され、テアリングを抑えられます。
垂直同期オン時のメリット・デメリット
メリット
- テアリングがほぼ発生しなくなる
- 映像が安定し、見た目が滑らかに感じられることが多い
- 動きの少ないゲームやRPGなどで画質重視のプレイがしやすい
デメリット
- GPUのフレーム出力がモニターのリフレッシュレートに縛られるため、
フレームレートが60fps→30fpsといった段階的な落ち込み(スタッタリング)が発生しやすくなる - 入力遅延が増える傾向があり、FPSや格闘ゲームでは不利になりうる
垂直同期はオンとオフどちらが良い?ケース別に解説
ここからは、「自分の環境ではどうすればよいのか」という視点で解説します。
あくまで一般的な傾向であり、最終的にはご自身の好み・プレイスタイルで調整してください。
60Hzモニター × 一般的なゲーミングPCの場合
- 例:
- フルHD(1920×1080)60Hzモニター
- ミドルレンジGPU(例:GeForce RTX 3060 / Radeon RX 6600クラス)
おすすめの考え方
- 画面の割れ(テアリング)が気になる →
垂直同期「オン」を試す価値があります。 - 入力遅延より画質の安定を重視するゲーム(RPG、シミュレーション、シングルプレイ中心)では、基本的にオンでも問題ないケースが多いです。
一方で、GPU性能が足りず、常にフレームレートが60fpsを下回るような状況では、
垂直同期オンがスタッタリングの原因になることもあります。
その場合は「垂直同期オフ+画質設定を下げてfpsを安定させる」方が快適なこともあります。
144Hz以上のゲーミングモニターの場合
144Hzや240Hzなど、高リフレッシュレートモニターを利用している場合は、
高いfpsを活かすことが重要な目的になります。
- GPUで十分に高fpsを出せる → 垂直同期オフでもテアリングが目立ちにくいことが多い
- テアリングがどうしても気になる →
ゲームによっては「高速」「適応」などのモード(NVIDIA)を使い、遅延とテアリングのバランスを取る方法もあります。
競技系FPS・格闘ゲームの場合
Apex Legends、VALORANT、格闘ゲームなど、
入力遅延が勝敗に直結するタイトルでは、一般的に次の考え方がよく採られます。
- 優先すべきは「レイテンシ(入力遅延)の最小化」
- 多少のテアリングは許容する代わりに、垂直同期はオフにする
- 可能であれば、VRR(G-SYNC / FreeSync)や低遅延機能(NVIDIA Reflex等)を併用する
競技志向が強い場合は、
「垂直同期オフ+フレームレート上限をモニターリフレッシュレートより少し下に設定+VRR有効(対応環境なら)」
といった構成が実践的な選択肢になります。
RPG・アクション・シミュレーションゲームの場合
見た目の美しさや映像の安定感を重視するゲームでは、
垂直同期オンでテアリングを抑えた方が快適と感じる方も多いです。
- 画面のブレが目立つ → 垂直同期オンを試す
- 遅延が気になる → 垂直同期オフ+設定を軽くしてfpsを上げる
といった形で、タイトルごとに設定を変えるのが現実的な運用方法です。
VRR(G-SYNC / FreeSync)時代の垂直同期
VRRとは何か?垂直同期との違い
VRR(Variable Refresh Rate:可変リフレッシュレート)とは、
モニター側のリフレッシュレートをGPUのフレームレートに合わせて変化させる技術です。
- 従来の垂直同期:
「モニターに合わせてGPUを待たせる」ことでテアリングを抑える - VRR(G-SYNC / FreeSync):
「GPUのフレームに合わせてモニターの更新タイミングを変える」
この違いにより、VRRはテアリングとスタッタリングを同時に抑えつつ、遅延を抑えることが期待できます。
VRR対応モニターでの基本的な考え方
VRR対応モニター(G-SYNC / FreeSync / G-SYNC Compatibleなど)の場合は、
- モニター側でVRR機能を有効化
- GPUドライバー側でもG-SYNC / FreeSyncを有効化
- ゲーム内の垂直同期は基本的に「オフ」から試す
という流れが、一つの分かりやすいスタート地点になります。
そのうえで、もし特定タイトルでテアリングや挙動の不具合が出る場合は、
ゲーム側の垂直同期をオンにしたり、ドライバー側の設定を調整してバランスを取ります。
コンソール(PS5 / Xbox Series X|S)での注意点
家庭用ゲーム機では、垂直同期は基本的にシステム側で固定されており、
ユーザーが細かくオン/オフを切り替えることはできません。
- VRR対応モニター+対応機種(PS5, Xbox Series X|Sなど)の場合は、
本体設定でVRRを有効にすることで、テアリングやスタッタリングの軽減が期待できます。 - PCと違い、ゲームごとに細かくいじれないため、
「VRR対応モニター+VRRオン」にしておくのがシンプルな選択肢です。
設定レイヤー別:どこで何を設定すべきか
垂直同期やVRRまわりの設定は、以下の3レイヤーに分かれます。
- ゲーム内設定
- GPUドライバー設定(NVIDIA / AMD)
- OS・モニター設定
ゲーム内設定での垂直同期
多くのゲームには「垂直同期」「V-Sync」などの項目があります。
- 長所:
ゲームごとに最適な挙動になるよう調整されていることが多い - 短所:
ドライバー側の設定と競合し、思った通りの動作をしないことがある
まずはゲーム内の垂直同期設定から調整するのが分かりやすいアプローチです。
GPUドライバー(NVIDIA / AMD)の設定
NVIDIAコントロールパネルやAMD Softwareでは、アプリケーションごとに垂直同期やフレームレート上限を指定できます。
- NVIDIA例:
- 垂直同期:オフ/オン/適応/高速 など
- 最大フレームレート:任意の値で制限
- AMD例:
- Radeon Anti-LagやRadeon Chillと組み合わせて遅延や消費電力を調整
ゲーム内設定を優先するのか、ドライバー側を優先するのかを意識し、どちらか一方を主として管理する運用が混乱を減らすポイントです。
Windowsとモニター側の設定(リフレッシュレート/VRR)
- Windowsの「ディスプレイの詳細設定」で、
モニターのリフレッシュレート(例:60Hz/120Hz/144Hz)を正しく選択しておくことが前提です。 - モニター側のOSDメニューで、
VRR(G-SYNC/FreeSync)のオン/オフや、ゲーミングモードを確認します。
リフレッシュレートがそもそも60Hzのままになっていると、
144Hzモニターの性能を活かせませんので、まずここをチェックしてください。
症状から逆引き!よくある悩みとおすすめ設定例
ここでは、「画面で何が起きているか」から設定を逆引きできるように整理します。
1. 画面が横にズレて割れて見える(テアリング)
想定される原因
- フレームレートがモニターのリフレッシュレートを大きく上回っている
- 垂直同期やVRRが無効になっている
試してみる設定
- まずゲーム内の垂直同期をオンにする
- または、フレームレート上限をモニターのリフレッシュレートと同程度に制限する
- VRR対応環境であれば、垂直同期はオフのまま、VRRを有効にして様子を見る
2. カクつく・引っかかる(スタッタリング)
想定される原因
- GPU性能不足によるフレームレートの大きな変動
- 垂直同期オン時にfpsがリフレッシュレートを下回っている
試してみる設定
- 画質設定を下げてfpsを安定させる(解像度、影、アンチエイリアスなど)
- 垂直同期オンでスタッタリングがひどい場合は、一度オフにして挙動を確認する
- VRR環境なら、垂直同期オフ+VRRオンで改善するか試す
3. 操作がワンテンポ遅れる(入力遅延)
想定される原因
- 垂直同期オンによる遅延増加
- フレームレート不足による表示遅延
- コントローラー・無線通信・テレビ側の処理(ゲームモードオフ)など
試してみる設定
- 垂直同期をオフにして、入力のキレを確認
- フレームレート上限をモニターのリフレッシュレート付近に設定
- ゲームモードや低遅延モードをモニター・テレビ側で有効にする
- VRR+低遅延機能(Reflex等)がある場合は積極的にオンにする
4. ゲームによって挙動がバラバラで安定しない
想定される原因
- ゲーム内設定とドライバー設定が競合している
- タイトルごとの最適な設計方針が異なる
試してみる設定
- いったんドライバー側のカスタム設定をリセットし、「アプリケーションに任せる」に戻す
- 各ゲームで、
- まず垂直同期オフ+fps上限設定
- それでもテアリングが気になる場合のみ、垂直同期オン
といった「段階的な調整」を行う
5分でできる垂直同期チェックリスト
最後に、この記事の内容をすぐ試せるよう、簡易チェックリストを用意しました。
モニターのリフレッシュレートを確認しましたか?
- Windowsの設定で、60Hz/120Hz/144Hzなど、スペックどおりの値になっているか
自分の主なゲームジャンルはどれですか?
- 競技系FPS・格闘 → 遅延最優先(垂直同期オフ寄り)
- RPG・アクション・シミュレーション → 画質・安定性優先(垂直同期オンも検討)
VRR対応モニターと対応GPUを使っていますか?
- 使っている → モニターとドライバーでVRRを有効化
- 使っていない → 垂直同期とfps上限でバランスを取る
症状ベースで次のどれに当てはまりますか?
- 画面が割れて見える → テアリング対策(垂直同期オン/VRRオン)
- カクつく → fps安定+垂直同期のオン/オフを比較
- 操作が遅い → 垂直同期オフ+低遅延機能を確認
1つずつ変更し、体感を比べましたか?
- 複数の設定を一度に変えると原因が分かりにくくなります。
- 「変える → 試す → 戻す」を小さなステップで繰り返すことが大切です。
まとめ:垂直同期を理解して、自分の環境に合った最適設定を
- 垂直同期は、フレームレートとリフレッシュレートを同期させてテアリングを防ぐ機能です。
- その一方で、スタッタリングや入力遅延が増える場合があるため、
競技系ゲームではオフにする選択肢も一般的です。 - VRR(G-SYNC / FreeSync)が普及した現在は、
「VRR+垂直同期オフ」を基準に、タイトルごとの最適解を探る時代になっています。
大切なのは、「オンが正解」「オフが正解」と決めつけることではなく、
自分のモニター・GPU・遊ぶゲームに合わせて最適なポイントを探すことです。
本記事の内容を参考に、
ぜひ一度ご自身の環境で垂直同期やVRRの設定を見直してみてください。

